官僚の堕落の責任の一端は記者たちにもある。

<放送政策を所管する総務省の幹部が放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男・正剛氏らから複数回に渡って接待を受けていた問題で、総務省は2月24日、谷脇康彦総務審議官ら11人の処分を発表した。

この問題は週刊文春オンラインが2月3日、総務省で衛星放送の許認可を担当する秋本芳徳・情報流通行政局長(当時、現在官房付)をはじめ、谷脇康彦・総務審議官、吉田眞人・総務審議官、湯本博信・官房審議官(当時、現在官房付)の4幹部が個別に接待を受けていたと報道。利害関係者との「違法接待」と指摘していた。

国会で野党から追及を受けた総務省側は、当初は省内の調査結果として報道内容を否定。秋本氏は「東北出身者の懇親会」と釈明。放送事業についても「話題にあがった記憶はない」などと疑惑を否定していた。

ところが2月17日、週刊文春オンラインは疑惑を裏付ける音声データを会食時の会話記録として公開。総務省側の国会答弁を「虚偽」と報じた。

総務省は2月19日の衆院予算委員会で、これまでの説明を一転。接待の場で放送事業に関する会話があったこと、正剛氏が「利害関係者」であることを認めた。秋本氏は「利害関係者ではないと思い込んでいた」「記憶力不足を反省する」「文春の報道が出たとき、天を仰ぐような驚愕する思いだった」と釈明した。

総務省は2月24日、国家公務員倫理規定違反にあたるとして11人を処分。うち7人が減給、2人が戒告、1人を訓告、1人を訓告相当とした。秋本氏は大臣官房付に異動となり、事実上更迭された。武田良太総務相も大臣給与3カ月分を自主返納する。

山田内閣広報官も総務審議官時代に7万超の接待「和牛ステーキや海鮮料理」

また、首相会見などを仕切る山田真貴子内閣広報官も2019年、総務審議官時代に正剛氏ら東北新社の幹部と都内で会食。加藤勝信官房長官は2月24日の内閣委員会で、山田氏が和牛ステーキや海鮮料理などが供され、7万4203円の接待を受けていたことを明らかにした。

山田氏はすでに総務省を退官しており、現在は内閣官房の特別職の身分にある。そのため法律上、総務省の処分対象とはならないが、月給の10分の6を自主返納するという。総務省側の「減給」処分と一致させたかたちだ。菅首相は山田氏を続投させる意向だ。

野党側は、正剛氏の接待を受けたことで政府の放送事業に「ゆがみ」が生じていないか、さらに追及する構え。山田氏は2月25日、国会の求めに応じて衆院予算委員会に出席する。
総務省、農水省…相次ぐ「国家公務員倫理規定」への抵触

国家公務員をめぐっては、利害関係者による接待をめぐる問題が相次いでいる

今回明らかになった総務省幹部の接待のほか、鶏卵大手「アキタフーズ」前代表と吉川貴盛・元農水相(収賄罪で在宅起訴)の会食で農水省幹部が飲食費を負担せずに同席していたことが発覚。枝元真徹・事務次官ら幹部数人が近く処分される見通しだ。
国家公務員は「国民全体の奉仕者」——汚職を教訓とした「国家公務員倫理規定」

そもそも憲法15条第2項では「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定められている。

また、国家公務員法96条では「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務しなければならない」と定めている。

こうした憲法や法律に記された「国民全体の奉仕者」たる国家公務員の職務を公正・公平なものにするため、民間の関係者との関係について定められた政令が「国家公務員倫理規程」だ。旧大蔵省の官僚が金融機関から過剰な接待を受けた汚職事件を受けて、2000年に施行された。

国家公務員倫理規程2条では、国家公務員が職務上で関わる以下の8つの事業者・個人を「利害関係者」と位置づけている。

許認可等の申請をしている者、許認可等の申請をしている者、許認可等を受けて事業を行っている者

補助金等の交付を申請しようとしている者、補助金等の交付を申請している者、補助金等の交付の対象になっている者

立入検査、監査、監察を受ける者(*原則、法令規定により立入検査などをされ得る状態にある時は「利害関係者」となる)

不利益処分の名宛人となるべき者(*追徴課税や営業停止処分を受ける相手方)

行政指導により現に一定の作為または不作為を求められている者

内閣府または各省が所掌する事務のうち事業の発達、改善及び調整に関する事業を行っている者(*各省庁が所管する業界で営利目的で事業を営む企業)

国との契約を申込もうとしている者、契約の申込みをしている者、契約を締結して債権・債務関係にある者

予算・級別定数・定員の査定を受ける国の機関

今回明らかになった菅首相の長男らによる接待は、「1」の規定に抵触する。

国家公務員は「利害関係者」から飲食やゴルフ、旅行、麻雀などの接待を受けることが原則禁じられている。また、香典や花輪の受け取りにも禁止規定がある。

(*)ゴルフに関しては「利害関係者の参加が想定できない大規模なコンペで利害関係者と一緒になってしまった場合」、旅行に関しては「公務のための旅行の場合、ツアー旅行で利害関係者と偶然一緒になった場合」は可能。

また、利害関係者でなくとも同じ対象から複数回にわたり費用を負担せずに飲食の饗応を受けるなど、社会通念を超える接待を受けることもNGだ。

「割り勘」についても規定がある。国家公務員は自ら飲食費を負担したり、利害関係者以外(第三者)が負担する場合に限り、利害関係者と飲食をすることができる。

ただし、金額が「1万円」を超える場合は自己負担でも倫理監督官へ事前の届け出が必要になる。また、利害関係者以外でも課長補佐級以上の職員には、5000円以上の接待・贈与では報告を義務付けている。

国家公務員倫理規程に抵触した可能性がある場合、各省庁は人事院の国家公務員倫理審査会に報告。懲戒処分を下す場合は、審査会の承認を得た上で処分する。
祝儀は?香典は?「倫理保持のルール」の例

以下に、国家公務員倫理審査会の「国家公務員の倫理保持のためのルール」から抜粋した倫理規定の内容を紹介する。

Q.利害関係者は、国家公務員の結婚披露宴で祝儀を渡せるか?

A.○

国家公務員は、利害関係者からであっても、披露宴の実費相当の祝儀を受け取ることができる。また、配偶者や親との関係で出席した利害関係者から、通常の社交儀礼の範囲内の祝儀を受けとることは認められる。

Q.利害関係者は、国家公務員が喪主となっている葬儀に香典を渡せるか?

A.△

国家公務員は、本人との関係に基づいて利害関係者が持参した香典は受け取ることができない。ただし、亡くなった家族との関係に基づいて持参された香典は、利害関係者であっても、通常の社交儀礼の範囲内のものであれば受け取ることができる。

Q.利害関係者は弔電、花輪を贈ることができるか?

A.弔電は○、花輪は×

国家公務員が、本人との関係に基づいて利害関係者からの“弔電”を受け取ることは問題ない。しかし、利害関係者からの“花輪”の提供は、倫理規定で禁じられている『物品の贈与』にあたるため受け取ることができない>(以上「Business insider」より引用)






 既報の通り「放送政策を所管する総務省の幹部が放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男・正剛氏らから複数回に渡って接待を受けていた問題で、総務省は2月24日、谷脇康彦総務審議官ら11人の処分を発表した」。しかし、それまでは知らぬ存ぜぬで逃げ回っていたが「2月17日、週刊文春オンラインは疑惑を裏付ける音声データを会食時の会話記録として公開。総務省側の国会答弁を「虚偽」と報じた」ものだから態度を一変した。
 証拠さえなければ何をやっても構わない、というつもりなのだろうか。いつから日本の官僚はそこまで堕落したのだろうか。彼らには国家公務員たる倫理意識はないのだろうか。 

 総務省だけではない。「鶏卵大手「アキタフーズ」前代表と吉川貴盛・元農水相(収賄罪で在宅起訴)の会食で農水省幹部が飲食費を負担せずに同席していたことが発覚。枝元真徹・事務次官ら幹部数人が近く処分される見通しだ」というから呆れるしかない。
 そして山田内閣広報官も総務審議官時代に7万超の接待「和牛ステーキや海鮮料理」 を総務省関係の放送局役員の菅氏長男から接待を受けていた。当然のことながら便宜の計らいを依頼されたか否かに関わらず国家公務員倫理規定に反するのは明らかだ。

 山田氏の場合は接待を受けたが、倫理監督官へ報告していないとすれば「金額が「1万円」を超える場合は自己負担でも倫理監督官へ事前の届け出が必要になる。また、利害関係者以外でも課長補佐級以上の職員には、5000円以上の接待・贈与では報告を義務付けている」という規定の存在を知らなかったのだろうか。 
 いや、知らなかったでは済まされないだろう。当時の山田氏は総務省参事官という高い身分にあった。範となるべき立場ではないのか。

 安倍自公政権以来、公務員・官僚の堕落が目立つ。それも極めて確信犯的な倫理違反を犯してもシレッとしている堕落ぶりだ。そして政治家たちも秘かに官僚たちの堕落を期待している。
 国会審議で追い詰められないように公文書を改竄して欲しい、隠蔽して欲しい、そんなことは言う前に忖度して実行した欲しい、という政治家の思いを汲み取って、官僚たちは率先して先を争うように堕落した。そして真っ正直な公務員は苦悩して自ら命を絶ってしまった。

 政治家は三流でも官僚が一流だから日本は持っている、といわれたものだが、政治家は依然として三流だが、官僚までも政治家並の三流になってしまって、日本は一流だった経済でも後進国入りしようとしている。
 だれが日本を堕落させたのか。週刊誌が日本の恥部を抉らない限り、主要マスメディアは官邸発表をそのまま国民に伝達する政府広報機関でしかない。かつて紙面を賑わせたスクープ記事などお目に掛かれなくなって久しい。「記者(汽車)ではなく、トロッコだ」と揶揄されるのを恥とした記者魂は何処へ行ったのだろうか。

 記者たちの取材力の低下こそ、官僚たちの堕落を手助けしている。緊張感なき官邸記者会見を仕切っているのが山田真貴子内閣広報官だというから、世も末だ。

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