シャングリラ会議で突出した日本政府のパラダイムシフト。
<大きすぎる違和感。日本メディアの「シャングリラ会議の伝え方」と小泉進次郎の「おかしな質問」
ネット市民が好む「マスゴミ」という言葉は使いたくない。しかし時に、当たらずとも遠からずだと感じることがある。
5月末、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ ダイアログ)を伝えた日本の報道には、やはり大きな「疑問符」を付けざるを得ない。
メディアの注目点は、米中それぞれの軍代表の発言だった。二大国の関係がどこに落ち着くのかはアジア地域全体、そして各国に重大な影響を及ぼすだけに当然だ。なかでも先の米中首脳会談を受けた変化をどうとらえるのかは、メディアが正しくとらえなければならない重要な課題だ。
結果、注目ニュースとなったのは中国の軍代表による日本批判とアメリカのピート・ヘグセス国防長官の発言だった。
以下に、それを伝えた日本メディアの見出しを二つ選んで並べてみた。
◎ 「新型軍国主義」と対日批判の中国にアジア太平洋諸国の同調なし…日本の防衛協力評価が大勢 (『読売新聞』)
◎ 「ただ乗り許されない」ヘグセス米国防長官が中国けん制 防衛費増額要求 小泉防衛大臣が異例の直接質問も アジア安保会議 (フジテレビ国際取材部)
二つの記事を見出しだけで理解した読者がいたとすれば、中国がアメリカから批判され、会議でも孤立したという印象を持ったはずだ。感想は、「やっぱりね」といったところだろう。
だが、実態は本当にそうだったのか。
まず『読売新聞』の記事だ。中国の対日批判に「同調はなし」と断じているが、発言がなかったことと「同調なし」は明らかに異なるのだが、大丈夫だろうか。
また違和感を覚えたのは、中国に反論した例としてフィリピンのギルベルト・テオドロ国防相の演説を取り上げている点だ。フィリピンはいまや「反中」の急先鋒だ。だからこの反応は言ってみればアメリカの中国批判に北朝鮮が反論するような話だ。
記事は最後に<シンガポールの調査機関「ISEASユソフ・イシャク研究所」が加盟国の有識者に「最も信頼できる国・地域」を尋ねた調査(今年4月発表)では、日本が8年連続で1位になっている>と締めくくっている。
しかし同じ調査で、「もし中国かアメリカか、どちらかと同盟を結ばなければならないならどちらを選ぶか」という際どい問いにASEAN加盟国の平均で52%が「中国」と回答したという驚愕の変化が起きている点には少しも触れていない。
しかもインドネシアやシンガポール、タイといったASEANの中心に位置する国で、明らかに中国との関係が強まっていることも無視している。
フィリピンだけの発言で「大勢」という見出しを付けるのが適切なのか。実態は多くの国が「日中の争い巻き込まれる愚を避けた」というところだろう。
ネット市民が好む「マスゴミ」という言葉は使いたくない。しかし時に、当たらずとも遠からずだと感じることがある。
5月末、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ ダイアログ)を伝えた日本の報道には、やはり大きな「疑問符」を付けざるを得ない。
メディアの注目点は、米中それぞれの軍代表の発言だった。二大国の関係がどこに落ち着くのかはアジア地域全体、そして各国に重大な影響を及ぼすだけに当然だ。なかでも先の米中首脳会談を受けた変化をどうとらえるのかは、メディアが正しくとらえなければならない重要な課題だ。
結果、注目ニュースとなったのは中国の軍代表による日本批判とアメリカのピート・ヘグセス国防長官の発言だった。
以下に、それを伝えた日本メディアの見出しを二つ選んで並べてみた。
◎ 「新型軍国主義」と対日批判の中国にアジア太平洋諸国の同調なし…日本の防衛協力評価が大勢 (『読売新聞』)
◎ 「ただ乗り許されない」ヘグセス米国防長官が中国けん制 防衛費増額要求 小泉防衛大臣が異例の直接質問も アジア安保会議 (フジテレビ国際取材部)
二つの記事を見出しだけで理解した読者がいたとすれば、中国がアメリカから批判され、会議でも孤立したという印象を持ったはずだ。感想は、「やっぱりね」といったところだろう。
だが、実態は本当にそうだったのか。
まず『読売新聞』の記事だ。中国の対日批判に「同調はなし」と断じているが、発言がなかったことと「同調なし」は明らかに異なるのだが、大丈夫だろうか。
また違和感を覚えたのは、中国に反論した例としてフィリピンのギルベルト・テオドロ国防相の演説を取り上げている点だ。フィリピンはいまや「反中」の急先鋒だ。だからこの反応は言ってみればアメリカの中国批判に北朝鮮が反論するような話だ。
記事は最後に<シンガポールの調査機関「ISEASユソフ・イシャク研究所」が加盟国の有識者に「最も信頼できる国・地域」を尋ねた調査(今年4月発表)では、日本が8年連続で1位になっている>と締めくくっている。
しかし同じ調査で、「もし中国かアメリカか、どちらかと同盟を結ばなければならないならどちらを選ぶか」という際どい問いにASEAN加盟国の平均で52%が「中国」と回答したという驚愕の変化が起きている点には少しも触れていない。
しかもインドネシアやシンガポール、タイといったASEANの中心に位置する国で、明らかに中国との関係が強まっていることも無視している。
フィリピンだけの発言で「大勢」という見出しを付けるのが適切なのか。実態は多くの国が「日中の争い巻き込まれる愚を避けた」というところだろう。
中国が「ただ乗りした」ように誤読できるフジテレビの報道
次にフジテレビの記事だが、この見出しではまるで中国が「ただ乗りした」ように誤読できるが、結局、伝えているのは、アメリカが「中国をけん制」したということだ。つまりこれも『読売新聞』と同じく、まだ米中対立は続いていて、中国も嫌われていると言いたいようだ。
そう信じて安心したいのは分かる。しかし、国防総省が発表したヘグセス国防長官の発言を全部読んでも、そこから中国に対する厳しい姿勢は伝わってこない。
もちろん、確かに、「中国を含むいかなる国家も、自らの覇権を押し付け、アメリカや同盟国の安全と繁栄を脅かすことはできない」と発言している。しかしこれは「中国も含む」とわざわざ書いているように一般論だ。しかも目新しさはない。
むしろ注目しなければならないのは、米中首脳会談の流れをはっきり示した以下の発言ではないだろうか。
「トランプ大統領のリーダーシップの下、米国と中国の関係は長い年月の中で最も良好だ。トランプ大統領とこの政権は、中国との安定した平和、公正な貿易、そして尊敬に基づいた関係を求めている。これが実現したことは偶然ではない」
もっとも日本の新聞の中にも正確なものもある。例えば同じ『読売新聞』の別の記事(「ヘグセス米国防長官「ただ乗りは終わりだ」と宣言…全同盟国に国防費「GDP比3.5%」引き上げ要求」)だ。同じ媒体でも記者の力量で差が出るのだろう。
そして最後にフジテレビの記事が伝えた「小泉防衛大臣が異例の直接質問」についても触れておこう。勇気のある質問で率直に驚かされたからだ。
何といってもヘグセス国防長官は対GDPの国防費の増額を各国に求めた張本人だ。その意図は「自分で守れ」だ。つまりアメリカに頼るな、と突き放したのであって、関与の縮小を宣言したに等しい。
そのヘグセス氏に向かって「米国の関与が過小評価されていると感じますが、地域を安心させる言葉を頂けますか」(フジテレビ)と小泉大臣は求めたというのだ。
発言の意図が「揺るぎないアメリカへの忠誠心」だというのは分かる。しかしピントがズレ過ぎていないだろうか。こんなことをするのはいまや日本とフィリピン、そして台湾しか見当たらない。
繰り返しになるが、その構図に最も大胆にメスを入れているのが、いまのトランプ政権自身なのだ。
日本とフィリピンは、意図的にそのことに気が付かないふりをしているのだろうか。
6月3日、国連の新たな非常任理事国を選ぶ選挙で、フィリピンはライバルと目されたキルギスタンに敗れた。その敗因の一つは、内政の不安定さなのだという。よく指摘されることだが、フィリピンの「反中」は、内政の不安定さを外の「敵」に向けてごまかす典型ともされる。
ここ数年中国は、困窮したフィリピンのために化学肥料やジェット燃料を支援してきた。一方で対立を抱えながらも援助の手を差し伸べてきたのだが、今回のシャングリラ・ダイアログの件で、いよいよ堪忍袋の緒が切れたのか、「中国の援助はいつまでも続かない」(外交部報道官)と宣言した。>(以上「MAG2」より引用)
次にフジテレビの記事だが、この見出しではまるで中国が「ただ乗りした」ように誤読できるが、結局、伝えているのは、アメリカが「中国をけん制」したということだ。つまりこれも『読売新聞』と同じく、まだ米中対立は続いていて、中国も嫌われていると言いたいようだ。
そう信じて安心したいのは分かる。しかし、国防総省が発表したヘグセス国防長官の発言を全部読んでも、そこから中国に対する厳しい姿勢は伝わってこない。
もちろん、確かに、「中国を含むいかなる国家も、自らの覇権を押し付け、アメリカや同盟国の安全と繁栄を脅かすことはできない」と発言している。しかしこれは「中国も含む」とわざわざ書いているように一般論だ。しかも目新しさはない。
むしろ注目しなければならないのは、米中首脳会談の流れをはっきり示した以下の発言ではないだろうか。
「トランプ大統領のリーダーシップの下、米国と中国の関係は長い年月の中で最も良好だ。トランプ大統領とこの政権は、中国との安定した平和、公正な貿易、そして尊敬に基づいた関係を求めている。これが実現したことは偶然ではない」
もっとも日本の新聞の中にも正確なものもある。例えば同じ『読売新聞』の別の記事(「ヘグセス米国防長官「ただ乗りは終わりだ」と宣言…全同盟国に国防費「GDP比3.5%」引き上げ要求」)だ。同じ媒体でも記者の力量で差が出るのだろう。
そして最後にフジテレビの記事が伝えた「小泉防衛大臣が異例の直接質問」についても触れておこう。勇気のある質問で率直に驚かされたからだ。
何といってもヘグセス国防長官は対GDPの国防費の増額を各国に求めた張本人だ。その意図は「自分で守れ」だ。つまりアメリカに頼るな、と突き放したのであって、関与の縮小を宣言したに等しい。
そのヘグセス氏に向かって「米国の関与が過小評価されていると感じますが、地域を安心させる言葉を頂けますか」(フジテレビ)と小泉大臣は求めたというのだ。
発言の意図が「揺るぎないアメリカへの忠誠心」だというのは分かる。しかしピントがズレ過ぎていないだろうか。こんなことをするのはいまや日本とフィリピン、そして台湾しか見当たらない。
繰り返しになるが、その構図に最も大胆にメスを入れているのが、いまのトランプ政権自身なのだ。
日本とフィリピンは、意図的にそのことに気が付かないふりをしているのだろうか。
6月3日、国連の新たな非常任理事国を選ぶ選挙で、フィリピンはライバルと目されたキルギスタンに敗れた。その敗因の一つは、内政の不安定さなのだという。よく指摘されることだが、フィリピンの「反中」は、内政の不安定さを外の「敵」に向けてごまかす典型ともされる。
ここ数年中国は、困窮したフィリピンのために化学肥料やジェット燃料を支援してきた。一方で対立を抱えながらも援助の手を差し伸べてきたのだが、今回のシャングリラ・ダイアログの件で、いよいよ堪忍袋の緒が切れたのか、「中国の援助はいつまでも続かない」(外交部報道官)と宣言した。>(以上「MAG2」より引用)
「“マスゴミ”と呼ばれて当然。大手日本メディアの「シャングリラ会議」めぐる報道への“大きな疑問符”」と題して富坂聰(ジャーナリスト)氏が先のシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ ダイアログ)に関する小泉防衛相の発言とオールドメディアの取り上げ方を論評している。
いうまでもなく、オールドメディアの関心事は中国政府員による日本を「新軍国主義」批判に対して小泉防衛相が正々堂々と反論したことだ。それはかつてないことだった。
しかし日中軍事比較をするまでもなく、中国の「軍事大国」は米国に次ぎ、世界でも突出している。中国の軍事力は、現役兵力約96万人、海軍艦艇約690隻、作戦機3370機以上を擁し、世界最大規模を誇る。ことに核兵器に関してはアメリカ国防総省や国際研究機関(SIPRIなど)の分析によると現在の保有数は約600発だが、世界のどの国よりも早いペースで核戦力の拡大を進めており、2035年までに核弾頭の保有数を約1500発から2000発規模にまで引き上げる計画(予測)が進められている。
また南シナ海や東シナ海、さらには台湾や尖閣諸島に対して侵略意図を隠そうともせず、中国艦船による領海侵犯が日常化している。そのような軍事力による国境線の変更を企てる中国が日本の防衛予算が増加したとして「新軍国主義」だと批判するのは的外れな内政干渉でしかない。
ただ富坂氏は米国が中国に対して厳しい対決姿勢を示さず、その代わり日本に米国の「傘」に相当の負担金を支払うべきだ、とヘグセス国防長官の言葉を引用して、米国が日本の防衛の頼りになるのかと疑問を呈している。しかし米国は日本から手を引くわけにはいかない。なぜなら日本の基地に駐留する米軍はアジアのみならず中東からアフリカ東海岸までの「防衛」を担っているからだ。その証拠にペルシャ湾に向かった米海兵隊の主力部隊は沖縄(キャンプ・ハンセンなど)に駐留する第31海兵遠征部隊であり、長崎県の米海軍佐世保基地を拠点とする強襲揚陸艦「トリポリ」などに乗艦して展開している。
つまり米国が日本に駐留する米軍経費負担増を求めるなら、その米軍の「日本防衛経費」部分だけを負担すると宣言して、日本側が厳密に経費割合を計算し始めたら困るのは米国側だ。だからヘグセス国防長官が具体的な「米軍経費の日本負担増額」を議題に協議を始めたなら、米国に対する日本の「思いやり予算」は減額される可能性が高い。
引用記事中でヘグセス国防長官に「米国の関与が過小評価されていると感じますが、地域を安心させる言葉を頂けますか」と小泉防衛省が発言したのも、度重なるトランプ氏の米国の世界の警察官としての役割の縮小発言を意識したものだ。本当にアジアが膨張する中国を第一次列島線の中に閉じ込めなくて良いのか、第一次列島線が崩壊したなら、ハワイやグアムといった第二次列島線が対中防衛線の最前線となり、それは即ち米国の国境に迫ることではないか、とヘグセス氏を暗に諫めた言葉だ。
従来の日本政府要人が、そうした発言はしなかった。しかし国防に責任を持つ高市政権が防衛予算増を決断したからには、米国に対しても当然の米国の防衛責任を持つべきだ、という姿勢に転じた。そうした日本政府が防衛姿勢を明確化したことに、中共政府が敏感に反応している。高市発言を重大視して、国会の「親中派」勢力が必死になって高市発言を攻め立て、親中派オールドメディアが連日のように「存立危機事態」発言を報道した。だが、国民の圧倒的な高市政権支持は揺るがず、ついにトランプ氏の北京訪問時に習近平氏が泣きついた。しかし当然ながらトランプ氏の高市政権支持も揺らがなかった。
アジアの安定における日本の指導的地位は高まり、日本を中心に各国がスクラムを組んで巨大な中国軍事力と対峙するようになった。その明確な表れが今回のシャングリラ会議だった。