米国の尻拭いに日本が付き合うのは御免だ。

 中東で邦人が「イスラム国」に捕えられ虐殺されたことにより、安倍氏は一気に「有志連合」に加わろうとしている。そもそも火薬庫と呼ばれていた中東のパンドラの箱の蓋を開けて紛争の火種を散らかしたのは米国だ。
 指摘するまでもなく、イラク進攻と傀儡政権によるフセイン処刑がそもそもの中東紛争の出発点だ。大量破壊兵器をフセインが製造している、という疑惑のもとに、米国を主体とする「多国籍軍」が主権国家イラクを侵攻し、フセイン政権を打倒した。

 しかし大量破壊兵器はイラクの何処にもなかった。デッチ上げにより米国を主体とする「多国籍軍」は主権国家を侵害し、国家の治安と秩序を破壊した。それもただただフセインが「反米」だというだけの理由でだ。
 確かに、その前にイラクがクウェートを侵攻し占領しクウェート国民を虐殺したのはフセインに責任がある。だから「多国籍軍」がクウェート奪還の湾岸戦争の挙に出たのには大儀があった。しかしそれに続くイラク進攻に大儀はなかった。

 今回のテロ騒動を演じている「イスラム国」の主要メンバーはフセイン統治下の将兵たちだという。彼らが「反米」なのには当然の理由がある。残虐行為は許されるべきではないが、「多国籍軍」に続き「有志連合」による空爆が果たして正しい選択なのだろうか。
 中東の問題は中東に任せるべきではないだろうか。もしも歴史を遡れるとするなら、米国大陸に移住した白人が先住民を600万人も虐殺して土地を奪った「米国建国の開拓史」が、現代の常識で許される行為なのだろうか。「イスラム国」の人質殺害などの残虐行為は許されるべきではないが、だからといって日本までが「有志連合」に加わって「イスラム国」の要人殺害に参加するのが正しい選択だろうか。

 日本が為すべき「イスラム国」への制裁は最低でも国連に任せるべき案件ではないだろうか。米国の世界の保安官気取りとは反吐が出る。日本が東京大空襲をはじめとする全国各地への焼夷弾爆撃「市民焼き殺し作戦」や広島・長崎への原爆投下した米国を批判しなかったために、米国は「世界の警察なら何をしても正義は許される」と米国の正義を世界に押し付けてきた。
 日本は正しく戦時国際法に則って、第二次世界大戦当時に米国が犯した国際法違反を根拠に米国を批判すべきだった。それをしなかったがために米国は戦後70年経った今も暴走を続けている。その責任の一端は米国を窘めなかった日本にもある。それを尻馬に乗って自衛隊を米軍の先兵に使うための「集団的自衛権」の法整備を目論むとは何事だろうか。

 難民は「イスラム国」周辺諸国だけにいるのではない。中東諸国の難民に援助を日本が行うのなら、「イスラム国」内の難民にも等しく援助の手を差し伸べるべきだ。日本は中東紛争のいずれにも加担すべきではない。
 米国の石油利権と欧州の宗主国たちの影響力保持の「有志連合」に日本は何の利害があるというのだろうか。安倍氏はおりしも日本列島を襲っている寒波で少しは頭を冷ましたらどうだろうか。


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