アメリカの同盟国が、米国からの自立(独立)を模索する
<フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、6月22日付けの同紙論説‘America’s allies look to declare independence from the US’において、米国の同盟国等は米国からの経済的自立の道を模索、米国の「スイッチを切る」(恣意的に輸出や供給を停止したり制限する)力による経済戦争に備えようとしているが、「残念ながら」それがトランプの作り出した世界だとして、米国の同盟国等にとり、今、対米自立を模索することと自国の経済武器を見つけることが必要になっている旨述べている。
ラックマンは、論説の結論で、「世界の民主主義諸国が、互いに対する潜在的な経済戦争に備えなければならない状況に置かれているのは、実に残念なことだ。しかし、それこそがトランプが作り出した世界なのである」と言う。今の歪な時代状況を鋭く捉えている。これは、今年のベスト論評のひとつかもしれない。
ラックマンは、①多くの国々が、米国からの経済自立を強めようと努めている(最近ではAIモデルへの外国アクセス制限)、②米国による「スイッチを切る力」への懸念はAIだけに留まらず、欧州諸国は米製兵器への依存を改めて痛感した、③インドは「トランプ要因」のためにフランス製戦闘機の購入を決断した、④米国からの完全独立ではなく、対米経済依存の緩和は可能かもしれない、⑤欧州連合(EU)と環太平洋連携協定(TPP)は「ブロック対ブロック」の合意について協議を開始、インドもTPP参加に関心、「EU、インド、日英を含み、中国と米国を除外した中堅国による自由貿易圏が実現すれば、一定の影響力を持つ可能性はある」、⑥もうひとつの戦略として、「いざという時に備えて、自国独自の経済的な「武器」を見つける必要がある」(インドはジェネリック医薬品か、カナダは肥料の原料(ポタッシュ)か、欧州はASMLの半導体製造技術やウラン、タービンか)と主張する。
二期目として登場したトランプ氏は特別関税を世界中の国々に課したり、ベネズエラに電撃攻撃して大統領夫妻の身柄を拘束して米国ー連行したれ、そしてイランにイスラエルと共同して「斬首作戦」を強行して、世界秩序を大混乱に陥れてきた。「世界をトランプ以前に戻すため、日本が主導的に取り組むべきこと、トランプの作り出した世界を捉えたベストな論評とは?」との論評が出るくらい、トランプ氏によって世界中が搔き回されて混乱している。
ラックマンは、論説の結論で、「世界の民主主義諸国が、互いに対する潜在的な経済戦争に備えなければならない状況に置かれているのは、実に残念なことだ。しかし、それこそがトランプが作り出した世界なのである」と言う。今の歪な時代状況を鋭く捉えている。これは、今年のベスト論評のひとつかもしれない。
ラックマンは、①多くの国々が、米国からの経済自立を強めようと努めている(最近ではAIモデルへの外国アクセス制限)、②米国による「スイッチを切る力」への懸念はAIだけに留まらず、欧州諸国は米製兵器への依存を改めて痛感した、③インドは「トランプ要因」のためにフランス製戦闘機の購入を決断した、④米国からの完全独立ではなく、対米経済依存の緩和は可能かもしれない、⑤欧州連合(EU)と環太平洋連携協定(TPP)は「ブロック対ブロック」の合意について協議を開始、インドもTPP参加に関心、「EU、インド、日英を含み、中国と米国を除外した中堅国による自由貿易圏が実現すれば、一定の影響力を持つ可能性はある」、⑥もうひとつの戦略として、「いざという時に備えて、自国独自の経済的な「武器」を見つける必要がある」(インドはジェネリック医薬品か、カナダは肥料の原料(ポタッシュ)か、欧州はASMLの半導体製造技術やウラン、タービンか)と主張する。
◇安全保障にも影響
問題は、経済を超えて、安全保障にも及ぶ。6月上旬、フランス、ドイツ、スペインは、過去9年進めていた次世代戦闘機(FCAS)の共同開発の中止を首脳会議で合意した。
中心の要因は、独仏企業間で「作業分担や主導権」をめぐる対立が解消できなかったことだ。防衛概念の不一致もあったという(仏は、原子力空母で運用できる艦上機が必要)。
ドイツの日英伊共同開発(GCAP)への合流論も取り沙汰されている。他方、フランスは非常に難しい選択に直面しているようだ。帰趨はいまだ分からない。
相互依存の裏側には、脆弱性がある。もう40年以上前、著名な国際政治学者のジョゼフ・ナイとロバート・コヘインが相互依存の時代を議論していた時から分かっていたことである。
脆弱性の武器化を抑えてきたのは、70年代の石油危機の経験とそれは誰の利益にもならないという当時から今日までの世界の主要国とその指導者達の見識と自制だった。それを破ったのは、トランプだ。トランプの歴史的失政である。
トランプの対中関税攻撃は、中国の重要鉱物の対米輸出規制報復によって、完全に無力化された。なぜ、それを予見できなかったのか、不思議だ。
トランプは裸にされた。そして、中国は、ここ数年米国が対中競争でやってきたことを真似ている。特定「物資」の輸出規制や特定「企業」への取引規制(エンティティ・リスト)の政策だ。
6月29日にも、中国は日本の特定企業を中国の規制リストに掲上した。トランプは、中国に悪い先例ばかりを教えている。武力の一方的行使の他、ホルムズ海峡の問題も、米が海峡封鎖をし、イランがそれに封鎖で対抗、今やホルムズ海峡のこれまでのレジーム(何世紀にも亘って築き上げた)が維持できるかどうかに跳ね返ってきている。
問題は、経済を超えて、安全保障にも及ぶ。6月上旬、フランス、ドイツ、スペインは、過去9年進めていた次世代戦闘機(FCAS)の共同開発の中止を首脳会議で合意した。
中心の要因は、独仏企業間で「作業分担や主導権」をめぐる対立が解消できなかったことだ。防衛概念の不一致もあったという(仏は、原子力空母で運用できる艦上機が必要)。
ドイツの日英伊共同開発(GCAP)への合流論も取り沙汰されている。他方、フランスは非常に難しい選択に直面しているようだ。帰趨はいまだ分からない。
相互依存の裏側には、脆弱性がある。もう40年以上前、著名な国際政治学者のジョゼフ・ナイとロバート・コヘインが相互依存の時代を議論していた時から分かっていたことである。
脆弱性の武器化を抑えてきたのは、70年代の石油危機の経験とそれは誰の利益にもならないという当時から今日までの世界の主要国とその指導者達の見識と自制だった。それを破ったのは、トランプだ。トランプの歴史的失政である。
トランプの対中関税攻撃は、中国の重要鉱物の対米輸出規制報復によって、完全に無力化された。なぜ、それを予見できなかったのか、不思議だ。
トランプは裸にされた。そして、中国は、ここ数年米国が対中競争でやってきたことを真似ている。特定「物資」の輸出規制や特定「企業」への取引規制(エンティティ・リスト)の政策だ。
6月29日にも、中国は日本の特定企業を中国の規制リストに掲上した。トランプは、中国に悪い先例ばかりを教えている。武力の一方的行使の他、ホルムズ海峡の問題も、米が海峡封鎖をし、イランがそれに封鎖で対抗、今やホルムズ海峡のこれまでのレジーム(何世紀にも亘って築き上げた)が維持できるかどうかに跳ね返ってきている。
◇日本が主導すべきこと
ポスト・トランプに至れば、国際秩序の規範と遵守、多国間主義の原則を取り戻すことが不可欠だ。せめて、世界をトランプ以前に戻す必要がある。
少なくとも、世界を以前より悪くしてはならない。そして、世界の大きな流れはそれを新たな現実として直視し、それをコントロールし、新しい時代をリードしていくべきだ。ポスト・トランプの時に、まずなすべきことは、中国を含めて、トランプ時代の間違いを元に戻す(ロールバック)ことを宣言、確認することではないだろうか。
ラックマンは、EUのTPP参加の可能性につき、「ブロック対ブロック」連携として注目する。日本は、それを主導すべきである。>(以上「Wedge」より引用)
ポスト・トランプに至れば、国際秩序の規範と遵守、多国間主義の原則を取り戻すことが不可欠だ。せめて、世界をトランプ以前に戻す必要がある。
少なくとも、世界を以前より悪くしてはならない。そして、世界の大きな流れはそれを新たな現実として直視し、それをコントロールし、新しい時代をリードしていくべきだ。ポスト・トランプの時に、まずなすべきことは、中国を含めて、トランプ時代の間違いを元に戻す(ロールバック)ことを宣言、確認することではないだろうか。
ラックマンは、EUのTPP参加の可能性につき、「ブロック対ブロック」連携として注目する。日本は、それを主導すべきである。>(以上「Wedge」より引用)
二期目として登場したトランプ氏は特別関税を世界中の国々に課したり、ベネズエラに電撃攻撃して大統領夫妻の身柄を拘束して米国ー連行したれ、そしてイランにイスラエルと共同して「斬首作戦」を強行して、世界秩序を大混乱に陥れてきた。「世界をトランプ以前に戻すため、日本が主導的に取り組むべきこと、トランプの作り出した世界を捉えたベストな論評とは?」との論評が出るくらい、トランプ氏によって世界中が搔き回されて混乱している。
その混乱を鎮めるために岡崎研究所が一つの処方箋を提起した。それが引用文中に「日本が主導的に取り組むべきこと」として書かれている。
フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが6月22日付け同紙に掲載した論説の題「America’s allies look to declare independence from the US(アメリカの同盟国が、米国からの自立(独立)を模索する)」からして刺激的だ。しかし同盟国が米国からの独立を模索せざるを得なくしたのは他ならぬトランプ氏ではないか。
トランプ氏はNATOに対して「米国を当てにするな」と繰り返し恫喝している。米国を当てにするならコストを支払え、と公然と発言する米国大統領はトランプ氏が初だ。それに対してラックマン氏は引用文中に6項目の対米自立の処方箋を示している。
もちろん日本も6項目の処方箋に沿った対米自立を果たすべく動いている。いや日本にとってはむしろ米国の同盟国に対する「縁切り」発言は歓迎すべきかも知れない。なぜなら以前は日本が力を様々な分野で対米自立しようとすると、米国が圧力を掛けて日本の勃興を圧殺してきた。数々の「構造協議」と称する繊維や造船や半導体などの産業解体やwindowsの強制使用など、どれほど日本経済成長の芽を摘み取ってきたことだろうか。
そしてトランプ関税を発動したが、それに対して日本政府はデジタル取引の対米赤字を度外視している。仏国などはデジタル取引に税金を掛けようとしているが、日本政府はまだ政府内部の論議すら行われていない。
対米デジタル関連取引(デジタル関連サービス貿易)は、主に米国巨大プラットフォーマーへのサービス利用料支払いだ。googleやamazonなどの利用サービス料は年間451億ドル(約6.7兆円規模)の赤字を計上している。この赤字は日本のサービス赤字の最大の要因であり、米国製AIが日本に浸透している現在、今後とも拡大する傾向にある。
もちろん日本国内の各企業も日本製AI設立にむけて開発と準備を行っている。ただ膨大なデータを蓄積しているgoogleの存在を無視して日本製AI開発は出来ないため、その提携関係をいかになすべきか苦慮している。それは欧州諸製AI開発に於いても同様で、たとえばWikipediaをデータとしてAIに学習させる際の「知的財産取引」をどのように価格評価すべきか悩ましいところだ。
岡崎研究所が最終章で「日本が主導すべきこと」と表題を掲げているが、トランプ氏は間もなくホワイトハウスから去る。長くても二年半だが現在のトランプ氏の支持率を見ると(ロイター通信 / イプソス調査によると支持率は約34%〜36%と低迷している)、早ければ今年11月の中間選挙で大敗して、レイムダックに陥る可能性が充分にある。
しかしトランプ氏がホワイトハウスから去っても、トランプ氏以前の世界に戻ることはない。既に同盟国の対米自立の動きは起きていて、その流れは決して止まらないだろう。ことに日本は次世代戦闘機の日・英・伊三ヶ国共同開発で主導的立場にあり、炭素カーボン一体成型機体という新技術と、エンジン開発で成果を積み重ねている。もはや米国による日本に対する戦闘機開発抑制策に甘んじることはない。また新世代半導体製造に関しても、米国の開発力を遥かに凌駕している。各種防衛兵器の開発は今さら言及するまでもない。それに対して米海軍艦艇の建造は日本で行っているように、米国の多くの製造業は米国が金融取引に熱中している間にロストテクノロジーになってしまった。
日本のモノ造りは「失われた30年」の間も喪失することなく、匠の技の多くは着実に受け継がれている。それが日本経済成長の基盤となって、再び日本の時代がやって来る。それも極めて近い未来に。