イランに新政権が樹立されるのはいつの日だろうか。

アメリカとイスラエルによる苛烈な軍事攻撃を受け、イランは今月に入ると報復措置(の一環)として、湾岸地域にある米ビッグテックのデータセンターなど諸施設を「正当な攻撃対象」と見なす、と公式に発表した。

 この動きは単なる脅しに止(とど)まらず、すでに深刻な事態を引き起こしている。
 今月1日、UAE(アラブ首長国連邦)にあるアマゾン(厳密にはAWS:Amazon Web Services)のデータセンターが、イランのドローン「シャヘド136」による直接攻撃を受け、大規模な火災が発生してシステムがダウンした。また、バーレーンにある同社施設も同様の攻撃で被害を受けている。
 イラン革命防衛隊(IRGC)系のタスニム通信は、アマゾンやグーグル(アルファベット)、マイクロソフト、エヌヴィディアなど米国の巨大IT企業7社を含む約30か所の施設を「敵の技術インフラ」としてリストアップした。
 これら諸施設の物理的な破壊に加えて、医療機器大手の「ストライカー」などアメリカ系企業に対し、イランのハッカー集団が大規模なサイバー攻撃を仕掛け、会社の業務を麻痺させている模様だ。

デジタルに先立ちエネルギー・インフラを攻撃
 データセンター(デジタル・インフラ)への攻撃に先立ち、イランは石油備蓄施設などエネルギー網を狙った攻撃を加速している。
 最近、テレビや新聞などで盛んに報道されているので今更言うまでもないかしれないが、イランの革命防衛隊は世界の石油・天然ガスの約2割が通過するホルムズ海峡を「一滴の石油も通過させない」と宣言し、同海峡を事実上の閉鎖状態に追い込んだ。
 それでも通行しようとするタンカーに対し、彼らはドローンやミサイル、自爆ボートなどを用いた攻撃を繰り返している。3月中旬までに少なくとも11隻の商船が被害を受け、多数の船員が死傷あるいは行方不明となっている。また攻撃を恐れたタンカーが海峡の入り口で足止めされ、周辺の海域が巨大な駐車場ならぬ駐船場と化している。
 イランは「米軍に基地を貸している国も攻撃対象だ」として、近隣諸国のエネルギー拠点を容赦なく叩いている。サウジアラビアでは世界最大級の石油精製施設である「ラス・タヌラ」がイランのドローンやミサイルの標的となり、一時操業停止に追い込まれた。
 UAEでは首都アブダビの巨大石油コンビナート「ルワイス」や、主要な石油積出港「フジャイラ」の貯蔵施設がイランの攻撃を受け、大規模な火災が発生した。またカタールの巨大な液化天然ガス(LNG)輸出施設や、米軍第5艦隊の拠点があるバーレーンの燃料タンクもイランの攻撃を受けた。
 これら一連の攻撃により、世界経済はかつてないショックに見舞われている。
 今年3月時点で、原油価格は1バレル100ドルを超え、最悪のシナリオでは200ドルに達すると警告する専門家もいる。現在、世界の石油・ガスの約2割が市場から消えた状態であり、各国の石油備蓄の放出をもってしても穴埋めが不可能なエネルギー危機となっている。各国では便乗値上げも既に始まっている。

イランが絶望的な「死なば諸共」戦略に出た理由
 それにしても、イランは今回なぜ、よりによってこんな陰険な報復策を選んだのだろうか?これまで国際世論はどちらかというとイランに同情的だったと思われるが、こんなことをしたら反発を受けるのは必至だ。
 イラン政府がここまで極端で一見自滅的とも思える石油やデジタルのインフラ攻撃を選んだ背景には、恐らく「窮鼠猫を噛む」的な生存戦略があるのかもしれない。つまり「国際世論の支持を得ること」よりも、むしろ「この戦争を継続不能なまで高コストにすること」を選んだようだ。
 率直に言って、イランはアメリカやイスラエルを直接軍事力でねじ伏せることはできないと最初から分かっている。そのため、敢えて湾岸諸国のエネルギー・インフラや巨大IT企業のデータセンターを攻撃することで、言わば「世界経済を自分たちの道連れにする」という絶望的な戦略に出たのではなかろうか。
 それによって周辺の湾岸諸国や日本、EUをはじめ国際社会が「このままでは我々の経済が破綻する」と悲鳴を上げ、アメリカに対して「いい加減に早く停戦してくれ」と圧力をかけるように仕向けているのだろう。
 とはいえ、トランプ大統領がボスの座についている今のアメリカにそんな強気なことを言える国(政治家)はほとんどいない。イランによる、今のような瀬戸際戦略は多分通用しないだろう。

あがけばあがくほど悪い方向に行く
 確かに当初は「アメリカとイスラエルの自分勝手な先制攻撃」に対して、国連や一部の国々からイランへの同情的な声が聞かれた。しかしイランが全く無関係の第三国や民間インフラを無差別に攻撃し始めたことで、それらの同情は急速に失われ、今や「地域全体の敵」へと変化しつつある。
 イラン政府は「武力による勝利」はもとより、今や「外交的な勝利」すら諦め、「自分たちが死ぬときは、世界経済も道連れだ」という極めて破滅的なロジックに陥ってしまったのかもしれない。今後は「話の通じる相手」ではなく、デジタル社会や経済そのものを破壊する「テロ国家」として、国際社会から一層孤立していく可能性が高い。まさにアメリカの「思う壺」である。
 一方、イランに八つ当たりされたサウジアラビアやUAEなどの湾岸諸国は、自衛のために背に腹は代えられず、皮肉にもトランプ政権の望む通りイスラエルとの軍事協力を進めるかもしれない。今回のイランの自暴自棄とも言える暴走が、いずれ(ユダヤ国家とイスラム国家が手を組む、という通常では信じられない取り合わせの)「中東版NATO」のような包囲網につながってしまう恐れも無きにしも非ずだろう。
 イランの絶望的な「道連れ戦略」は短期的に世界を混乱させるのみならず、長期的に「イランという国家システムそのものを世界から退場させる」という、彼らにとって最悪の結果を招くことになるかもしれない>(以上「現代ビジネス」より引用)





イランが絶望的な「死なばもろとも」作戦に打って出た、ほんとうの理由」と題して、絶望的なイラン革命防衛隊の戦術について小林 雅一(作家・ジャーナリスト)氏が論評している。
 「絶望的」と書いたが、確かにこのまま戦争を続けたところでイラン革命政権に勝つ見込みは皆無だ。なぜなら制空権を奪われ、地下壕のミサイルや攻撃型ドローンの倉庫を破壊されたイラン革命防衛隊に米イに戦争で勝てる方途はないからだ。

 しかし、戦闘で勝てないなら湾岸諸国の原油輸出を止めることで米国とその同盟国に打撃を与えて、停戦交渉を有利に進めるしか米イと対等に停戦協議のテーブルに就ける選択肢はない。だから湾岸諸国を敵に回してでも、ホルムズ海峡封鎖をするしかない。
 だがそうすると、どうなるのか。ホルムズ海峡を封鎖すると湾岸の産油諸国も経済破綻の危機に瀕するが、イランも国庫収入の大半を占めるオイルマネーを失うことになる。イラン革命防衛隊は軍隊の衣裳を纏っているが、中身は原油輸出から軍需産業、果ては金融機関に到るまで1,700社を超える企業集団を抱える経済団体そのものだ。その企業集団の利益により30万人イラン革命防衛隊を支えている。

 小林氏は「イラン政府は「武力による勝利」はもとより、今や「外交的な勝利」すら諦め、「自分たちが死ぬときは、世界経済も道連れだ」という極めて破滅的なロジックに陥っ」たのではないかと推測している。まさにその通りだろうが、それはイラン革命政権の幹部たちに限られるのではないだろうか。イラン革命防衛隊の兵卒たちはそうではないはずだ。なぜなら好待遇に浴しているとは思えないからだ。飢餓から逃れるには職がなければならないが、就職した先がイラン革命防衛隊の「舎弟企業」で、配属先がイラン革命防衛隊の兵卒だった、というものかも知れないからだ。
 イラン革命防衛隊はホメネイ師が創設したイラン革命政権の親衛隊だが、イランには他にも約40万人を擁するイラン・イスラム共和国軍がある。

 イラン・イスラム共和国軍は旧イラン帝国軍を継承しており、軍制はアメリカ・イギリスの影響を強く受けている。役目は主として国境警備に当たっているが、憲法に従えば防衛武装力の基盤と原理はイスラムの信仰と教義であり、イラン・イスラム共和国軍とイスラム革命防衛隊は、この目的のために創設されている。そのため共和国軍は国境警備だけではなく、イスラムの使命、言い換えればジハード、並びにアッラーフの法の勝利のための闘いも担っている。
 1987年に採択されたイラン・イスラム共和国軍法によれば、共和国軍は、イラン・イスラム共和国の独立、領土保全及び国家体制、カスピ海、ペルシャ湾、オマーン海峡の領海、国境河川における国家利益の擁護、並びに要請により侵略者の攻撃又は占領からの領土の擁護を目的としたイスラム国民又はイスラム以外の困窮した人民への軍事援助を使命とする。

 イラン革命政府は財政破綻しているため、共和国軍の兵士たちが充分な給与を受け取っているとは思えない。また、イラン革命防衛隊も経済制裁により経済活動が停滞して、充分な軍資金があるとも思えない。しかも司令部が崩壊しているため、イラン全土で統一された動きが出来ていないと思われる。ホルムズ海峡を担当している軍区の司令が「死なば諸共」作戦に出ているのではないだろうか。
 断っておくが、イラン革命防衛隊が必ずしも士気の高い「革命戦士」ではない。端的に言えば、ゴロツキ集団だと思った方が良い。すべての残虐行為をジハード「聖戦」で片づける連中だ。だから「強い者には弱く、弱い者には強い」という特性を持つ。米国が沖縄の海兵隊を派遣したのは「強い」海兵隊でホルムズ海峡を封鎖しているイラン革命防衛隊を蹴散らすためだろう。

 イラン革命政府は統率者を失って支離滅裂な作戦に固執している。持続戦を戦う兵站の計算など出来る能力もないと思われ、手持ちのミサイルや攻撃型ドローンが尽きれば、補給することなど出来ない。もちろんイラン革命政府を支援する外国勢力も存在しない。
 イラン国民を盾にして、都市に籠って抵抗する手法はヒズボラやハマスのテロ集団と酷似している。しかし制空権を奪われ、米軍航空機が常時監視しているため、イラン革命政権がいつまで政府の体を成しているかも分からない。そろそろイラン国民による新政権の樹立が宣言されて然るべきではないだろうか。その際、イラン革命防衛隊を抑え込むのはイラン共和国軍でなければならないが。

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