了承した民主党議員たちはとっちを向いて政治をしているのか。

  半年先送りで消費増税案を民主党税調が了承したという。この国の置かれた「未曽有の円高」による輸出産業の打撃を省みず、国民がデフレ経済下で困窮した暮らしを強いられている状況も顧みず、国家財政破綻を煽りつつ満額ボーナスを公務員に支給する無策・無能の与野党を含めた政治家たちの存在とは何だろうか。


 この国の政治は国民の民意とはかかわりなく、財務省を中心とする官僚たちの意向に従ってやっているとしか思えない。「主権在民」とは何処の国の空念仏なのかと虚しい気持になる。


 


 民意として選挙に示された有権者の意思は「歳出削減努力」が第一であり、国民目線に立った「少子対策」「高校無料化」「摩訶不思議な官庁を取り巻く各種団体の徹底した廃止」と「官僚たちの天下り禁止」「コンクリートから人へ」のハードからソフトへの政治をこの国に打ち立てることだった。まさしく2009マニフェストの政治理念が民意であり、国民の願い通りに政治を行えば消費増税も各種負担増も必要なく財源は捻出できる。それを行わずして官僚たちを肥え太らせつつ増税を既定路線とした野田政権にどんな正当性があるというのだろうか。


 


 まさしく官僚内閣制を地で行く自民党時代の内閣の悪夢で、政権交代以前の古びたレコードの空回り然とした官僚たちの大合唱を閣僚たちの口から聞かされているようだ。政権交代とは何だったのか。


 野田氏側近たちは「増税反対派が離党して却ってすっきりする」と嘯いているようだが、民意とかけ離れた政治へと突き進んでいる野田政権こそ2009マニフェストで選ばれた民主党から出て行く人たちだ。こんなバカな政治をやるしか能のない政治家たちは次回総選挙で確実に落選させなければならない。そうしなければ選挙時点だけ国民に耳触りの良いことを言って、当選すれば官僚の下僕となって国民を裏切る政権が継続することになる。民主主義とはいえない政治がこの国で延々と続くのは国民にも責任がある。野田氏の選挙地区の有権者は野田氏は民意を裏切り官僚に寄り添った最低の政治家だとの自覚はないのだろうか。勇ましく「増税を口にするカッコ良い政治家」と持ち上げる幇間評論家もいるが、選挙時点のマニフェストを反故にする政治家は「羊頭狗肉」の詐欺師と何ら変わりない。


 


 このまま増税しなければこの国は破綻するのか。この大命題についても国民は年末年始の休日に心静かにいろんな議論に耳を傾けるべきだろう。


 確かにこのまま野放図な財政を継続すればとんでもないハイパーインフレに陥るだろう。しかし紙幣発行権を有する通貨当局を政府は独立機関とはいえ持っている。終戦直後に何があったか、歴史に学べば「国家破綻」はしないが猛烈なインフレに見舞われるのは明らかだ。


 つまり貨幣価値の付け替えが行われるだけで、国家財政破綻による一切のサービスが打ち切られ民間企業もバタバタと倒産する、という評論家たちのようなことは起きない。なぜなら日本は終戦という国家破産状態から復興してきた。その記憶を呼び起こせば「国家財政破産」が「国家破産」よりましなのは明白だ。


 


 終戦直前の国家財政は膨大な戦時国債の山を抱え、極端な税収減に陥り戦争続行の高圧的な歳出要求に抗せず出鱈目な財政運営を強いられていた。終戦により飢えた国民に米国が飼料に回す脱脂粉乳や古古米とでもいうべき小麦粉を放出して日本国民を救った、というプロパガンダを日本国民の多くは信じているようだが、そんな慈善事業を米国は決してしなかった。実際は終戦直後のボロボロの国家財政から5割近い予算を「食糧援助費」としてブン奪っている。確かに何年かに繰延べにしはしたが、この国の農地のみならず工業生産力までも徹底して破壊したのは間違いなく米国の無差別爆撃だった。それは明確に戦時国際法に反した行為だった。非戦闘員と戦争と関わりのない国内秩序を破壊したことに対して米国は一切なにも補償していない。


 いずれにせよ、戦後の日本はそこから出発した。たとえバカな評論家が「国家破産するゾ」と脅しても、終戦直後の状況よりは遥かにましなところから出発できる。なぜなら民間企業も輸送機関も農地も少しも傷んでいない。金融機関は国債引き受けが反故同然になるから一時的に混乱に陥るだろうが、日銀が「新円」を発行して市中銀行に供給するだろう。


 痛みを最も直接的に受けるのは官僚たちとその仲間たち、公的支出にぶら下がって国民の税を貪っている連中たちだ。考えようによればこの国の行政改革を行う最良の契機になる、と前向きに考えるべきではないだろうか。


 


 しかし官僚たちは野田政権の尻を叩いて、元大蔵官僚の藤井氏を民主党税調の会長に押し立てて「官僚の酒池肉林」状態を続けるために国民に負担を強いる道筋を付けようとしている。なんとも民意とかけ離れた政治家たちだ。消費増税の道筋をつけた上で行政改革や公務員給与削減を行う決意を、野田氏は披瀝した。それもいつか見た自民党政治の一場面と寸分違わない風景だ。この国の民主主義を徹底して破壊した張本人との自覚すら、そこにはない。次期総選挙で間違いなく民主党は潰れるだろうが、一つの政党の盛衰などどうでも良い、この国の民主主義をどうしてくれるのか、と野田氏に突き付けなければならない。



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