「なりたい人」よりも「させたい人」を首相に。

　菅氏は民主党所属国会議員の全面的支持を受けて代表となり首相になったのではない。去年9/14の民主党代表選で国会議員の票では対立候補小沢氏とは僅か数票の差でしかなかった。

　その小沢氏は当時一年半も前から「政治とカネ」なる検察と大手マスコミによって捏造されたギワクで集中豪雨のように連日新聞やテレビで叩かれていた。そして大手マスコミはそれでも小沢氏支持が根強いとみるや「簡単に首相をコロコロと代えて良いのか」という理由だけで菅氏を支持するよう世論を誘導した。

 

　ここ2年に亘り大手マスコミがどのような世論誘導をしてきたか、振り返って頂きたい。鳩山氏が「最低でも県外」と普天間の移転先として当然の発言をしたにもかかわらず、公然と「出来もしないことを言った」として批判し、基地移転候補地が取り沙汰されると逸早く現地で「基地移転反対」運動を盛り上げるべくテレビなどで取材合戦を演じて見せた。そして鳩山氏がヘトヘトになるほど叩きに叩いた。

　ついに鳩山氏が匙を投げて自民党時代の日米合意「辺野古沖」へ移転先予定地が戻ると無能呼ばわりした。

 

　本当に鳩山氏は無能だったのか。実は防衛・外交官僚が鳩山氏の「最低でも県外」を邪魔していた、という事実がウィキリークスの日米外交文書すっぱ抜きで露見した。大手マスコミの報道姿勢も官僚たちのベクトルを後押しするものだったと、今でははっきりと分かっている。現に菅氏が現在進めようとしている「辺野古沖移設」を大手マスコミは批判していない。つまり、長年「沖縄の基地負担」を軽減すべきと論陣を張ってきた大手マスコミは大ペテン師の集まりだったことが図らずも明らかになっている。

 

　昨年6月に菅氏が首相に就任して間もない参議院選挙突入直前に、何を発狂したのかと疑うほど唐突に「消費税10％」を喚きだした。民主党としては消費税増税は次の総選挙まで封印するとしていたはずだ。しかし菅氏はこともあろうに参議院選挙直前に自民党案を丸のみし、モノの見事に民主党を惨敗に導いた。本来ならその時点で菅政権は退陣していなければならなかった。

　同じように前々回の参議院選挙で惨敗した安倍氏に関しては大手マスコミは容赦なく批判の嵐を浴びせ、強く政権維持を試みていた安倍氏をヘトヘトに疲れ果てさせ健康を損ねさせて政権を放棄させた。あの時とは全く違う大手マスコミの対応に悪辣な意図を感じたものだ。

 

　何も出来ない菅氏を代表選で支援し首相続投に成功すると、大手マスコミは民主党政策をばら撒きだと攻撃して「財源」問題に直結させ消費税増税を煽った。つまり増税派の政治家与謝野氏の取り込みを歓迎し、財政再建派の閣僚たちの起用と菅政権の布陣を大手マスコミは支持した。

　しかし現実的な手法も手駒も何もない菅政権はネジレ国会を放置したまま増税論議に加えて、突如として持ち出した社会保障問題をリンクさせて机上の空論を弄んで時間を空費した。スッカラ菅政権の面目躍如たるもので、大手マスコミは脱・小沢を囃し立て仙谷氏と菅氏のタッグが小沢切りに邁進するとヤンヤの喝采を浴びせた。大手マスコミも国民不在の「政治とカネ」なる実態のないプロパガンダで小沢氏の名誉を著しく傷つけ「これだけじゃないんです、小沢氏には疑惑はたくさんあるンですから」と岸井某なるコメンテータがテレビ番組でほざいたりした。

　こうした「法と証拠」に依らない疑惑を口にしたからには岸井氏は名誉棄損で訴えられても仕方ないだろう。大手マスコミは岸井氏と同程度のようなプロパガンダを繰り返し繰り返し報じ続けたことを忘れてはならない。

 

　そして3/11の大震災とそれに続く津波の大災害に見舞われて菅政権は政権の体をなしていない。無能な政権を持続させることがいかに国家と国民にとって大きな災いをもたらすかを実証している。現在も災害復興大臣なる者が「自身の出身地、自身の血液型」を公の場で発言するジコチュー振りで驚いていると、舌禍で追求されるや「妻と子供に」迷惑を掛けたとして辞任した。何処までもジコチューな傍迷惑なガキのような人物だった。

　菅氏とその政権には呆れかえって言葉もない。その裏でせっせと官僚たちは災害復興や東電放射能被害補償にかこつけて利権確保に血眼になり、被害者や被災地を失念しているかのように復興は遅々として進まない。

　しかし菅氏にはいま少し頑張って頂きたい。小沢氏が「公訴棄却」により完全復帰するのも目前だ。大手マスコミに1％でも贖罪の気持ちがあれば「今こそ実力ある小沢氏に政権を任すべき」との論陣を張るべきだ。それこそが国家と国民のためなのだが、官僚の僕となり業界の利権擁護に目が眩んでいる大手マスコミに正義を望むのはないものねだりというものなのだろうか。