全国の原発を即時停止せよ。

福島第一原発事故から8年。
 大事故を受けて、一時は「稼働中の原発はゼロ」という状態にもなったが、新しい安全基準(「新規制基準」)が定められ、現在、国内で7基の原発が稼働中だ(玄海原発4号機、川内原発12号機、大飯原発4号機、高浜原発34号機、伊方原発3号機)。
 2013年に定められた「新規制基準」について、電気事業連合会はこう説明している。
「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故では地震の後に襲来した津波の影響により、非常用ディーゼル発電機・配電盤・バッテリーなど重要な設備が被害を受け、非常用を含めたすべての電源が使用できなくなり、原子炉を冷却する機能を喪失しました。この結果、炉心溶融とそれに続く水素爆発による原子炉建屋の破損などにつながり、環境への重大な放射性物質の放出に至りました。こうした事故の検証を通じて得られた教訓が、新規制基準に反映されています」
元東電社員が突き止めた本当の事故原因
 要するに、「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」ということだ。
 この点に関して、津波の規模が「予見可能だったか、想定外だったか」という議論がなされてきた。しかし双方とも「津波が事故原因」という点では一致し、多くの国民もそう理解している。
 ところが、「津波が原因」ではなかったのだ。
 福島第一原発は、津波の襲来前に、地震動で壊れたのであって、事故原因は「津波」ではなく「地震」だった――“執念とも言える莫大な労力を費やして、そのことを明らかにしたのは、元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55)だ。
 木村氏は、東電学園高校を卒業後、1983年に東電に入社、最初の配属先が福島第一原発だった。新潟原子力建設所、柏崎刈羽原発を経て、1989年から再び福島第一原発へ。2000年に退社するまで、燃料管理班として原子炉の設計・管理業務を担当してきた炉心屋である。
 東電社内でも数少ない炉心のエキスパートだった木村氏は、東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求め、膨大な関連データや資料を読み込み、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めた。
「津波が来る前から、福島第一原発は危機的状況に陥っていた」
「事故を受けて、『国会事故調』『政府事故調』『民間事故調』『東電事故調』と4つもの事故調査委員会が設置され、それぞれ報告書を出しましたが、いずれも『事故原因の究明』として不十分なものでした。メルトダウンのような事故を検証するには、『炉心の状態』を示すデータが不可欠となるのに、4つの事故調は、いずれもこうしたデータにもとづいた検証を行っていないのです。
 ただ、それもそのはず。そもそも東電が調査委員会に、そうしたデータを開示していなかったからです。そこで私は東電にデータの開示を求めました。これを分析して、驚きました。実は『津波』が来る前からすでに、『地震動』により福島第一原発の原子炉は危機的状況に陥っていたことが分かったのです」
 7基もの原発が稼働中の現在、このことは重大な意味をもつ。「津波が原因」なら、「津波対策を施せば、安全に再稼働できる」ことになるが、そうではないのだ。
 木村俊雄氏が事故原因を徹底究明した「福島第一原発は津波の前に壊れた」の全文は、「文藝春秋」9月号に掲載されている>(以上「文芸春秋」より引用)

 2011年3月に福一原発が水蒸気爆発などを起こして未曽有の放射能飛散により東日本の広範囲を放射能汚染した。その事故原因を東電などは「総電源喪失」により原子炉冷却装置が停止したからだ、と「津波被害」を福一原発事故の原因としていた。
 しかし当時から私はこのブログで「津波」により総電源喪失以前に「地震」により原子炉は深刻なダメージを受けていた、と「地震原因説」を主張していた。なぜなら原子炉は核反応の熱を「水蒸気」として取り出すために無数の細管が原子炉内に差し込まれているからだ。

 あらゆる物質にはそれぞれ固有の振動周期がある。質量の大きな釣鐘状の原子炉には比較的長周期の固有振動周期があると想定されるが、微細な細管は極短の振動周期と想定される。その二つの物質が原子炉壁で接している。そのため東日本を襲った地震で原子炉と細管の振動周期が干渉しあって細管が破断したと十分に想定される。
 その証拠に地震直後に福一原発のオペレーションルームでは操作盤の様々な警告の赤色ランプが点滅し、警戒音が鳴り響いていたという証言がある。そのため原発職員が慌てて原発建屋から撤退したという。それは津波が福一原発を襲い掛かる以前のことだ。

 元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55)が事故原因を徹底究明し津波が来る前から、福島第一原発は危機的状況に陥っていた」との結論を出した。詳しくは文芸春秋9月号に掲載されている。
 ここで何が重要かといえば、上記引用分内にもある通り、津波により総電源喪失が原発事故の本質なら「津波対策」を十分に行えば「原発は安全」だという六つ論になる。しかし地震で原子炉が深刻な状況に陥っていた、とすれば原発そのものの安全性に関わる。

 全国各地で原発が再稼働されているが、それらは本当に安全性が確保されているのか、と問い直されなければならない。まさしく南海トラフなどの大地震が近々あると想定されている地域の伊方などの原発が稼働されているが、それを是とした裁判所の決定は正しいのか、と問い直されなければならない。
 あくまで裁判官も原子炉の専門家ではない。東電などのゴマカシた福一原発広告所や資料で判断したに過ぎない。これほど危険なことはないだろう。しかも地域住民が「阿蘇大噴火も想定される」から稼働停止すべきとの請求を「大噴火するという証拠がない」との原告不利益の判決を下した。むしろ原発事故が広範囲の地域環境と住民に深刻な影響を与えることを考慮するなら「大噴火しないという証拠がない」から稼働停止の請求を認める、との判決を下すべきだった。

 マスメディアは木村俊雄氏の渾身の事故原因追及論文を原発事故報道の鏡とすべきだ。政府原発事故調査委員会報告や東電の報告などだけを信用するのではなく、東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求めたジャーナリストが一人でもいただろうか。政府発表の段階で官房長官に東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求める発言をした記者が一人でもいただろうか。
 真実に少しでも近づこうとする記者魂を持つジャーナリストは皆無になってしまったようだ。少なくとも官邸記者クラブに詰めるエリート記者たちにそうした記者(汽車)は見られなくなった。居るのは官邸発表の記事を運ぶ「トロッコ」たちだけだ。自ら動くのが「汽車」で、官製記事を運ぶだけの記者を「トロッコ」と呼ぶ。

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