定年後も働ける限りは働いた方が良い。人は死ぬまで進歩し続ける。

65歳以降も仕事をする人が増えている
――『定年後の仕事図鑑』には、65歳以降もさまざまな仕事に就き、働く人のリアルな声がたくさん載っています。今の時代、定年後も働く人は多いのでしょうか?
 坂本貴志氏(以下、坂本):総務省の調査によれば、2020年の時点で65歳男性の就業率は62.9%、70歳男性の就業率は45.7%、75歳男性の就業率は28.7%となっています。定年後も働き続けることは特別ではなくなっていますよね。今後も就業率は上がっていくでしょう。
――昔は定年後は引退してのんびり暮らすイメージでしたが、今は全然違うのですね。
坂本:今の高齢者の方はとても元気なんです。体力も向上しており、10年前と比較すると5歳くらい若返っているというデータもあります。
――年齢不問や高齢者OKの働き口は増えているのでしょうか?
坂本:はい。シニアの方歓迎の求人はとても増えています。人口減少に伴い、多くの企業では人手不足なんです。若い人を採用しようにも、そもそも若い人が少ないという状況ですから、「それなら高齢者の方に働いてもらおう」ということで環境を整えています。今後もシニア歓迎の求人は増えていくと思います。

「仕事の満足度」は現役世代より、高齢世代が高い
――本書に載っている就業者インタビューを見ると、実際の働き方や収入、仕事の良いところや大変だと感じるところなどが具体的にわかります。みなさん元気ですし、前向きに仕事をされている方が多い印象を受けました。定年後も何らかの仕事に就いたほうが幸せなのかもしれないとも思ったのですが、どうなんでしょうか?
坂本:定年後も働いた方が幸せだと思う方もいますし、そうでない方もいます。私は「働いたほうが幸せだ」と言うつもりはありません。「年をとってまで働くなんて勘弁してほしい」という方もいると思うんですよ。経済的余裕があって働く必要がなければ、当然、働かない選択肢もありですよね。
 ただ現実問題として、年金の給付水準が厳しくなっている一方で物価が上昇しており、多くの方が何らかの仕事をする必要が出てきています。ただ、「働いている人が不幸せかというと、まったくそんなことはない」ということは言えます。
「仕事に満足している人の割合」のデータを見ると、若年期から中堅期の就業者よりも、高齢期の就業者のほうが仕事に満足している人が多いことがわかります。若い頃は高い収入や栄誉に仕事の価値を感じていたのが、50代でそれらに意義を見出せない状況が訪れて満足度が低くなりますが、そこから徐々に違う形で仕事の意義を再発見すると考えられます。
 幸福度についても同様で、50代を境にシニア世代になるほど幸福度が上がっているんです。
「働いているから幸せ」という因果まではわかりませんが、少なくとも、現在働いているシニアの方で幸福感を感じている方や仕事に満足している方はたくさんいらっしゃるわけです。多くの方が無理のない仕事と豊かな生活を実現されていると思います。

現役世代とは違う働き方とは?
――シニアの方にインタビューする中でもそのような印象を持たれましたか?
坂本:はい。もちろん捉え方は人によってさまざまですが、多くの方が前向きに仕事に取り組んでいらっしゃいます。現役世代の方にお話を聞くのとはかなり印象が違いましたね。もちろん現役世代の方も、仕事にやりがいを持って前向きに取り組んでいますが、同時に仕事のストレスも大きいのです。労働時間が長いことであったり、仕事の難易度や負荷が高くて忙しすぎるということであったり、責任の重さ、職場の人間関係の悩みなどストレスの要因がいろいろありますよね。それでも、ある程度我慢して頑張らなければならない現実があるのが現役世代です。
 それに対して高齢者の方はもう少し自由です。現役世代のように稼ぐ必要がありませんから、マイペースにできるんですね。長時間働くのはきついと思えば、週に3日とか、週に5日でも午前中だけとか、無理のない働き方をされている方が多いです。今40代50代の方が「今やっている仕事を定年後もそのまま続ける」と考えると、それはきついですよね。確かに一部の人は現役世代の仕事をそのまま続けていますが、ほとんどはそうではありません。仕事の内容もペースも変えて、無理なく働いているんです。

幸せに働ける仕事選びのポイント
――定年後も幸せに働ける仕事選びのポイントを教えてください。
坂本:まずはどんな仕事があるのかを把握するのが第一歩です。『定年後の仕事図鑑』には100の仕事がデータやインタビューとともに載っていますから、「こんな仕事もあるのか」と発見があるんじゃないでしょうか。その中で実際に仕事を選ぶ際には、「どのくらいの時間を費やして、どのくらい稼ぎたいか」が大事です。ご自身の家計の状況を把握したうえで選ぶといいと思います。
 あとは、「やってみたい仕事」もぜひ考えてみてほしいです。子どもと関わるのが好きだから、保育補助の仕事や学童保育指導員がいいかなとか、車の運転が得意だからドライバーの仕事でできるものはないかなとか、好きなこと・得意なことから選ぶのも大切だと思います。>(以上「DIAMIND」より引用)




定年後「働き続けた人」と「仕事をやめた人」、本当に満足度が高いのはどっち?」という問いに対して、坂本貴志(リクルートワークス研究所研究員・アナリスト)氏が回答する形で定年後の働き方のヒントを示している。
 老後と一口にいっても65歳と70歳、75歳と80歳以上とでは全く異なる。五年刻みで年齢を書き記してみたが、老後の体力は個々人によって個人差が大きくなるし、個人によっても年齢によって体力の落ち方が大きく異なる。そのため一括りで「何歳まで働ける」などと乱暴な議論はしない方が良い。

 高齢者の体力は個人差が大きい、という前提で仕事を考えるべきだ。もちろん高齢者に重労働や緻密な頭脳労働も無理だ。ただ現役時代に長年経験した知識が役立つ仕事ならば頭脳労働も不可能ではない。
 健康寿命を延ばすためにも、定年後も働いて規則正しい生活を送ることが推奨されている。毎日が日曜日の生活がどれほど精神を蝕むか、実際に定年を迎えれば良く解る。誰からも必要とされず、誰とも会わない生活がどれほど虚しいか、定年を迎えれば良く解る。ニートの生活も斯くありなん、とニート諸氏の精神状態が容易に想像できるのも定年後の「毎日が日曜日」状態を迎えてからだ。

 しかし定年を迎えた高齢者は働けないわけではない。ただ「定年」により仕事を取り上げられただけだ。積極的に探せば仕事はある。ただ、その場合は定年直前までの会社での地位を忘れなければならない。世間との付き合い方をゼロに戻して、高齢者である自身と向き合わなければならない。いかに「自分はまだまだ若い」と自負しても、肉体年齢は「定年」を過ぎた高齢者だ、という事実を自分に充分に得心させなければならない。
 そして「自分が若い頃には」という言葉を禁句として、「若い者には負ける」心がけでいることだ。小さな自尊心は丸めてポケットに突っ込んで、ニコヤカな笑顔で再出発しよう。定年後も働ける限りは働いた方が良い。人は死ぬまで進歩し続ける。

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