消費税は廃止して、国民に金を戻すべきだ。
<◇食料品の消費税は「1%」へ
自民党と日本維新の会は2026年2月の衆院選で、食料品の消費税を2年間ゼロにすることを公約に掲げた。しかし、実際にはゼロではなく、1%になるようだ。
理由は、税率をゼロにするとレジシステムの改修に1年ほどかかる一方、1%ならおおむね半年以内に対応できるからだという。
ゼロがインドで発見されたのは1500年も前のことである。それなのに、いまの日本で税率をゼロにすることがそれほど難しいとは、日本のデジタル力はあまりにお粗末だと言うしかない。
日本のデジタル力の再建には真剣に取り組んでほしいが、経済政策として考えれば、ゼロでも1%でも大した違いはない。
現在8%の食料品の消費税をゼロにするための財政コストは、約5兆円とされている。税率を7%分だけ引き下げて1%にするのであれば、コストは5兆円×7÷8で約4.4兆円となり、0.6兆円の余裕が生まれる。
食料品を1%にすると、10%の外食との税率差が広がり、外食産業に打撃を与えるという議論がある。であれば、この0.6兆円を外食産業への支援に使えばよい。
これで食料品の消費税減税をめぐる実務上の問題は、おおむね片付く。
しかし、より重要な問題は何も片付いていない。
食料品の消費税を下げれば、本当に食品価格は低下するのか。国民の実質所得は増え、暮らしは楽になるのか。それは公平な政策なのか。
さらに、5兆円規模の減税によって、ただでさえ危機的だといわれる財政赤字が拡大し、財政不安から金利が上昇し、かえって日本経済を不況にしてしまうのではないか。
これらの問題を考えなければならない。
◇「すべての減税は善である」
消費税減税を、あたかも悪いことであるかのように論じる人がいる。特に、食料品の消費税を1%へ引き下げる案に対しては、メディアでも批判的な議論が少なくない。
しかし、すべての減税は善である。
政府が民から取り上げたお金を民に返すことは、すべて良いことである。
そう考えると、もっとも喫緊の課題は食料品の消費税減税ではなく、ブラケット・クリープの是正ではないか、という批判があるだろう。
ブラケット・クリープとは、インフレによって名目所得が増え、実質所得は増えていないにもかかわらず、累進税率のより高い階層に移り、所得税負担が増えることである。
その通りである。
隠れ増税は不純である。
名目GDPが1%増えたとき、世界の先進国では税収が1%程度しか増えないのに、日本では2.4%も増える(原田泰『日本人の賃金を上げる唯一の方法』197頁、図4-3-2、PHP新書 参照)。
先進国はどの国でも累進課税を採用している。したがって、名目所得が増えれば、ブラケット・クリープによって、所得の伸び以上に税収が増えるはずである。
それにもかかわらず、海外の先進国では、税収が名目所得と同じ程度しか増えていない。これは、ブラケット・クリープが起きないように、各国が税率や課税区分を修正しているからである。
日本だけが、こうした修正をせず、隠れ増税を続けている。
◇日本の食料品は高い
しかも、隠れ増税を解消するために必要な減税額は、年間0.5兆円程度にすぎない。是正は十分に可能である。
さらに、食料品の消費税を下げるより、社会保険料の「年収の壁」を是正し、労働意欲を阻害する仕組みをなくす方が先ではないか、という議論もあるだろう。
もちろん、そうだ。
労働意欲を阻害する税や社会保険料の仕組みは、税制に求められる公平、中立、簡素の原則に反している。
この問題は、給付付き税額控除によって是正されることになっている。
ところが、政府は制度設計が難しいとして、今後2年間をかけて議論し、2029年度から導入するとしている。
では、その間は何もしなくてよいのか。
この問いに答えなければならない。
そう考えると、食料品の消費税減税は、少なくとも二つの理由から望ましい。
第1に、所得水準の低い人ほど、消費支出に占める食料品支出の割合、すなわちエンゲル係数が高い。
食料品の消費税を下げれば、所得の低い人ほど、相対的に大きな恩恵を受ける。つまり、低所得者により多くの税金を返すことになる。
消費税減税よりも、給付付き税額控除の方が優れた制度だという反論はあるだろう。しかし、政府自身が導入までに2年かかると言っているのだから、仕方がない。
いま存在しない理想的な制度を前提に、食料品の消費税減税は望ましくないと批判しても意味がない。
第2に、日本の食料品価格は高い。外食は安いが、食料品は高いのである。OECDによれば、日本の食料品価格は国際的な水準より2割ほど高いという(※1)。
これに対しても、本来行うべき政策は、日本の農業を効率化し、農産物の輸入を自由化することだという批判があるだろう。
しかし、繰り返して言うが、実現できない理想的な政策を前提に、いま実行できる消費税減税を批判するのは誤りである。
しかも、食料品にかかる付加価値税をゼロにしている国は少なくない。
イギリス、カナダ、オーストラリア、アイルランド、イスラエル、メキシコ、韓国、台湾、インドネシア、フィリピンなどはゼロで、トルコは1%である。
トルコがなぜゼロではなく1%なのかは分からないが、まさかレジの改修能力が低いからではないだろう。
◇本当に物価は下がるのか
もっとも、消費税を下げても、その分だけ物価が下がるとは限らない、という議論がある。
実際、ドイツでは2020年下期に、付加価値税を19%から16%へ3%ポイント引き下げたが、物価は1.3%しか低下しなかったという。
フィンランドでは2007年、理髪サービスに対する付加価値税を22%から8%へ14%ポイント引き下げた。しかし、価格の低下は、その半分の7%程度にとどまった(※2)。
アルゼンチンでも2019年、一部の食品の付加価値税率を21%からゼロへ引き下げたが、価格は9.3%しか低下しなかった(※3)。
つまり、多くの国では、税率を下げても、価格は減税分の半分程度しか下がらなかったのである。
一方、ポルトガルでは2023年、食料品の付加価値税を6%からゼロへ引き下げたところ、価格は5.66%低下した。
ほぼ減税分のすべてが価格に反映されたことになる。これは、消費者団体やメディアによる厳しい価格監視があったからだとされている(※4)。
日本では、これまで消費税を引き上げた際、ほぼ増税分だけ物価が上昇してきた。一方、海外の研究の多くは、税率を下げても、減税分ほどには物価が下がらないことを示している。
日本でどうなるかは、実際に下げてみなければ分からない。
ただし、日本はポルトガルに近い国なのではないか。
◇お金が民に戻される
減税後には、店頭価格が減税幅に見合って下がっているかどうかについて、消費者やメディアの厳しい目が向けられるだろう。そうなれば、減税分の100%近くが価格に反映される可能性がある。
また、仮に価格が減税分だけ下がらなかったとしても、私は構わないと思う。
価格に反映されなかった分は、事業者の利益になるからだ。
だから、すべての減税は善である。政府が民から取り上げたお金が、民に戻されるだけである。
その民が消費者であることが望ましいのは言うまでもない。しかし、私たちが日常的に利用し、暮らしを便利にしてくれている店に戻ったとしても、何が悪いのだろうか。
民のお金が民に戻る。それは、必ず良いことである。
しかし、民にお金を返すことが良いとしても、もう一つ大きな問題が残っている。
ただでさえ巨額の債務を抱える日本で、5兆円規模の減税を行って、本当に財政は大丈夫なのか。財政不安から金利が急騰し、円安と物価高がさらに進むことはないのか。>(以上「現代ビジネス」より引用)
「食料品の消費税が「1%」へ…!「すべての減税は善である」―日銀元審議委員が減税を批判するメディアに反論します!」と題して原田 泰(名古屋商科大学ビジネススクール教授 元日本銀行政策委員会審議委員)氏が論評を発表した。一読して、全く同感だ。
自民党と日本維新の会は2026年2月の衆院選で、食料品の消費税を2年間ゼロにすることを公約に掲げた。しかし、実際にはゼロではなく、1%になるようだ。
理由は、税率をゼロにするとレジシステムの改修に1年ほどかかる一方、1%ならおおむね半年以内に対応できるからだという。
ゼロがインドで発見されたのは1500年も前のことである。それなのに、いまの日本で税率をゼロにすることがそれほど難しいとは、日本のデジタル力はあまりにお粗末だと言うしかない。
日本のデジタル力の再建には真剣に取り組んでほしいが、経済政策として考えれば、ゼロでも1%でも大した違いはない。
現在8%の食料品の消費税をゼロにするための財政コストは、約5兆円とされている。税率を7%分だけ引き下げて1%にするのであれば、コストは5兆円×7÷8で約4.4兆円となり、0.6兆円の余裕が生まれる。
食料品を1%にすると、10%の外食との税率差が広がり、外食産業に打撃を与えるという議論がある。であれば、この0.6兆円を外食産業への支援に使えばよい。
これで食料品の消費税減税をめぐる実務上の問題は、おおむね片付く。
しかし、より重要な問題は何も片付いていない。
食料品の消費税を下げれば、本当に食品価格は低下するのか。国民の実質所得は増え、暮らしは楽になるのか。それは公平な政策なのか。
さらに、5兆円規模の減税によって、ただでさえ危機的だといわれる財政赤字が拡大し、財政不安から金利が上昇し、かえって日本経済を不況にしてしまうのではないか。
これらの問題を考えなければならない。
◇「すべての減税は善である」
消費税減税を、あたかも悪いことであるかのように論じる人がいる。特に、食料品の消費税を1%へ引き下げる案に対しては、メディアでも批判的な議論が少なくない。
しかし、すべての減税は善である。
政府が民から取り上げたお金を民に返すことは、すべて良いことである。
そう考えると、もっとも喫緊の課題は食料品の消費税減税ではなく、ブラケット・クリープの是正ではないか、という批判があるだろう。
ブラケット・クリープとは、インフレによって名目所得が増え、実質所得は増えていないにもかかわらず、累進税率のより高い階層に移り、所得税負担が増えることである。
その通りである。
隠れ増税は不純である。
名目GDPが1%増えたとき、世界の先進国では税収が1%程度しか増えないのに、日本では2.4%も増える(原田泰『日本人の賃金を上げる唯一の方法』197頁、図4-3-2、PHP新書 参照)。
先進国はどの国でも累進課税を採用している。したがって、名目所得が増えれば、ブラケット・クリープによって、所得の伸び以上に税収が増えるはずである。
それにもかかわらず、海外の先進国では、税収が名目所得と同じ程度しか増えていない。これは、ブラケット・クリープが起きないように、各国が税率や課税区分を修正しているからである。
日本だけが、こうした修正をせず、隠れ増税を続けている。
◇日本の食料品は高い
しかも、隠れ増税を解消するために必要な減税額は、年間0.5兆円程度にすぎない。是正は十分に可能である。
さらに、食料品の消費税を下げるより、社会保険料の「年収の壁」を是正し、労働意欲を阻害する仕組みをなくす方が先ではないか、という議論もあるだろう。
もちろん、そうだ。
労働意欲を阻害する税や社会保険料の仕組みは、税制に求められる公平、中立、簡素の原則に反している。
この問題は、給付付き税額控除によって是正されることになっている。
ところが、政府は制度設計が難しいとして、今後2年間をかけて議論し、2029年度から導入するとしている。
では、その間は何もしなくてよいのか。
この問いに答えなければならない。
そう考えると、食料品の消費税減税は、少なくとも二つの理由から望ましい。
第1に、所得水準の低い人ほど、消費支出に占める食料品支出の割合、すなわちエンゲル係数が高い。
食料品の消費税を下げれば、所得の低い人ほど、相対的に大きな恩恵を受ける。つまり、低所得者により多くの税金を返すことになる。
消費税減税よりも、給付付き税額控除の方が優れた制度だという反論はあるだろう。しかし、政府自身が導入までに2年かかると言っているのだから、仕方がない。
いま存在しない理想的な制度を前提に、食料品の消費税減税は望ましくないと批判しても意味がない。
第2に、日本の食料品価格は高い。外食は安いが、食料品は高いのである。OECDによれば、日本の食料品価格は国際的な水準より2割ほど高いという(※1)。
これに対しても、本来行うべき政策は、日本の農業を効率化し、農産物の輸入を自由化することだという批判があるだろう。
しかし、繰り返して言うが、実現できない理想的な政策を前提に、いま実行できる消費税減税を批判するのは誤りである。
しかも、食料品にかかる付加価値税をゼロにしている国は少なくない。
イギリス、カナダ、オーストラリア、アイルランド、イスラエル、メキシコ、韓国、台湾、インドネシア、フィリピンなどはゼロで、トルコは1%である。
トルコがなぜゼロではなく1%なのかは分からないが、まさかレジの改修能力が低いからではないだろう。
◇本当に物価は下がるのか
もっとも、消費税を下げても、その分だけ物価が下がるとは限らない、という議論がある。
実際、ドイツでは2020年下期に、付加価値税を19%から16%へ3%ポイント引き下げたが、物価は1.3%しか低下しなかったという。
フィンランドでは2007年、理髪サービスに対する付加価値税を22%から8%へ14%ポイント引き下げた。しかし、価格の低下は、その半分の7%程度にとどまった(※2)。
アルゼンチンでも2019年、一部の食品の付加価値税率を21%からゼロへ引き下げたが、価格は9.3%しか低下しなかった(※3)。
つまり、多くの国では、税率を下げても、価格は減税分の半分程度しか下がらなかったのである。
一方、ポルトガルでは2023年、食料品の付加価値税を6%からゼロへ引き下げたところ、価格は5.66%低下した。
ほぼ減税分のすべてが価格に反映されたことになる。これは、消費者団体やメディアによる厳しい価格監視があったからだとされている(※4)。
日本では、これまで消費税を引き上げた際、ほぼ増税分だけ物価が上昇してきた。一方、海外の研究の多くは、税率を下げても、減税分ほどには物価が下がらないことを示している。
日本でどうなるかは、実際に下げてみなければ分からない。
ただし、日本はポルトガルに近い国なのではないか。
◇お金が民に戻される
減税後には、店頭価格が減税幅に見合って下がっているかどうかについて、消費者やメディアの厳しい目が向けられるだろう。そうなれば、減税分の100%近くが価格に反映される可能性がある。
また、仮に価格が減税分だけ下がらなかったとしても、私は構わないと思う。
価格に反映されなかった分は、事業者の利益になるからだ。
だから、すべての減税は善である。政府が民から取り上げたお金が、民に戻されるだけである。
その民が消費者であることが望ましいのは言うまでもない。しかし、私たちが日常的に利用し、暮らしを便利にしてくれている店に戻ったとしても、何が悪いのだろうか。
民のお金が民に戻る。それは、必ず良いことである。
しかし、民にお金を返すことが良いとしても、もう一つ大きな問題が残っている。
ただでさえ巨額の債務を抱える日本で、5兆円規模の減税を行って、本当に財政は大丈夫なのか。財政不安から金利が急騰し、円安と物価高がさらに進むことはないのか。>(以上「現代ビジネス」より引用)
「食料品の消費税が「1%」へ…!「すべての減税は善である」―日銀元審議委員が減税を批判するメディアに反論します!」と題して原田 泰(名古屋商科大学ビジネススクール教授 元日本銀行政策委員会審議委員)氏が論評を発表した。一読して、全く同感だ。
食糧品の消費税減税しても、食料品価格は必ずしも下がらない。むしろ外食産業は値上げせざるを得なくなる、などと財務省のお先棒を担ぐ似非・経済評論家がいるが、原田氏が「仮に価格が減税分だけ下がらなかったとしても、私は構わないと思う。価格に反映されなかった分は、事業者の利益になるからだ。だから、すべての減税は善である。政府が民から取り上げたお金が、民に戻されるだけである」との論理展開に諸手を挙げて賛同する。
多くの国民はオールドメディアが報じる財政だけしか見てないようだが、国家財政は国民経済は政府経済を包含したものだ。しかも国民経済の方が政府経済より数倍も大きい。つまり国民経済を刺激すれば国家財政は拡大する。
それに対して、日本の中で循環している経済から政府が「税」や「負担金」として摘まみ食いすれば、国民経済はそれだけ縮小する。その政府による摘まみ食いが約50%に達しようとしているのが大問題なのだ。
日本書紀に記されている第16代天皇・仁徳天皇の「民のかまど」の故事をご存じだろうか。それはある夕暮れに高台から民家の様子を眺めた際、どの家からも食事の支度をする煙が立ち上っていないことに気づいた。「民が貧しくて竈(かまど)で火を焚けないのだから、国が富んでいないのは自分の責任である」として、3年間にわたり租税(税金や労役)を免除したという。その後、国が豊かになり民家から煙が立ち上るようになっても、民を潤すためにさらに数年間、税の免除を続けたとされている。
まず、民が貧しいのは治世者の責任だと認識する天皇がいたことに日本国民は感謝すべきだ。そして民が貧しいのは政府が税として取り上げ過ぎているからだ、と減税策を採った政治こそ鏡とすべきだ。その税と国民生活の論理は現代経済学でも証明されている。
引用文中で原田氏は「お金が民に戻される」と表現しているが、原田氏が論述されているように消費減税分はそのまま消費に追加される可能性が高い。さらに高額消費財の需要が劇的に増えると思われる。
たとえば5,000万円のマンション購入なら500万円の消費税が課されるが、その消費税が無くなれば、マンション購入が促進されるだけでなく、購入したマンション生活に必要な家具やカーテンなどの購入が爆増するだろう。もちろん自動車にも高額な消費税が課されているが、消費税が無くなれば自動車購入も劇的に増加するだろう。
高市政権は選挙公約として「食料品消費税ゼロを二年間実施する」と掲げた。そして圧倒的な勝利を得たのだから、誰に気兼ねすることもなく直ちに公約を実施すべきだった。レジなどの改修に時間がかかるのなら、実施日をそれだけずらして決定すれば良いだけだった。
また二年後に消費減税の日本経済に及ぼす影響を検証して、好結果が出たなら果敢に消費税そのものを廃止すべきだ。そうすれば個人事業者などに「賦役」として課されているインボイス制度も廃止される。消費税廃止で国民に課されている税と賦役が同時に無くなることになる。それにより景気が良くなるのなら、これほど歓迎すべき経済政策はないだろう。