「イスラム国」の人質とされた二人の邦人保護に全力を尽くすべきだが、

「イスラム国」の人質とされた二人の邦人保護に全力を尽くすべきだが、そもそも二人の邦人はなぜ「イスラム国」の人質になったのだろうか。彼らは日本で暮らしていて拉致され、連れ去られたのではない。わざわざ危険な中東へ出掛けて、しかも過激な「イスラム国」が虐殺や施設破壊などを行っている戦闘地域に自ら踏み込んだ。
 その動機は何なのか。昨年の八月に拘束されたとされる湯川某の動機は判然としない。しかしその数か月後の十月に拘束された後藤某は知人の湯川某を「救出する」として、ガイドなどが制止するのにも構わず「イスラム国」の支配地域へ行ったのだ。

 今年の国内でも多くのスキーボーダーたちが禁じられているスキー場のゲレンデ外へ出て滑走を楽しみ、雪崩などに巻き込まれたり行方不明となって十人前後が命を落としている。スキー場のゲレンデは圧雪車などで雪を踏み固めるなどして雪崩が起こらないように危険防止の措置がしてある。しかしスキー場外はまさしく冬山そのものだ。スキー場外で遊ぶのなら彼らは冬山の装備と遭難時の余裕を持った食料などを携行すべきだ。そうした準備も装備もしていない彼らの行為は「自殺的」行為だと批判されてしかるべきだ。
 同様に先鋭的な殺戮集団が活動している地域へ安易に行くべきでないことは常識だ。そこで殺害されても誰にも補償を求めることは出来ない。大の大人がそうしたことが解らないはずはない。

 私は何も二人の邦人を日本政府は救出すべきではない、といっているのではない。テレビ等で後藤某を「ジャーナリスト」だと紹介していることに腹が立つのだ。いやしくもジャーナリストなら自らの身は自らが守るというのは常識として備わっているべきだ。それが「友人を救出に行く」と言い残して「イスラム国」の支配するシリアへ入って行った。それはジャーナリストではなく、戦隊物の幼児番組を見過ぎた未熟な大人だと批判されて然るべきだろう。
 そして安倍首相もこの時期にノコノコと中東へ、こともあろうに紛争のコアのイスラエルへ出掛けてイスラエルの首相と会見するとは見識のなさに呆然とする。石油利権と人種差別と宗教対立の坩堝が中東の火薬庫たる所以だ。日本はそのいずれとも係ってはいなかった。それを「イスラム国」被害者・難民に対する「人道支援」を行うと表明した。そうしたことは国連の仕事であり、どうしても安倍氏が日本の立場上、支援すべきと判断するのなら、国連を通して行うべきだった。

 日本の外交は国際紛争に日本国民を巻き込まない配慮に欠けている。そして未熟な日本国民がノコノコと紛争地へ火中の栗を拾う覚悟もなく、物見遊山の気分で出かけていく。彼らは専門的に戦闘地域で生き延びる戦闘訓練も受けていないし、戦闘地域の危険性を熟知もしていない。ただ「戦場ジャーナリスト」が国内マスメディアでそれなりに稼いでいるのを見て「箔」付けに出掛けているとしたら本物の戦場ジャーナリストたちにとって大迷惑だろう。
 既に期限とされた72時間は経過した。人質の命はないものと覚悟すべきだ。イスラム教を騙る者たちの残虐さは報道を通して知っているはずだ。残念だが、それが文明史を数千年を経た現代の、未だに動物から抜け切れない人類の限界だ。


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