政治家は「憲法違反」との憲法学者の声に謙虚になるべきだ。

 衆議院の憲法審査会に招致した三人の憲法学者は安倍自公政府が衆議院に提出した「安全保障法案」に関して「憲法違反」であるとの見解を示した。三人はそれぞれ憲法学者として大学で教鞭をとる現役で学識経験を有する人たちだが、彼らは異口同音に「集団的自衛権の場所を限定しない行使は憲法に違反する」との見解を示した。
 しかし菅官房長官は憲法学者の見解に国会審議は縛られるものではないとして、この夏までの成立を目指す方針に変わりないと記者会見で表明した。それでは何のための憲法審査会に学識経験者を呼んで意見を聴取したのか解らない。

 政治家は国民の負託を受けて政治を司る専門職だが、彼らは学者ではない。憲法学者が政府提出の法案が憲法違反だと断じたなら、謙虚に自制して提出法案を取り下げるべきだ。
 しかし国会の立場で招致した憲法学者でも「野党」が選出した学者だからそうした見解が出たのであって、自公与党が学者を選出して意見を聴取すれば異なる見解が聞かれるはずだ、という声が政権与党内にあるという。それなら早急に自公与党で人選して、憲法審査会で意見を聴取することだ。それで「安保法案」が「合憲」だと出たなら、それこそ国民に信を問うべきだ。

 それにしても、なんと傲慢な政治家だろうか。自分が憲法をどれほど学んだのか、菅官房長官は見識を開示して頂きたい。彼の国語読解力がいかなるものか、是非とも知りたいものだ。いかに解釈すれば第九条の文言から「周辺事態法を廃した集団的自衛権」が合憲だといえるのか、菅官房長官の見解をお伺いしたい。
 日本は明快に国際紛争の解決策として武力行使を採らないと憲法で規定している。それを斜めから読もうと裏から読もうと、武装した自衛隊を何処へでも派遣して「集団的自衛権」を発揮できる、というのは世界の何処ででも誰を相手にしても「同盟国等」のためなら戦争しても良いということだ。戦争は相手を殺すだけではない、自衛隊員が殺されることも当然想定しなければならない。そうした戦前さながらの法律を現国会で審議しているという時代錯誤を国民は認識すべきだ。

 戦前の帝国主義華やかなりし時代へ回帰したい自公政権の政治家諸氏は勝手に自分たちが鉄砲を担いで何処へでも行くが良い。ゆめゆめ国防軍の自衛隊員を隷米の証として世界の紛争地に差し出すような馬鹿な真似だけは絶対にしてはならない。
 米国が絶対正義ではない。彼らは1%の益のために若い国民の血を流しているが、米国の戦争が先の大戦以後の世界に何をもたらしているか。まさしく怨念の連鎖をもたらしているだけではないだろうか。米国の尻馬に乗って碌なことにならない。日本は日本独自の外交戦略を持つべきだ。そのために日本国憲法がある。政治は国民の生命財産を守るためにある。自国民を戦地へ送り込むためにあるのではない。


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