「もう不況はアメリカに来ない」のか?
<近代史の大部分において、最も豊かな国々においてさえも、経済の拡大と暴落はあたかも四季のごとく周期的に繰り返されてきた。 しかし、経済学者やウォール街の著名なエコノミストの多くが、自分たちが学校で学び、実際に目撃してきた手に負えない景気循環は、本質的に以前よりおとなしい野獣に姿を変えたのではないか、といった議論を提起するようになっている。 落ちることのない周回軌道「衛星」理論 投資会社ブラックロックで約3兆ドルの資産を運用するリック・リーダーもその1人だ。 「アメリカ経済がどのような着陸を見せるかに関して多くのことが語られている」。昨年夏、リーダーはクライアントに宛てた文書で、アメリカ経済はクラッシュするのか、それとも低インフレ、低成長、比較的低い失業率の「ソフトランディング(軟着陸)」を達成するのか、という問題をめぐって一般に用いられている「着陸」の比喩を持ち出して、こう続けた。 「だが、1つ心にとどめておくべきことがある。それは、衛星は着陸しないということだ。(アメリカのような)現代の先進国経済に対する例えとしては、こちらのほうが適切かもしれない」。要するに、経済の落ち込みは今後、より安定した軌道の中で起こるということだ。 外部からの混乱(経済学者が「外因性ショック」と呼んでいるもの)が起こったり、インフレ率の再拡大を受けたFED(連邦準備制度)の引き締めで景気が後退したりする展開とならなければ、現在のような旺盛な景気拡大局面が、月単位ではなく年単位で続く可能性があることを指し示す証拠もそれなりにある。 JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デビッド・ケリーは、3月11日の投資家向けレターで、ライダーの「衛星」論に極めて近いことを述べている。 「経済記者や市場ストラテジストたちは、私たちが景気循環サイクルの初期、中期、後期のどこにいるかを論じることが多い。だが、そのような見方は、アメリカ経済の動きに関する時代遅れのモデルに基づいている」 農業・製造業化型経済から消費主導型へ 全米経済研究所(NBER)によると、アメリカ経済は1850年代から1980年代初頭までの間に平均して18カ月間の不況を30回経験したのに対し、不況の合間の景気拡大期は平均して33カ月にとどまっていた。 このようなパターンとなっていたのは、ケリー