先進諸国が中国を無きものとして無視すれば、中国は自ずと自壊し滅亡する。

米国の財務長官が直接“警告”する異例
 4月5日、広東省広州市の米国商工会議所にてイエレン米財務長官は、「中国の過剰製造能力が世界経済に及ぼす影響に対する懸念が高まっている」と述べた。米国の財務長官が自ら中国を訪問し、過剰生産能力の増加は世界経済のリスク要因になりつつあると表明した意味は重い。
 イエレン財務長官の真意は、「中国の習近平政権が国内の需要不足を輸出の増加で埋め合わせようとすると、世界的な不均衡で貿易戦争が勃発しかねない」と中国政府に直接言いたかったのだろう。それほど、中国問題は深刻化する可能性があるということだ。

余った安い製品をどんどん輸出している
 足許、中国では不動産バブル崩壊の深刻化によって、不良債権は大きく膨らんでいる。人々の節約志向は高まり消費は低迷し需要が低迷する一方、中国政府は生産能力の強化を加速している。当然の結果として、過剰生産能力の増加に拍車がかかる。本来、中国政府は金融緩和に加え財政出動と規制緩和などを強化し、需要を喚起することが必要なのだ。
 しかし、中国政府は重要喚起策には慎重で、政府系企業などの生産能力をさらに強化する方向に向かっている。現在の経済環境下で供給力が増大すると、国内で余った安価な製品を輸出に向けることになる。
 主要先進国は自国企業を守るため、中国製品への関税引き上げなどの必要性は高まる。欧米の対中圧力に、中国も無策でいられない。中国政府は報復措置を打ち出し、世界的な貿易戦争が勃発、熾烈化する危険性は上昇傾向にあると考えられる。

「不当な価格競争の圧力が及んでいる」

 イエレン米財務長官の中国訪問の主たる目的は、中国の過剰な生産能力が世界経済のリスク要因になる懸念を伝え対応を求めることだった。米国の財務長官自ら中国を訪問したケースは珍しい。
 イエレン氏は、「主要な企業に対する支援は、政府の産業育成と強く関連していることを理解している」と発言した。中国製造2025などの産業振興策の強化もあり、中国企業の生産能力は、国内外の需要を上回る部分が増えているとの認識も示した。
 その上でイエレン氏は、米国、メキシコなどに不当な価格競争の圧力が及んでいると強い懸念を表明した。中国政府は、過剰生産能力の問題に適切に対処し、市場原理に基づいた改革を推進する必要性も高いと指摘した。

国民を守るような政策発動の兆しは見えない
 中国の過剰生産能力は累積し、世界経済全体を下押しし始めている。世界経済の成長鈍化は、中国経済にとっても逆風だ。その影響を軽減するため、中国は構造改革を進め需要創出につながる経済政策を強化する必要性は高い。
 中国では、不動産バブルの崩壊により、中小の金融機関だけでなく大手行の一角にも信用不安が及び始めた。4月5日、大手国有銀行の一つである中国建設銀行は、世茂集団(シーマオ・グループ)に対する清算を香港の裁判所に申し立てた。
 現在、中国の不動産市況の悪化に歯止めはかかっていない。それに伴い、雇用・所得環境は悪化し個人消費は弱含んでいる。デフレ圧力は高まった。そうした負の連鎖から脱却するため、金融緩和策の強化、社会福祉制度の拡充などで国民に安心感を与えることが重要なのだが、今までのところ、習政権にそうした政策発動の兆しは見えない。

中国政府関係者は“イエレン発言”に反発

 米財務長官自ら中国を訪問し懸念を伝えるほど、中国の過剰生産能力は深刻である。ところが、中国政府関係者はイエレン発言に反発したようだ。
 中国政府は供給サイドを強化することで、中国企業の世界シェアを高め、世界経済の中での地位向上を目指したいのだろう。3月の全人代以降、政府はEVおよびバッテリーや関連インフラ、半導体、半導体製造装置などの生産能力を強化する方針を示した。
 在来分野では、不動産バブル崩壊で余った鉄鋼製品などが、海外向けの輸出に向かっている。2024年1~2月、ベトナムの中国製鋼材流入は前年同期の約3倍に達した。家具や家電などの分野でも、安価な中国製品が海外に向かっている。
 中国から海外へ、行ってみれば“デフレの輸出”は加速している。足許の主要先進国経済では、欧州諸国がその負の影響に直面した。北欧などEVシフトが急速に進んだ国を中心に、中国製(米国のテスラも含む)のEVの販売台数が急増した。中国製EVは相応の性能を備え、独仏の自動車メーカーのモデルより安い。

“世界の工場”から一転、制裁関税が発動するか
 欧州委員会は、中国の産業補助金政策などが不当な価格競争につながっていると判断し、中国製EVの調査を開始した。欧州委員会は税関登録時点にさかのぼって、制裁関税を課すことも検討しているようだ。
 産業補助金による研究開発や生産体制の強化、海外企業からの技術強制移転などにより、中国企業のコスト負担は低い。主要先進国などにとって、中国企業との価格競争から自国の企業・産業を守る必要性は高まった。米国は政権が代わっても、トランプ政権が導入した対中制裁関税を維持した。
 戦略物資として重要性が高まる半導体分野でも、米欧は中国の価格競争に懸念を強めた。米国と欧州連合(EU)は、旧世代の半導体供給網に関しても対中規制などを強化する方針だ。米政府がオランダの半導体製造装置メーカーASMLに、中国向けサービス業務を打ち切るよう要請したとの報道もある。

トランプ元大統領は「60%の関税」を検討

 今後、米国政府は中国に対して過剰生産能力の削減を求め、国有企業の民営化など構造改革を推進するよう対話を求めるだろう。ただ、すぐに中国が要請を聞き入れ実行に移すとは考えづらい。
 今後、米欧を中心に、供給サイドを強化する中国に対する懸念は上昇するだろう。自国の経済、雇用を守るため、欧米諸国が中国企業に対する規制や制裁関税などを発動する必要性は上昇する。
 実際に欧米諸国が中国製品の関税を引き上げると、中国も報復関税など対抗措置を繰り出すだろう。展開次第では、中国で海外製品の不買運動が発生するかもしれない。
 米国の大統領候補として注目集まるトランプ氏は、再選した場合に中国からの輸入品に一律60%の関税を検討していると報じられた。中国の対抗措置を見越してのことだろう。関税の引き上げに加え、米国が同盟国や友好国に、中国企業との取引を制限、禁止するよう要請を強めることも考えられる。

中国を火種とした貿易戦争リスクが高まっている

 世界的な貿易戦争のリスクは高まっている。反グローバル化というべき世界経済の環境変化は加速するかもしれない。1990年代以降、自由貿易の促進などによって国境のハードルは下がった。
 国境を越えたヒト・モノ・カネの再配分は加速し、ジャスト・イン・タイムの供給体制の整備も加速した。米国などの企業は最もコストの低いところで生産を行い、高い価格で供給する体制を強化した。それは世界経済の成長と物価の安定に寄与した。
 今後、逆の変化が加速する懸念は高い。中国が供給サイドの強化策を実施するに伴い、米国などは中国の安価な製品を自国市場から締め出そうと対策を強化する。世界全体で関税率は上昇し、自由貿易体制は不安定化する。世界全体で経済運営の効率性は低下するだろう。今回のイエレン氏訪中は、中国が貿易戦争の重要なリスク要因になりつつあることを確認する重要な機会となった>(以上「PRESIDENT」より引用)





 真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)氏が「なぜ最近「激安の中国製品」が大量に出回っているのか…「世界の工場」がお荷物と化した習近平政権の自滅」と題する論評を掲載した。副題には「欧米が制裁を課せば、貿易戦争は避けられない」とあって、なかなか剣呑だ。
 真壁氏も指摘する「「世界の工場」がお荷物と化した習近平政権の自滅」とは文字通りで、現在の中国経済の崩壊は習近平氏がまねいた自業自得だ。それ以上でもなく、それ以下でもない。

 真壁氏は「欧米が制裁を課せば、貿易戦争は避けられない」と懸念しているが、貿易戦争とはお互いに貿易の輸出入で報復制裁することだが、欧米から中国に買ってもらうわなければならない品物があるのだろうか。つまりどうしても中国に輸入してもらわなければならない品目が欧米諸国にあるのなら、欧米諸国が中国から輸入される品目に制裁を科すことに対する報復制裁は効果を有することになる。しかし中国にどうしても購入してもらわなければならない品目が欧米諸国になければ、中国から欧米諸国に報復制裁することは不可能だ。
 同様に、日本はどうだろうか。中国から集中豪雨のように輸入されて、国内産業が壊滅的になっている太陽光パネルを制裁したとして、中国が日本から輸入している品目で制裁可能な品目が何かあるだろうか。

 真壁氏は「“世界の工場”から一転、制裁関税が発動するか」と現状を述べているが、なぜ中国が「世界の工場」から転落したのか、という説明が何もなされていない。中間を省略して結論だけを繋げるのは正しいとは云えない。
 中国が「世界の工場」になった主因は「改革開放」策を推進したことにより、日米欧の先進自由主義諸国が「国際分業論」に乗って投資と企業を中国へ移転させたことによる。もちろん中国は廉価な労働力を提供したが、それ以外には進出した先進諸国の企業から製品製造ノウハウや知的財産の剽窃を秘かに進めていた。

 どうやら中国は信義の国ではなく、謀略の国のようだ。謀略の国では騙すのは賢い人で、騙されるのは愚かだからだ。鄧小平の「改革開放」策の本質は「韜光養晦(とうこうようかい)」策だった。つまり「改革開放」策は「爪を隠し、才能を覆い隠し、時期を待つ戦術」だったというからタチが悪い。
 それは経済力や技術力を身に着け時節が到れば中国が世界制覇へ動き出す、というこちだ。現実に中国は南シナ海を我が物にし、領有権を主張する南シナ海の周辺諸国の船舶を蹴散らしている。東シナ海では何の根拠もなく尖閣諸島の領有権を主張し始め、領海を侵犯し日本の漁船を追い回したりしている。

 歴史的に謀略の数々を尽くして来た中国を快く受け入れた米国の外交そのものが失敗だった。中国のWTO加入に尽力したのは米国だが、その果実を手に入れて経済発展すると米国と対立し始めた。
 かつて米国は「遠交近攻策」で日本を挟み撃ちにして壊滅させたが、その恩義を多少なりとも中国は米国にお返ししただろうか。オンブにダッコで経済大国になるや爪を立て牙を剥いて「戦狼外交」に転じた。

 イエレン氏は中国に「デフレを輸出するな」と注文を付けに行ったようだが、所詮は無駄だ。中国は話し合いで譲歩するような国ではない。犬は態度で躾けるしかないが、中国も態度で示すしかない。その意味で対中デカップリング策を実施したトランプ氏は正しかった。中国を「敵」ではなく「競争相手」だと表現するバイデン氏の米国は舐められるだけだ。
 真壁氏は「中国が貿易戦争の重要なリスク要因になりつつある」との認識のようだが、デカップリングしてしまえばリスクなどの影響は何もない。付き合おうとするからリスクがあるのだ。先進諸国が中国を無きものとして無視すれば、中国は自ずと自壊し滅亡する。「競争相手」だと、相手にする方がどうかしている。


<私事ながら>
この度、歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにクラウドファンディングをはじめました。既に電子版では公開していますが、紙媒体でも残しておきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」を読みたい方はこちらをクリックして下さい。

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