だから中東に戦争の火種は残り続ける。

そもそもイランはなぜイスラエルを攻撃?
 イスラエルにミサイルが飛来したのは、4月14日未明でした。イスラエル軍によると、イランや周辺国から発射された無人機は170機、弾道ミサイルは120発以上、巡航ミサイルは30発以上に上ります。
 米国や英国、フランスの支援を受け、イスラエルはこれらの99%を防空システムや戦闘機で撃ち落としました。イスラエル南東部で7歳の女児が重傷を負いましたが、それ以外に大きな被害は報告されていません。
 一方、イランの「革命防衛隊」は攻撃の開始直後、限定した標的に向けて「数十のミサイルとドローン」を発射したとの声明を発表しました。イラン外務省は、在シリア大使館がイスラエルの攻撃を受けたことを理由に「国連憲章に規定された正当な自衛権を行使した」と宣言。先に攻撃を仕掛けてきたのはイスラエルだと主張したのです。
 そのイスラエルの攻撃が起きたのは、4月1日です。シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部を空爆し、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官ら7人を死亡させました。イランは、イスラエルの攻撃と断定しています。
 イスラエルと激しく対立するパレスチナ自治区のイスラム組織ハマスは、イランと親しい関係にあります。イスラエルと交戦するレバノンの民兵組織ヒズボラも、イランと親密な関係を築いてきました。
 そしてイランは、それらの組織に武器を供給してきたとされています。イスラエルによるダマスカスでの攻撃は、そうした“反イスラエル”の動きを阻止する狙いがあったとみられます。

トランプ大統領の就任以降に緊張高まる
 英BBCによると、革命防衛隊はイラン経済にも大きな影響力を持っています。軍事産業ばかりか、住宅建設、インフラ開発、石油ガスプロジェクトにも手を広げ、利益を上げているのです。防衛隊はあらゆる面で、厳格なイスラム国家を支える骨格になったと言っても過言ではありません。
 米国のブッシュ(子)政権はイラク戦争の前年の2002年、イラク、北朝鮮、イランの3カ国を「悪の枢軸」と呼び、非難を強め、イランの強い反発を呼びました。
 ただ、次のオバマ政権は関係改善を模索。2015年に好機が訪れます。核開発疑惑の消えないイランと米欧などの6カ国が核合意を結んだのです。イランの核開発を制限する代わりに、米欧がイランに科してきた経済制裁を解除する内容でした。
 核施設の査察を担当する国際原子力機関(IAEA)は「イランが合意を順守している」と認めていました。しかし2017年に「自国第一主義」を掲げるトランプ氏が大統領に就任すると、米国は翌年、一方的に合意から離脱。その後、イラン経済は厳しさを増し、米国とイランの緊張が高まりました。

イランの本音は「米国と全面対決したくない」

 2020年1月にはイランは極めて危機的な状況を迎えます。イラクの首都バグダッドの空港近くで、米軍は革命防衛隊の「コッズ部隊」を率いていたガセム・ソレイマニ司令官を無人機で殺害したのです。
 トランプ氏は、ソレイマニ司令官が米軍や米外交官への攻撃を計画していたと正当性を主張しましたが、イランでソレイマニ司令官は「国民的英雄」と慕われており、激しい反発が起きました。ただ、イランは反撃を小規模にとどめ、イラクにある米軍基地をミサイルで攻撃しただけ。それ以上の報復は控え、全面衝突には至りませんでした。
 今回のイスラエル攻撃に関しても、イランには米国との衝突は避けたいとの思惑があったとみられます。
 大量に発射した無人機はイスラエル到達までに数時間かかり、イスラエル軍が迎撃態勢を取りやすくしたと言われています。しかもイランの国連代表部は到達前に「(攻撃は)これで終結したとみていい」とのメッセージをX(ツイッター)に投稿しました。
 一部報道によると、イランは事前に米国に対して報復は「限定的」であると伝えていたようです。イラン国内の強硬派を抑えるためにイスラエルを攻撃するけれども、その後ろ盾の米国と全面対決したくはなかったのでしょう。

SNSで「第3次世界大戦」の懸念広がる
 イスラエルは現在、パレスチナ自治区ガザへの侵攻も続けています。ガザの死者はすでに3万3000人を超えました。世界銀行と国連が共同でまとめた報告書によると、人口230万人の半数以上が「飢餓一歩手前の状態」にあり、100万人以上が家を失いました。
 水道・衛生設備はほぼ壊滅し、5%しか稼働していません。乳幼児は生涯にわたり発育面の影響が残ると予想しています。
 そうしたなか、イスラエルによるガザの空爆で米NGOの職員7人が亡くなった問題を受け、バイデン米大統領はイスラエルの強硬姿勢に難色を示すようになりました。一方、英紙ガーディアンは、イランの攻撃によってイスラエルが「被害者」となり、ガザへの国際的な関心が薄れることを懸念するパレスチナ人の声を伝えています。
 イスラエルの絡む中東地域の戦闘は拡大するのか、沈静化に向かうのか。
 SNS上ではイランによるイスラエル攻撃を受け、「第3次世界大戦か」「核が使われるのではないか」との声も出ましたが、そうした最悪の事態に至らないようにするためにも中東情勢への注視は欠かせません>(以上「JB press」より引用)




 なぜイランはいつまでも米国に絡むのか。「「アメリカは大悪魔」イランが米国を敵視するワケ、革命防衛隊は軍事に加えて住宅や石油などビジネスで巨額利益も」と題する論評を読んでも良く分からない。
 しかもイスラム教を信奉する宗教指導者が事実上支配しているイランで、実質上イラン国内の治安を司っているのが革命防衛隊と称する軍隊だというのも変だ。確かにイランは以前イランを支配していたハーレビ王朝を倒して、イスラム教を信奉する宗教指導者たちが政権の座に就いた。しかし宗教指導者は共産主義革命を達成したわけでもなく、イランが社会主義革命により社会主義国になったわけでもない。

 しかし軍は「革命防衛軍」と名乗っている。そこには普通の国ではない、というレトリックが隠されているのではないか。ハーレビ国王という独裁者は倒したが、イランが民主化したわけではない。イスラム教を信奉する宗教指導者による独裁体制が続いている。
 ISISにしても、イスラム原理主義を謳っているが、アラーの神によって統治されているわけではない。イスラム教を騙る軍閥が地域を独裁的な政治手法で支配しているだけだ。ただイランの革命防衛軍は軍事面だけでなく、建設や土木工事なども行って、イランの社会インフラを担っている。

 いわばイランは戦時体制にあると云って良いだろう。その戦時体制を維持し、イスラム教の宗教指導者による独裁政権を存続させるためにもイスラエルとの戦争は必要だ。戦争がなければ宗教や軍隊は存在価値を失うからだ。
 ただ引用論評にもある通り、必要なのは「適度の戦争」であって、米国との「全面戦争」ではない。イスラエルに対する報復攻撃も、イラン国民の「司令官などを殺害された鬱憤」を晴らすための「ガス抜き」であって、イスラエルの報復攻撃を想定したものではない。

 イランはイスラエルが報復攻撃をしなければイイ戦争はこれで終わりにするつもりのようだ。あとはハマスやヒズボラのテロ集団にイスラエル攻撃を任せて、中東の火種を絶やさないようにすれば良い。もちろんイランはハマスやヒズボラに物心両面で支援を続けるだけで、直接イラン国民の血を流すことはない。
 イスラエル国民は中東の平和を願っている。イスラエルを支持する米国も中東の平和を願っている。ただ中東の独裁諸国は中東が平和になるのを必ずしも歓迎していない。なぜなら平和になれば国民は学問をしたり物事を考えたりするからだ。そうすれば民主化や自由を求めるようになる。ことに人権を弾圧されている女性が発言権を強めるのを警戒しなければならなくなる。だから中東に戦争の火種は残り続ける。


<私事ながら>
この度、歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにクラウドファンディングをはじめました。既に電子版では公開していますが、紙媒体でも残しておきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」を読みたい方はこちらをクリックして下さい。

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