中東紛争の火種を永遠に絶つための戦争だ。

<☆先行きは霧の中だが…
 米国によるイラン攻撃の開始から、およそ2カ月が経過した。両国は現在、戦火の終結を目指す協議の場に臨んでおり、停戦の状態にある。しかし、ホルムズ海峡を焦点とする両国間の緊張は依然として解けておらず、先行きは霧の中だ。
 多くの報道は、米国とイスラエルの猛攻を凌ぎながら国家体制を死守してきたイラン政権の消耗戦的な抵抗を、予想を超えると評してきた。一方、米国に対しては「トランプ大統領の迷走」などと、無計画で場当たり的であるかのごとき論評も散見された。作戦の出口もまた、「いかなる結末も暗闇の中」という分析が主流であった。
 しかし、イラン情勢において、これまでに生起した事象を冷徹に俯瞰すれば、米国が一連の軍事行動を通じて着実に国益の基盤を固めてきた構造が浮かび上がる。
「一定の成果を着実に積み重ねているというのが、真に問われるべき事象の核心なのだ」(専門家)そう断言する重い声がある。
 一見すれば隘路を彷徨するかのごとき米軍の動静も、大局の視座から注意深く眺めれば、右往左往とは対極をなす、一貫したリアリズムという「背骨」を持っている。むろん、国際的な合法性や人道の観点からの批判があることは、論を俟たない前提である。
 最高指導者たるアリ・ハメネイ師をはじめ、イラン革命防衛隊司令官、参謀総長、国防軍需相ら主要高官が相次いで落命した。米国はイラン政府に不可逆的な打撃を刻み込んだ後、さらに一手を繰り出した。トランプ政権は4月13日、米海軍によるホルムズ海峡の海上封鎖を断行したのである。イランが「封鎖する」と脅し続けてきたその海域を、逆に米国が先手を打って掌握したのである。

☆イランが被った本当のダメージ
 片や、イラン革命防衛隊は対抗の意思を示すように独自の「封鎖」を続け、圧力をかける。ホルムズ海峡を巡る双方による複雑な制御の構図は、原油価格の一層の高騰を招いた。
 この目まぐるしい展開を「外交的混乱」と切り捨てるのは、容易である。しかしながら、そのような解説にとどまるならば、いたずらに表層をなぞっているだけに過ぎない。国家戦略の視点からは、この局面は、米国の「収穫量」が確定していく交渉過程なのだ。そして、米国が一連の軍事行動と交渉圧力を通じて獲得したものを冷静に点検すれば、その総量は決して小さくないのである。
 まず、核開発問題における構造的な局面変化だ。イラン側は、最高指導者だったアリ・ハメネイ師をはじめ、多数の指導者層を失い、国家体制は根底から揺らいでいる。トランプ氏が明示した「核開発計画の無期限停止合意」が事実であれば、それは長年にわたる核問題における歴史的な分水嶺となろう。
 核施設への打撃の深度については諸説ある。しかし、仮に壊滅的な水準には至らなかったとしても、交渉の圧力手段としての実効性がすでに機能していることは疑いない。

☆中国を苦しめる
 次に、対中という戦略軸における成果を見逃してはなるまい。米国によるホルムズ海峡の逆封鎖は、イランからの原油輸入に深く依存する中国のエネルギー安全保障を根底から揺さぶった。
 イランにとっても、ホルムズ封鎖は、中国という同国の最大の後ろ盾に衝撃を与える急所であった。エネルギーのチョークポイント(戦略的要衡)を握ることで、中国の外交的選択肢を狭めることは、米国が周到に計算した主要な戦略的意図である。中国が米国産原油の購入を検討し始めたという報道もあったが、それが図星であったことを物語るものだ。
 さらに、1月に米国が軍事介入したベネズエラもまた、世界有数の石油埋蔵量を擁する親中国家であった。ベネズエラ、イランという連続した軍事行動は、対中戦略という太い文脈がその底流にあることを雄弁に物語る証左である。中国は世界最大の原油輸入国であり、イラン、ベネズエラはその根幹を支える主要な調達先なのだ。

☆アメリカが獲得したもの
 忘れてはならないのは、アメリカが今回の「実戦」を通じて数々の検証結果を得たことだ。「天然の要塞」と称される高原国家イランにおいて、地上戦における攻略の難しさは世界屈指とされる地形を誇る。その難攻不落の自然要塞において、米軍はおそらく、最新の統合作戦を試行し、衛星・宇宙・陸海空にわたる連携を実地で検証した。新兵器などを含め、いかなる机上演習も及ばぬ実戦データを獲得したはずだ。
 防衛装備の世界に「バトルプルーフ(戦場で実証済み)」という言葉がある。その重みは、いかなるシミュレーションの評価とも比べものにならない。米国は今回、イランという最難関の舞台でその実績を積み重ねた。中国はおそらく、こうした経験を持ち合わせていない。
 荒涼たる大地に守られたイランの国土は、同じく大陸を背後に持つ北朝鮮の地形的特質とも通底するものがある。現に対峙する中国・北朝鮮を見据えるとき、このような経験値と実戦データの蓄積が持つ意義は、捉えきれないほど大きい。
 こうした文脈に照らせば、長崎から出港した米軍の揚陸部隊は、単なる戦力増強や対イラン圧力のためだけの存在ではあるまい。仮にカーグ島への上陸作戦が実行されなかったとしても、陸海空に宇宙を加えた統合運用を実地で試すことこそが念頭にあると読み解くことは、自然である。
 米国は、軍事的な国益に資するという視座を常に手放さない。すなわち、「米国は今後30年から50年先を見据え、他国との熾烈な競争における優位をいかに確立するかを常に意識している」(国際安全保障筋)。そうした洞察が米国の行動原理を貫いている。この問いは、単なる経済的合理性の次元だけでは、計り知れない側面を孕んでいる。
 トランプ大統領の言動が揺らいで見えた時期があった。発電所攻撃を予告しながら翌日に延期する。停戦の時期を明言しない。メディアの中には、これを「思いつき」などと論評する向きもあった。しかし、軍事覇権国たる米国の対処方針は本来、一国家元首の気分ひとつで二転三転するはずがない。相手の出方を見極めながら臨機応変に対応を修正することは、むしろ当然である。
 そして、指揮官が巧みにポーカーフェイスを保つとき、敵方はその真意を読み解けない。つまり、外から見て「意図が読めない」こと自体が、最も有利な立ち位置に他ならない。指揮官の思考が透けて見える方が、はるかに問題である。トランプ政権において戦略の立案・策定に携わる真の実務者たちにとって、トランプ氏が「ふらつく演技」を演じてくれるほうが、世界を煙に巻く上で好都合であることは想像に難くない。

☆台湾海峡封鎖との酷似
 むろん、課題は残る。核施設への打撃が完全でなかったとすれば、イランの核開発を再び抑止しなければならない局面が到来する可能性は排除できない。加えて、イランが米国に対して抱く怨嗟と復讐への衝動は、世界各地でのテロ活動を再燃させる火種となりかねない。米国の「成果」を過大に評価することへの自戒は不可欠である。
 されど、エネルギーと軍事力は、古今を問わず国家の根幹をなす二大基軸である。中長期の視野で眺めれば、地政学・地経学では核となる要素において、米国は一連の行動を通じて、その優位性を確実に高めた。
 中東が動揺しても、米国のエネルギー自給体制、ひいては国家の基盤そのものは、容易に揺らぐものではない。中国は原油供給の急所を押さえられ、台湾有事へと向かう動きを再考せざるを得なくなった可能性は十分にある。米国家情報局が3月に「中国の2027年台湾侵攻計画はない」とする報告書を公表したことは、こうした複合的な文脈を背景に持つと見て差し支えあるまい。
 そして、米国によるホルムズ海峡封鎖という手法は、奇しくも、台湾情勢において、中国が行うかもしれないとの観測がある台湾海峡封鎖のシナリオと、構造的に酷似している。
 自明のようで重要な命題がある。仮に、米国とイスラエルによるイラン攻撃が、成功とも失敗とも断じがたい結果に終わったとしても、米国という国家そのものは転覆しないという事実である。米・イラン有事において、イランには国家体制の転換が生じ得る。しかし米国には、それが起こり得ない。この非対称性こそが、すべてを規定している。
 来る中間選挙や次期大統領選で共和党が敗れることはあるかもしれない。だが、米国という国家の存続に疑いを挟む余地はない。そして、共和党が政権を失おうとも、長期的視野に立って国益を最大化するという政策担当者たちの大方針は、揺らぐことがないとさえ言える。
 そして、地上での「泥沼と化した消耗戦」を回避しようとするならば、米国は手堅く「取るべきものを取り終えた」時点で早々にイランから手を引けばそれで足りるのだ。あえて乱暴に言えば、リアルポリティクスの観点において、米国にとってのイラン攻撃は「ローリスク・ハイリターン」に他ならなかった。

☆戦局がどうなろうとも

 もちろん、国際法上の問題、あるいは「超大国の横暴」といった非難が湧き上がっていることは、重く受け止めねばならない。正義であるのかどうかという重い問いは、当然、別の次元の問題として存在する。
 さりとて、トランプ大統領が国際社会の非難を承知しながら攻撃を断行したことについて、既に傍若無人との評が定着したトランプ氏であるがゆえに、躊躇なく踏み切ることができたという逆説的な解釈は成立する。そうであるならば、これは非常なる深謀遠慮と言うべきであろう。
 世界規模で卓越した情報能力を持つ米国がイランを攻撃するのである。出口戦略が難航する場合を想定していないとは、考え難い。戦局がどうなろうと、確実に一定の成果を勝ち取れるという計算された選択肢の下で、その都度、最善の着地点を探っていると見るのが妥当だ。
 情報は分析の深度と質によってこそ輝く。日々の事象の表層をなぞることに終始していては、物事の本質には届かない。まず問われるのは、エネルギーと武力という2本の柱によって国際秩序が組み上げられているとさえ言うべき厳然たる事実を、正面から凝視する覚悟である。日本にとっては、経済的合理性にのみ依拠しがちな視座を、戦略的想像力によって超克しなければならない。
 今なお朽ちることなき米国の強さの本質は、長期的な国益の確保という一点を見失わぬ圧倒的な戦略性にある。暗夜にあって超然と輝く北極星のみを頼りに、遥かなる大空を渡る鳥のごとく。>(以上「現代ビジネス」より引用)





中国はホルムズ海峡危機で決定的なダメージを負った…「アメリカのイラン攻撃はバカなただただ誤りだった」という視点に欠けている大局観」と題する市ノ瀬 雅人(政治ジャーナリスト)の論評が面白い。なぜならイラン戦争を米中関係の視点から俯瞰しているからだ。
 まず日本人読者の認識を改めて確認しておく必要がある。なぜなら日本人の多くは現在の日本で生活している日常性格を基本にして国際関係を観ているからだ。つまり誰からも直接的な脅威として生活を脅かされることのない、安定した日々の暮らしを送っている人としてイラン情勢を見ている。しかしイランの現実は私たち日本人の想像を絶する状況にあることを、まず認識すべきだ。

 現在、イラン戦争前と二ヶ月後の現在とで物価は倍になっている。しかも水道から水は出ず、電気も一日に数時間しか通電していない。もちろん市場はシャッターを下ろして機能していない。街の辻々にイラン革命防衛隊の自動小銃を持った兵士が「検問所」を設置して、人の自由な往来を極端に抑制していたが、現在では彼らの姿が消えている。なぜなら彼らも給与が遅配して、生活できなくなったからだという。
 昨日モジタバ師の徹底抗戦の「声明」がラジオで読み上げられたようだが、イラン国民の多くはモジタバ師は既に亡くなっていて、「声明」はラジオ局を支配下に置いているイラン革命防衛隊の「統治」声明だと理解している。だが国際的な場面ではマスウード・ペゼシュキヤーン大統領がイラン政府を代表している。つまりイランという国家を代表する政府はいずれなのか、判然としないカウス状況だ。

 現在のイラン情勢で確実に損しているのは中国だ。イラン原油の実に90%以上を爆買いしていた中国が、米海軍のホルムズ海峡逆封鎖によりイラン原油が止まったからだ。それは中国が消費する原油の20%に相当する。しかも中国はイランから1バーレル60ドルという格安値で買い叩いていたし、支払いは「元」で行っていた。外貨準備のドル不足に陥っている中国にとってパラダイスのような原油輸入国だったわけだ。
 しかしイランにとって中国は最大の顧客であると同時に、実に迷惑な存在だった。イラン原油の損益分岐点は1バーレル120ドルと云われている。その原因はイランの油井が古いものばかりで、老朽化した効率の悪い掘削設備を使っているためだ。何とか最新式の設備に更新したいが輸出した原油の対価を「元」で貰うので西側諸国から新規設備や機器を第三国ルートでも買い入れることが出来ない。

 しかし現在は米海軍のホルムズ海峡逆封鎖により、中国にイラン原油が入らなくなった。それはベネズエラからの原油輸入が止まったことと相まって、確実に中国経済に深刻な打撃を与えている。無理して国際市場から原油を調達しようとすれば、現在は1バーレル100ドルという高値の原油を輸入することになるだけでなく、決済で「元」は使えず、ドルで支払わなければならない。中国にとって二重の意味で深刻な打撃を受けている。
 さて、米国である。米国はトランプ氏のイラン攻撃により国内世論は激しく二分されている。しかもトランプ氏の岩盤支持層だった「MAGA」の人たちにまでヒビが入っている。トランプ氏は国益よりもイスラエルの利益を優先している、という非難だ。しかし米国が後ろ盾となって建国したイスラエルは中東で安住の地を得ているわけではない。むしろ受難の道を歩み続けている。そのイスラエルの受難の正体はアラブ諸国ではなく、イランだ。イランがアラブのナショナリズム「イスラム教」を背景とした「神権」政権を「革命政権」と偽装して、革命のためなら暴力も許される、また「神権」政治でジハードを掲げれば、異教徒に対する謂われなき武力行使も受け入れられる、という自己都合な「イスラム原理主義」を発明して、ヒズボラやハマスといった無手勝流の暴力主義集団を育成・支援し続けてきた。だから、トランプ氏はイランの政権交代を「停戦協議」の裏条件として掲げている。「神権」主義者たちや、その傭兵・イラン革命防衛隊たちがノコノコと停戦協議の場に出てくるのなら、トランプ氏は決して停戦協議の席に着かないだろう。

 トランプ氏はイラン戦争を中東の最終戦争にする決意でいる。だから決してイランの核開発は許さないし、あらゆる無法行為(国際海域のホルムズ海峡封鎖)を排除する。イランには国民により選ばれた大統領がいる。議会を代表する国会議長もいる。彼らがイランを代表すべきが筋だ。
 出来ることなら、イランの発電インフラを破壊したくない。しかしイラン革命防衛隊がいつまでも武力で政権を主導するつもりなら、米国も武力で排除するしかない。イラン革命防衛隊を名乗っているが、「神権」独裁政権そのものが世襲制の独裁体制でしかないと、その正体を露にした。そもそもマホメットは「イスラム教は聖職者を排除せよ」と命じている。当時のキリスト教が激しく腐敗しているのを見ていたからだ。絶対権力は絶対的に腐敗する、だから絶対のアッラーに聖職者く不要だ、という論理だ。そのためハメネイ師の「宗教指導者」だと名乗っていた。しかし「宗教指導者」と「聖職者」とどれほど違うというのか。イスラム教を政治権力の基礎に利用した彼らこそが「邪宗徒」ではないだろうか。

 イラン国民がこの論理に気付くなら、彼らの政治権力基盤は根こそぎ崩壊する。政権崩壊と同時に彼らの親衛隊・イラン革命防衛隊はゴロツキ集団でしかないと化けの皮が剥がれる。
 その日は、イラン国民が立ちあがる時に訪れる。イランが国民のための国になるための最後の産声が間もなく聞こえるだろう。

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