劇的に変わった戦争風景。

「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試み」
 ウクライナ軍は8月20日深夜から21日未明にかけ、ロシアに広範囲なドローン(無人航空機)攻撃を仕掛けた。ロシア国防省防空部隊はクレムリンの南約40キロメートル上空やウクライナと国境を接するブリャンスク州上空でドローンを撃墜した。
 モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は21日午前1時すぎ、メッセージアプリのテレグラムに「ポドリスク地区(モスクワから南へ40キロメートル)の防空部隊はモスクワに向かって飛来したドローンによる攻撃を撃退した」と投稿した。
 それによると、ドローンの破片が落下した現場では損害や死傷者は出ていない。ポドルスク市街地でモスクワに向かって飛行していた2機のドローンを防空部隊が撃墜。ドローン攻撃に対して階層化された防空システムにより計10機を撃墜、ウクライナ軍の攻撃をすべて防いだ。
 昨年9月のモスクワ市長選で77%という圧倒的な得票率で3選を果たしたソビャニン市長は「モスクワをドローンで攻撃しようとした最大の試みの一つだ。救急隊が現場で活動している。われわれは状況を監視し続けている」と報告した。
「93集落を含む1263平方キロメートルを占領」
 ブリャンスク州のアレクサンドル・ボゴマズ知事も21日午前零時半、テレグラムに「ロシア国防省防空部隊がブリャンスク州上空で敵のドローンを破壊し続けている。8機が探知され、撃墜された。死傷者や損害は出ていない。作戦および緊急サービスは機能している」と投稿した。
「キーウ政権はドローンの助けを借りて私たちの地域に大規模なテロ攻撃を行った。昨日の夕方以降、計23機のドローンが迎撃され、破壊された。勇敢な防衛者たちのプロ意識のおかげで、死傷者や被害はなく、すべての攻撃は撃退され、全標的が破壊された」(ボゴマズ知事)
 ウクライナと国境を接するロストフ州のワシリー・ゴルベフ知事は20日午後11時55分「ロストフ州西部の防空部隊がミサイルを撃墜した。死傷者や破片落下による被害はない」と投稿した。
 8月6日早朝にロシア西部クルスク州に侵攻したウクライナ軍は一気に攻勢をかける。
 ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は20日「作戦上および戦略上の状況は依然困難だ。長さ約1040キロメートルの前線の一部で戦闘を行っている」と説明。クルスク州への侵攻は28〜35キロメートル前進、93集落を含む1263平方キロメートルを占領したという。

ロシア軍のMi-8ヘリを小型ドローンで撃墜

 シルスキー総司令官はクルスク州侵攻作戦について「安全な緩衝地帯をつくり、ロシア領からの砲撃を阻止、敵を出し抜くことを目的として実施されている」と語る。15日にはエドゥアルド・モスカリョフ少将を司令官とする軍司令官事務所をクルスク州に設置した。
 シルスキー総司令官は「クルスク州におけるウクライナ軍の前進は、ロシア軍がウクライナの前線からクルスク州に不特定部隊の一部を再配置するよう圧力をかけている。ウクライナにおけるロシア軍の攻勢のテンポや見通しに影響を与える可能性がある」と位置づける。
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も19日「積極的で予防的な防衛はロシアのテロに対する最も効果的な対抗手段であり、侵略国家に大きな困難をもたらしている。スームィ州の国境地帯からロシア軍をほぼ排除したことは作戦目標、戦術目標の一つ」と述べた。
 旧態依然とした閉鎖的な体質を引きずるクレムリン、ロシア軍・情報機関は戦場の変化についていけない。英紙デーリー・テレグラフ(8月2日)は22億8000万円もするMi-8医療救護ヘリが7月31日、ウクライナ軍の小型ドローンによって撃墜されたという未確認情報を伝えている。

ヘリを撃墜するのにドローンが使われるのは想定外
 前線から50キロメートル近く離れたロシア支配地域のドネツク州で、爆発物を搭載したドローンが離陸するヘリにぶつかり、墜落・炎上させ乗員全員が死亡。ウクライナ軍側の操縦者はバーチャルリアリティヘッドセットを使ってクアッドコプター型ドローンをターゲットに誘導したとみられている。
 ウクライナ軍がドローンを使ってロシア軍ヘリを攻撃する実験を始めたのは昨年9月のこと。キーウ・インディペンデント紙は今月7日、ウクライナ軍のドローンが露クルスク州上空でロシア軍Mi-28攻撃ヘリに命中したとウクライナ保安局(SBU)筋の話として報じた。
 その2日後、ドローンは別のMi-8輸送ヘリも撃墜。クルスク州侵攻作戦に合わせSBUの特殊作戦センター「A」によって実行されたという。ウクライナ戦争では攻撃・監視用ドローンがいたるところで車両、部隊、防衛陣地を標的にしているが、空中のヘリが撃墜されるのは初めて。
 ロシアのヘリコプターメーカーはヘリがドローン攻撃に対し脆弱である可能性を認め、ヘリのドローン対策を強化するためのアップグレードに取り組んでいる。2年半前にウクライナ戦争が始まった時、軍用ヘリを撃墜するのにドローンが使われるとは想定もしていなかった。

「デジタル時代のパンドラの箱が開いた」

 ノルウェー軍司令官ルナール・スパンスヴォル氏は英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の論文集に「SNSとクラウドファンディングとドローンの武器化」と題し「デジタル時代のパンドラの箱が開き、戦争の性格に予期せぬ変化がもたらされた」と指摘している。
 SNS、クラウドファンディング、市販ドローンという三種の神器が現代の戦争とその性格に変化をもたらし、強力な「三位一体」へと収れんした。ウクライナは西側諸国から武器弾薬だけでなく、大量の市販ドローンを受け取り、武器化している。
「戦争の性格は時代の技術的・社会的・文化的・政治的変化によって形成され、絶えず進化している。SNSの接続性とオンライン決済システムの効率化によってグローバルな水平ネットワークが出現し、民間人と兵士がつながるようになった」
 スパンスヴォル氏によると、ドローンの多くは高火力兵器を搭載し、以前はハイエンドの精密誘導弾に限られていた精度で敵に投下される。その効果は記録され、SNSを通じてほぼリアルタイムで世界中の視聴者に届けられ、継続的な財政支援の強固なサイクルを生み出す。

「クラウドファンディングは戦争の金融兵器に急成長した」
「クラウドファンディングの規模と範囲は過去に例を見ないものであり、戦争の金融兵器に急成長した。これは市販ドローンの大規模な取得と武器化に拍車をかけた。最も普及しているドローンの単価は350~1000ドルとかなり安価である」とスパンスヴォル氏はいう。
 ウクライナへの“特別軍事作戦”は「邪悪な」西側諸国からロシアを守るため、というウラジーミル・プーチン露大統領のロジックは破綻している。クルスク州侵攻とモスクワへの大量のドローン襲来はプーチンの権威を足元から揺さぶっている>(以上「JB press」より引用)





 木村 正人(在ロンドン国際ジャーナリスト)氏が「プーチンが動揺、ウクライナ軍の「SNS」「クラウドファンディング」「市販ドローン」による三位一体攻勢」と題する記事を発表した。ドローンが運ぶのは小型の荷物だけでなく爆弾だって運べるということだ。
 だからドローンを飛ばして敵兵を捜索し、見つけたならドローンに命じて追尾して自爆攻撃を行うのはお手の物だ。ドローンに見つかった兵隊は逃げ道がない。部屋に駆け込んでも追いかけて来るという。

 兵隊だけではない。戦車だってヘリコプターだって、爆弾を搭載したドローンを自爆ミサイルに使えば「自立自動追尾型小型ミサイル」になってしまう。しかも肝心なのはドローン兵器は小型軽量で兵士一人だ携行出来る。それが劇的に戦争の風景を変えることになる。
 従来のような重戦車と装甲を装備した兵員輸送車で前線を駆け回る風景は姿を消し、多少の湿地帯なら関係なく走行できる軽量のSUVが戦場を駆けまわり、重い重機関銃を持ち歩く必要もなく、スマホかゲームコントローラーで操作するドローンに爆弾を装備して空へ放てば良いだけだ。後はドローンから送られてくる映像で敵を捜索し、見つけたら突撃するだけだ。

 或いは自動追尾装置を装備したドローンなら、敵を発見してターゲット指定したなら、直ちにその場を離れて敵からの攻撃を回避できる。もちろんドローンが活躍するのは陸だけではない。海上でもドローンは大きな働きをしている。
 ロシア海軍が誇る巡洋艦を自爆型海上ドローンで攻撃して撃沈させている。他にも海中ドローンが魚雷同然の役割を果たして、敵艦を追尾して攻撃し撃沈している。

 遠隔から操作するドローンは兵士を危険に晒さない安全な兵器だが、それだけではない。数億円から数十億円もするミサイルと比べれば、数万円から数十万円のドローンは桁違いに安い。しかも移動手段もドローンをスーツケース状のパッケージに入れて一人で持ち運べるため、運搬専用車やオペレータも不要だ。
 これが現代の戦場だ。ウクライナは数十機のドローンでロシア空軍の飛行場や燃料の兵站基地を攻撃して成果を上げている。低空を飛ぶ小型ドローンは防空レーダーで探知されにくいため、ロシアの防空網も簡単に突破されているようだ。

 もちろん自衛隊もドローン兵器を導入している。日本は四方を海に囲まれているため、海上・海中ドローンの開発を急ぎ、既に実戦配備を開始しているようだ。もちろん空中から攻撃する従来型のドローンも自衛隊は配備して訓練を開始している。
 今後もドローンは遠隔地から操作できるように開発されるだろうし、電波妨害に対処できるように複数のデジタル回線を装備するようになるだろう。さらに爆薬も黒色火薬から軽くて破壊力の強いプラスティック爆弾などが主流になるだろう。そうした開発も急がなければならない。兵器を外国から購入するのではなく、日本は技術力も部品製造力もあるのだから、自国で開発して装備すべきではないか。

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