評論家たちが何と言おうと、ゴーン氏の「脱税」は逮捕されるべき案件だ。
ゴーン氏が逮捕されて、さっそく御用評論家のような御仁が出現して「ゴーン氏は無罪だ」と主張している。しかし、誰がなんと言おうと「50億円に達する脱税」は逮捕相当の罪状だ。 ゴーン氏を庇う論調は「50億円は退職金として支払われるもので、現在はゴーン氏に支払われていない」だから「脱税の事実はないし、逮捕されるいわれもない」という論理のようだ。そうした論評を会計学の専門家と称する自称する者が掲げているのには驚く。 もとより、企業会計原則は「発生主義」を採っている。役員の退職金は過年度の業績に応じて支払われる「特別損益」欄に記載される事項だ。だから一般労働者に支払われる退職金は供与総額の一定割合を乗じた「退職給与引当金」として損金算入して積み立てられる。 その一方、ゴーン氏の場合は「役員報酬総額」として株主総会で決議された範囲内で「ゴーン氏への退職金として積み立てた」というものだ。その額が約50億円。それらは既に各年度の会計処理上で損金算入されている。つまり発生主義会計では「支払い済み」報酬の預かり金に過ぎない。 ゴーン氏は退職金として積み立てた金額に対しても「所得税」を支払うべきだった。そうしないのなら「退職金の積み立て」を行わず、退職時に一括して企業の特別損金として処理した退職金を支払えば良かった。それらは当然株主総会の議題となり、株主総会の議決を経なければならないのはいうまでもない。 もとより役員報酬も役員退職金も企業利益処分の一環だ。そこが労働者給与とは根本的に異なる。労働者給与は経費だが、役員報酬や賞与や退職金は「利益処分」の概念だ。利益がなければ当然大幅減額される。 ゴーン氏は退職金を「先取り」会計処理した。そしてそれに対する税金を支払っていない。有価証券報告書にも記載されてない、ということはどのようにして誤魔化したのかに関心が集まる。最終企業収支の帳尻を合わせなければ、会社発表の利益と有価証券報告書の利益とが異なることになる。 その帳尻合わせのために、何らかの誤魔化しをしているはずだ。だから有価証券報告書の虚偽記載は一ヶ所ではない。当然、他の役員も知らなかったでは済まないし、監査法人の監査は節穴だったと万天下に晒すことになる。