ギリシャデフォルトは通貨統合の崩壊の始まりか。

<ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は、ギリシャを破滅から救うための譲歩が限界に達したことを示唆した。
 オランド大統領はギリシャのチプラス首相が発表した国民投票が、同国のユーロ圏残留か否かを決めるだろうと言明。メルケル首相はギリシャが救済条件を拒否したことで、ユーロさらには欧州の信頼性が問われることになったと指摘した。
. メルケル首相は29日ベルリンでの演説で、「ユーロが失敗すれば欧州も失敗する」と述べた。「だからこそ、原則のために闘わなければならない。短期的に原則を曲げることはできるかもしれないが、それは中長期的に害をもたらす」と続けた。
. オランド大統領は、国民投票を行うのはギリシャの主権の範囲内だが、「問われているものは重大だ。ギリシャ国民がユーロ圏にとどまることを望んでいるかどうかが分かるからだ。とどまるべきだと私は考えるが、決めるのはギリシャ国民だ」と述べた>(以上「ロイター」より引用)

 ECが果たしたのは通貨統合までで、それぞれの国内主権は消費税率一つとっても統合されていなかった。それによりそれぞれの国の財政運営はそれぞれの国に任されたままだった。それが「通貨統合」の限界だったというべきだろう。
 本来、通貨統合する前にそれぞれの国の諸制度も統合し、財政の「連結決算」を果たすべきだった。「欧州は一つ」というのを自己陶酔のスローガンに留めておくつもりなら、現行の通貨統合だけで「EUは一つ」と言っていれば良いかも知れない。だが、それぞれの国内にはそれぞれの国の事情が残されたままだった。

 ギリシャが共通通貨ユーロを放棄しても、EUが消滅するわけではない。他にもユーロから落後する国も出そうだが、それによりEUが崩壊するわけではない。ただ「通貨統合」は欧州全域統合という本来の目的から大きく後退するだけだ。
 米国ドルの世界支配に対抗して「宗主国」たる欧州が立場を回復すべくうち立てた政策がEUのユーロだった。国際通貨としてユーロは定着している。しかしその安定性を支えているのはドイツとフランスだ。英国は体を欧州の外れの島国に残したまま欧州大陸に置いた片足をユーロからいつ離そうかと迷っている。

 かつて日本は幕藩体制として幕府が巨大な軍事力で国内統合したが、細々とした刑罰や税制などや通貨に関しては藩札発行を認めるなど、藩の行政権を認めていた。明治維新成功の鍵は各藩が保持している「限定された主権」の取り上げだった。つまり藩籍奉還と廃藩置県が明治維新旋律には欠かせないものだった。
 欧州統合とはつまり藩籍奉還と廃藩置県が断行できるかに懸っている。それ以前の通貨統合は通貨の統合に過ぎない。だからギリシャがデフォルトに陥って破綻しようが、それがEUの基盤を揺るがすモノでもなく、通貨統合からギリシャが脱落するだけだ。それだけのことで、後はデフォルトされたユーロの処理をいかに済ますかだけだ。

 ロシアと中国が破綻したギリシャに金融支援して取り込むのではないかと見る向きもあるが、ロシアにも中国にも他国に金融支援する余裕はない。自国の経済崩壊の危機を回避するのに懸命だ。ことに中国はAIIBを構築している途中で、参加している欧州諸国の機嫌を損ねて集団脱退という事態を招きたくないだろう。
 ロシアも欧州は天然ガスを買ってくれる最大顧客だ。敵対する相手でないことは中国と同様だ。ゆえにギリシャの財政危機はギリシャの問題に留まるだろう。大騒ぎする必要はない。


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