(今年は)新しい戦前になるんじゃないですかね。

<この国がアメリカの属国にすぎないことをまざまざと見せつけた、先日の日米首脳会談。岸田文雄首相および官邸は「異例の厚遇を受けた」「日本の防衛力強化が歓迎された」「全面的な支持を受けた」だのとアピールしているが、防衛費増額や敵基地攻撃能力の保有、トマホークの爆買いなど、国民への説明も後回しにしてこれだけの貢物をアメリカに差し出したのだから、歓迎されるのは当たり前の話だ。

 そして、アメリカに歓迎されたことは評価できるようなものではまったくない。今回の日米共同声明では「日本の敵基地攻撃能力の開発と効果的運用について協力を強化する」ことが明記されたが、これは「日米が一体化し、アメリカの指揮の下、日本が他国の領土を直接攻撃する」と宣言したようなものだ。

 つまり、今回の日米首脳会談によって、日本がアメリカの戦争に巻き込まれ、他国から攻撃されるリスクをより一層高めてしまったのである。

 ところが、大手メディアはこうしたリスクを指摘することもなく、「日米同盟の強化は必須」「防衛力強化は絶対」と言わんばかりの報道に終始している。

 たとえば、16日放送の『ひるおび』(TBS)では、“異例の厚遇の実態”と銘打って日米首脳会談を特集。「他国のトップリーダーたちと同じ出迎え方をされた」「(バイデン大統領から)非常に親しみが出ている」など、厚遇を受けたかどうかというどうでもいい検証をおこなったのだが、防衛費増額についても司会の恵俊彰は、台湾有事などをあげたあとで「どんなものが必要なのか、何で攻撃されそうなのか、だからこういうものを買うんですよという(説明が岸田首相には必要)」「本気で守るんだったら(トマホークより)もっとすごいものを買う必要があるんじゃないかという議論になるんならまだわかる」などとコメント。必要な議論は敵基地攻撃能力保有の是非や、それによって戦争に巻き込まれる危険性についてだが、そうした問題はすっ飛ばされていた。

 しかし、さらに酷かったのが、同日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)だ。というのも、その内容は対中戦争に日本が巻き込まれることは必然なのだと刷り込もうとするようなものだったからだ。

『モーニングショー』で政治部デスクが日米首脳会談の問題点スルーし台湾有事を煽る

 この日は解説者としてテレ朝の元中国総局長で政治部デスクの千々岩森生氏が登場。日米首脳会談の成果について、千々岩氏は「今回のポイントは抑止力の強化」とし、こう述べた。

「念頭にあるのは(中国による)台湾の武力統一。本当に中国がやろうとするときに、ちょっと待てよと。日本を敵に回したら大変な犠牲を伴う、ましてや横には世界最大の軍事力を持っているアメリカもいると。じゃあやめよう、一歩留まろうと思わせるのが抑止力。そういう意味では反撃能力の保有も含めて、抑止力が高まるというのは(首脳会談の)成果」

 千々岩氏にかぎらず、メディアは「抑止力」を声高に叫んでいるが、いくら日本が防衛費を増額させて積み上げても、中国の軍備拡張を呼び込むだけで、軍事力で上回ることは不可能。むしろ中国との緊張関係を高めるだけだ。千々岩氏は「日本を敵に回したら大変な犠牲を伴う」と思わせることができると言うが、逆に「日本が敵に回るなら大変な犠牲を払わせよう」と考えるのではないのか。

 しかも、番組では米シンクタンクの「戦略国際問題研究所」(CSIS)が9日に公表した台湾防衛のシミュレーション結果の報告書を紹介。この報告書は2026年に中国が台湾に侵攻すると想定して24通りのシナリオを検証したもので、日本が台湾防衛の「要」であることを強調。基礎シナリオでは、米軍は沖縄・嘉手納基地や山口・岩国基地、東京・横田基地、青森・三沢基地から作戦を展開し、大半のシナリオでは中国の台湾制圧は失敗するものの、日本の自衛隊は戦闘機112機と護衛艦26隻を失い、自衛隊員に大勢の死傷者が出ることが予想されている。
 そして、番組ではこうしたシミュレーション結果を紹介した上で、千々岩氏が「2026年は緊張が高まる年になるのでは」などと指摘し、このシミュレーションが現実化しかねないことを示唆。コメンテーターの石原良純も「中国や北朝鮮、ロシアといった特異な国家が近くにある」「安全保障について語り合わなきゃいけないところにきた」と発言。もはや日本が戦争に巻き込まれるのは必至であり、覚悟を決めなければならないと視聴者に迫るような内容だったのだ。
 このCSISの報告書については、『モーニングショー』のみならず、同じくテレ朝の『報道ステーション』やNHKのニュース番組などでも同様に取り上げられてきたのだが、しかし、この台湾有事を煽る報告書、検証もなく鵜呑みで報じていいようなものなのか。

台湾有事を煽り日本を対中対決に組み込もうとする CSIS報告書を検証なく垂れ流すメディアの罪
 じつは、米国の外交専門家の間では、中国がすぐに台湾に侵攻し、米中戦争が起きるとする意見はけっして主流ではない。

 つい最近、国際的な危機分析をする米の調査会社ユーラシア・グループが、2023年の国際政治における「10大リスク」を公表したが、台湾有事については、米中両国が相互に経済依存関係を深めていることを理由に、ランク外の「リスクもどき」に分類していた。
 にもかかわらず、なぜ、こんな報告書が出たのか。それはこの報告書を出したのが、あのCSISであることと大いに関係があるのではないか。
 CSISは、アメリカの政財界の意向を受けて日本をコントロールする“任務”を帯びた知日派「ジャパンハンドラー」の巣窟と言われてきた民間シンクタンクであり、日本政府はCSIS に対し、安倍政権下の2013年度からの6年間、なんと2億9900万円もの寄付をおこなっていたことも判明している。さらに日本政府は巨額の寄付だけではなく、CSISに客員研究員として人員を送り込んでおり、これまでもCSISのレポートにはジャパンハンドラーたちと日本側の意向が盛り込まれているのではないかと指摘されてきた。
 しかも、この報告書が公表されたのは、まさに日米首脳会談の直前だった。
 ようするに、日本が米中対立に協力し、米国の兵器を大量購入できるように日本国内の世論を形成するため、米国ジャパンハンドラーとポチ体質の日本政府が連動して、仕掛けた報告書なのではないか。実際、この報告書を取り上げた東京新聞(18日付)も〈日本を対中対決に組み込む意図が働いているのでは、との見方も出ている〉と指摘していた。
 さらに言えばこの報告書は日本を台湾防衛の「要」であることを強調しているだけでなく、
〈日本の基地で航空機を攻撃から守るため、強靱性を高めることが必要〉
〈有事に備え、日本の民間飛行場の利用を確実にすることも必要〉(朝日新聞12日付)
 と提言するなど、直接的な日本の戦争参加までを主張する内容が盛り込まれている。『モーニングショー』や『報ステ』がこの報告書を紹介した際、防衛省の研究機関である防衛研究所の高橋杉雄氏が出演し、「(ウクライナのような)民間人の被害者はおそらく出ない」などと解説していたが、民間飛行場が利用されるようなことになれば、とんでもない民間の被害が出るのは想像に難くないだろう。

「日米同盟の強化・深化」が意味する問題を伝えず、対中対決に日本を巻き込み「戦争ができる国」へと変えていこうとする思惑が透けて見える報告書を検証もなくメディアが垂れ流し、台湾有事に巻き込まれることは地政学的に自明なのだと視聴者に刷り込む──。一方、今回の日米首脳会談にかんする報道のなかで、アメリカと一体化することの危険性や外交努力がおろそかにされていることなどの問題点を指摘したのは、『サンデーモーニング』(TBS)の青木理氏と『サンデーステーション』(テレ朝)の柳澤秀夫氏くらい。『モーニングショー』も、もし玉川徹氏が出演していれば、このような内容にはなっていなかっただろう。

「自分の国は自分で守る」覚悟を迫る日経新聞 政治部ツイッターは安保3文書閣議決定を批判する野党を攻撃
 無論、こうした歪な報道はテレビだけの問題ではなく、新聞も同様だ。
 産経新聞や読売新聞が前のめりになっているのはもちろんだが、異常なのが日本経済新聞だ。今回の日米首脳会談や外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)についても〈日本が保有を決めた「反撃能力」の運用をめぐり日米が協力して対処する方針で一致したのは適切〉〈同盟関係は新時代に入り、日本は「自分の国は自分で守る」覚悟を問われる〉などと主張している日経だが、驚かされたのは、日経の政治部が運営している公式Twitterアカウント「日本経済新聞 政治・外交」の投稿だ。

 昨年、安保3文書の改定を閣議決定した際、立憲民主党の泉健太代表が「容認できない」と声明を出したが、このニュースを日経の政治部長・吉野直也氏が取り上げたツイートに対し、政治部の公式アカウントはこう投稿したのだ。
〈国民の生命と財産が脅かされても被害が出るまで何もしないということでしょうか。旧民主党が政権を陥落したのは非現実的な安全保障政策が一因でした。〉
 なんと、日経政治部の公式Twitterは、国会での議論もないまま先の戦争の反省から築かれた防衛政策をあっさり覆し、他国の領土を攻撃することを可能とする装備の導入を閣議決定で決めてしまった岸田政権の暴挙を指摘するでもなく、逆に野党からの批判を政権と一体化して非難してみせたのだ。しかも、政治部長がトスを上げて政治部アカウントがアタックするという阿吽の呼吸で、だ。

 本サイトで報じたように、敵基地攻撃能力の保有などのための防衛費増額にかんして検討してきた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」には、山口寿一・読売新聞グループ本社社長兼日本テレビホールディングス取締役会議長や、喜多恒雄・日本経済新聞社顧問がメンバーとして参加。メディア現役幹部でありながら、岸田政権による「防衛費増額ありき」の議論を推進した当事者だ。その配下にある読売と日経の紙面がこのようになるのは当然かもしれないが、常軌を逸したツイートを見るかぎり、日経政治部はもはや大政翼賛会状態にあるとしか言いようがないだろう。

 防衛費増額にかんしては、テレビも新聞も、世論調査の結果を盾にして「国民は防衛力強化を容認している」ことを前提とし、問題を防衛費の財源論に矮小化してきた。だが、読売新聞の世論調査では、防衛力強化のための防衛費増額について、12月2〜4日実施分では賛成51%・反対42%だったのが、最新の1月13〜15日実施分では賛成43%・反対49%となり、わずかながらも反対が逆転して上回ったのだ。このような状況でも、「国民は防衛力強化を容認している」などということを前提にした報道を、メディアは今後もつづけるつもりなのだろうか。
 まるで戦争突入前の大衆扇動のような報道を垂れ流すメディア。岸田政権の暴挙に対してだけではなく、メディアの報道にも監視の目を光らせていかなくてはいけないだろう>(以上「LITERA」より引用)



 昨年12月28日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)のゲストはタモリ氏だった。番組の中で、黒柳氏が「来年はどんな年になるでしょうかね」と問われ、タモリ氏は少し考えて「誰にも予測できないですよね」と前置きしながら「新しい戦前になるんじゃないですかね」と答えた。
 まさにタモリ氏の予言通り、今年は新しい戦前になりそうだ。国民の52%がマスメディアに踊らされて「防衛費倍増」に賛成だという。その中身も何も検討しないで、ただ漠然と国民の過半数が「防衛費倍増に賛成」と意思表明するのは、まさに新しい戦前の再現だ。

 新しい戦前とはマスメディアが翼賛会一色に統一され、国民世論を「鬼畜米英」に染め上げ、あらゆる政府批判を封じ込めた「あの戦前」に回帰している、とタモリ氏は指摘している。しかし直截的にそのことを指摘するとテレビ番組から降板されるのを知っているため、タモリ氏は漠然とした表現にとどめたのだろう。
 しかし明確に指摘しなければ国民の大多数は分からない。それは国民がバカだからではなく、マスメディアが実に巧妙に世論誘導しているからだ。それは中国の軍拡の脅威を日常的に煽り、北朝鮮のミサイル発射を日本への攻撃でもあるかのようにJアラートまで鳴らしたことに顕著だ。

 だが日本が打ち上げた人工衛星は幾つも日常的に北朝鮮上空を通過している。その度に北朝鮮は日本の攻撃か、と警戒警報を鳴らしているだろうか。中国の軍拡にしても、全部とは云わないが、殆どすべてはカタログ・スペックでしかない。日本のマスメディアが遼寧を恐れるのなら、中国は日本の準空母こそ怖れるべきだろう。なぜなら性能に於いて日本の準空母の方が格段に上だからだ。
 日本が恐れるべきは反米政策の中国ではなく、親米政策を採る中国だ。中共政権は米国の手厚い支援の下、成立した政権だ。その当時は米国は「遠交近攻策」を採って、日本を攻撃するために中共軍を支援していた。日米開戦半年前には重慶に米空軍のフランイグタイガー戦闘機部隊が駐留して、中国戦線の日本軍を攻撃していた。つまり日米開戦は真珠湾攻撃の半年前から宣戦布告ないままに米軍の対日攻撃が始まっていた。

 国共合作によって日本軍は大陸で苦戦し、日米戦争の終結により大陸から撤退したが、その後に中共政府が樹立されたが、中国は改革開放策とWTOに加盟したことから現在の発展を見た。同時に、軍事独裁政権の中共政府が経済発展すれば軍拡を行うのは当初から解っていた。彼らは軍事力で国民党から中国を奪ったが、軍事力で奪い取った政権の宿命として、国の内外の軍事力に怯えて暮らさなければならない。
 中共政府の至上命題は独裁体制の維持だ。独裁体制さえ維持できれば「オラが春」は続くことになる。国民から搾り取って巨万の財を溜め込むことも、美女を囲うことも可能だ。実際に中国強制党幹部は国外の金融機関に巨万の富を溜め込み、米国カリフォルニアには「めかけ村」と呼ばれる中国の特殊な美女が多数暮らしている。

 そんな中共政府が米国と事を構える、と考える方がどうかしている。台湾進攻を叫ぶのは国内引き締めのレトリックでしかない。だから空母・山東が航行不能になってドックに入ったままであろうと、空母・福建の電磁カタパルトがナンチャラ・カタパルトで使い物にならなくても、一向にお構いなしだ。それらも中国統一のレトリックの一部でしかないからだ。
 もちろん米国もそうしたことは承知の上で、日本政府にポンコツ米国製兵器を引き取ってもらいたいために台湾有事を煽っている。それだけのことだが、そうしたレトリックを見抜けないアホウがマスメディアに登場して実しやかに「台湾有事は日本有事だ」と主張し、国民の恐怖心に付け込んで巨額防衛利権に喰いつこうとしている。

 日本のマスメディアが健全ならば、そうした国際関係の舞台装置と米中両国関係の歴史的な推移を分析・検証すべきだが、テレビ・新聞のマスメディア業界にはそうした頭脳の持ち主もいないようだ。
 かくして明晰な頭脳を持つタモリ氏は、それでもマスメディア業界に長年在籍して来た者の礼儀として、辛辣なマスメディア批判をすることなく、今年の世相を聞かれて「新しい戦前ですかね」と応えるにとどめた。

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