いかにプロパガンダで上塗りして補強しても、嘘は嘘でしかない。崩れる時は一瞬だ。
<9月18日、いわゆる中国のいうところの国恥日(満州事変のきっかけとなった柳条湖事件)に合わせて、話題の反日映画「731」が中国で封切りとなった。監督は趙林山、広告畑出身で、時代映画「銅雀台」(2012年)で映画監督デビュー。主演には中国を代表する俳優で映画監督・姜文の弟、姜武や、民国時代をテーマにした映画「黄金時代」で魯迅役を演じてアジア助演男優賞を受賞した王志文ら演技派がそろっている。
監督によれば、監督デビューした2012年当時から「731」映画を撮りたかったそうだが、市場がこの映画を受け入れられるほど成熟していなかった、という。この映画の撮影プロジェクト自体は2017年からスタート。3年かけて北京文学編集長の劉恒と共同で脚本をつくり、2020年からクランクインしていた。
映画製作にこれほど時間をかけたのは、日本へ調査に行ったり、米国が機密指定を解除した8000ページの「731部隊報告書」や、731部隊のオリジナルメンバーの423時間に及ぶ口頭証言の画像データなど、多くの歴史的資料に当たったりしたからだという。
9月17日にハルビンでプレ上映会が開催されたとき、監督は涙を流しながら「この映画は歴史の証拠を映像化した。映画館が法廷であり観衆みなが裁判官だ。9月18日、正義の法廷が開廷した」と語った。
そして、18日に中国全国封切りとなったその初日だけでチケット売り上げは3億元を記録したのだった。
だが、映画論評サイトなどを見ると、この映画に対する評価はすこぶる低い。もちろん、大絶賛の論評もあるのだが、それは明らかにネット紅衛兵的な愛国主義者たちによるもので、多くの映画好きによる評価は星1、2と軒並み低い。中には「歴史を冒とくしている」「愛国情緒を消費している」「(囚人に提供される食事が豪華だったり、収容施設に清潔なトイレがあったりする描写は)日本軍を美化しすぎている」といった愛国主義者からの反感を買ったものもあった。
しかもきわめて珍しいことに、中国ネット民の間で、この映画にたいする鑑賞ボイコットを呼びかける書き込みも多々あったのだ。
いったいこれはどういうことだろう。
まず「731」とはどんな映画か。
監督によれば、監督デビューした2012年当時から「731」映画を撮りたかったそうだが、市場がこの映画を受け入れられるほど成熟していなかった、という。この映画の撮影プロジェクト自体は2017年からスタート。3年かけて北京文学編集長の劉恒と共同で脚本をつくり、2020年からクランクインしていた。
映画製作にこれほど時間をかけたのは、日本へ調査に行ったり、米国が機密指定を解除した8000ページの「731部隊報告書」や、731部隊のオリジナルメンバーの423時間に及ぶ口頭証言の画像データなど、多くの歴史的資料に当たったりしたからだという。
9月17日にハルビンでプレ上映会が開催されたとき、監督は涙を流しながら「この映画は歴史の証拠を映像化した。映画館が法廷であり観衆みなが裁判官だ。9月18日、正義の法廷が開廷した」と語った。
そして、18日に中国全国封切りとなったその初日だけでチケット売り上げは3億元を記録したのだった。
だが、映画論評サイトなどを見ると、この映画に対する評価はすこぶる低い。もちろん、大絶賛の論評もあるのだが、それは明らかにネット紅衛兵的な愛国主義者たちによるもので、多くの映画好きによる評価は星1、2と軒並み低い。中には「歴史を冒とくしている」「愛国情緒を消費している」「(囚人に提供される食事が豪華だったり、収容施設に清潔なトイレがあったりする描写は)日本軍を美化しすぎている」といった愛国主義者からの反感を買ったものもあった。
しかもきわめて珍しいことに、中国ネット民の間で、この映画にたいする鑑賞ボイコットを呼びかける書き込みも多々あったのだ。
いったいこれはどういうことだろう。
まず「731」とはどんな映画か。
ストーリーが無茶苦茶で雑、ありえない描写…
大手映画チケット販売プラットフォーム「猫眼(マオヤン)」やSNS「豆瓣(ドウバン)」の映画評欄をざっと見てみる。
「人物の描き方が平たん。物語は混乱している。観衆に歴史を本当の意味で理解させることができないだけでなく、むしろ歴史を侮辱している可能性がある。この映画は愛国情緒を消費し、731事件の厳粛性を消し去っている。あまりにひどい映像のせいで、観客の反発を招きかねない(実際、反発を招いている)。これがまさか、当時の歴史に対する敬意なのだろうか?」
「監督のレベルがあまりに低く、物語が無茶苦茶で雑」
「当局の政治プロパガンダによる操作のせいで、3億元のチケット売り上げを作り出しただけ」
「ありえないプロット、不可解で滑稽な要素がたくさんあり、シリアスな歴史的題材を“脱獄コメディ”に変えてしまっている!」
「この監督は日本から派遣されたんじゃないのか? 彼はこんな冗談みたいなものを制作して海外で公開するつもりなのだ」
豆瓣では、こんな「ほめ殺し」の映画評もあった。
「この映画は、日本をオリエンタリズム満載の、西洋のステレオタイプ的な見方で描いており、それに加えてキリストの殉教を、最高にクールに描いている。
「日本の獄警(刑務官)が伝統的和服を着て、武士みたいな刀を差しているし、マルタ(人体実験の被験者)を実験室に連れていくとき、赤い傘を差しかけながら、ものすごく高い下駄をはいた花魁が歩いていくんだ。マルタの後ろには、月代の頭で、白い着物を着た日本の武士みたいな恰好の刑務官がずらりと並んでいる…、このシーンだけで度肝をぬかれた」
「…西側の視点からみたオリエンタリズム・パンクで、震撼した。ジェイド・エンパイア(米国のゲームソフト、中国神話をベースにしている)や、ドラゴン・キングダム(ジャッキー・チェンとジェット・リーが出演している孫悟空をモデルとしたカンフー映画、米国映画)の類だ」
「ウイルス気球で自由の女神や万里の長城、エッフェル塔を攻撃して、エッフェル塔の下で人々が阿鼻叫喚するシーン(劇中の日本人の想像)は、大いに我々を喜ばせた。ゲームのレッド・アラートの大袈裟なCGをそのまま夢想してほしい! 監督は西側の低コストカルトムービーの魅力をわかっているね!これはまさに、レッド・アラートに匹敵するシーンだ」
筆者はこの映画を見ていないので、論評できないが、B級カルトムービーか、前衛芸術映画のような、演出があるようだ。マルタたちが、キリストの殉教者的に描かれ、いたるところに十字架のモチーフがあったり、日本の武士の恰好をしている獄警と、脱獄を図ったマルタ集団とのバトルシーンがあったり、史実とかけ離れた内容やコメディタッチの表現も多いようだ。実際、映画館では笑い声が絶えなかった、というコメントもあった。
この酷評の嵐は当局によって一部削除もされているが、「この映画の撮り直しを要求する」「この映画をボイコットすべきだ」といったコメントが多数あったことは、一部ネットメディアも取り上げている。もちろん、それに対して反論するスタイルの記事にしているのだが。
大手映画チケット販売プラットフォーム「猫眼(マオヤン)」やSNS「豆瓣(ドウバン)」の映画評欄をざっと見てみる。
「人物の描き方が平たん。物語は混乱している。観衆に歴史を本当の意味で理解させることができないだけでなく、むしろ歴史を侮辱している可能性がある。この映画は愛国情緒を消費し、731事件の厳粛性を消し去っている。あまりにひどい映像のせいで、観客の反発を招きかねない(実際、反発を招いている)。これがまさか、当時の歴史に対する敬意なのだろうか?」
「監督のレベルがあまりに低く、物語が無茶苦茶で雑」
「当局の政治プロパガンダによる操作のせいで、3億元のチケット売り上げを作り出しただけ」
「ありえないプロット、不可解で滑稽な要素がたくさんあり、シリアスな歴史的題材を“脱獄コメディ”に変えてしまっている!」
「この監督は日本から派遣されたんじゃないのか? 彼はこんな冗談みたいなものを制作して海外で公開するつもりなのだ」
豆瓣では、こんな「ほめ殺し」の映画評もあった。
「この映画は、日本をオリエンタリズム満載の、西洋のステレオタイプ的な見方で描いており、それに加えてキリストの殉教を、最高にクールに描いている。
「日本の獄警(刑務官)が伝統的和服を着て、武士みたいな刀を差しているし、マルタ(人体実験の被験者)を実験室に連れていくとき、赤い傘を差しかけながら、ものすごく高い下駄をはいた花魁が歩いていくんだ。マルタの後ろには、月代の頭で、白い着物を着た日本の武士みたいな恰好の刑務官がずらりと並んでいる…、このシーンだけで度肝をぬかれた」
「…西側の視点からみたオリエンタリズム・パンクで、震撼した。ジェイド・エンパイア(米国のゲームソフト、中国神話をベースにしている)や、ドラゴン・キングダム(ジャッキー・チェンとジェット・リーが出演している孫悟空をモデルとしたカンフー映画、米国映画)の類だ」
「ウイルス気球で自由の女神や万里の長城、エッフェル塔を攻撃して、エッフェル塔の下で人々が阿鼻叫喚するシーン(劇中の日本人の想像)は、大いに我々を喜ばせた。ゲームのレッド・アラートの大袈裟なCGをそのまま夢想してほしい! 監督は西側の低コストカルトムービーの魅力をわかっているね!これはまさに、レッド・アラートに匹敵するシーンだ」
筆者はこの映画を見ていないので、論評できないが、B級カルトムービーか、前衛芸術映画のような、演出があるようだ。マルタたちが、キリストの殉教者的に描かれ、いたるところに十字架のモチーフがあったり、日本の武士の恰好をしている獄警と、脱獄を図ったマルタ集団とのバトルシーンがあったり、史実とかけ離れた内容やコメディタッチの表現も多いようだ。実際、映画館では笑い声が絶えなかった、というコメントもあった。
この酷評の嵐は当局によって一部削除もされているが、「この映画の撮り直しを要求する」「この映画をボイコットすべきだ」といったコメントが多数あったことは、一部ネットメディアも取り上げている。もちろん、それに対して反論するスタイルの記事にしているのだが。
俳優の于朦朧(アラン・ユー)の転落死事件
興味深いのは、猫眼プラットフォームで、集団で「731」ボイコットを呼びかける集団コメントが登場したことだ。このコメントは、9月11日に謎の転落死をとげたイケメン中国人俳優の于朦朧(アラン・ユー)のファンたちによるものだ。
彼らが「731」ボイコットを呼びかける理由として、「歴史の苦難(731)は娯楽として消費するくせに、現実の苦難は見て見ぬふりだ」「現実は映画より恐ろしい」「有名人の死ですらはっきり理由がわからないのだから、一般人の死はさらに悲惨だ」「毎日、(反日という)仇恨を煽動されているのに、現実に発生していること(于朦朧事件)については一言もいわない」「奇形の愛国教育によって(社会不満の)矛先を移転させている」…といった批判が連なっていた。
于朦朧の死については、公安当局の公式発表では酒を飲んであやまって落ちたもので、事件性はないと早々に発表されている。
だが、それをそのまま信じている人の方が少ない。
于朦朧は9月11日午前2時ごろ、北京市朝陽区のマンションの下で死亡しているのが発見された。享年37。彼は10日、友人が経営する隠れ家バーで業界人5、6人が集まる宴会(別の情報によれば参加者は17人)に参加、マネージャーに勧められてかなり飲酒し、べろべろに酔っぱらった状態で、別室に寝にいったという。
11日午前6時ごろ、友人たちが帰ろうとすると、于朦朧の姿がなく、探したところ、建物の外ですでに死亡している状態で発見された。彼のポケットには友人のロレックス時計が2つ入っていた、という。また彼の寝ていた部屋の窓のカーテンが破れていたという。
こうした情報は、食事会の参加者の匿名投稿で、公式情報ではない。ネット情報を信じるなら、この食事会が行われたバーのオーナーは、脚本家のペンネーム「自由極光」らしい。その転落場所の写真などもネットで出回っているが、酔っぱらって誤って転落するような窓ではなかった。自殺の可能性はあるのか、というと于朦朧は2匹の愛犬がいるし、自殺するような人物ではない、と知り合いの証言もある。
ファンたちが疑念に思ったことは、最初に于朦朧の死を知らせたこの食事会参加者による投稿がすぐに削除されたこと、そして公安当局がすぐに「事件性なし」と発表したことだ。さらに、この食事会に参加した友人が誰なのかいまだに不明だ。
ネット上では、于朦朧が、芸能界の大物に、レイプされた、あるいはされそうになって抵抗して、窓から突き落とされたのではないか、という憶測が流布した。この芸能界の大物は、中国のネット上では名前が挙げられている。2020年ごろから急激に頭角を現してきた34歳になる人気プロデューサーで、習近平の側近中の側近、蔡奇の非嫡子だと噂されている人物だ。
また、習近平の遠縁外戚説もある。于朦朧のファンたちは、この政治的背景をもつ大物プロデューサーが、酔っぱらった于朦朧をレイプしようとし、これに抵抗した于朦朧が、殺害されたのではないか、という「推理」をネット上で展開しはじめた。あるいは、于朦朧はマネージャーによって大物プロデューサーに「性上納」されたのだ、と。
この「推理」のウラを取ることは不可能だ。だが、はっきりしていることは、この事件について、警察はなにかしら真相を隠しており、不自然なまでに情報統制も敷かれた、ということだ。
本来、こうした芸能スキャンダルは、政治性がないので、中国当局にとっては絶好の庶民のうっぷん晴らしになるとして、比較的自由に報じさせる。だが、公式メディアは警察発表以上の内容をほとんど報じていない。
この事件と映画「731」は全く関係ないはずだが、なぜか于朦朧転落死事件と映画評が関連づけられて、多くのネット民が批判の矛先を「731」に向けていた。
興味深いのは、猫眼プラットフォームで、集団で「731」ボイコットを呼びかける集団コメントが登場したことだ。このコメントは、9月11日に謎の転落死をとげたイケメン中国人俳優の于朦朧(アラン・ユー)のファンたちによるものだ。
彼らが「731」ボイコットを呼びかける理由として、「歴史の苦難(731)は娯楽として消費するくせに、現実の苦難は見て見ぬふりだ」「現実は映画より恐ろしい」「有名人の死ですらはっきり理由がわからないのだから、一般人の死はさらに悲惨だ」「毎日、(反日という)仇恨を煽動されているのに、現実に発生していること(于朦朧事件)については一言もいわない」「奇形の愛国教育によって(社会不満の)矛先を移転させている」…といった批判が連なっていた。
于朦朧の死については、公安当局の公式発表では酒を飲んであやまって落ちたもので、事件性はないと早々に発表されている。
だが、それをそのまま信じている人の方が少ない。
于朦朧は9月11日午前2時ごろ、北京市朝陽区のマンションの下で死亡しているのが発見された。享年37。彼は10日、友人が経営する隠れ家バーで業界人5、6人が集まる宴会(別の情報によれば参加者は17人)に参加、マネージャーに勧められてかなり飲酒し、べろべろに酔っぱらった状態で、別室に寝にいったという。
11日午前6時ごろ、友人たちが帰ろうとすると、于朦朧の姿がなく、探したところ、建物の外ですでに死亡している状態で発見された。彼のポケットには友人のロレックス時計が2つ入っていた、という。また彼の寝ていた部屋の窓のカーテンが破れていたという。
こうした情報は、食事会の参加者の匿名投稿で、公式情報ではない。ネット情報を信じるなら、この食事会が行われたバーのオーナーは、脚本家のペンネーム「自由極光」らしい。その転落場所の写真などもネットで出回っているが、酔っぱらって誤って転落するような窓ではなかった。自殺の可能性はあるのか、というと于朦朧は2匹の愛犬がいるし、自殺するような人物ではない、と知り合いの証言もある。
ファンたちが疑念に思ったことは、最初に于朦朧の死を知らせたこの食事会参加者による投稿がすぐに削除されたこと、そして公安当局がすぐに「事件性なし」と発表したことだ。さらに、この食事会に参加した友人が誰なのかいまだに不明だ。
ネット上では、于朦朧が、芸能界の大物に、レイプされた、あるいはされそうになって抵抗して、窓から突き落とされたのではないか、という憶測が流布した。この芸能界の大物は、中国のネット上では名前が挙げられている。2020年ごろから急激に頭角を現してきた34歳になる人気プロデューサーで、習近平の側近中の側近、蔡奇の非嫡子だと噂されている人物だ。
また、習近平の遠縁外戚説もある。于朦朧のファンたちは、この政治的背景をもつ大物プロデューサーが、酔っぱらった于朦朧をレイプしようとし、これに抵抗した于朦朧が、殺害されたのではないか、という「推理」をネット上で展開しはじめた。あるいは、于朦朧はマネージャーによって大物プロデューサーに「性上納」されたのだ、と。
この「推理」のウラを取ることは不可能だ。だが、はっきりしていることは、この事件について、警察はなにかしら真相を隠しており、不自然なまでに情報統制も敷かれた、ということだ。
本来、こうした芸能スキャンダルは、政治性がないので、中国当局にとっては絶好の庶民のうっぷん晴らしになるとして、比較的自由に報じさせる。だが、公式メディアは警察発表以上の内容をほとんど報じていない。
この事件と映画「731」は全く関係ないはずだが、なぜか于朦朧転落死事件と映画評が関連づけられて、多くのネット民が批判の矛先を「731」に向けていた。
世論誘導に中国人もうんざり
こうした現象を私なりに解釈すると、結局、今の中国の人々の強い不満、不安の感情が、世の中の残酷で不条理な事件に対し強いシンパシーを生みやすくなっており、その原因が共産党体制、習近平政権の悪政にあると気づく人が、増えているということではないか、と思う。
習近平政権は、今年、反日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念ということもあって、何かにつけ反日を煽動し、中国社会に蔓延する不満、民怨を反日情緒にすり替えて発散させようと世論誘導していることは明らかだ。だが、そのやり方があまりに露骨すぎると、さすがに人民もうんざりしてしまう。
この反日世論誘導の結果、確かに一部の人民の怒りは実際に、在中国邦人に向かい、日本人や親日中国人に対するいやがらせも増えている。だが、日本人を攻撃したところで、中国社会は絶対によくならない。
習近平政権の反日世論誘導政策の限界が、映画「731」の映画評欄に現れている気がする>(以上「JB press」より引用)
こうした現象を私なりに解釈すると、結局、今の中国の人々の強い不満、不安の感情が、世の中の残酷で不条理な事件に対し強いシンパシーを生みやすくなっており、その原因が共産党体制、習近平政権の悪政にあると気づく人が、増えているということではないか、と思う。
習近平政権は、今年、反日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念ということもあって、何かにつけ反日を煽動し、中国社会に蔓延する不満、民怨を反日情緒にすり替えて発散させようと世論誘導していることは明らかだ。だが、そのやり方があまりに露骨すぎると、さすがに人民もうんざりしてしまう。
この反日世論誘導の結果、確かに一部の人民の怒りは実際に、在中国邦人に向かい、日本人や親日中国人に対するいやがらせも増えている。だが、日本人を攻撃したところで、中国社会は絶対によくならない。
習近平政権の反日世論誘導政策の限界が、映画「731」の映画評欄に現れている気がする>(以上「JB press」より引用)
「中国・反日映画『731』に酷評の嵐、ボイコット呼びかけも…習近平政権の反日煽動に中国人もうんざり?ーー関係のない人気俳優・于朦朧(アラン・ユー)の不可解な転落死事件が政権不信を増幅」と、中共政府肝煎りの国策プロパガンダ映画について、福島 香織(ジャーナリスト)氏が論評している。
もはや中共政府の反日プロバガンダ映画に中国民もウンザリしているという。もとより731部隊は実在したが、描かれているような「生体実験」をして中国民を虐殺などしていない。実在した731部隊は「細菌研究」部隊であって、中国で作戦する日本軍の感染症対策などを担っていた。
また現地住民に対しても感染症に対する予防接種などを実施していたため、中国民から感謝されていたという。それは善意に基づくというよりも、感染症が蔓延すると軍内部にも蔓延して作戦行動にも影響するため、その防御策として地域住民にも感染症予防をしていた。
戦後、森村某という推理作家が731部隊を中国人の人体実験を使って研究した残虐な部隊だったという推理フィクション作品を発表し、それがセンセーショナルな話題になったため、いつしか731部隊のフィクションが実話に置き換わって中国に伝わった、というものだ。実際にそのようなことがあったなら、戦勝国が日本を徹底的に潰そうと企んだ東京裁判で731部隊関係者も法廷に引きずり出していたはずだ。
中共政府の反日キャンペーンは度を越している。それに対して全く抗議しない自公政権及び度々中国を訪問して首脳各位と面会する公明党や立憲党及び社民党の政治家諸氏は一言でも「有効官憲の構築に反日政策は大きな障害になっている」と苦言の一つなり呈しているのだろうか。ただ朝貢訪問を繰り返しているのなら、それこそ愚の骨頂というべきではないか。臆面もなくこの秋に実施された中共政府の「戦勝記念」に参加した鳩山元首相は、一言でも日本の立場について中国首脳に対して苦言を呈したのだろうか。そうでないなら、彼は何のために頻りと訪中しているのか、日本国民に説明すべきではないだろうか。
敢えて書かざるを得ないが、日本軍が中国で戦った相手は国民党軍だった。毛沢東率いる赤軍は中国大陸を逃げ回って、日本軍と殆ど戦火を交えていない。ただフライングタイガーと称する米空軍攻撃隊の援助を受けて日本軍を空から攻撃しはしたが。それは日本が真珠湾攻撃に踏み切る四ヶ月以前のことだった。
だから国連創設当時、中国を代表していたのは国民党軍が組織した中華民国だった。国連での中国代表権が中華民国から中華人民共和国へ移行したのは、1971年10月25日の国連総会でアルバニア決議案が採択された時だ。この決議により中華人民共和国が中国唯一の代表として国連で認められ、中華民国(台湾の国民政府)は追放された。おそらく、そうした事実すら中共政府は中国民に教えてないのだろうが、中共政府の威を持ってしても、史実は決して改竄できない。
必ず真実の歴史を中国民が知る時がやって来る。その時に中共政府の欺瞞性が露わになり、国民統治の正当性が疑われることになる。日本は1945年にポツダム宣言を受諾して終戦を迎えたが、その日本と戦って1948年に「戦勝」することなどあり得ないではないか。中華人民共和国の歴史は、その創始からして嘘に塗れている。いかにプロパガンダで上塗りして補強しても、嘘は嘘でしかない。崩れる時は一瞬だ。その一瞬がいつやって来るか、中南海の住民たちは震えて夜も眠れないのではないだろうか。