ウクライナ戦争の現実ーーロボットがヒトを殺す戦争。

<ウクライナ軍は7月13日、ロシア軍の占領地域に対する強襲上陸作戦の様子を映した動画を公開した。無人水上艇(USV)が浜辺に乗り上げてランプを下ろし、そこから装軌式ロボットが上陸する。ロボットはその後、操縦士の遠隔操作で、搭載する機関銃を撃ち始める。

 この戦争では、無人システムによる史上初の事例がいくつも生まれてきた。UGVによる初の大型艦撃沈、無人航空機(UAV、ドローン)同士の初の空中戦、ドローンによる初のヘリコプター撃墜、無人車両(UGV)だけの初の突撃作戦など枚挙にいとまがない。今回、またひとつ新たな「初」が加わった。
「この種の戦闘任務は、わたしたちの知る限りこれが世界初です。無人車両が無人海上プラットフォームで敵側の海岸に運び込まれ、わが国の占領地に展開し、戦闘任務を遂行しました」とウクライナ領土防衛隊第123独立領土防衛旅団は報告している。
 ロボットを浜辺に上陸させること自体は、たいしたことではないと思えるかもしれない。しかし、これは一台のロボットにとっては小さな一歩でも、ロボット類にとっては偉大な飛躍になる可能性がある。

◇キンブルン半島をめぐる戦い
 ウクライナ南部のキンブルン半島は全長約40kmの砂地の半島で、付け根の幅は10kmほどあるが、先端部では90mほどまで細くなっている(編集注:この先端部を「キンブルン砂州」[キンブルン砂嘴]と呼ぶ。英訳は"Kinburn Spit"だが、これはキンブルン半島・岬="Kinburn Peninsula"を指して使われることも多い。砂州を含む半島西側はミコライウ州、東側はヘルソン州。報告されている位置情報によると、今回の上陸地点は砂州の根元あたりの北側沿岸)。
 キンブルン半島の一部は黒海生物圏保護区に含まれ、松林やオーク林をはじめとする豊かな植生に覆われている。キンブルン半島はドニプロ・ブーフ河口の入り口を押さえ、西のヘルソン港と北のミコライウ港への航路を支配できる位置にあるため、戦略的にも重要であり、歴史的にも係争地になってきた。
 ロシア軍は2022年6月にキンブルン半島を占領し、塹壕を掘って防備を固めた。キンブルン砂州やその周辺は、ミコライウ州でロシア側がなお支配する最後の地域となっている。半島はレーダーなど各種センサーが配備されているほか、周辺地域へのドローン攻撃や砲撃を行う拠点であり、ロシア側にとっての重要性はきわめて高い。
 キンブルン半島をめぐってはかねて激しい争奪戦が繰り広げられており、ウクライナ軍はドローン攻撃や急襲上陸作戦をたびたび実施してきた。
 2024年8月には、ウクライナの特殊部隊がボートで上陸し、キンブルン要塞を含むロシア軍の要塞化陣地を襲撃した。複数の車両を破壊したあと、ウクライナ国旗を掲げ、その後撤収した。以来、この半島では主としてドローンによる消耗戦が続いているが、6月にはウクライナ側が再び襲撃し、国旗を掲揚している。
 ロシア軍はこれまで、この地域に防御部隊のほか、砲兵部隊やドローン部隊、電子戦部隊、各種センサーの運用要員を置いてきた。合計で数百人規模とみられている。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は6月、ロシア軍がキンブルン砂州から撤退していると伝えたが、実情は不明であり、名目的な部隊が残っている可能性もある。
「敵がこの地域から完全に撤退したと断言するにはまだ時期尚早です」と、ウクライナ海軍の報道官も直近の国旗掲揚作戦後の6月25日、地元メディアのキーウ・インディペンデントに述べている。
 見通しのきく射界を備え、海からしか到達できないような要塞化陣地は、軍事上の古典的な難題だ。このような陣地を攻略するには往々にして大きな人的損害を伴う。
 1944年、ノルマンディー上陸作戦を控えた連合軍も同じ問題に直面した。連合軍は、敵側がまったく予期していない地点への上陸という奇襲に加え、大規模な航空攻撃と艦砲射撃、多種多様な特殊装備、空挺部隊による同時強襲、史上最大規模の水陸両用部隊の投入を組み合わせた作戦を展開した。それでもなお、連合軍の損害は戦死者約4000人を含む1万人超にのぼり、作戦の成功が確実になるまでにしばらく日数もかかった。
 海兵隊員の代わりにロボットを送り込むという選択肢は、こうした状況を大きく変えるものになり得る。

◇ウクライナの戦闘ロボ
 ウクライナはここへきてUGVの生産を拡大している。UGVは車輪または無限軌道を履いて地上を走行する「陸上ドローン」だ。2025年の生産台数は約1万台だったが、政府は2026年には5万台に増やすことを目指している。UGVはウクライナ軍ですでに補給任務や負傷者の後送任務に不可欠な装備になっており、現在は戦闘任務にも使われるようになってきている。
 ウクライナの典型的な戦闘用UGVのひとつであるDevDroid(デブドロイド)製「Droid(ドロイド)TW 12.7」は、四輪バイクほどの大きさで、遠隔制御の旋回式台座に12.7mm機関銃を搭載している。価格は制御装置込みで3万ドル(約490万円)程度とされる。時速6.5kmほどで走行し、運用にあたってはドローンを活用した経路選定がきわめて重要になる。UGVは障害物にぶつかると立ち往生したり、横転したりしやすいからだ。作戦の実施時もドローンが監視し、ドローンの操縦士は障害物や敵目標に関する情報をUGVの操縦士に伝えるほか、上空からの映像をリアルタイムで共有する場合もある。
 ウクライナ陸軍第3独立強襲旅団の部隊指揮官ミコラ・ジンケビッチは、Droidが最前線の陣地を45日間確保し、単独でロシア軍部隊を撃退したと主張している。その陣地に兵士は配置されていなかった。ただ、ロボットは充電と弾薬補給のため、定期的に戻ってきていたという。
 UGVは攻勢作戦にも投入できる。ウクライナ軍は2024年、UGVとドローンを組み合わせた世界初の無人突撃作戦を行った。作戦は成功したが、UGV2台が立ち往生したと報告されている。
 戦闘面でUGVが担う役割をさらに拡大していくことも計画されている。ウクライナ陸軍第3軍団のアンドリー・ビレツィキー司令官は、2026年末までに最前線の歩兵の3分の1をUGVに置き換えたい意向を示している。
 機械は人間に代わって戦うとしても、単独で戦うわけではない。最近公開された動画からは、「遠隔諸兵科連合」とでも呼ぶべき戦術が洗練されてきていることがうかがえる。UGVはそこで、偵察ドローン、爆撃ドローン、FPV(一人称視点)攻撃ドローンと連携して行動している。UGVは前進して敵に反撃を強い、それによって潜伏位置を暴露させ、それから敵の退路を遮断する。その間、ドローンは精密攻撃を加え、敵陣地を撃破していく。

◇“有袋ドローン”の進化
 あるドローンが別のドローンを抱えて運ぶ“有袋ドローン”というコンセンプトは、この戦争で重要な新しい能力として登場した。こうしたシステムのいくつかは、FPVドローンの航続距離という制約を克服するために考案されたものだ。比較的大型のドローンやUGV、USVにFPVドローンを搭載し、目標近くまで運び込んでから発進させるという、空、陸、海で“ミニ空母”のような役割を果たす。米海軍も過去にこうしたプロジェクトを数多く実験している。
 今回の作戦ではUSVが、UGVを揚陸させる上陸用舟艇の役割を担った。ウクライナは現状、有人艦艇の海軍戦力をほとんど保有しない一方で、多種多様なUSVからなり、非常に成功している無人艇隊を運用している。軍事アナリストのH・I・サットンはウクライナのUSVを20種類以上カタログ化しているが、まだ確認されていないタイプがほかにも存在する可能性もある。
 この上陸は、概念実証を兼ねた作戦であると同時に、実戦において有益な目的も果たしたように見える。抵抗の程度を確認するために兵士による新たな襲撃を行えば、人命が危険にさらされていただろう。消耗可能な機械を使えばそうした危険性がなく、うまくいかなかった場合に機械を回収する必要もない。
 UGVは抵抗に遭わなければ、浜辺から内陸へ安全な進路を切り開いていくことができる。もし途中で、偵察ドローンで発見できなかった地雷やブービートラップ(偽装爆弾)で損傷したとしても、大きな損失ではない。また、ロシア軍との銃撃戦になれば、それはそれで好都合だろう。人的損害が出るとしてもそれはロシア軍側であり、交戦になればドローンでロシア兵らを攻撃することも可能だからだ。
 こうした強襲上陸作戦は今後、より迅速で洗練され、規模も大きくなっていくと見込まれる。従来のような「成功か失敗か」の一度きりの大規模強襲である必要はなく、偵察や攪乱、あるいは別の上陸作戦から敵の注意をそらす陽動として実施されることも考えられる。その際、UGVなど機械の損失は織り込み済みで作戦が立案されるだろう。
 わたしたちが目にしたのは、歴史のごく小さな一コマだったのかもしれない。だがそれは、まずロボットが先陣を切り、敵が無力化されて安全が確保されてから初めて人間が上陸するという、将来の強襲上陸作戦の姿を予告するものだった可能性もある。>(以上「Forbes」より引用)




 実際に動画で見ると玩具のような揚陸艇でありミニ自走砲だが「史上初、ウクライナ軍がロボットによる強襲上陸作戦を実施」との見出しを見ると、戦争の現実に引き戻される。それらは決して玩具ではなく、標的にしているのは敵兵というヒトなのだ。ロボットがヒトを殺す戦争が具体的に目の前に出現した。
 いや殺人機械が登場するのは史上初の事ではない。先の大戦から巨大な爆発装置がヒトを無差別に一地域全員を殺害する兵器が登場している。ただ個別的な殺害でなかったため、巨大な爆発装置を使った国が「使用の正当化」などをしているだけだ。

 ウクライナ戦争は戦争のステージを一段階進めた。非対称戦はベトナム戦争に代表されるゲリラ戦が専らだった。しかしウクライナ戦では以前のような人が人を殺害する戦争ではなく、ドローンに殺人を託して前線へ投入する戦争に変化した。しかし迫撃弾の代わりに精密追跡装置を積載した自立型殺人兵器が登場しただけではある。人を殺害することに何ら変わりない。
 人を殺害する戦争の本質は何も変わっていない。戦争を国際法で「犯罪行為」と認定して、殺人事件の一つとして戦争を指揮した責任者に国際的な処罰を与える仕組みに世界を変えない限り、戦争は絶えないだろう。

 前線に投入されたロシア兵の平均寿命は30分だという。戦場の空に滞空する監視ドローンが敵兵を発見すると自爆ドローンが攻撃して殺害するという。その間、わずか30分だという。
 ロシア軍も電波妨害などの強力なジャミングを実施しているが、それは同時にロシア軍の通信やドローン兵器をも無力化する。だからひたすら塹壕に蹲っているだけだという。

 無益にして無残な戦争をいつまでプーチンは続けるつもりなのか。ロシア国民はどれほど隣人や親族が無益な戦場で消耗されれば気が済むのだろうか。ロシアの物価は、ウクライナ侵攻(2022年2月)直後の急騰と、その後の戦時経済下での持続的なインフレにより、戦前から約50〜90%近く高騰しているという。戦争需要による一時的な戦時好況は去って、ロシア市民は物資不足による物価高騰に直面している。
 ウクライナが爆撃目標をロシア内陸の石油インフラに移したため、モスクワではガソリンなどが極端に不足している。一度の給油は30lに制限され、ガソリンスタンドには給油を待つ自動車が列をなしているという。

 何のための戦争なのか。誰のための戦争なのか。戦争で誰が利益を得るというのか。誰が得して、誰が損する、というのか。実にバカバカしい領土争いのために、多くの人々が死傷するとは、なんとも愚かな行為ではないだろうか。21世紀になっても、人類はいかほども進歩していない。ローマ帝国当時と比べて、人類はどれほど進歩したというのか。
 国際紛争に対して無力な国連にどれほどの価値があるのか、実に疑わしい。また侵略戦争当事国が安保理常任理事国とは、なにかのジョークかと思わざるを得ない。そろそろ人類は戦争を確実に抑止する国際組織を持つべきではないか。そのために、日本は強力な防衛兵器を開発して「中堅国連合」を組織すべきではないか。

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