崩壊する中国経済。

なにが「力強く回復」だ
 4月16日、中国国家統計局は今年1~3月期の経済成長率を発表した。それは、「5.3%増」という大方の予想を上回った高い数値である。案の定、この発表を受けて、中国国内では早速、「中国経済は力強く回復」との論調はメディアによって大々的に展開されている。日本でも一部、それに同調するマスコミや専門家が現れた。by Gettyimages
 問題は、この「成長率5.3%」は果たして本当なのかであるが、これを検証する方法は実に簡単だ。要するに国家統計局公表の今年1~3月期の国内総生産(GDP)の数値と、昨年同時期の数値を比較して計算すること。「成長率」というのは普通、今年一定時期のGDPが昨年同時期のそれからどれほど伸びたのかである。
 しかし、まさにこのような簡単な計算からとんでもない光景が目の前に現れた。国家統計局が発表した昨年1~3月期のGDPは28兆4997億元である。そして同じ国家統計局公表の今年1~3月期のGDPは29兆6299億元だから、この二つの数値を基にして簡単に計算すれば、今年1~3月期のGDPの伸び率(すなわち成長率)は決して5.3%などではなく、ただの3.82%程度であることがすぐに分かる。
 つまり国家統計局は、白昼堂々の数字捏造を平気で行ったわけである。彼らが公表した昨年1~3月期のGDP数値が、同じ彼ら自身が公表した今年同時期の成長率が単なる嘘であることを自ら示している。

市場は嘘を見抜く
 そんなバカなことがあるのかと疑いたくなるのだが、それは現実に起きているのである。しかも、明らかに矛盾している上述の二つの数値は今でも、国家統計局と中国政府の公式サイトで同時に掲載されているのは、まさに摩訶不思議である。
 もちろん中国国内でも、このような拙劣な捏造数字をそのまま信じる人はそんなにいない。実際、今月16日の午前に前述の嘘の成長率が発表されたことを受け、午後3時まで終了の上海株式市場はむしろ反落し、上海総合指数は1.65%の下落に見舞われた。株市場は完全に、中国政府の嘘を見抜いているわけである。
 そして4月18日、国家統計局は今度、3月の若年層の失業率が前月同様の15.3%であると発表したが、もちろんそれもまた、国家統計局自身が出した「成長率5.3%」が嘘であることを明確に示している。「成長率が5.3%」の国では、若年層の失業率が15%以上になるのはどう考えても、ありえない話だからである。

上海高級スーパー全面廃業の意味
 それでは、中国経済の実態は一体どうなっているのか。それを浮き彫りにする一つの出来事は、国家統計局が前述の嘘の成長率を出した同じ日の4月16日に、中国きっての経済大都会の上海で起きた。
6日に全面廃業する旨の上海城市超市の告知状


 その日、上海を中心に多数の店舗を展開している「上海城市超市(CITY SHOP)=上海都市スーパー」は「経営困難」を理由に、すべての店舗を閉店して全面廃業・企業解散した。それは、上海だけでなく全国的にも注目を集める大ニュースとなった。
 上海都市スーパーは1999年に創業。上海市内の徐家匯、金橋、虹梅路などの繁華街・高級商業区で10店舗を構え、「商品の8割が輸入品」を売り物にして国内の富裕層・準富裕層や上海在住外国人を顧客層に商売を展開してきた。
 上海都市スーパーの存在は今まで、国際的経済大都会上海の「繁栄の象徴」とされているが、経営難による突如の閉店・廃業の背後には、この数年間における外国人の上海離れ、富裕層の海外流出、準富裕層の貧困化などの要因があるとみられる。そういう意味では、上海都市スーパーの突然の廃業は国際大都会・上海の凋落を象徴する出来事である。

「魔都」よさらば~外資流出と不動産崩壊
 上海の凋落を示す現象は他にもある。今年2月中旬、国内外のメデイアが報じたところでは、昨年年末時点で、上海市のAクラス賃貸オフィスの空室率が21.8%に上ったことは、不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの調査で分かったという。
 日本の場合、三幸エステート株式会社の調査によると、昨年12月の時点で、大阪市内大規模ビルのオフィス空室率がわずか2.97%。同じ時期における東京都主要7区のオフィスビルの空室率もせいぜい6.42%であることは三菱地所関連会社の調査で分かっている。大阪と東京の数字と比べれば、上海のオフィス空室率はどれほど高くなっているのかが一目瞭然であろう。上海におけるビズネス活動の深刻な冷え込みと経済全体の衰退は明らかである。
 衰退の背後には、上海の経済を根底から支える不動産市場の崩壊がある。今年2月2日、民間調査機関の上海鏈家研究院が発表したところでは、今年1月、上海市における新規分譲住宅の成約件数は3786件、昨年12月と比べれば44%減、前年同期比では55%減となったという。成約金額もやはり、それぞれ47%減と58%減であった。
 そして3月になると、今度は民間調査機関の「易居研究院」が発表した「2月上海不動産市場分析報告」では、今年2月、上海市内の新規分譲住宅の成約面積はなんと、先月比では61.3%減、前年同期比では69.2%減となったわけである。上海の不動産市場の崩壊が加速化しているのである。
 今までの「上海の繁栄」は結局、国内の不動産市場と外資・外国人の大量流入によって支えられていたが、その両方が駄目となったことで、われわれは今、「魔都・上海」の没落を目の当たりにしているのである。
 そして上海の凋落はそのまま、中国経済の沈没を意味するものであろう。今月にビジネス社から刊行された石平の新刊本の書名「『中国大恐慌』時代が始まった!」の通り、中国という国は今、「大恐慌」の時代に突入しているのである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 石平(中国評論家)氏が指摘する通り「中国の実態は大経済都市「魔都」上海の凋落にすべてが表れている」と云えるだろう。「1~3月期5.3%成長発表は全くの嘘で株式反落」と指摘している通り、上海株式市場は暴落している。
 上海は北京と並ぶ中国を代表する大都市だ。北京が政治都市であるのに対して、上海は商都と云うべき大都会だ。国際金融センター香港が没落した後、中国の国際金融センターを担う都市は上海ではないかと見られていた。しかし習近平氏が強硬に推し進めたゼロコロナ策により上海の活力は奪われた。さらに反・スパイ法により外国人が頻繁に拘束されるようになって、上海から外国人の姿が消えてしまった。

 オフィスビルの空室率が21.8%ということは「がら空き」状態だと思って良い。おそらく商業ビルはもっと惨憺たる有様になっているはずだ。なぜなら飲食などの商業テナントは個人消費によって支えられているが、その個人消費でも「上顧客」だった外国人がいなくなればたちまちテナント料の支払いにすら窮すようになるからだ。
 地方都市はもっと悲惨な状態ではないだろうか。なぜなら個人消費が余り見込まれない上に、地方経済を支えていた不動産投資が壊滅状態だからだ。それどころか中国の所有不動産企業トップ百社で堅調な経営状態の企業は皆無といって良い。しかも公共事業も停止している状態だ。

 これまで採算性度外視で中央政府が無理やり投資して来た高速鉄道や高速道路も限界に達している。いかに強権独裁政権と云っても、打ち出の小槌があるわけではない。経済原則から逃れることは出来ず、債務が積み重なれば、必ず国家財政はデフォルトする。
 デフォルトを避けようと貨幣を増刷すれば、必ずハイパーインフレになる。中共政府は首が回らなくなった地方政府のために数兆円の予算を配分したが、それらは遅配していた地方公務員に支給されて消えたようだ。しかし、たとえ公共投資したところで「投資波及効果」のある事業は既にない。

 習近平氏は経済政策を基本的な所で誤った。経済の基本とは「自由市場」化すべき、ということだ。できるだけ経済活動を自由化して、政府は自由市場を守る方向で施策を実施すべきだった。
 しかし習近平氏は経済統制を強めて自由市場を破壊した。人の経済活動にもさまざまな制約を設けて、自由な活動を制限した。あるいは塾などを強制的に撤廃してしまった。それでは外国人のみならず、中国民の事業を起業しようとする意欲をも摘み取ってしまった。経済は沈滞化するばかりだ。

 起死回生のために巨額投資したEV製造も、欧米諸国の防衛策により頓挫してしまった。日本国内でBYD製EVのCMを盛んに流しているが、営業は捗々しくないようだ。
 自由市場で経済成長したことを忘れたかのように、習近平氏は「改革開放」策で20年間積み上げて来た国際的な協調関係を悉く破壊してしまった。何よりも、中国の経済成長を最も支援した日米両国に牙を剥いたのは致命的だ。1京3000兆円という天文学的な債務を抱えて、中国経済は崩壊する。もはや助かる道はない。中国は不良債権と債務の両建てで膨らみ上がった国家B/Sを健全なB/Sになるまで、過酷な債権債務の償却を経なければならない。その間、中国社会が耐えられるか、それは中共政府を中国民がどれほど信頼しているかによる。さもなくば、中共政府が崩壊するだけだ。


<私事ながら>
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