AGIが仕事現場に進出する日。

人間の感情を理解するスーパーAI
 近年、AI(人工知能)はこれまでにはない急激なスピードで進化し、私たちの暮らしやビジネスにおいて身近なものになりました。
 さらなる進化が期待されるAIの中でも、いま特に注目を集めているのが「AGI(汎用人工知能)」です。
 AGIとは「Artificial General Intelligence」の略称で、人間のような高度で幅広い知能を持つ、極めて汎用性の高いAIです。
 AGIが従来のAIと大きく異なるのは、まるで人間のように思考し、なおかつ人間の感情を理解する能力を持っていること。本来人間が持つ「喜怒哀楽」といった特有の感情を学習しながら自ら進化できる。まさに、万能型の「スーパーAI」とでもいうべき存在がAGIなのです。
 例えば、仕事をしているあなたの顔色や声のトーンから疲労度を察知してコーヒーを淹れてくれたり、肩が凝ったなという表情や動作を察知してマッサージをしてくれたりするヒューマノイド型AIを想像したら、何だかワクワクしてきませんか。
 あるいは、今日は子どもの誕生日だから残業せずに早く家に帰りたいといったときに、
「今日はお子さんの誕生日ですね。あとの仕事はお任せください」とその日のうちに片づけなければならないタスクをAIが引き受けてくれたら、「なんて気配りができるAIだ!」と、最高のビジネスパートナーとして迎え入れるのではないでしょうか。
 AGIはある特定のタスクをこなす従来の特化型AIとは異なり、ありとあらゆる知的活動をこなすことができるため、その応用範囲は計り知れないといわれています。このような能力をビジネスや日々の生活に応用すれば、AGIは私たちが生きるこの世界に大きな革命をもたらす可能性があるのです。

AGIで私たちの未来はどう変わるのか?
「コーヒーを淹れてくれるだけのAIなら、あまり役に立たないのでは?」
 そんな声も聞こえてきそうですね。では、AGIがいったいどのようにビジネスで役立つのかについて、もう少し深く切り込んでみましょう。
 人間のような高度で幅広い知能を持ちながら感情を理解する能力を持っているAIと聞いて、まず思いつくのがコミュニケーションの領域です。AGIが実現すると、より人間に近いコミュニケーションが可能となります。
 AIによるコミュニケーションと聞いて、皆さんが真っ先に頭に浮かべるのは、「ChatGPT」ではないでしょうか。
 もはや説明は不要かもしれませんが、ChatGPTはアメリカのオープンAI(OpenAI)が開発・提供している対話型のAIサービスです。2025年2月時点で全世界のユーザー数はおよそ4億人を超えたと推計されています。
 皆さんのなかにも、「ChatGPTを使ったことがある」という方も多いと思いますが、ChatGPTはあくまでも人間からの質問に対して答えを導き出しているAIに過ぎません。いわゆる「生成AI」というものです。
 一方で、AGIは人間と変わらない対話が可能になると期待されています。
 わかりやすい例でいえば、カスタマーサポートやコールセンターです。従来のAIでは、顧客のクレームなどに対して極めてマニュアル的な対応しかできず、ときに火に油を注いでしまうケースも少なくありませんでした。
 ところが、AGIは顧客のクレームに対して顧客の感情を読み取るので、最適なソリューションを提供することが可能になります。顧客の気持ちを瞬時に酌み取ることができる、いわば「忖度できる」AIがAGIなのです。

高度な意思決定も可能に
 AGIのビジネス活用はまだまだあります。
 そのひとつが意思決定です。AGIは、自主的で高度な意思決定も可能となります。例えば、あなたがビジネスにおける重要な意思決定に迫られたとしましょう。
 あなたが何かしらの意思決定を行うとき、これまで蓄積してきた知識や過去の経験、あるいは直感を頼りにするでしょう。
 でも、ひとりの人間が一生のうちに蓄積できる知識量や経験数には限界があり、直感を頼りにしても時に誤った意思決定をしてしまうこともあるはずです。
 そんな時、AGIを活用することで、膨大な学習データから導き出した最適な意思決定のサポートをしてくれるのです。
 さらには、クリエイティブな領域にもAGIは強力なサポートを発揮してくれます。これまで、「クリエイティブな分野は人間ならではの仕事」と考えられていましたが、AGIの登場によって、斬新なアイデアを生み出すのが容易になることは間違いありません。
 AGIは膨大な学習データを持っているだけではなく、人間の持つ欲望や満足感といった感情を考慮したアイデアを生み出すことができるため、人間には到底思いつかないようなアイデアを創造できるようになるのです。それによって文学から音楽、イラストや映像の生成といったクリエイティブな活動に大きな革新をもたらすでしょう。
 詳しくは後述していきますが、ほかにもAGIがビジネスにどれほどの恩恵をもたらすのか、実にさまざまな仮説を立てることができます。AGIの登場により、新たなビジネスモデルやサービスが生まれ、新たな市場が形成されることは想像に難かたくありません。
 もちろん、ビジネスの分野だけではなく、教育や医療、科学技術などあらゆる分野でAGIは大きな可能性を秘めているのです。

AGIは、いつごろ実現するのか
 では、万能型AIと呼ばれるこのAGIは、いつごろ実現するのでしょうか。実は、近年驚くべき発展を遂げているAI分野においても、AGIは未だ実現していないのが実情です。
 現在、世界のありとあらゆる企業や研究機関がAGIの研究と開発に積極的に取り組んでいます。世界最先端のAGI研究開発に取り組んでいるのが「ChatGPT」を世に送り出したOpenAI、さらにはGoogleやMicrosoftなどが、AGIの実現に向けて日夜研究開発に勤しんでいるのです。
 2025年の3月末時点でのAGIに向けた進展を眺めてみましょう。
 24年9月にはOpenAIが、ChatGPTのモデルo1(オーワン)において、数学オリンピックの予選問題の正答率が8割に達したと発表しました。これは私にとってはかなりの衝撃でした。なぜなら、ChatGPTが初めて公表された際には、「100かける100かける100はいくつ?」という問いかけに対して、「100万」と答える一方で、「もう一度聞くよ? 100かける100かける100はいくつ?」と再考を促すと「10億」などと頓珍漢とんちんかんな答えが返ってきていたからです。
 仕方ないので、かなり長い間、私はChatGPTが苦手な数学関連の話題を扱うときは、数学に特化したWolfram GPTを使っていました。それが、いまや、ChatGPT単体で、数学が得意になってしまったのです。
 ええ? これって、生成AIがより万能になった……つまり、汎用AIに大きく一歩近づいた、ということなのでしょうか。
 この本(『スーパーAIが人間を超える日』)を書き始めた時から1年も経っていないのに、こうやって、「はじめに」で最新の状況を追記しないといけないほど、AIの進化速度は驚異的です。

AIが自分を開発した人間よりも上になった
 ところが、この状況は、24年の12月にさらに変化しました。モデルo3(オースリー)が発表され、数学オリンピック予選の問題の正答率は9割をはるかに超え、さらには「ChatGPTを開発しているオープンAI社のプログラマーのうち、プログラミング技能においてo3に勝てるのは二人しかいない」という驚くべき状況になったのです。これはつまり、自分を開発してくれた人間たちよりも、生成AIの方がプログラミング技能において互角もしくは上になった、ということです!
 たとえば将棋や囲碁において、かつて起きたことを振り返ってみれば、最初は「プロに初めてAIが勝ちました」という状況から始まり、あっという間に、「もう人間のプロはAIに勝てなくなりました」となったのです。プログラミング技能においても、おそらく、将棋や囲碁と同じパターンで、近い将来、「人間のプログラマーは完全にAIに勝てなくなりました」という結果になるのでしょう。
 よくテクノロジーの世界で「日進月歩」という言葉が使われますが、AIの進化は、ますます加速しているような気がします。AIはどんどん常識を塗り替えていきます。
 しかし残念ながら、人間の側は、そんなにすぐにはこれまでの生活習慣を変えることができません。AIが数カ月で大幅に進歩したからと言って、人間が仕事のやり方をガラリと変えて、AIをうまく取り入れるのは難しいのです。となると、「バージョンアップが来た!」という瞬間から動き始めても、とうてい間に合いません。
 日頃から、AI関連の最新ニュースに注目し、少しでも進化の予兆を掴むようにして、いざ大きな革新が来たときには、職場の配置転換を行ったり、AIで一気に業務効率を上げたりしていかないと、取り残されてしまいます。
 AI先進国というと、すぐにアメリカの名が頭に浮かびますが、24年度のノーベル物理学賞がカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントンさんらに与えられたことからもわかるように、アメリカの隣国カナダも捨てたもんじゃありません。北米は世界のAI開発の中心です。

「AGIの世界が10年以内にやってくる」
 でも、ここにきて、北米から遠く離れた中国発のディープシーク(DeepSeek)が彗星のごとく現れ、開発期間が短期で開発費用も安価だったのに非常に高性能であることがわかり、世界中に衝撃が走っています。
 すると、「DeepSeekは、ChatGPTを先生役として開発された疑いがある(いわゆる「蒸留」と呼ばれ、使用規約に違反)」「国家情報法により、DeepSeekに登録した個人情報は中国政府が収集する可能性がある」「DeepSeekは、特定の政治的な事件について答えない問題がある」などという指摘がアメリカを中心に噴出し、なにやら、北米V.S.中国のAI戦争の様相を呈してきました。
 当然ですが、今後、中国企業はAGI開発に注力するでしょうから、どの国や企業が、AGIの主戦場で勝利を収めるのか、先が読めない状況になっているのです。
 AGI実現の可能性については、専門家によっても意見が分かれています。
 ソフトバンクの孫正義さんは、2023年10月4日に開催された「SoftBank World2023」の特別講演で、AGIについて以下のような見解を述べ、大きな反響を呼びました。
 冒頭、「AGIが何か知っていますか」と会場に問いかけたところ、ほとんど手が上がらない状況を見た孫さんは「まず、ヤバイということを知ってください」と警鐘を鳴らし、続けてこう力説したのです。
「AGIは、人類叡智総和の10倍です。(中略)AIがほぼすべての分野で人間の叡智を追い抜いてしまう、これがAGIのコンセプトです。このAGIの世界が今後10年以内にやってきます。そして、AGIの世界では全ての産業が変わります。教育も変わる、人生観も変わる、生きざまも変わる、社会のあり方、人間関係も変わるんです」
 いかがでしょうか。AI技術における日本のキーパーソンともいえる孫さんがこうおっしゃるということは、AGIの実現も夢物語から現実へと着々と進んでいると考えて間違いないでしょう。
 ただ、その一方で、AGIの実現は単にAIの恩恵を受けるだけでなく、深刻な社会的、経済的、倫理的な問題などを引き起こすリスクについても考えてみなければなりません。私たちがAGIの実現に向けてやるべきこととは何か、そのことを今から考えておく必要があります。
 今後AGIが実現すれば、私たちの働き方や生き方さえも大きく変化するでしょう。その変化にしっかり対応していくためにも、AGIについて少しでも学んでおくことが肝要です。AGIについて理解を深めておき、実現したときにはすぐさま活用できるように準備しておく。今まさにそのような時期に差し掛かっているといっても過言ではありません>(以上「PRESIDENT」より引用)




 竹内 薫(サイエンスライター)氏が「ChatGPTよりずっとすごい…孫正義氏が「10年以内に生活がガラッと変わる」と言い切った"次にくるAI"の正体人間の喜怒哀楽を自ら学習し「忖度」ができる」と題する論評でAGIの世界が間もなく現実のものになると予想している。
 つい先日「AIが東大の入試に合格した」というニュースがあった。最近のAIは東大入試ほどの難問を与えて易々と正解する、という段階に達したようだ。今後は竹内氏が期待するAGIがいつ開発され、実用段階に到るか、と云うことではないだろうか。

 AGIの登場によりヒトは仕事現場から駆逐されるのか、というとそうではないだろう。つい先日もAGIについて書いたが、ヒトの思考回路は極めて複雑で気紛れだ。つまりヒトの思考回路は非線形非平衡多自由度系だが、AGIでは自己意思を持った自律的なシステムは無理だとされている。
 与えられた課題に対しては高速で正解を生成するが、自ら課題を選別してその課題を究明する、という自律的なシステムを組むことは不可能だ。しかもAGIにとって理解不能なのはヒトが持つ嫉妬心や名誉欲といった奇怪な「心」という存在だ。その上、ヒトは同じヒトが子供から青年、青年から壮年を経て老年に到る変化を辿る。そうした経年変化により嗜好や思考傾向も変化し、ヒトを定型的なモデルで割り切ることが出来ない。実にヒトは厄介な存在だ。

 ただ孫氏が予言している通り「(AIで)10年以内に生活がガラッと変わる」というのは間違いないだろう。現在でも一般管理の仕事はPCにより大幅に軽減されているが、今後は過去30年間に起きたPCによる作業量軽減の比ではなく、大幅に管理現場は激変するだろう。
 たとえば、役場の課税課で算盤を弾きタイガー計算機をぐるぐる回していたものが、事務計算会社にそうした納付書作成業務を委託することにより、課税課の職員は膨大な単純作業から解放された。それにより課税課の職員数は大幅に削減された。

 今後は他の事務現場でさうした劇的な変化が起きる。システム開発を一々ベンダーに頼んでいたが、データと指示を与えるだけでAIが勝手にプログラムを生成して簡単に処理するだろう。地域の総合開発などもAIが正確な地図と道路計画図と整備する社会インフラなどを自ら検索し図面や積算などを行うだろう。そして指示した総合開発計画に欠陥があると判断すれば、その点を指摘し、解決策まで生成するだろう。
 そうすると不都合なことに企画・設計・工事・監理まで牛耳っていたゼネコンが不要になる。プロジェクト全体を仕切るゼネコンや宣伝会社などの役目はAIが果たすだろう。何処をどう考えても「大屋根リング」が340億円もすることなどあり得ないが、AIが仕切るようになると、精々「大屋根リングは50億円程度」とAIが直ちに積算し、現行のようなピンハネは出来ない。いかに政治権力を握っていたとしても好き放題に中抜きなどは出来ない時代が目前に来ている。

 AGIが仕事現場全般で活用されるようになると、現行の中央や地方官庁の予算がいかに杜撰だったかが露わになるだろう。億ションと云われるマンション価格が、どれほど「水増し」された価格かが一般人にも手軽に検証出来るようになる。そうするとブラフ塗れのマンション業者の利幅が縮小され、不動産価格が適正化されるだろう。
 その代わり、湯水のように濫費されていたCM業界は火が消えたようになるかも知れない。無駄にCMを流すよりも、不動産データをサーバー業者に登録する方が手軽で広範な広告業務が完結する。不動産購入を考える顧客がAIを利用して顧客の提示する条件に合う不動産を指定し、その購入手続きをすべてAIが代行するだろう。もちろん登記までAIが行うことになる。

 不動産の性能に関しては、その不動産を設計し積算したAI情報を顧客のAIが検証しているから、実際に建設現場で手抜きが行われない限り、AIが設計した機能通りの不動産が提供されるはずだ。だから実際に入居して説明と食い違う不具合があれば、それは手抜きとして的確に告発されることになる。
 そうした意味では建設作業に従事するヒトはAIに使われる、ということになるだろうが、しかし不動産建築システム自体も全自動化すれば、不動産性能も均一化するのではないだろうか。あとは移動と組み立て工法で不具合が生じないようにすれば良いだけだ。今後AGIが実現すれば、私たちの働き方や生き方さえも大きく変化する。その時に慌てないように、キチンと論理的な生き方をしておく必要がある。

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