福一原発事故の現状を見ても原発再稼働しようとするのか。

 福一原発一号炉から漏れている汚染水漏れヶ所が明らかになった。遠隔操作のロボットを投入して調べたもので、原子炉本体から伸びるドレインが破損しているのと本体にも亀裂が入りそこから漏れているという。
 おそらく二号炉三号炉も似たような状況なのだろう。水素爆発(?)したために生じた不具合なのか、あるいは地震により亀裂が生じたものなのか、実際には原子炉そのものを調査しなければ解明できないだろう。少なくとも地震直後の原発制御室ではあらゆる警報装置が作動して作業員はパニックに陥っていたというから、津波による総電源喪失による原子炉溶解以前に深刻な事態に陥っていたのは間違いない。

 さらに安倍首相が福一原発沖0.3㎢に放射能汚染水は完全にブルックされている、と世界に向かって発言した根拠となるシェルトフェンス(水中カーテン)が破損しているのが相次いで見つかっている。一日300トンも流れ込む放射能汚染水を水中カーテンで外海と遮断しているという説明も、しかし実態として本当なのか疑わしい。
 なぜなら干満による界面上下は湾内でも起こっていて、海水は出入りしていても放射能汚染物質だけが0.3㎢の湾内に留まっている、という説明はとても信じられないからだ。やはりすべての放射能汚染水を陸上で放射性物質を除去してから、残留放射性物質を測定して安全を確認してから海へ流すべきだ。

 しかし、それでも問題は残る。放流する汚染水が除去装置により安全基準以内であっても、一定海域に流し続けているうちにはその地域の海底に沈殿する放射性物質が特定の窪地等に溜まって濃縮され、基準値を超えることになりはしないかという懸念だ。
 何よりも溶解した核燃料の撤去がなければ事態の「収束」などはないといわざるを得ない。野田氏は早々と「収束」宣言をしたが、いかに空疎で無責任な宣言であったを彼は知るべきだ。

 小泉氏は放射性廃棄物の最終処分場が日本にないことと、処分場が出来たとして放射能が無害化するまでの今後10万年をどのようにして管理するのか、という問題を投げかけている。だから「即時脱原発」というのは大いに理のある話だが、それ以上に地震列島日本に立地している原発を稼働することは危険極まりないことだという認識を持たなければならない。
 福一原発の地震直後にオペレーションルームに鳴り響いたあらゆる警報音に肝を潰した作業員の大半が現場を放棄して持ち場を離れた事実をどのように捉えているのだろうか。彼らは「原発が爆発する」と咄嗟に思ったというではないか。だからこそ福一原発の事故原因の調査は慎重の上にも慎重を期すべきなのだ。安易に総電源喪失が原因だと結論付けるのは危険というより放射能汚染列島に日本をするつもりかといわざるを得ない。

 水中カーテンが大して意味のないものだということは専門家なら解っているはずだ。空気中ですら放射能汚染物質は遠くまで拡散している。ましてや水中ならどれほど大量の放射性物質が水流とともに拡散するかは常識ではないだろうか。水中に垂らしたカーテンで海水の出入りとは関係なく放射性物質を遮蔽できるという「完全ブロック」を信じているのは安倍氏ただ一人かもしれない。
 政府は莫大な国費(税金)を投入して、国民負担をさせた挙句に、この体たらくとは涙が出る思いだ。科学技術大国・日本の名が泣こうというものだ。


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