中国は政府そのものを破綻処理するしかない。
<◇続く内需の低迷
中国国内に目を転じると、経済の状態はいびつなままだ。
5月の工業生産は前年に比べて4.5%上昇し、伸び率は4月の4.1%から拡大した。輸出の拡大が主な要因だ。
一方、内需の低迷は深刻になる一方だ。
5月の消費動向を示す小売売上高は前年比0.6%減となり、新型コロナウイルス禍の2022年12月以来のマイナスとなった。前回はゼロコロナ政策の規制を緩めた後に感染が広がったことが消費を冷え込ませたが、今回は政府が支給してきた家電などの買い替え補助金の効果が剥落した結果だ。
補助金の規模と対象が縮小されたことに加え、「買い替え需要が一巡した」との声が現場から出ているため、小売売上高の前年割れが続く可能性は十分にある。
◇巨額すぎる隠れ債務
中国で5月中旬から始まった恒例の大型ネット通販セール「618商戦」も低調に終わった。販売が低迷する中、大手プラットフォーマーは消費者の買い物の助けとなる最新の人工知能(AI)ツールを導入したが、成果にはつながらなかった。
ハイテク導入だけではデフレという病を治せないことの証拠が、また一つ積み上がったように思えてならない。
筆者が注目したのは、中国人民銀行(中央銀行)が14日、「5月末時点の政府債務残高が前年比15%増の100兆6000億元(約2387兆円)に達した」と発表したことだ。
不動産バブル崩壊後、中国政府が積極的な財政政策を実施してきたため、政府債務残高は2020年の46兆5500億元(約1104兆円)から5年あまりで2倍に増えた。
政府債務の規模は大きいものの、国内総生産(GDP)比は70%程度で国際的にみて低く、管理可能だとされているが、はたしてそうだろうか。
「各種の『隠れ債務』を加えれば、政府債務の実際の規模は300兆元に迫っている」との指摘があり、これが正しいとすれば、GDP比は日本並みに高いことになる。
◇雇用難も続く
日本の数字が不動産バブル処理後のものであるのに対し、中国の数字はバブル処理に必要な費用が入っていないことにも留意すべきだ。
習近平指導部がこのところ不動産市場対策に消極的になっているが、対策を進める費用を捻出するのが困難になっていることが原因なのかもしれない。
だが、不動産対策を放置すればするほど景気が悪化するのは、かつての日本が教えるところだ。悩みの種の雇用難もさらにひどくなる。
一部の地域では若年層の失業率が40%を超えており、中国の若者たちは「自国の制度自体に問題がある」と認識し始めているという。
中国政府も、失業そのものよりも「失業者が集まって抗議すること」への対策を強化し始めている。だが、お得意のハイテクを駆使して不満の芽を摘もうとしても限界がある。社会の混乱が表面化するのは時間の問題なのではないだろうか。
日本にとって厄介な存在となった隣国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ>(以上「現代ビジネス」より引用)
「債務残高2000兆円突破は入り口に過ぎない…中国社会に大混乱をもたらしかねない『隠れ債務』の存在」と題して、藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が中国経済を論評している。私は中国経済には見切りを付けて、この頃は取り上げもしなかった。それは取り上げたところで、自由経済の中で育った者の感覚で中国経済を語ると殆どすべて間違えるからだ。
中国国内に目を転じると、経済の状態はいびつなままだ。
5月の工業生産は前年に比べて4.5%上昇し、伸び率は4月の4.1%から拡大した。輸出の拡大が主な要因だ。
一方、内需の低迷は深刻になる一方だ。
5月の消費動向を示す小売売上高は前年比0.6%減となり、新型コロナウイルス禍の2022年12月以来のマイナスとなった。前回はゼロコロナ政策の規制を緩めた後に感染が広がったことが消費を冷え込ませたが、今回は政府が支給してきた家電などの買い替え補助金の効果が剥落した結果だ。
補助金の規模と対象が縮小されたことに加え、「買い替え需要が一巡した」との声が現場から出ているため、小売売上高の前年割れが続く可能性は十分にある。
◇巨額すぎる隠れ債務
中国で5月中旬から始まった恒例の大型ネット通販セール「618商戦」も低調に終わった。販売が低迷する中、大手プラットフォーマーは消費者の買い物の助けとなる最新の人工知能(AI)ツールを導入したが、成果にはつながらなかった。
ハイテク導入だけではデフレという病を治せないことの証拠が、また一つ積み上がったように思えてならない。
筆者が注目したのは、中国人民銀行(中央銀行)が14日、「5月末時点の政府債務残高が前年比15%増の100兆6000億元(約2387兆円)に達した」と発表したことだ。
不動産バブル崩壊後、中国政府が積極的な財政政策を実施してきたため、政府債務残高は2020年の46兆5500億元(約1104兆円)から5年あまりで2倍に増えた。
政府債務の規模は大きいものの、国内総生産(GDP)比は70%程度で国際的にみて低く、管理可能だとされているが、はたしてそうだろうか。
「各種の『隠れ債務』を加えれば、政府債務の実際の規模は300兆元に迫っている」との指摘があり、これが正しいとすれば、GDP比は日本並みに高いことになる。
◇雇用難も続く
日本の数字が不動産バブル処理後のものであるのに対し、中国の数字はバブル処理に必要な費用が入っていないことにも留意すべきだ。
習近平指導部がこのところ不動産市場対策に消極的になっているが、対策を進める費用を捻出するのが困難になっていることが原因なのかもしれない。
だが、不動産対策を放置すればするほど景気が悪化するのは、かつての日本が教えるところだ。悩みの種の雇用難もさらにひどくなる。
一部の地域では若年層の失業率が40%を超えており、中国の若者たちは「自国の制度自体に問題がある」と認識し始めているという。
中国政府も、失業そのものよりも「失業者が集まって抗議すること」への対策を強化し始めている。だが、お得意のハイテクを駆使して不満の芽を摘もうとしても限界がある。社会の混乱が表面化するのは時間の問題なのではないだろうか。
日本にとって厄介な存在となった隣国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ>(以上「現代ビジネス」より引用)
「債務残高2000兆円突破は入り口に過ぎない…中国社会に大混乱をもたらしかねない『隠れ債務』の存在」と題して、藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が中国経済を論評している。私は中国経済には見切りを付けて、この頃は取り上げもしなかった。それは取り上げたところで、自由経済の中で育った者の感覚で中国経済を語ると殆どすべて間違えるからだ。
中国の不動産バブル崩壊は1991年に不良債務が崩壊した日本の不動産バブル崩壊規模(最終的に100兆円)の20倍もの規模に達している。自由経済の「常識」で云えば中国不動産業界の最大手恒大集団がおよそ50兆円の負債の返済に行き詰まり、2024年1月に香港の裁判所から清算命令を受けた時に中共政府は不動産不良資産処理に手を付けるべきだった。しかし、株式売買が停止されてから二年半も経過しても、未だに中共政府は金融機関の不良債権処理を実施しようとしない。
つまり中共政府は不動産バブルが崩壊しても何もせず、崩壊したツケが個人のローン返済や金融機関の不良債権による信用喪失などの救済政策を一切していない。1991年の日本で起きたこと、不動産価格の大暴落や経済のデフレ化などが現在の中国でも起きているが、中共政府が金融処理に乗り出さないため、すべての不良債務や不良資産が中国経済を根底から蝕んでいる。
そのことに中共政府金融当局者たちは気付いていないのか、それとも気付いているが手を下したところで規模が余りに巨額で手のつけようがないとでも思っているのだろうか。しかし不良債権処理を行わない限り金融機関の信認は下落し、国際金融市場から退出させられることになる。そうした国際金融にまで思いを馳せられないほど中共政府は混乱しているのだろうか。それとも金融が多少混乱したところで自分たちの「暖衣飽食」の生活が終わるわけではないから気にしていないのだろうか。
不動産の不良債務が金融機関の信用収縮を招き、金融機関は貸出よりも返済を強要する。また金融機関は信用収縮による手元資金が不足して、顧客から窓口で要求される払い出しに応えられない。そうした銀行の窓口閉鎖が中国各地の銀行で起きているが、政府当局は警察隊を派遣して払い戻し要求者たちを蹴散らしている。そうした事態も日本では考えられないことだ。
だが中共政府が不良資産処理に手を付けていないのにはワケがある。それは表向きの経済だけでなく、金融平台が抱える不良債務の山が隠れている。金融平台とは融資平台のことであり、それは中国の地方政府が資金調達のために設立した投資会社(LGFV)を指す。中国の地方政府は直接の債券発行などに制限があるため、この平台を通じて人民などから資金を集め、インフラ開発などを行ってきた。この巨額なシャドーバンクの不良資産化が中国経済に大きな影を落とし、中国の不良資産処理を困難にしている。
しかも習近平氏は「毛沢東の時代に戻れ」と、「共同富裕」や「国進民退」と呼ばれる経済政策を推進している。これらは鄧小平時代に推進された「改革開放」や「先富論(先に豊かになれる者から豊かになる)」からの転換を意味し、中国経済を力強く成長させた外国企業や民間企業を冷遇している。これにより中国から外国企業の撤退が進み、中国経済を牽引して来た広州や深圳などの「世界の工場」と称された企業群が廃墟と化している。
外国企業が撤退し民間企業が操業停止に追い込まれると雇用が失われ、新卒者の50%近くが職に就けず彷徨っているという。もちろん農民工も多くが失業して故郷へ帰っているが、故郷の農地も地方政府に奪われて耕作すべき土地もない。今後AI化が進めばさらに雇用の場が失われ、都市部労働者も失業の波に呑み込まれることになる。
中国経済は信用収縮から経済のデフレ化が進行し、消費の減衰からさらに経済が縮小する、というデフレスパイラルに入っている。この悪循環を断ち切るには大規模な財政出動が不可欠だが、中共政府にそうした余力は残っていない。2010年から2020年にかけての華々しい経済成長の果実を軍拡や「一帯一路」などの海外投資に乱費してしまった。残っているのはポンコツ兵器の山と、外国投資の不良債権の山だけだ。
今後とも採算の見込めない高速鉄道を走らせ続ければ、中国は赤字の山を積み重ねる。全国各地にある鬼城は中国経済の今を象徴している。全国各地に摩天楼を出現させて、それが経済発展だと自画自賛してきた残骸だ。中国経済が負のスパイラルから立ち直るには、処理すべき不良資産の額が余りに大きすぎる。もはや政府そのものを破綻処理するしかない。