米国とイランが合意した「覚書」はまさに「薄氷」だ。
<米ホワイトハウスが18日に、イランと合意した戦闘終結に向けた覚書(MOU)の写しを議会に提出したことがロイターが確認した文書で分かった。
米国とイランが合意した戦闘終結に向けた覚書が明らかになった。REUTERSの「米政権、イラン覚書を議会に提出 軍事作戦終結や封鎖解除など網羅」という記事に掲載された。
覚書は両国の大統領が17日に署名した。 ロイターが確認した文書の要点は以下の通り。
*米国とイランは、レバノンを含む全ての戦線での軍事作戦を即時、かつ恒久的に終了する
*米国とイランは60日以内の最終合意締結に向けて交渉すると確約、双方が合意すれば交渉期限を延長できる
*米国は30日以内に、イランに対する海上封鎖を全面的に解除する
*最終合意成立後、米国は30日以内にイラン周辺地域から部隊を撤収する
*米国と地域のパートナー国は、イラン向けに総額3000億ドル規模の復興・経済開発計画を策定する
*イランは60日間、ホルムズ海峡を通航する商船に対し料金を徴収せず安全な航行を保証する
*最終合意の一環として、米国は対イラン制裁を終了する
*イランは核兵器を取得・開発しないと確約
*米国はイラン産原油の輸出に関する適用除外措置を導入する
*米国とイランは凍結されているイラン資産の解放を巡り協議する
*米国とイランの最終合意は、国連安全保障理事会決議による承認を受ける>(以上「REUTERS」より引用)
米国とイランが合意した戦闘終結に向けた覚書が明らかになった。REUTERSの「米政権、イラン覚書を議会に提出 軍事作戦終結や封鎖解除など網羅」という記事に掲載された。
しかし交わされたのは「米国とイラン」の覚書であって、中東全域の戦火を鎮めるものではない。つまり米国はイスラエルがこれからもレバノンのヒズボラやガザのハマスと紛争を続けたいのなら「どうぞ」と切り離した格好だ。
だから高市政権は「覚書」が交わされたことを歓迎しつつ、今後とも中東全域の平和のために尽力する、との発言を官房長官がしたのだろう。つまり米国とイランの「覚書」は中東の平和を包括するものではなく、イランと米国の戦争終結を取り決めただけだ。
それにより米国と中東のパートナー国はイラン復興のために3000億ドル(約48兆円)もの経済支援することになる。米国は中東諸国に根回しした上での発表だろうが、イラン革命防衛隊が湾岸諸国をミサイルやドローンで破壊した被害について、一切触れられていないのは気になるところだ。
またイランの核開発に関して「イランは核兵器を取得・開発しないと確約」とあるが、具体的な手続きはこれから交渉する段階で詰めるのだろうか。そこで「覚書」が破綻することはないのだろうか。
そしてイランが支援してきたテロ集団との関係を清算するのか、それともイラン革命政権の「革命」の輸出と称して、テロ集団を支援し続けるのだろうか。その言質が一切ないことが気になるところだ。
またホルムズ海峡の航行の自由は60日間保障されているが、その後の「航行の自由」には触れらりていない。それでは60日経過後にイランがホルムズ海峡の通行料を徴収しかねなく、国際海域の自由航行が破られることになる。国際海域の「航行の自由」が一ヶ所でも破られたなら、他の国際海域に面する国が通行料を徴収する暴挙に出ないとも限らない。世界が海賊時代に逆戻りするのではないかと危惧する。
そして米国はイランとの停戦協議締結後は中東から手を引く、と「覚書」に明記されている。今後はイスラエルがいかなる事態になろうとも、米国の知ったことではなくなるのか。
いうまでもなく、イランはペルシャ人の国だ。人種構成で見るとペルシャ人は約61%を占めていて、公用語であるペルシャ語を母語とする。その他にアゼルバイジャン人が約16〜25%で、北西部に多くトルコ系の言語を使用する。またクルド人が約10%で独自の言語や文化を持つ。その他にはルーリー人、アラブ人、バローチ人などもいる。
イラン革命政府はアラブ人の中東諸国に対して攻撃的な姿勢を示してきたが、今後はどうなるのだろうか。独裁政権はその存続のために戦争を必要とするが、イラン革命政府を瓦解させられなかった米国は中東の戦争の震源地だったイランの存続を許すのだろうか。それでも中東湾岸諸国はイラン復興のために5兆円規模の援助に手を貸すだろうか。
この「覚書」は米国とイランの両国が停戦協議の席に着くまでに、何らかのトラブルが生じると暗示させるものだ。余りにも不確定要素満載の「覚書」だ。この「覚書」を歓迎した株価は投資家たちが能天気な証左だ。とてもではないが、今後の推移を慎重に見守るしかない。まさに薄氷を踏む思いだ。