習近平氏は対日歴史認識の誤りこそ是正せよ。

<5月24日に英『フィナンシャル・タイムズ』(以下、FT)が報じた記事が、日本で波紋を広げている。タイトルは、「習近平、ドナルド・トランプとの首脳会談で日本の『再軍備』を激しく非難」。
 5月14日に北京で行われた米中首脳会談について報じた長文の記事で、その冒頭部分は以下の通りだ。
<北京での会談に詳しい7人の関係者によると、習近平国家主席はドナルド・トランプ大統領との首脳会談中、激しい非難の言葉を浴びせ、日本の「再軍備化」について高市早苗首相を厳しく非難した。
 日本に関する議論の際、習氏は声を荒らげ、激昂した。首脳会談を前に行った中国側との実務者協議では、この話題が取り上げられていなかったため、アメリカの当局者は驚いたという。複数の関係者によると、習氏のこの言葉による攻撃は、両首脳による2日間の会談の中で最も激しい場面だった。
 習氏が高市首相と日本の防衛費増額を激しく非難した後、トランプ氏は、北朝鮮からの脅威が高まっているため、東京はより断固とした安全保障の姿勢を取らざるを得ないと応じた。トランプ氏が、日本にとって最大の安全保障上の懸念である中国について、同じ文脈で言及したかどうかは不明だった。(以下略)>

◎中国側は発言を否定するものの…
 この記事について、25日の中国外交部定例会見で、ロイター通信記者が質問したが、毛寧報道局長はこう答えた。
「中米首脳会談の状況については、中国はすでに情報を発表している。あなたが指摘した報道の内容は、中国が掴んでいる状況と一致しない。中日関係に対しては、中国の立場は明確だ」
 このように、婉曲的に否定したのだった。
 だが私は、FTの報道は事実と思う。いやFTが報道する前から、さらに言えば米中首脳会談が行われる前から、習近平主席がトランプ大統領に対して、「高市非難」をぶちまけるだろうと見ていた。

◎習近平主席のブレない、シンプルな持論
 私は習近平氏が、2012年11月15日に第18回中国共産党大会で共産党総書記(党トップ)に就任する様を、北京の人民大会堂2階の記者席から目撃した。それ以降、習近平総書記が公の場で発言した内容を、現在に至るまで、ほぼすべてフォローしてきた。
 習近平という政治家は、決して複雑な人間ではない。万事シンプルな持論の持ち主で、それらを一貫して貫いている。この14年近く、一度もブレたことはない。まさに朝令暮改のトランプ大統領とは対照的な政治家だ。
 14年前に習近平新総書記が定めたスローガンは、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」(略して「中国の夢」)。これは中国が屈辱を受けた1840年のアヘン戦争、及び1894年の日清戦争の前の「中国が偉大だった時代」に戻すという意味だ。
 アヘン戦争に関しては、中国は、イギリスに敗北して結んだ「南京条約」で奪われた香港(島)を1997年に返還させた。さらに習近平時代になって、「香港人が治める香港」から「愛国者が治める香港」に換骨奪胎させた。そのため、「偉大なる復興」は大部分、果たしたと考えている。
 問題は、日清戦争である。やはり屈辱的な下関条約で日本に奪われた台湾を、いまだに「返還」(祖国統一)できていないからだ。
 習近平総書記は、中国共産党の慣例に従えば、2期10年を勤め上げた2022年10月の第20回共産党大会で、引退するはずだった。それを強引に、3期目を続けていまに至っている。
 その時の大義名分は、「中華民族の偉大なる復興をいまだ果たしていない」というものだったという。つまり、台湾統一ができていないということだ。
 共産党大会は5年に一度なので、来年秋に次の第21回共産党大会を開く。習近平総書記が超異例の総書記4期目を狙っているのは明白だが、それには再び同様の大義名分が必要になってくる。あと1年あまりしか時間が残されていないため、焦燥感にかられていることだろう。

◎高市氏と高市政権の動向に神経とがらせる中国
 折しも、2024年5月20日には台湾で、民主化されて5人目にして最も独立志向の強い頼清徳総統が誕生した。さらに日本では、昨年10月21日に、やはり右派的傾向の強い高市早苗首相が誕生した。しかもこの両首脳は昨年4月28日、台北の総統府で会談して、意気投合している。
 ここから習近平政権の「対日警戒」のアラートが鳴り始めた。そして、昨年11月7日の高市首相の「台湾有事と存立危機事態発言」で、一気に火が点いたのである。
 ここ数カ月の間でも、中国は以下のような高市政権の動向で、怒りを爆発させている。
〇長射程ミサイル配備……3月31日に陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本市)と富士駐屯地(静岡県小山町)に配備。
〇防衛装備品の海外移転……4月21日に「5類型」(救難・輸送・警戒・監視・掃海)の撤廃を決定。
〇安保三文書改正……4月27日に有識者会議を始動させ、年末までに改正予定。
〇非核三原則見直しと核保有……4月27日に行われた有識者会議で、非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)の見直しを提言した山崎幸二・元統合幕僚長をメンバーに加入。昨年末には首相補佐官が「日本の核兵器保有」を発言。
〇防衛費増強……今年度の防衛費は9兆353億円で、過去最高額のGDP比1.9%。
〇スパイ防止法制定……4月28日に自民党と保守党が初めて政策協議を実施。
〇国家情報局設立……4月23日に衆議院で法案が通過し、5月26日に参議院も通過し、可決成立。
〇憲法改正……4月12日の自民党大会で、高市総裁が1年以内の国会発議を表明。
〇台湾との半導体連携強化……3月31日、台湾政府が熊本にTSMCの3ナノ工場を建設することを認可。
〇靖国神社参拝肯定……4月21日に高市首相は「内閣総理大臣」名義で靖国神社に「真榊」の供物を捧げた。
 日本からすれば、中国の脅威が尋常でなくなってきているので、それに対抗する意味合いが強い。ところが中国から見ると、日本の「新軍国主義」「新戦前」と映るのだ。特に習近平主席は、これら高市政権の動向を、「台湾統一への最大の障害」と捉えているのである。

◎中国にすれば、米国は「同じ戦勝国同士」

 さらに、中国がアメリカをどう捉えているかと言えば、「第二次世界大戦において、共に肩を組んで日本を打ち負かした戦勝国同士」と見ている。だから習主席にしてみれば、トランプ大統領の前で高市政権に対して激昂するのは、「自然な感情の発露」なのである。
 ちなみに5月14日の米中首脳会談で、習主席が真っ先にトランプ大統領に述べたのは、「中米が『トゥキディデスの罠』に陥らないようにしよう」ということだった。
 これは、古代ギリシャのペロポネソス戦争(紀元前431~紀元前404年)が、覇権国スパルタが台頭してきたアテネに対して、覇権を奪うのではという疑心暗鬼に陥ったことが原因で起こったという歴史家トゥキディデスの分析にちなんだものだ。
 だが私が懸念するのは、米中間の「トゥキディデスの罠」ではなく、むしろ日中間の「トゥキディデスの罠」である。習近平主席には、日本に対して「トゥキディデスの罠」に陥らないようにしてもらいたいものだ>(以上「現代ビジネス」より引用)




米中首脳会談で「高市非難」が飛び出した背景、中国から見て台湾統一の「一番の壁」となった高市政権への怒りと焦り」と題して近藤 大介(ジャーナリスト・明治大学講)氏が東アジア「深層取材ノート」(第330回)の中で論じている。
 だが中国と韓国が異口同音に「対日戦勝国」だと自称する度に強い違和感を覚えるのは私だけだろうか。そもそも現在の中国、中華人民共和国が建国したのは1949年だ。それに対して日本がポツダム宣言を受諾して武装解除したのは1945年8月15日だ。既に武装解除した日本に1949年の中華人民共和国が戦勝することは、あり得ない。

 また韓国はポツダム宣言を受諾した1945年8月15日まで、日本が併合した日本の一地域だった。つまり朝鮮半島は日本の一部で、朝鮮半島民が日本軍と戦った史実はない。だから韓国が「光復節」として8月15日を日本による植民地支配からの解放と、大韓民国政府の樹立を祝う日としているのは理解できるが、日本に戦勝した日ではない。
 しかし日本が朝鮮半島を植民地支配した事実はない。日本は併合した朝鮮半島に多大な投資を実行し、社会インフラ整備や医療制度や教育制度を短期間で整備したことは特筆に値する。なぜなら欧米列強の植民地で現地住民のための社会インフラ等が整備されたことなど皆無だったからだ。

 終始一貫して、日本は他国を「植民地支配する意図で侵略」したことはない。満州進出も、当時すでに満州の一部地域に進出していたソ連に対抗するためだった。中国の国民党軍と紛争不拡大を日本政府は堅持しようとしたが、軍部の強硬派が次々と戦線拡大の既成事実を積み上げてしまった。
 現在の日本は戦後史観からの脱却を果たそうとしている。それはまさに高市政権の高い支持率が象徴している。GHQの占領統治下に広められた自虐史観により、戦後日本は自己否定の歩みをしてきた。しかし「いい加減にしろ」という内なる声が噴出して日本国民のパラダイムが大きく転換した。

 習近平氏は中共政府が不快感を示せば、日本政府は驚いて機嫌取りにアタフタする、と思い込んでいた。以前の自民党政権なら、親中派議員が暗躍して習近平氏の思惑通りに政権を誘導していただろう。高市以前の岸田、石破と続いた政権なら、特使を派遣して政府見解をひっくり返しただろう。しかし高市政権は中共政府が示した「不快感」を無視し続けた。そして中共政府の謂われなき日本批判に対しては「無視する」という政府見解が公式なものになった。
 そうすると、かつて日本を占領支配した米国に縋り付くしかない。トランプ氏との会談に「台湾問題」を持ち出した主な意図は高市政権に対する批判だった。しかしトランプ氏は「台湾に関しては話さない」とアッサリと首脳会談から台湾を外してしまった。しかも、北京から帰国するエアホースワン機内から高市氏に電話までしている。トランプ氏と習近平氏が固く握手して、高市氏は梯子を外されるのではないか、と多くのオールドメディアが観測気球を上げていたが、それにはすべて見当違いだった。

 日本のジャーナリストの多くは戦後史観のまま止まっている。国民のパラダイムがシフトしたことに気付いていない。だから「日本の軍国化」などと見当違いの解説を繰り返している。
 中国軍の脅威拡大に対して、高市政権は遅ればせながら懸命に対応しようとしているに過ぎない。防衛費がGDPの1%から2%への拡大、などと批判すること自体がナンセンスだ。対GDPパーセントが問題なのではなく、政府が責任を持って国家と国民を守れるだけの防衛を備えているのか、ということが問題なのだ。

 どこの国でも大統領や首相は自国のために殉じた戦没者の墓地に献花し慰霊する。靖国神社に日本国首相が参拝しないのは国難に殉じた先人に対して礼を失している。オールドメディアが首相の靖国参拝を批判するとしたら、彼らはいまだにGHQの支配下にある。いい加減、自虐的な戦後史観から脱却して、普通の国の日本国民になってはいかがだろうか。

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