中国リスクを排除するためには、中国との関係を絶つ以外に、いかなる方法もない。

<■「高市発言」に怒り心頭の習近平
 高市首相の発言をきっかけに、日中関係が悪化している。それに伴い、中国政府は、国民に日本への渡航を自粛するよう呼びかけている。また、1月6日、中国の商務部は、わが国に対する軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理を強化すると発表し、即日、実施したようだ。 
  管理対象品目には、レアアース(希土類)関連も含まれるとみられる。レアアースは、半導体や自動車などの産業に必要な物資で、その影響は小さくはない。
  昨年11月、高市首相は国会で、台湾有事はわが国の存立危機事態になりうると答弁した。それ以降、中国は態度を硬化させ、わが国への批判を強めた。
  中国の対日強硬姿勢には、中国の国内事情も影響しているだろう。中国では、不動産バブル崩壊により経済環境がかなり厳しい。若年層の失業率は上昇し、“芭比Q了(終わった)”などの表現がSNSに氾濫し始めた。そうした怒りや不満を緩和し、不満の矛先をわが国に向かわせようとの意図もありそうだ。
  中国との貿易が円滑に進まないと、わが国の経済にはマイナスの影響が出ることは避けられない。経済面ばかりではなく、安全保障上の問題も顕在化する可能性もある。防衛予算が増えると、経済対策への余力が減殺されることも考えられる。現在、日中問題はわが国の経済・安全保障にかかわる重大なリスクの一つになってしまった。

■財政悪化で公務員の給料も払えない
  昨年11月の高市首相の答弁の後、中国は急速にわが国に対する批判を強めた。その背景には、いくつかの要因が考えられる。
  まず、中国は、答弁は“一つの中国”の原則に反すると強硬に批判した。中国は台湾を自国領であり、祖国統一は妨げられない悲願であると主張している。米欧諸国は一つの中国の原則を尊重する考えを示してきた。習政権は、高市首相の答弁はその原則を無視したと見たのだろう。
  また、中国国内の不満を海外に向かわせる意図もうかがえる。不動産業界では、かつて中国最優良デベロッパーだった、“万科企業”の社債がデフォルト(債務不履行)した。今のところ、不動産価格下落に歯止めはかからず、地方政府や家計の財政状態は悪化した。国有・国営企業や就職希望熱が高まった公務員まで、給与の支払い遅延、未払いが発生している。

 ■レアアースを武器に日本を困らせる作戦
  中国政府は、対日強硬姿勢を強めて市民の怒りを軽減するため、その矛先をわが国に向ける意図があるとの指摘もある。そのため、中国は国際社会での賛同国を増やそうとしている。昨年12月、中国はフランスのマクロン大統領を厚遇し、対日批判で連携を求めた。
  1月5日、韓国との首脳会談で、中国側は日本が一線を越えたと強硬姿勢を鮮明にしたようだ。その見返りとして中国サイドは、K-POPなど韓国カルチャーに対する事実上の禁止措置の解除も提案したと報じられた。韓国へのパンダ貸与も示唆したという。 
 中国が韓国の懐柔を画策する背景には、アジア極東地域における影響力拡大の意図もあるだろう。昨年12月、トランプ政権は国家安全保障戦略(NSS)で、中南米への覇権強化を重視する姿勢を示し、中露と戦略的な安定関係を優先する方針を示した。わが国として、独自に経済・安全保障体制を確立する必要性は高まっている。
  そして1月6日、中国はわが国に対して、レアアースなど軍民で利用可能な品目の輸出管理規制を強化した。その直後、わが国産業全体を対象に、レアアース輸出審査を停止したとの報道が出た。中国は、わが国からの食品などの通関手続きを、意図的に遅らせているとの見方もある。中国は、対日貿易の規制を強化し始めたと考えるべきだ。

■各企業が分散させても対中依存度は6割
  当面、中国が、日本に対する強硬姿勢を緩和することは考えづらい。わが国としては、米国との安全保障の関係を重視しながら、極東や台湾情勢への対応方法を独自に考えることが必要だ。安易に中国に譲歩すべきではないだろう。
  ただし、レアアースの対日輸出規制の影響は、報道されている以上に深刻になる可能性がある。2010年に、中国は、一時、わが国に対するレアアースの輸出を停止した。それ以降、日本企業は調達先を分散し、2024年の対中依存度は6割程度に低下した。それでも最大のレアアース調達先であることに変わりはない。
  昨年、中国は米国に対するレアアース輸出を規制した。その際、わが国でも、自動車の生産が停止する企業が出た。レアアース調達先の分散など、供給網の管理は各社で異なる。中国がレアアースなどの輸出を絞ると、国内の自動車、工作機械、半導体などの電子部品、防衛関連機器、およびバッテリー関連部材などの生産は減少するとみられる。

 ■輸出停止でGDPが下押しされるリスク
  自動車産業の付加価値創出額は約11兆円と推計されている。中国からのレアアース輸入が1年間停止し、輸入割合(6割)の分だけ自動車生産が減少すると、約6兆6000万円分の収益が減ることが懸念される。つまり、GDPの1%を超える打撃が発生する。他の産業への直接、間接の影響も含めると影響はそれを上回るはずだ。
  1年程度の期間にわたって中国からのレアアースが入ってこないと、2〜3%程度GDPが下押しされるリスクは覚悟した方がよい。 
 さらに重要な懸念は、安全保障体制の不安定化だ。米国がアジア地域など世界の安全保障にどう関与するか、先行き不透明感は高まった。世界の主要国は防衛費を積み増している。わが国もその方針を掲げた。
  わが国は米国との関係を維持し、欧州や韓国、アジアの親日国との連携を強化することが必要だ。必要に応じて、合同訓練などの必要性は高まる。今後、わが国は安全保障に関する政策を迅速に練り直すことが求められるだろう。

■日本株の好調ぶりはいつまで続くか
  1月上旬、国内の株価は史上最高値を更新したが、日中関係の悪化が経済に与える影響は過小評価できない。2025年11月以降、中国が台湾周辺や尖閣諸島周辺に、艦船や航空機を展開することは増えた。12月には台湾周辺での軍事演習も実施した。
  中国軍の戦闘機による、自衛隊機へのレーダー照射も起きた。こうした中で経済の安定を維持するために、わが国は、安全保障体制を真剣に考える必要がある。それは、わたしたちの安心、安全に欠かせない要件だ。
  また、個人や家計への打撃が懸念されるのは、物価上昇圧力が追加的に高まるリスクだ。主要国の景気動向を見ると、中国は日米欧と異なりデフレ圧力が高まっている。過剰生産能力の深刻化を背景に、経済全体で価格は下落傾向だ。たとえば昨年、中国ではレアアースの生産が急増し、価格下落圧力が高まったといわれている。
  米大手金融機関などの推計によると、中国のデフレ圧力は世界の物価上昇率を平均して0.3〜0.5%押し下げたようだ。中には、0.7%程度の物価引き下げ要因になったとの試算もある。 

■日中関係の悪化は日本人の暮らしにも打撃
  中国と欧州や米国は、鉄鋼製品やアパレル製品、太陽光パネル、一部の汎用型半導体、EVバッテリーのダンピング(不当廉売)を巡って対立した。そうした対立の構図は、世界経済の適切な運営にとって大きな障害になる可能性もある。
  中国との円滑な貿易取引が難しくなると、わが国の企業は代替調達先を確保しなければならない。それに伴い、企業のコストは増加し、価格転嫁は加速するだろう。
  日中関係の悪化、それによる中国の対日貿易管理の強化は、わが国のインフレ加速要因になるだろう。自動車分野では、素材や部品が不足して新車供給が落ち込み、中古車の価格上昇が鮮明になる恐れはある。衣料品、生活雑貨、食品も同様だ。
  マクロ経済、安全保障、そして個人の生活への打撃を抑えるため、政府は中国との関係安定化を真剣に模索することが必要だ。>(以上「PRESIDENT」より引用)




このままでは日本車も半導体も作れなくなる…日本が誇る基幹産業を"人質"に取った習近平の「最大の切り札」」と真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)氏は危惧しているが、レアアースを振り翳す中共政府の恫喝がいつまでも効くと思う方がどうかしている。かつて2010年の尖閣国有化の際にレアアース対日禁輸措置に踏み切り、日本企業が大慌てしたことが再び起きるとでも考えているのだろうか。もしそうだとしたら、大慌てする日本企業の経営者たちは無能・無策の輩でしかない。
 既に中国のレアアースが対日制裁の「切り札」として無効化されていることを真壁氏は御存知ないのだろうか。それどころか、先日の財務相G7会合で片山氏が他の先進諸国に中国の対日レアアース禁輸措置を討論の議題として提起し、先進諸国が協力して中国に依存しないサプライチェーンの構築することを決めたではないか。柳の下に二匹目の泥鰌がいる、と論評している真壁氏は知識を常に新規更新しておくことをお勧めする。

 さらに日本のレアアースが現在でも6割を中国に依存している、と輸入実績から語瀬れているが、それは輸入実績であって国内に蓄積されたレアアースはカウントされていない。既に日本は「都市鉱山」からレアアースを回収する技術を確立していて、リサイクルにより確保する道筋も付けている。
 また、レアアースがなくて本当に「精密部品」などが作れなくなると、それを輸入して組み立てている中国の最先端精密機器なども製造できなくなる。たとえば、中国が大量にロシアなどへ輸出しているドローン兵器も革新的な部品はすべて日本製だ。それらが中国の対日レアアース規制で製造できなくなれば、中国内の製造工場も操業停止せざるを得なくなる。

 真壁氏が指摘しているように中国経済は崩壊の坂道を転がり落ちている。既に地方政府は殆どすべて破綻して公務員丘陵すら支払えないし、公安警察官も減給と遅配に苦しんでいる。もはや中央政府も財政難に陥り、富裕層が外国で購入した不動産や投資した資金にまで課税しようと目論んでいる。他国に投資した資金にまで課税するのは主権の侵害だが、そうした理屈が通用する国ではない。概ね税率20%を想定しているようだが、それにより日本で取得した億ションを手放す中国人が続々と出るのではないかと思われる。
 さらに中国が全国に張り巡らした高速鉄道で、使われないまま放置されている「駅」が4,000近くもあるという。計画経済の国とはいえ、どれほど杜撰な計画を立てているのか、中共政府の経済官僚たちの程度を疑う。

 真壁氏は「マクロ経済、安全保障、そして個人の生活への打撃を抑えるため、政府は中国との関係安定化を真剣に模索することが必要だ」と論評を締め括っているが、それこそ真逆だ。日本が中国の経済崩壊のトバッチリを受けないためには対中デカップリングを急ぐべきだ。それは政府だけではなく、民間企業経営者も早急に中国と手を切るべきだ。中国リスクを排除するためには、中国との関係を絶つ以外に、いかなる方法もない。
 ことに中国国債の新規買い入れを永久的に停止幸を講じた片山財政大臣と高市総理大臣の決断は先進自由諸国に先んじたもので、快挙といわざるを得ない。もはや中国「元」は国際的な信認を失いつつあり、金融の対中デカップリングを行うことは中国金融破綻の衝撃波から「円」を守る最も有効な手だからだ。

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