不安定化する中国の「揺さぶり」に日本政府は毅然と原則を通せ。

 中国国内が不安定化している。従来から中国内で民衆による公権力に対する「暴動」が年間8万件ないし10万件も起こっているとされていた。正確な数字は中国政府が発表していないから解りようもないが、それですら驚きだった。
 が、今回は先日天安門広場に暴走車が突入して死傷者が出るという事件が起こり、山西省の共産党本部ビル前で爆弾テロと思われる事件が起こった。いずれも中国政府の威信に関わる場所で起こった事件なのが目を引く。

 承知の通り中国は情報管理国家だ。同時に権力による情報操作と盗聴や告発を奨励する情報統制社会でもある。その中国内で起こった象徴的な事件により中国権力による統制と規律にガタが来ていると思われる。それも相当深刻な状態になっていると思わなければならないだろう。
 時恰も、産経新聞報道によると中国政府の意を受けたと思われる中国外務副局長が極秘に中国訪日経済団体にまぎれて訪日し、外務省や官邸で日本政府と接触しているのが確認されている。福田元首相が訪中し中国外務大臣と面会するとの報道もある。中国政府が何とかして日本と外交関係を改善しようとしているシグナルと思われる。

 その一方で中国艦船による尖閣諸島近海のEEZ侵入を繰り返しているし、中国政府による世界各国へ「尖閣諸島は日清戦争により日本が略奪した」ものだと捏造した歴史を頻繁に発信している。前記に紹介した中国外務省副局長の正常化交渉も「尖閣諸島の共同管理」などを前提としたもののようで、中国政府は何も譲歩していない。むしろ明確な尖閣諸島領有への足がかりを日本政府に認めさせる魂胆が明らかな外交姿勢でしかないようだ。
 しかし中国政府は日本との外交を正常化したい思惑もある。習主席のライバルとされ、終身刑となった薄煕来(はくきらい)元重慶市党委書記を終身主席とする政党が作られたという。本来中国は中国共産党の一党支配を謳い、現在ある共産党以外の8政党は共産党の補助機関という位置づけになっている。しかし薄煕来氏を終身主席とする「至憲党」がどのような運動を展開するのか予断を許さない。

 中国を理解する時に日本の統治や自衛隊の在り方を前提としてはならない。むしろ戦国時代の日本をイメージした方がより近いだろう。中国政府による全軍に対する軍事統帥権は確立したものではなく、空軍の一部と海軍の一部10万人程度の精鋭軍を直接掌握しているに過ぎず、全国各地の人民解放軍はかつての軍閥の域を脱してはいない。
 いわば中国政府によるモザイク国家を統一しているのが共産党思想による情報管理と恐怖政治の賜物だ。だから何年かに一度は国民を震撼とさせる「恐怖」を与えなければ統治が弛緩する脆弱性な一面を持っている。

 文化大革命はそうした締め付けにより文化人や学者や教師や医師などを大量(3000万人)に虐殺したのだ。天安門事件でも1万5千人もの学生たちを虐殺した。それでも中国は統治・統制力を失いつつある。
 その主な原因は貧富の格差拡大にある。そもそも共産主義社会に格差があってはならない。すべては平等に分配されるのが共産主義の大前提だ。そうした「毛沢東主義」を前面に出したのが薄煕来(はくきらい)氏だった。だが薄煕来(はくきらい)氏も中国政府官僚の例にもれず蓄財を図っていたが、彼を終身主席に仰ぐ人たちは現在の極端な貧富の格差是正を党是に掲げている。

 習主席はガタのき始めた中国内を纏めるためにも反日姿勢と尖閣領有を叫び続けるしかない。その一方で外資と外国企業の導入を主力エンジンとして発展を続けて来た中国経済を今後も維持するためには経済大国の隣人・日本の力を借りなければならない。中国政府はトヨタ元社長の張氏を団長とする150人規模の経済視察団を近々受け入れるようだが、それこそが中国政府の本音だと見るべきだろう。
 しかし日本の経済界も中国民の反日運動で日本企業が焼き討ちや破壊・略奪にあった事実を忘れてはならない。中国は安定的な安心して投資できる国ではないことを十分に認識すべきだ。今後とも中国政府は反日姿勢を崩すことはではないだろうし、やがて経済の不振から中国国内政治と国内統制でもダッチロールを演じることになるのは明らかだ。日本政府も中国の外交打開姿勢に乗じて安易な妥協を図ってはならない。毅然として尖閣領有を主張し、その主張は海外へ向かっても大いに宣伝すべきだ。「白髪三千丈」の誇大妄想中国に対抗するには事実を繰り返し世界に訴えることが何よりも必要だ。


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