EV技術はヒトの命を託すには未熟な技術だ。

ブルガリアは石炭火力発電を2038年まで延長
 脱炭素化に向かって邁進する欧州連合(EU)は、温室効果ガスを多く排出するとして、石炭火力発電の廃止を声高に主張している。
 そのEUで、石炭火力発電の延命を模索する国が出てきた。それは南東欧の小国、ブルガリアである。同国の人口は700万足らず、一人当たりの所得水準も11400ユーロ(180万円)程度と、EUの最貧国の1つだ。
 南東欧諸国のニュースサイトであるSeeNewsなどが報じたところによれば、ブルガリアのニコライ・デンコフ首相が率いる連立政権は、国内の石炭火力発電所の運転期間を2038年まで延長すると決定した模様だ。従来、ブルガリア政府は2038年までに石炭火力発電を段階的に廃止する方針だったが、それを撤回したことになる。
 さらにデンコフ政権は、石炭火力発電の廃止の期限を明示せず、2038年以降もその利用を継続する余地を残した。ブルガリア政府は9月28日、鉱業地帯などの脱炭素化を支援するために設けられた「公正な移行基金」から資金の配分を受けるための計画書をEUに対して提出したが、そこにも廃止の期限は明記されなかったようだ。

脱炭素を推し進めるEUは容認できるのか
 注目されるのがEUの対応である。EUの執行部局である欧州委員会が年内にブルガリアの計画を承認すれば、ブルガリアは「公正な移行基金」から、対象となっている国内の3州の脱炭素化を促すための資金を得ることができる。
 それ以上に注目されるのが、ブルガリアによる脱炭素化戦略の修正を、欧州委員会が容認するかどうかという点だ。
 EUは英国とともに、脱炭素化の旗手として石炭火力発電の早期廃止を世界に呼び掛けた経緯がある。石炭火力は依然として重要な電源である途上国にも、EUはその早期廃止を国際公約にさせようとした。
 にもかかわらず、そのEUの構成国であるブルガリアが石炭火力の早期廃止目標を後退させることを、欧州委員会が容認できるのだろうか。
労働者の反発を無視できないデンコフ政権
 ブルガリア政府が石炭火力の延長に踏み切った最大の理由は、石炭火力の廃止で失業する労働者の反発を受けたためである。
 そもそもブルガリア政府は、3つの炭鉱と石炭火力発電所の閉鎖で失業する労働者に対して最大15万レバ(約1200万円)の給付金を支給するとともに、産業転換のための国有企業を設立する予定だったという。
 しかし、こうした政府の方針に反発する鉱山労働者や電力労働者たちが、9月末に高速道路や幹線道路を封鎖するといった抗議活動に打って出た。
 当初、鉱山労働者や電力労働者たちは、石炭火力発電の廃止後の雇用継続を訴えていたが、その後、石炭火力発電の廃止そのものを撤回するようにその要求を変えるようになったようだ。
 デンコフ政権がこの問題にナーバスになる理由は、ブルガリアの政治不安にある。ブルガリアは今年4月に総選挙を実施したが、第1党でも全240議席中69議席の獲得にとどまるなど、政権運営が不安定である。
 第2党出身ながら6月に就任したデンコフ首相は、9カ月後に第1党出身のマリヤ・ガブリエル副首相に交代する条件となっている。

EUからの資金より、10月末の統一地方選
 そのブルガリアは、10月末に統一地方選を控えている。炭鉱労働者や電力労働者の強い反発が影響を与えるかたちで与党連合が惨敗すれば、ブルガリアの政治不安がさらに高まる事態となる。
 こうした事態を回避するために、デンコフ政権は炭鉱労働者や電力労働者に配慮をせざるを得なくなり、石炭火力発電の延命を決定したようだ。
 そもそもブルガリアは、EUの「公正な移行基金」から得る資金でこうした鉱山労働者屋電力労働者に対する失業給付や雇用保障を賄おうとした。
 したがって、欧州委員会がブルガリアの計画を承認しなければ、EUからの資金配分が見込めないため、ブルガリアの石炭火力発電の廃止に向けた動きそのものがストップすることになりかねない。

国内の3割を石炭火力が担う現実
 ここでユーロスタットのデータよりブルガリアの最新2021年時点の電源構成を確認すると、その36%を石炭火力が占めていた(図表1)。



 また国内消費量に占める国内生産量(自給率)も89.5%と極めて高く、そもそも石炭は、ブルガリア経済を支える安定したエネルギーである。これをわずか20年足らずで全廃することは、かなり野心的な目標だ。
 もともとブルガリア政府は、石炭火力発電に代わる新たな電源として、原子力発電に活路を見出していた。現在ブルガリアには原発が1カ所(コズロドイ発電所の5号機と6号機)しか存在せず、ブルガリア政府は今年1月の『新エネルギー戦略』で、コズロドイ発電所と計画中のベレネ発電所に原発を2基ずつ建設する計画を示している。
 ブルガリアは米国の協力の下で新たな原発を建設する予定である。しかしそれには、相応の時間がかかる。それに、再エネ発電の普及にも時間がかかる。そもそも、EUは脱炭素化やデジタル化の推進を打ち出し加盟各国を鼓舞し続けているが、有限なヒトモノカネといった資源をそうした領域の推進だけに割り当てるわけにはいかないだろう。

急激な「脱石炭化」は社会的摩擦を生み出す
 さらに、ブルガリアの事例が物語ることは、人為的な産業転換が大きな社会的摩擦を伴うということである。
 日本のみならず、かつて炭鉱を有した国々は閉山の経験を有している。しかしそうした炭鉱の閉山は、主に経済性の低下を理由とした回避しがたい流れであった。つまり、廉価な輸入炭や天然ガス、原子力などが登場した結果である。
 しかし、途上国を中心とする多くの国々にとって、輸出に不向きな褐炭に代表される石炭は、引き続き利用価値の高いエネルギー源である。
 その近代化や効率化などで温室効果ガスの排出を抑制するならともかく、そうした取り組みもなしにいきなりその利用自体を止めさせようとする今のEUのスタンスは、摩擦を生んで当然といえよう。

石炭発電をやめられない中・東欧諸国
 ではこのブルガリアと欧州委員会の摩擦は、どう決着をみるのだろうか。
 妥協慣れしているヨーロッパのことであるから、いわゆる「公正な移行基金」からの資金配分を減額すると同時に、とりあえず石炭火力発電の2038年までの運転延長に関しては容認し、以降の稼働延長の可能性には触れないかたちで、事態の決着を図るのではないか。
 欧州委員会としても、波風を荒立てたくないのが本音だろう。ブルガリアと同様の問題は、他の中東欧諸国にも共通するものだ。
 例えばチェコやポーランド、ルーマニア、スロベニアなどの国々は石炭火力発電への依存度が高く、将来的には原発への電源の移行を模索している。つまりブルガリアと同様の反発が生じる恐れがある国々である。
 欧州委員会が強い対応に出ても、また弱い対応に出ても、他の中東欧諸国を刺激してしまう恐れがある。一方で、欧州委員会が率いるEUは石炭火力発電の早期の廃止を世界に訴えかけた経緯があるため、石炭火力発電の延長には慎重にならざるを得ない。そのため両者は、できるだけ双方の顔を立てつつ、あいまいな決着を図るものと見込まれる。

EUの脱炭素化目標は修正せざるを得ない
 次なる注目点は、欧州委員会がどの時点で脱炭素化目標の修正に踏み切るかということだ。
 ブルガリアのみならず、各国の有権者は欧州委員会が描く脱炭素化路線に対して着実に不信感を募らせている。そのため、欧州委員長の次期体制に大きな影響をおよぼす2024年の欧州議会選が一つのターニングポイントになるのかもしれない。
 それでも、欧州委員会が2050年の炭素中立の実現そのものを翻すまでには、まだまだ距離があるだろう。当面は中間目標の下方修正といったかたちで、辻褄を合わせようとするのではないか>(以上「PRESIDENT」より引用)




 土田 陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員)氏ならずとも「「石炭火力を温存する日本は時代遅れ」と批判されたが…ここにきてEUの「石炭火力の廃止」が行き詰まったワケEUの脱炭素化目標は修正せざるを得ない」と考えているのではないだろうか。
 日本の自動車企業が本気でEVシフトを敷かなかったため、日本の自動車産業は早晩行き詰まる、と誰しもが危惧していた。しかし私はEVシフトが急に進むわけがないし、EVの弊害がクローズアップされるだろうと考えていた。

 果たして欧州各国では急速なEV化の流れが見直されている。ことに急速充電器などのEVインフラが充足されていない国々ではEV化の見直し論が噴出しているが、EVインフラが最も進んでいるスウェーデンですら、急速なEV化を見直す議論が出ている。
 そうしたEV化見直し論の根拠は何かというと、EVは自動車が本来持っている「何時でも 何処へでも」行ける乗り物、という機能をある程度犠牲にしなければならないからだ。そして厳冬期にあっては「安全な移動空間」という自動車の本質に関わる昨日までも犠牲にしなければならない、というEVの重大な欠陥に気付いたからだ。

 現在のEVがリチウムイオン電池を積載している限り、前述した自動車として完璧な機能を求めるのを諦めなければならない。それは厳冬期だけではない。酷暑の夏を過ごす熱帯・亜熱帯地域の人たちも同様だ。酷暑の季節に自動車はエアコンが不可欠だ。エアコンなしの自動車は天然の過熱したオーブンでしかない。
 しかもEVのエネルギー・電気を何によって発電するかも問題になる。CO2削減を目的とするEVを動かすためにCO2を排出する火力発電装置で電気を造るというのでは本末転倒だ。それなら原子力で発電すれば良い、と考える人たちがいるが、原子力は人の手に負えない厄介な代物だ。人体を害する大量の放射性廃棄物を排出するが、その最終処分方法は未だに議論の最中だ。「地層処理」が最終処分だとされているが、地層処分をした場合、問題となるのは、埋設した放射性 物質に接した水や溶解した放射性物質が地下水により地表へ運 ばれることにより生活環境や自然環境に放射能の影響が及ぶ可能性があることだ。 高レベル放射性廃棄物による人権侵害は、身体に対する 健康被害や環境汚染だけではない。広く環境を汚染する重大な結果を招きかねない。

 しかも強い放射能を帯びた核のごみ、その影響が弱まるまでにかかる半減期はおよそ10万年とされている。 むろん人類史上これほどの歳月に耐えられる構造物が存在した例はない。そして10万年後の人類に現在の言語が通じるとも思えない。非常に危険な贈り物を未来の人類に私たちは遺そうとしている。現在を生きる私たちは人類としての「責任」を果たしていると云えるのだろうか。原発は直ちに停止し、廃棄処分すべきだ。
 もちろん省エネに努めるべきだし、排出する有害なガスは除去されるべきだ。しかしCO2排出を恐れて火力発電を敵視するのは間違いだ。CO2は自然環境に存在する物質で、光合成の原料として物質の自然循環の中で処理される。むしろCO2は安全な排出ガスだ。温室効果があるから排出してはならない、と決めつける人たちは地球の過去に現在よりもCO2濃度が10倍もあった恐竜時代から、数度も氷河期があったことを、どのように説明するのだろうか。

 現在のCO2悪党説は本末転倒の議論を世界的に喚起しているのではないだろうか。いうまでもなくCO2は自然環境の中で必要不可欠の物質だ。ヒトも呼吸によって大人一日1㎏のCO2を排出している。もちろんヒトの自然の物質循環の連鎖の中で生きている。
 CO2をことさら「悪党」に仕立て上げるのは止めるべきだ。もっと冷静に地球規模の気候変動学を検証すべきだ。そうすると気候は絶えず変動しているものだと解るだろう。集団ヒステリーに陥っている現代人類の愚かさは中世の宗教裁判を嗤えない。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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