東電福一原発の廃炉に向けて、会計原則を勝手に変更してはならない。

 寡聞にして知らなかったが、経産省は首相の求める東電の福一原発5号炉と6号炉の廃炉に向けて会計原則を変更しているという。その手口はあくまでも東電の存続を目論むもので、利用者の電気料金にすべて負担させようとするものに他ならない。
 その手口とはこうだ。会計原則では除却すると決めた資産はその期において残存資産価格をすべて償却しなければならない。しかしそうすると今期で莫大な除却損を計上することになり東電の業績が赤字に転落することから、廃炉とする原子力発電施設に関しては除却償却ではなく、稼働期間としていた期間で減価償却を続けようというのだ。会計原則に照らせば公明正大な粉飾決算を経産省は認めようとしているのだ。

 こうした常軌を逸した措置を強行するのは東電の存続を図るからに他ならない。そのためには会計原則を無視しようと、東電利用者に不利益が及ぼうと、経産省と東電は一切顧みないということのようだ。
 これまで散々国と電力会社は「原発は安全で安価な発電装置だ」と宣伝してきた。そのうち「安価な」というのは一括原価方式という会計原則を無視した原価算定方式により初めて可能になる詐欺的行為に他ならなかった。原発による発電原価計算を会計原則に基づいて行えば、それは天文学的な額に跳ね上がるのは火を見るよりも明らかだ。なぜなら今後一万年も放射性廃棄物処分場を維持・監視しなければならないのだから、それらに掛る経費を予測算定して原発原価に算入するのが会計原則に基づく原価算定だからだ。

 そうした数々の会計基準を無視した特殊な原価方式により国民を欺いていたことを国と電力会社は素直に認めるべきだ。嘘をついていたと非難されてもしかたないことを公的な機関が仕出かしていたのだ。それをこの国のマスメディアは提灯記事よろしく「原発の電気は安いゾ」と書き立てて国民に原発依存を誘導してきた。その罪たるや万死に値する。
 電力会社に特殊な原価方式を経産省が認めるのは当事者たちの勝手だが、国民はその全体像を知る権利がある。それを報せずして、特殊な原価方式で算定して原価で比較して「原発で造る電機は安い」と評論家たちも散々主張してきた。マスメディアに到ってはいまだに「この国の産業のために安い原発の電気は必要だ」と臆面もなく特殊な原価計算による原価で国民を欺いている。

 電力各社を解体すべきは当然だ。発・送電分離により電力各社は一発電会社になるべきだ。東電はすでに当事者能力を欠いている。更に経産省とグルになって会計原則を何処までも蔑ろにする異常な操作を繰り返すとはとんでもない。しかるべき株式会社としてあるべき会計原則に基づき債務超過不良株式会社として破綻処理すべきだ。電力会社だけを特別扱いすることがこの国の電力行政をいかに歪めて来たかを政治家・官僚たちは真摯に反省すべきだ。


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