個別的な問題もさることながら、菅氏の危機管理の在り方を問うべきだ。

 Speediの情報を承知していて菅氏が隠したのなら、それこそ首相の重大な犯罪だろう。事実の確認と可能性を慎重に検証して、最悪の事態に備えるように国民に語りかけるのが最高指揮官の責任ではないだろうか。


 徒に不要なパフォーマンスに時を弄したり、放射能被害の実態を隠したりするのが最高指揮官のあり方ではない。原発周辺に居住している国民に対して避難指示は適宜を得たものだったか、これから菅氏の所業は厳しく問われるだろう。彼は歴史に逃げ込んで首相の椅子にしがみ付いているが、その歴史によって彼は裁かれる。首相の椅子の重みを感じない菅氏に驚くと同時に、椅子の重さが国民に伝わらない珍しい人物だ。


 


 しかし、その菅氏を攻めきれない自民党も野党として不甲斐ない。ベント時期だとか、海水注入の一時停止だとか、そうした個別的な問題よりも、首相として国民に果たすべき役割がどうだったのかを問うべきだ。


 一日目か二日目にメルトダウンしていたら水素爆発と同時に膨大な放射能が撒き散らされていたことになる。まだ地域住民は避難していなかった時点で、彼らが被爆した可能性があり、健康被害の追跡調査を義務付けなければならない。そして国民に対してSpeediの情報を速やかに公開しなかった責任も甚大だ。先の大戦における大本営が犯した「被害を小さく伝える」過ちを繰り返しているような官邸の情報対処に驚きを禁じ得ない。


 


 国民の生死に関わる放射能被害について、官邸が知っていて公表しなかったのだとしたら菅氏の責任は万死に値する。枝野官房長官の「直ちに健康に害を及ぼすものでない」と繰り返していた原発事故当初のコメントはこうした事態を承知した上での発言だったのか。そうだとしたら、枝野氏も首相と同罪だ。


 そして「メルトダウン」が何でもないことのように発言している放射線病理学者の良心と見識を疑う。彼らこそ専門家として放射能の怖さを正確に伝えなければならない。現在では放射線量と健康被害は「閾値」的ではなく、「直線」的だといわれている。ある一定値までは何でもないが、限界点を超えると爆発的に健康被害を起こす、というのが閾値論だが、現在では放射線量と健康被害は比例的な関係で直線で表されるとされている。


 


 このブログで何度も書いてきたことだが、また書かなければならない。国家とは国民の生命と財産を守るのを一義的使命としている。電気が足りるとか足らないとかも大問題だが、国民の命が危険に晒されるようなことは断じて行ってはならないし、いかに大義があろうと行わせてはならない。


 実際に「想定外」の事故が起こったからには、日本国中の原発は停止だけでなく、廃炉にしなければならない。そして抜本的に日本の電力行政を新体制に改めなければならない。昨日までと同じ光景が今日から明日へと続くことは許されない。未来の日本国民に対して現代を生きる日本国民は責任が取れるのだろうか。原発が放射能をばら撒く事態を引き起こし、二ヶ月以上も経った今もばら撒いている状態を菅氏は日本国首相としてどう思っているのだろうか。能天気なお調子者だと思われても仕方ないだろう。


 


 国会議員も皮相な事柄を論って論じ合う事態ではないだろう。国際的な非難の目が日本に注がれている現状を自民党も重く受け止めなければならない。未来の地球を放射能塗れにしてはならない。CO2問題など比較にならない環境汚染を日本がやっているのだという認識が国会議員にあるのだろうか。チマチマとした対応ではなく、全国から膨大な数のブルドーザーを掻き集めて原発構内の広大な空き地に巨大プールを作りつつ、数十万トン級のタンカーを国が買い取って福島原発沖に停泊させて放射能汚染水を掻き出すとか、そのように何重もの対処をなぜ同時進行で行わないのだろうか。この国の危機管理のありかたに無能な指揮官の存在を感じられるのは私だけだろうか。


 


 大手マスコミは原発は必要悪だ、という論調を唱えているようだ。何とも国民をバカにした話ではないだろうか。既に原発に事故は起こった。この事実は動かし難い。しかも原発は津波で壊れたのではなく、まず地震で壊れ、次に津波でバックアップ体制も破壊されたのだと分かってきた。免震構造で地震の震動が原子炉に伝わらないようにしない限り、大量の細管が入り組んでいる原子炉が地震被害から無縁であることは理屈から考えてあり得ない。その細管には高圧・高温の水蒸気が充満しているのだ。常時ですら腐食と破裂の危険を抱えている。この国に原発は適さない。すっぱりと諦めて別の道を行くことだ。めめしいフラレ男のようにいつまでも後を追わないことだ。


 


 新エネルギー政策を与野党は真剣に議論すべきだろう。送・発電分離を行い発電の自由化を断行すべきで、地域独占事業体制という自由市場に逆らう体制をいつまでも続けるのは良くないのは自明の理だ。


 それならどのようにして発電事業の自由化を実現すべきか、原発廃止と同時進行で実施すべき21世紀初頭の日本で大きな制度改革になるだろう。その鳥羽口にある、という認識なしでチマチマとした議論をやっていてはいけない。政治家として資質のないことを菅氏と同様に、自民党の国会議員も自ら暴露することになるだろう。



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