イラン政府の本音は。

「プロジェクト・フリーダム」停止の理由はサウジが基地・領空の使用を制限したから
「作戦の目覚ましい軍事的成功、イラン代表との完全かつ最終的な合意に向けた大きな進展を踏まえ、合意が最終的に締結されるかどうかを見極めるため、ホルムズ海峡における船舶の航行を可能にする『プロジェクト・フリーダム』を短期間停止することで合意した」(トランプ氏)
 トランプ政権のピート・ヘグセス国防長官は「停戦は終わっていない」と述べ、マルコ・ルビオ国務長官は2カ月に及んだ「エピック・フューリー作戦」の終結を宣言した。ルビオ氏によると、米国はホルムズ海峡の再開を目指して「防御的」な立場に移行したという。
 真相はどうなのか。米NBCニュース(5月7日付)は「実際にはサウジアラビアが米軍による作戦遂行のための基地や領空の使用を停止したことからトランプ氏はプロジェクト・フリーダムを中止した」と解説している。同盟国への根回し欠如や準備不足が原因とみられる。

トランプ氏の「俺を信じろ作戦」は失敗に
 イラン・イスラム諮問議会(国会)議長のモハンマド・バゲル・ガリバフ氏は皮肉たっぷりに5月6日、X(旧ツイッター)に「『トラスト・ミー・ブロ(俺を信じろ)作戦』は失敗に終わった。再びいつもの『偽アクシオス作戦』に戻っている」と投稿した。
 米新興メディア、アクシオス(Axios)にフランス語の「faux(偽)」を付けて「偽アクシオス作戦(Operation Fauxios)」と揶揄した格好だ。原油価格は1バレル=100ドル前後で高止まりしたままだが、最悪シナリオは回避されたと見込んで米株価指数S&P500は史上最高値を一時更新した。
 イランは米国によるホルムズ海峡封鎖に少なくとも3〜4カ月耐えられると米中央情報局(CIA)が政権の政策担当者に提出した評価報告書を米紙ワシントン・ポスト(5月7日付)がスクープした。「イランのミサイルはほぼ壊滅した」というトランプ氏の主張とは大きく異なる。
 イランは戦前に保有していた移動式ミサイル発射機の約75%、弾道ミサイル約2500発の約70%を維持している。ほぼすべての地下貯蔵施設を復旧し、損傷したミサイルの一部を修理したうえで開戦時に完成間近だった新型ミサイルの組み立ても進めているという。

「イラン指導部はより過激化し、決意は米国の政治的意思を凌駕」
 トランプ氏は「残っているイランのミサイルは18〜19%程度」「イラン経済は崩壊しつつある。通貨は無価値であり、兵士に給料を支払えない」と強弁しているが、イランはミサイル・ドローン(無人機)攻撃でそのしぶとさを証明し続けている。
 米当局者の1人は同紙に「指導部はより過激化し、その決意は米国の政治的意思よりも長く持ちこたえられると自信を深めている。同様の政権が長期にわたる禁輸措置や空爆のみによる戦争の下で何年も存続している例が見られる」と説明している。
 戦略研究の権威である英大学キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は自らの有料ブログ(5月7日付)でホルムズ海峡を巡る米国とイランの対峙を1962年のキューバ危機になぞらえ「どちらが先に瞬き(降参)するか」と分析している。
 キューバ危機で旧ソ連の船舶が引き返したとの知らせが届いた時、ディーン・ラスク米国務長官(当時)は幼い頃、友達と睨み合いをした遊びを思い出し「目と目が合ったままだったが、相手が瞬きをしたようだ」と語った。
 キューバ危機が終結するまで実際にはさらに多くの瞬きがあった。

イランの国民生活はハイパーインフレと物不足で限界
 米・イランの睨み合いにより約10週間にわたり1550隻の船舶と2万2500人の船員が足止めされ、世界経済に甚大な影響を与えた。ヘグセス氏はすでにこの戦争に250億ドルを投じている。イランの体制は国内の弾圧を強めることで結束し、核開発プログラムも健在だ。
 フリードマン氏によると、大きな変化はかつて開かれていたホルムズ海峡が閉じられたことと、米国とその同盟国の関係が悪化したことだけだ。トランプ氏が想定していたベネズエラ・モデル(指導者を排除すれば政権が瓦解する)は強靭なイランには通用しなかった。
 イランの国民生活はハイパーインフレと物不足で限界に達している。イランの「後ろ盾」の中国は石油輸入の約3分の1を依存するホルムズ海峡の長期閉鎖に神経を尖らせている。習近平国家主席との米中首脳会談を控えるトランプ氏も本音ではこの泥沼から早く脱出したい。
 交渉の焦点は核濃縮の停止、制裁解除、ホルムズ海峡の自由航行再開を盛り込んだ1ページの覚書に絞られている。ルビオ氏は詳細な最終合意ではなく、交渉を継続するための一般的な枠組みで妥協する可能性を示唆している。「イランの完全降伏」という目標から大幅に後退した。
 フリードマン氏は現在の状況を「互いに満足はしていないが、交渉の決裂も望んでいない」段階と分析する。国際社会の圧力で米・イラン双方は解決に向けジリジリと歩み寄っているものの、決定的な「瞬き」ではなく、不確かな進展に留まっているという。

最大のリスクは中国との衝突
 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン、クリス・パーク両氏は4月21日付で現在のイラン戦争を継続するには十分な弾薬が確保されているが、最大のリスクは将来の戦争、特に中国のような「対等な競争相手」との衝突にあると分析している。
 トマホーク: 開戦初月で850発以上、停戦までには1000発以上が発射された。
 JASSM(長距離空対地ミサイル):約1100発が消費された。
 PrSM(精密打撃ミサイル):2023年に配備が始まったばかりの新システム。戦前在庫が約90発と少なかったため、すでに「全在庫を使い果たした」との証言もある。
 THAAD(終末高高度防衛ミサイル):190〜290発が消費され、在庫は限界に近い。
 パトリオット(PAC-3 MSE):1000発以上が消費された。ウクライナを含む18カ国が使用しており、世界的な奪い合いが生じている。
 ドローンやミサイルの発射頻度が劇的に低下している現在、当面の作戦継続は可能だ。しかし戦前の在庫水準に戻すだけでも1~4年、中国を見据えた十分な在庫を構築するにはそれ以上の年月を要する。西太平洋での紛争に対する抑止力や対応能力は著しく低下している。>(以上「JB press」より引用)




停戦を急ぐトランプに焦り、「俺を信じろ」作戦は失敗、「ほぼ全滅した」はずのイランのミサイルも実は大半が健在」と題して木村 正人(国際ジャーナリスト)氏が米国とイランのチキンレースの現状を論評している。
 しかし木村氏の見解が果たして正しいだろうか。たとえばイラン革命防衛隊はミサイルの大半を保有したままだ、という根拠は何だろうか。たとえば、米軍が保有するパトリオットミサイルなどが枯渇寸前だという根拠は何だろうか。

 米軍が発表しているイラン革命防衛隊のミサイル在庫の大半を破壊した、という根拠は長年蓄積した情報から大量のミサイルを保管している地下壕を特定して、ピンポイントで爆破したことによる。たとえイラン革命防衛隊がミサイルを発射したとしても、それは移動車両に積載していたミサイルであって、地下壕から移動させたミサイルを発射しているわけではない。
 しかもミサイル攻撃を行えば偵察ドローンなどの映像や、艦艇のレーダー解析などから発射位置座標を特定して、反撃のトマホークを素早く発射している。つまり一度使った移動式ミサイル発射装置は二度と使えなくなる、ということだ。

 また木村氏は「最大のリスクは中国との衝突」だと論評している。それもまた間違いだと云うしかない。なぜなら対中作戦を実行する日本の各地の基地からB-35やミサイルなどを中東へ移動した痕跡はない。ただ沖縄の上陸艦が2500名の海兵隊員を積載して中東へ移動しただけだ。台湾有事が起きても、直ちに米海兵隊が必要になるわけではない。
 また現在の中国軍は台湾軍事侵攻する態勢がとれる状態にない。軍幹部が相次いで粛清され、実戦を指揮する司令部はガタガタになっている。いかに習近平氏が「台湾進攻せよ」と大権発動しても、実働部隊が習近平氏の意のままに作戦行動に移れる状態にない。

 さらに中国の防空システムが全くの役立たずだ、ということはベネズエラとイランの中枢に米空軍機が無傷で侵入できたことから明白になっている。防空システムだけではない、中国の防空システムと連動した地対空ミサイルも米軍機を一機も迎撃できなかった。ただ移動式地対空ミサイルが米空軍の低空攻撃機を撃墜しただけだ。
 オールドメディアは中国の対イラン外交力を過大評価しているようだが、イランはむしろ中国に対して腹を立てている。ポンコツ兵器を売りつけただけでなく、イランが経済制裁下にあるのをいいことにして、イラン原油を国際相場の60%~70%と値引き販売させていたからだ。相手の足元を見る中国に対して、イラン政府は何ら恩義に感じてはいない。だから中国がイランと米国との仲を取り持ったとしても、大した効果はない。

 木村氏は「イラン指導部は激化し」とあるが、激化しているのはイラン革命防衛隊の一部・強硬派だけであって、政府は多くの国民と同様に一時も早く戦争を終結させて、原油輸出と食糧輸入を再開したいだけだ。核兵器を保有したとしても、それで国民の飢えが癒されるわけではない。国民の政府に対する不満が和らぐわけではない。政府首脳にとって、命懸けの停戦協議だ。その実現の前段階の「覚書」を一日も早く交わしたいのが本音ではないだろうか。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。