円安の今が日本経済成長のチャンスだ。

日本が「跳躍」するとき
 1989年にピークをつけたバブルの崩壊以降、「日本はダメだ」というムードが国内で蔓延していた。確かにバブル崩壊の爪跡は大きかった。また、デフレの進行はさらに日本を苦しめた。
 だが、バブル崩壊からすでに34年が経過している。日本人、日本企業、日本政府がその間何もしなかったわけではない。「時間(の経過)」という追い風も受けながら、「バブル処理」はとっくに完了したといえよう。
 少なくとも4年前の、2020年4月14日公開「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」の頃には、「日本が成長軌道に乗った」と考えている。
 むしろ、世界がリーマンショックというバブルの崩壊を「新たなバブル」で先延ばしにしている(実際にはリーマンショックは終わっていない)中で、(1990年頃までの)「バブル処理」がとっくに終わっている日本は「筋肉質」である。好機があればいつでもその筋肉を使って「跳躍」することができるのだ。
 ところが、日本国内では過去約35年間でしみついた「ネガティブ思考」から抜け出せず、いまだに日本の将来に悲観的な人々が多い。
 確かに、年金・健康保険問題や財政問題など「公的部門」における課題は「金利上昇」とともにさらに顕在化するであろう。
 だが「製造業」を牽引役とした「民間部門」は強力な力を持っており、公的部門での「破綻」があった場合でも、「苦難を乗り越えながら」力強く成長すると考える。

知らないのは日本人だけ?
「危機に強い永続性」が「世界大乱」の時代には大いなる武器になる。
 その「大乱」の中での「安定性」、「永続性」に先に気が付いたのは海外の人々かもしれない。
 さらには共産主義中国だけではなく、「日本のバブル崩壊前夜」に酷似した状況の米国を始めとする国々からも、(自国の危うさを感じている人々を中心に)日本に資金が流れている。
 日本の評価は世界的に高まっているのだ。知らないのは日本人だけではないだろうか?

世界の人々は「どこに逃げる?」
 数十年前、私が銀行のトレーダーであった時代、経済や市場が混乱した時に「マネーが逃げ込む先」というのは米国(ドル)と相場が決まっていた。この現象を「質への逃避」(フライ・トゥ・クオリティ)と呼んでいたのだ。
 だが現在「リスクに敏感なマネー」が「米国(ドル)」に逃げ込むであろうか?今のところ米国は「腐っても鯛」であるから、一定の影響力は持つだろうが、かつてのように避難先として米国(ドル)が圧倒的であった時代とは様変わりしている。
 それでは、世界のマネーはどこに向かうのだろうか?
 冒頭で述べたように、「大乱」の中でも「安定性」や「継続性」を失わない日本が「質への逃避」先としてふさわしいのは言うまでもない。
 さらに、借金漬けでバブルが限界に達しようとしている米国企業と違って、日本の上場企業は「資金効率が悪い」と批判されるほどの厚い内部留保を持っている。すでに眼鼻の利く海外投資家は日本に向かい始めているのだ。日本の(個人)投資家の態度も変わってきているように思える。

日本の「上昇トレンド」
 確かに、中国経済のさらなる悪化や米国バブルの崩壊が予想され、日本市場もそれなりの影響を受けるはずである。しかし、別の側面もある。
 米国は1989年バブルピーク当時の日本とほぼ同じ状態である。その頃、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と浮かれていたが、現在の米国はまさに「US・アズ・ナンバーワン」とはしゃいでいるのだ。
それに対して、現在の日本はその当時「ジャパン・アズ・ナンバーワン」騒ぎの中で意気消沈していた米国と同じ状態である。日経平均のバブル期最高値を付けたその日のダウ平均は「たったの」2753ドルであった。ポイント数で言えば、14分の1程度であったのである。
 また、現在の4万ドル程度から考えればやはり14分の一程度であったが、だれもそれを「激安」だとは考えなかったのだ。まだ「IT・インターネットブーム」や「『新型金融』の勃興」前夜だったからである。
 同じように、現在は「日本の製造業」や製造業のノウハウ(哲学)を応用した多種多様な産業が、世界を席巻する前夜である。つまりこれまで世界の発展の中で「ガラパゴス」と揶揄され沈滞していた「日本だけ」が浮上すると考えられる。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
 バブル期の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉は、日本人を舞い上がらせ「悪い結果」をもたらした。しかし、日本が「明るい未来」へと歩みを進めているのにも関わらず、「暗い過去」をいまだに引きずっている日本人にはむしろ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉で勇気づけたい。
 今回の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、GDPで米国を追い抜くなどという「量の拡大」ではなく、「質の向上」である。
「日本品質」がその象徴であり、「日本品質」は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と誇っても良いだろう。また、「治安の良さ」、「社会の安定性」も「ジャパン・アズ・ナンバーワン」である。これまではこの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が、経済の発展に結び付きにくかったが、デフレが終わりインフレが急速に進行する中で大きな武器になる。
 日本の長所は金剛組を筆頭とした老舗企業だ。そして、インフレ期には「老舗企業」が大きな武器になる。
 老舗企業の多さでも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なのだ。

「日本以外全部沈没」
 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、日本独自の成長と同時に「日本以外の国々の衰退」によっても後押しされる。
 例えば、前記「中国は崩壊か? それとも『失われる50年』か? いずれにせよ日本のバブル崩壊以上の惨劇が待っている」の惨状についてはよく知られるようになってきたので、改めて説明する必要は無いだろう。
 また、ノルドストリーム爆破や「経済制裁」による(安価な)エネルギーの途絶、中国経済不調が打撃となっている上に、「ドイツを見よ! EV化の惨めな結末~フォルクスワーゲン減産、結局、脱炭素は『三流国』への道?」なのがドイツである。これまで欧州経済の牽引車とされてきた同国の状況が示すように、EUも極めて厳しい状況に追い込まれている。
 米国については、これまで述べたように、いつバブルが崩壊するのかわからない状況だ。
 さらには、これから予想される世界的インフレ、高金利の打撃を最も強く受けるのが、社会・経済基盤がまだ未熟な新興国である。
 このように考えると、「日本の素晴らしさ」がよくわかる。バブル期に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と舞い上がったことは大いに反省すべきことであるが、羹に懲りて膾を吹くことも無意味だ。
 世界がバブルに浮かれる中で日本だけが「失われた30年」の長いトンネルを抜けてきたことは、これからの「追い風」になる。
 今のような沈滞ムードの中でこそ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と主張したい>(以上「現代ビジネス」より引用)





 大原 浩(国際投資アナリスト)氏は日本経済はこれから「失われた30年」を取戻すと予言している。それが彼の論評の「知らないのは日本人だけなのでは、実は日本の評価は「世界一」、世界のマネーが日本に向かってくるぞ!?」という題に現れている。
 バブル期の日経平均は4万円未満だった。そして現在も4万円未満だ。34年間、少しも上がっていない日本の株式は「含み益」の塊だ。だから外国投資家が日本の株式市場へ向かっているのは極めて当然だ。

 来日する外国人観光客が「オーバーツーリズム」を各地の観光地で起きしている。ことに京都では京都市民がバスに乗るのでさえ難儀するほどだ。観光地だけでなく、全国各地で外国人観光客の姿を見るようになった。
 都道府県庁所在地の人口ワースト2の山口市がニューヨークタイムズ紙の「行っておきたい世界の観光地」として取り上げられて、山口市内の変哲もない古い居酒屋が外国人観光客で満席状態だ。市内の一ノ坂川という日本のどの町にもあような整備された川筋に沿った散策道にも外国人観光客が行き交っている。

 日本は34年間、タイムカプセルの中で古き良き日本を培い、磨き上げて来たのかも知れない。それは観光地だけではない。企業もタイムカプセルの中で技術を磨き国際競争力を培ってきた。ただ、それをいかにして世界へ売り出すのか、そうした商社と政府支援がないだけだ。
 たとえば世界的に評判の高い包丁などの刃物にしても、日本国内で一丁一万円は高額だが、円安の現在では輸出すれば外国ではかなりお買い得な上等品だ。そうした工業日用製品で日本は溢れている。たとえば「百均」の製品を先進諸国へ輸出すれば、輸出する商社もそれなりの利益を上げた上で、現地でもかなり「お買い得」な商品になるはずだ。

 円安の今こそ、日本が輸出で盛り返す絶好機だ。それも従来の輸出産業ではなく、国内消費して来た日用品などが、安く高品質という日本製品というブランドで先進諸国に受け容れられるのではないだろうか。
 現在、たとえばラーメンの価格比較から、日本国内は「安すぎる」という議論がある。通貨価値からいえばそうなのだろうが、為替相場が「異常な円安」に触れているというのが実態だが、そうしたことに経済専門家たちも気付いていない。本来なら円相場は1ドル70円くらいが相当だと思われるが、現在の為替相場や株式相場は「投機市場」化して、投資ゲームの場に成り下がっている。だから円安に張る投資家が多ければそうなるだけで、現在の円安為替相場は貨幣価値を公平に評価したものになっていない。だからこそ、今がチャンスなのだ。


<私事ながら>
この度、歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにクラウドファンディングをはじめました。既に電子版では公開していますが、紙媒体でも残しておきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」を読みたい方はこちらをクリックして下さい。

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