世界は「一帯一路」を掲げる中国の欺瞞に気付いている。

パキスタン南部カラチで23日、武装集団が中国総領事館を襲撃し、地元警察によると、警官2人と総領事館を訪れていたパキスタン人2人の計4人が死亡した。襲撃犯3人は治安部隊に殺害され、職員にけがはなかったという。
 南西部バルチスタン州の反政府武装組織「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出し、「バルチスタンでの中国の拡張主義を許さないことを明確にするための攻撃だ。中国が出て行かなければ、攻撃を続ける」と警告した。カーン首相は事件の徹底捜査を命じた。
 パキスタンでは、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、道路や鉄道などを整備する「中国・パキスタン経済回廊」の関連事業が本格化し、国内で中国人が急増している。
 今回の襲撃について、中国外務省の耿爽グォンシュアン副報道局長は23日の定例記者会見で、「外交公館に対する襲撃行為を強く非難する」と述べた。また、「中国・パキスタン経済回廊」については、「両国の発展に重要な意味を持ち、双方の国民の広い支持を受けている」と強調した>(以上「読売新聞」より引用)


 習近平氏が進める「一帯一路」構想は単なる経済開発ではなく中国の軍事支配の拡大という側面の方が強い、ということが東南アジアのみならずアフリカ諸国にまで認識されているようだ。
 習近平氏はアフリカ諸国に6兆円に達する経済投資する用意があることを表明したばかりだが、レアメタル開発としてケニアの首都ナイロビを足場としてアフリカ内部にも浸透している。

 しかし習近平氏の短兵急な「中国の軍拡」は世界各地で相次ぐ反発を招いている。マレーシアの首相に返り咲いたマハティール氏もラオスを通ってマレー半島を南下する高速鉄道の敷設に対して「中止」を表明している。
 その前にインドネシアの日本と入札を争って獲得した高速鉄道事業も頓挫したままだ。しかしスリランカやモルディブなどでは港湾や空港の施設整備の大規模投資を中国が受注し、国家予算の半分に達するほどの元借款(巨額貸しつけ)を行い、その返済が滞るや街金さながらに援助して完成した施設の占有利用権(実質的な租借・割譲)を強引に奪い取っている。

 そうした中国・習近平氏のやり方に東南アジア諸国やアフリカ諸国の多くが嫌悪感と同時に国家主権が危うくなると危惧しているのも確かだ。しかし今回のパキスタンの中国総領事襲撃事件はこれまでとは異なる背景があるような気がする。
 パキスタンはいうまでもなくイスラム教の国だ。同時に米国が資金援助して隣国アフガニスタンのアルカイダ後方支援地と化すのを阻止している。米国としてはパキスタンが中国の影響下に組み込まれるのはアフガンに対するアルカイダ軍事制圧戦略が瓦解しかねない。それと同時にイスラム諸国はイスラム教徒の新疆ウィグル族を弾圧している中国に対する反感も強い。

 今回のパキスタン中国総領事館襲撃事件に対して南西部バルチスタン州の反政府武装組織「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出しているようだが、単純な反政府行動だと見るのは皮相に過ぎるのではないだろうか。
 指摘するまでもなく、「~スタン」と名の付く国はイスラム教徒の国だ。中国が現代のシルクロードとして中央アジアに「一帯一路」構想を持ち込んでユーラシア大陸横断高速鉄道を敷設しているが、その経由国のモンゴルはまだしも、ウルムチやキルギスやタジキスタンなどはイスラム教徒の地域だ。宗教弾圧を行って現代中国の一神教・中国共産党を信仰せよと支配地域に強制するやり方をイスラム教徒がいつまでも容認するとは思えない。

 非民主国家中国が世界の民主国家が創り上げたWTOの制度を利用して大きな果実を得たが、非民主国家なるが故の「独裁制度」の危険性が習近平氏など政権首脳部に分かっていないようだ。
 世界は中国が利用するためにあるもの、と考えているなら大しっぺ返しにあうだろう。たとえ弱小国と雖も国家存立を脅かされるなら、国民は国家のために立ち上がる。アジア・アフリカ諸国は欧米列強の数百年にわたる過酷な植民地から独立して半世紀ばかり経過しただけだ。彼らの記憶に植民地当時の悲惨な歴史は深く刻まれている。

 遅れて来た帝国主義者として、中国がかつての欧米列強に成り代わってアジア・アフリカに君臨しようとでも考えているなら飛んでもない反撃にあうだろう。WTOは非人道的な植民地支配の免罪と、二度にわたる世界大戦を教訓として創設した自由で平等な貿易(国家同士の付き合い方のガイドライン)を取り決めた「約束事」だ。そのWTOの精神を踏み躙るような独善的な「一帯一路」と中国の軍拡戦略は世界のどの国からも賛同を勝ち得ないだろう。

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