ならず者たちを放置してはならない。
<米軍のイラン攻撃が続く中、イエメンの親イラン反政府組織フーシ派が7月20日、サウジアラビアへの「海上封鎖」を宣言、船舶を攻撃した。イエメン沖のバベルマンデブ海峡は封鎖状態のホルムズ海峡の代替輸送路になっており、日本などへの影響は甚大だ。
トランプ大統領はフーシ派攻撃も辞さない構え。イラン戦争は同派の参戦で「中東大戦争」へ拡大する懸念が高まった。
◇仕掛けたのはサウジ
フーシ派が紅海の「海上封鎖」に踏み切ったのはイランの要請もあっただろうが、直接のきっかけはサウジが7月13日、イエメンの首都サヌアの国際空港滑走路を爆撃したことだ。イラン最高指導者故ハメネイ師の葬儀に出席したフーシ派代表団の航空機の着陸を阻止しようとしたらしい。サウジはこの航空機にイランが供与した武器が積載されていると疑った。
攻撃目標も戦争とテロとでは異なり、戦争が 敵国の軍隊や軍事施設を主な標的とし、政治的・軍事的な勝利を目指すのに対して、テロ行為では 一般市民(ノンコンバットタント)を標的や犠牲にすることが多く、暴力による恐怖で政府や社会の変革を目的とする。
トランプ大統領はフーシ派攻撃も辞さない構え。イラン戦争は同派の参戦で「中東大戦争」へ拡大する懸念が高まった。
◇仕掛けたのはサウジ
フーシ派が紅海の「海上封鎖」に踏み切ったのはイランの要請もあっただろうが、直接のきっかけはサウジが7月13日、イエメンの首都サヌアの国際空港滑走路を爆撃したことだ。イラン最高指導者故ハメネイ師の葬儀に出席したフーシ派代表団の航空機の着陸を阻止しようとしたらしい。サウジはこの航空機にイランが供与した武器が積載されていると疑った。
イスラエル紙によると、航空機はサヌアから行先を紅海沿いのホデイダに変更したが、同機には最大21人のイラン革命防衛隊員らが搭乗、武器類が積載されていた。革命防衛隊員は弾道ミサイルの操作などをフーシ派へ助言する役目を担っていた。同派へのイラン支援が鮮明な証拠と同紙は指摘している。
フーシ派はサウジ南部の空港を攻撃するなど反撃した。サウジは2015年、イエメン内戦に介入、サヌアを占領したフーシ派攻撃に踏み切った。以来、フーシ派と、サウジの支援で樹立された暫定政府との内戦が続いた。22年に停戦が成立したが、実際はフーシ派の後ろ盾であるイランと暫定政府を支援するサウジとの「代理戦争」だった。
フーシ派の「海上封鎖」はサウジだけではなく世界経済にとっても痛い。バベルマンデブ海峡はサウジにとっては封鎖状態にあるホルムズ海峡に代わる原油輸送の重要ルート。日量360万バレルがここを通って主にアジア向けに運ばれる。同派が封鎖を宣言した後、サウジの石油タンカー2隻が攻撃を受けた。
フーシ派の「海上封鎖」はサウジだけではなく世界経済にとっても痛い。バベルマンデブ海峡はサウジにとっては封鎖状態にあるホルムズ海峡に代わる原油輸送の重要ルート。日量360万バレルがここを通って主にアジア向けに運ばれる。同派が封鎖を宣言した後、サウジの石油タンカー2隻が攻撃を受けた。
トランプ大統領は「対処する」としてフーシ派が実力行使に出れば、攻撃する意向を示し、戦線拡大の危険性が高まった。フーシ派はイラン支援の「抵抗の枢軸」の一角で、封鎖宣言の背景にはイランの意向が働いているのは間違いないところ。イスラエルは今回の事態を自国の安全保障上の好機と考えており、混乱に乗じて攻撃に乗り出す可能性もある。
最近明らかになったところでは、イランの攻撃にさらされているクウエートとバーレーンの2カ国がイランへの報復攻撃を行った。これが事実となれば、これまで報復を差し控えてきた2カ国も参戦したことになり、ペルシャ湾全域の交戦激化に発展しかねない。フーシ派とサウジの交戦もあり、戦火が「中東大戦争」に拡大する恐れも現実味を帯びてきた。
◇ムハンマド皇太子を懐柔
こうした中で、米国とサウジが「原子力協力協定」に署名した。サウジの実力者ムハンマド皇太子がかねてより米国に求めてきた原発建設支援を具体化した形だ。
◇ムハンマド皇太子を懐柔
こうした中で、米国とサウジが「原子力協力協定」に署名した。サウジの実力者ムハンマド皇太子がかねてより米国に求めてきた原発建設支援を具体化した形だ。
眼目はサウジ国内でウラン濃縮に道を開く項目が盛り込まれている点だろう。UAEと先に結んだ協定では、ウラン濃縮は認められなかった。
サウジとの協定では米企業がウラン濃縮施設を建設する見通し。原発建設には10年かかるという。サウジ国内での濃縮を認めた今回の協定はイラン戦争を不安視するムハンマド皇太子を懐柔するためだ。皇太子は当初こそ、イラン攻撃を積極的に推したものの、イランから反撃されると、戦争反対に転じた。
しかもトランプ大統領が5月に突然打ち出したホルムズ海峡からの民間船護送計画「プロジェクト・フリーダム」に対し、事前に相談を受けなかった皇太子が激怒、へそを曲げてしまった。大統領はやむなく1日で計画を撤回したが、サウジとの関係は冷却化した。
このため大統領は皇太子の怒りを鎮めようと原子力支援に踏み切った、というのが真相のようだ。しかし、UAEには国内でのウラン濃縮を認めずにサウジだけに許したことで、今度はUAEからの反発を買っている。しかも将来的に核拡散のドミノが起こるリスクもある。大統領は協定調印の条件としてサウジにイスラエルと国交を樹立するよう要求しており、締結されるかは微妙。
◇船舶攻撃のたびに橋、発電所を破壊
しかし、イランの報復で米兵の被害も拡大しており、トランプ大統領の連日の脅しがイランには効いていない。国防総省の発表によると、開戦からこれまでの米兵の死者は18人、負傷者は447人。過去2週間で3人が死亡、約百人が負傷しており、このところのイランの反撃が猛烈なものであることが分かる。
◇船舶攻撃のたびに橋、発電所を破壊
しかし、イランの報復で米兵の被害も拡大しており、トランプ大統領の連日の脅しがイランには効いていない。国防総省の発表によると、開戦からこれまでの米兵の死者は18人、負傷者は447人。過去2週間で3人が死亡、約百人が負傷しており、このところのイランの反撃が猛烈なものであることが分かる。
ヨルダンやイラクなど比較的遠距離の地域での被害が多い。大統領は「イランが米兵1人を殺害すれば何倍も代償を払わせる」「船舶攻撃のたびに橋か発電所を破壊する」などと激しくイラン非難。実際7月11日以降13日連続で攻撃。さらに大規模攻撃を計画しているとし「過去最大の攻撃だ。決断は近い」と恫喝した。
トランプ大統領のイラン戦争へののめり込みは過去の米政権の悪夢を思い起こさせる。アフガンでは侵攻した米軍がイスラム組織タリバン政権を打倒したが、「20年」という最長の戦争になった。結局タリバン掃討はできず、米兵の戦死者は7000人を超えた。イラク戦争でも約9年間で4000人を超す戦死者を出し、過激派組織イスラム国(IS)の台頭を許した。
◇耐久戦も限界に
だが、耐久戦の決意があらわなイランだが、国民を苦しめる経済的な困窮は限界に近づいているのも事実だ。同紙によると、最近、学者や政治家、労組、聖職者ら著名なイラン人268人が「戦争反対」の嘆願書に署名したという。
だが、耐久戦の決意があらわなイランだが、国民を苦しめる経済的な困窮は限界に近づいているのも事実だ。同紙によると、最近、学者や政治家、労組、聖職者ら著名なイラン人268人が「戦争反対」の嘆願書に署名したという。
イスラム政権の厳しい弾圧政策の中で、戦争に異議を唱えるのは危険な行為だ。米国の海上封鎖で輸出入ができず、切羽詰まった末の行動だったろう。
しかし、最高指導者モジタバ師は最近の声明で「忘れられない教訓を米国に与える」と強気の姿勢を強調。ガリバフ国会議長も「われわれが石油を売れないなら誰も売ることはできない」と徹底抗戦の構えだ。仲介役のカタールが「10日間の停戦」提案を打診しているが、米イランとも応じる兆候はない。
もう1つ注目されるのはトランプ大統領が最近「ピックアックス山への攻撃」に再三言及していることだ。ピックアックス山は核関連施設がある中部ナタンズ近郊にあり、イランが建設中の新たな核施設といわれる。主要な施設は地下100メートル付近にあり、昨年以降、トンネル補強工事が確認されている。
イスラエルの情報機関によると、イランが昨年6月、米イスラエルに核施設3カ所を攻撃された後、数千基の遠心分離機をここに移設したという。米国が誇る地中貫通弾でも破壊は難しい。イスラエルのネタニヤフ首相は来週訪米し、トランプ大統領と会談する予定だが、ピックアックス山の攻撃を含め、イラン戦争の泥沼の第二幕が上がろうとしている。>(以上「Wedge」より引用)
「フーシ派参戦で「中東大戦争」に拡大も、トランプが過去最大の攻撃へ、耐久戦狙うイランに近づく国民の限界」との見出しには違和感を覚える。従来からロシアのウクライナ侵略戦争が第三次世界大戦になるとか、米軍のイラン攻撃は第三次世界大戦の前触れだ、とする論評がたびたび掲載された。
しかしウクライナ侵略戦争は四年以上経過した現在もロシアの地上軍が侵攻している地域はウクライナ東部地域に限定されたままだ。イランに対する米軍・イスラエル軍の攻撃は続いているが、イランによる中東湾岸諸国への攻撃も限定的だ。第三次世界大戦に移行するような戦線拡大は見られない。
イラン革命防衛隊は戦争を中東全域に広げるために湾岸諸国をミサイルやドローンで攻撃した。手下のフーシ派に呼び掛けてカタールやサウジの船舶攻撃しバブ・エル・マンデブ海峡封鎖を明言した。それに怒ったサウジがフーシ派の拠点を攻撃した。見方によっては戦争拡大だが、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の海賊行為は長年続いていた。今回が初めてのことではない。
もちろんイラン革命防衛隊の手下たちヒズボラやハマスがそれぞれの分担地域でイスラエルを攻撃するのは戦争ではない。テロ行為以外の何物でもない。つまり「ならず者」たちによる暴力破壊行為でしかない。国家の正規軍による「戦争行為」でないことは明らかだ。
戦争とテロ行為の主な違いは、主体とルール、攻撃の対象にある。戦争は国家などの組織同士が公然と戦う行為だが、テロ行為は非合法な組織や個人が恐怖を与えるために行う暴力・破壊行為でしかない。
つまり戦争とは 国家やそれに準ずる組織が公の意思として行う武力行使だ。それには国際法上のルール(戦闘員の身分や捕虜の扱いなど)が存在するが、テロ行為は 主に非国家主体(秘密裏に活動する組織や個人)が行う法や国際ルールを無視した不法な暴力・破壊行為だ。攻撃目標も戦争とテロとでは異なり、戦争が 敵国の軍隊や軍事施設を主な標的とし、政治的・軍事的な勝利を目指すのに対して、テロ行為では 一般市民(ノンコンバットタント)を標的や犠牲にすることが多く、暴力による恐怖で政府や社会の変革を目的とする。
こうした分類に照らしても、ヒズボラやハマスやフーシ派が「テロ集団」であることは明確であり、それらの武力に屈することなどあってはならない。また「テロ集団」を支援してきたイラン革命防衛隊も「テロ支援集団」として、存続を容認してはならない。彼らの組織が機能している限り、中東湾岸諸国に平和は決して訪れない。なぜなら武装集団が武力行使を放棄することなどあり得ないからだ。時として武力を行使して暴力・破壊行為を働かなければ組織が弛緩し解体へと向かうからだ。「テロ集団」が存続するためにはテロ実行が必要条件なのだ。
米軍は一時停戦した。イラン革命政府も米軍と「停戦協議」する用意があることを表明した。しかし、これは何度目の攻撃停止だろうか。たとえ停戦が実現したとしても、「ならず者」たちを放置したままの停戦とは何だろうか。依然として火種は残ることになり、中東の火薬庫は温存されることになる。つかの間の「平和」を得るためにトランプ氏は米空母を中東へ派遣したのだろうか。それではトランプ氏の「軍事作戦」は失敗だったと総括されても仕方ない。