まだ続く「官僚による官僚のための政府」

 政府・与党は、中央省庁の幹部人事を総理官邸が一元的に管理する国家公務員制度改革法案について、今の国会での成立を断念する方針を固めた、という。それは中央省庁の審議官以上約600人を対象とする人事を政治家の手に握ろうとするものだ。
 しかし世界では決して特異なことではなく、米国では大統領の改選により5000人程度の官僚人事が動くといわれている。それだけ政治家が行政府を掌握して政治家が選挙で訴えた公約を実行する体制造りがやり易いということだろう。

 翻って日本はどうだろうか。画期的な本格的政権交代により2009年に民主党政権が成立したが、官僚の人事権は官邸になく、ただ事務次官会議を廃止しただけでマスメディアは批判の嵐を浴びせた。
 そしてアッという間に政治家主導を掲げた民主党政権は「政治とカネ」プロパガンダにより小沢氏が政治の表舞台からスポイルされるや、大黒柱を失った民主党政権はたちまち自民党政権の模倣に陥り、完全に官僚支配政権に堕落してしまった。その象徴的な例が菅首相による突然の狂気じみた「消費税10%」宣言だった。

 日本のマスメディアもこぞって官僚の広報機関の本領を発揮した。「社会保障の財源に消費税を」などという本末転倒の議論を国民に徹底して刷り込み、なんとなくそのような国民世論作りに成功している。
 しかし少しでも考えると矛盾は明らかだ。消費税は貧乏人に厳しく、金持ちに優しい税金だ。それは応能負担により徴収する税ではなく、貧困層にとっては生活費そのものを増額する生存権に関わる問題を孕んでいる。社会保障が「負担は応能で、支給は一律」という大原則があることを故意にマスメディアは国民に広報せず、安定財源という理由だけで消費税こそが社会保障の財源に適しているとバカな論理を展開している。

 そうした論旨をマスメディアの愚かな記者たちに刷り込んだのは官僚たちだろう。日本は間違いなく官僚支配の国だ。高額な年金を受領する人たちは現役時代に高額な給与を安定して受け取っていた一部の人たちと、すべての公務員たちだ。彼らの高額年金を維持するために消費税を使うべきだというのなら、貧困層の生活権をたとえ奪おうともも等しく負担させて、高給取りだった人たちの老後生活も高額年金で保障しようというのだ。
 もちろん高額年金受給者に官僚たちも入っている。彼らが彼らのためにならない政策に血道を上げるわけがない。だから官僚特権を補強する「特定秘密保護法」を今国会で上げるようにと自民党政治家たちの耳元で囁いているし、官僚が手にしている「人事権」を維持するために国家公務員制度改革法案を今国会での成立を断念させた。なんという鮮やかな政治家操縦術だろうか。

 この国では官僚の人事権は官僚に握られ、官僚の考課査定も官僚に握られ、さらに仕事の監査までも官僚に握られている。つまり官僚は政治家が巣食ってこの国を動かしていると錯覚している「官邸」とは別に、霞ヶ関に「官僚王国」を作り上げて政治家に指一本触れさせない堅牢な要塞に仕立て上げている。
 要塞化の最後の大きな杭が「特定秘密保護法」だ。この法案が成立すれば官僚による官僚のための行政はその情報を60年間は秘匿できる仕掛けを手にすることが出来る。後はおろかな政治家を煽てあげて掌で踊らされば良いだけだ。マスメディアに根拠なき新造語、たとえば「アベノミクス」などという絶賛を浴びせさせれば舞い上がってドンドン何でもやらかしてくれる。昨日は新社屋なった読売新聞に出掛けて「渡辺会長の部屋は何階か、と聞いたら秘密だといわれた。読売新聞社にとって渡辺会長の部屋が何階にあるかは特定秘密だ」とバカな発言をして安倍氏が聴衆の笑いを誘ったようだ。

 彼は自分が何を云ったのか解っているのだろうか。冗談にでも「特定秘密だ」といえば国民に最大60年間は秘匿されることになり、政権運営担当の官僚たちや政治家たちはたとえば渡辺氏の執務室が何階にあるのか、といった愚にもつかないことでも秘匿できる恐ろしい社会が出現するということだ。図らずも安倍氏は冗談事ながら特定秘密の愚かさを披歴した。
 そして官僚の審議官以上600人の人事権を握る法案すら上げることが出来ない官僚主導ぶりの醜態をさらしている。それを醜態と表現しないマスメディアもまた官僚広報機関の醜態をさらしていることになるのだが、テレビ出演のMCやコメンテータたちは口が裂けても「醜態」だと批判しない。批判すれば番組を干されて高額ギャラを失うからだ。そうした構図の中で国民は総白痴化していくのだろうか。


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