今こそ先人の叡智に学ぶべきだ。

 NHKが大河ドラマで幕末の長州藩をやっているというのでドレドレと視聴して想像以上に酷いのに落胆した。高杉晋作はヒステリーじみた乱暴者ではなく、久坂玄随は時代を見通す眼力を持ち合わせた青年ではなかった。そして伊藤俊輔はテレビで演じられているほど暗愚な青年ではなかった。なにもかもがステレオタイプの青年群像を登場させただけのドラマでしかない。せっかくの幕末の長州藩という素晴らしい素材を貶める演出には茫然自失だ。

 そもそも伊藤俊輔が松下村塾に入ったのは16才にして相州警護役で三浦半島の宮田に来原良蔵の中間として出仕した後だ。吉田寅次郎の同輩・来原良蔵により相州警護役付を一年で解任され、松下村塾入塾の紹介状を持たせて18才の伊藤俊輔を国許へ戻した。つまり他の塾生は親掛かりの身だが、伊藤俊輔は藩の中間であり伊藤家を担う戸主だった。
 その後、高杉晋作は幕府使節の随員になって上海へ行き租借地の現状と西洋艦隊の威容を見る。それにより久坂玄随の急進的な尊王攘夷運動と距離を置くようになる。伊藤俊輔は井上聞太たち四人の仲間と共に文久三年から元治元年にかけて英国へ密留学を果たす。

 長州藩の絶体絶命の窮地は1864年8月の英・仏・米・蘭四ヶ国連合艦隊17隻の砲撃により馬関が徹底的に破壊された時だった。連合艦隊指揮官・英国中将キューバ―は本国から「彦島の租借」を厳命されていた。
 和平会談冒頭でキューバ―は「和議申し出の条件は」と全権としてやって来た宍戸刑馬(高杉晋作の偽名)を睨んだ。すると高杉は「和睦を乞いに来たのではない。止戦の話し合いに来たまでだ。なんなら連合艦隊の陸戦隊で山口まで攻めて来られよ、雌雄を決しようではないか」と横柄な態度で応じた。それを通訳したのは伊藤俊輔(後の伊藤博文)だ。
 確かに砲撃戦では完膚なきまでに敗北した。しかし、それは当たり前だ。長州藩の軍備は台場に鉄球を撃ち出す砲を据えたものに過ぎない。当時欧米列強で常識になっていた炸裂弾を撃つ砲を堅牢な要塞に据える軍備とは比較にならない。一方、四ヶ国連合艦隊が装備している砲は炸裂弾を放つ砲で、射程も4キロメートルと馬関の砲台の倍以上もあった。それで勝てるはずはない。
 しかし内陸での戦争に艦砲は役立たない。将兵の銃撃戦になれば既にゲベール銃を装備している長州藩の諸隊と連合艦隊の陸戦隊とでは軍備で大差ない。後は将兵の数と地の利で勝る長州の方に分がある、と高杉晋作は看破していた。
 キューバ―は手強いネゴシエーターの出現にニヤリと笑ったという。租借地を取られることがいかなる結果をもたらすか、高杉晋作は上海で見聞していた。そして通訳にあたった伊藤俊輔は英国密留学で欧米人のモノの考え方と彼らを相手にする交渉術を身に着けていた。

 奇しくも安倍晋三氏や高村正彦氏たちは長州藩の末裔に当たるが、彼らに高杉晋作や伊藤博文たちの叡智と胆力があるだろうか。敵の旗艦に小船で乗り付け、銃剣を装着した銃を捧げ筒をした兵士たちが居並ぶ甲板を堂々と歩いて交渉の場へ赴くのは並大抵のことではないだろう。
 国会で憲法改正議論すらしないまま、コソコソと閣議で決定し、姑息にも与党協議の猿芝居を打って国民にいかにも呻吟して安保法制を練り上げているかのように演じてみせる。なんという見え透いた連中だろうか。そこまでして戦争大好きな米国の尻馬に乗ろうとするとは、自らの行為を恥じて少しは顔が赤らんでもおかしくないだろう。

 国家と国民を守るために彼らは政治家として活動しているのだろうか。消費増税や派遣業法の野放図な規制緩和や残業無料化法案など、国民を痛めつけて日本を何処かへ売り飛ばそうとしているとしか思えない。その相手は米国でもなく、いわば米国をハンドリングしている1%の連中だ。ハゲ鷹投機家の1%のために安倍自公政権はTPP参加や安保法制を大幅に改正しようとしている。それは日本の独立ヘリ道ではなく、米国への隷属に過ぎない。安倍晋三氏がやっているのは旧体制からの脱却ではなく、GHQ態勢の維持・強化に過ぎず、それは戦後米国が日本国民に日本の反日文化人や反日マスメディアを総動員して自虐史観を植え付けた手法の延長に過ぎない。
 彦島の租借を拒否した高杉晋作や伊藤俊輔の叡智に学ぶべきだ。日本は未だに外国軍に半ば占領されている、半独立国家だ。その体制を旧体制と呼ぶのなら、安倍氏が為すべき政策は何かが見えてくるはずだ。


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