税は経済政策の主要なアイテムの一つだ。決して財務省の玩具ではない。
<破政権への批判と消費税減税・社会保険料の軽減を求める声が、国民のあいだで日増しに高まっている。それなのに、なぜ主流の政治家と財務省の官僚は、減税も社会保障の見直しも実行しようとしないのか?経済学者の高橋洋一氏と飯田泰之氏が徹底分析する緊急対談。
消費減税以外の「打ち手」はあるのか
高橋:社会保障って、国民に説明するのが難しいんですよ。保険料がどうやって決まっているのか、みんな全然わかっていないでしょ。とくに年金はややこしい。医療費のほうがまだ簡単なくらいです。
飯田:医療費についても、おかしいと思います。そもそもなぜ現役世代と高齢者で負担割合が違うのか、正直、理由がわかりません。
高橋:そんなの、政治決定に決まってますよ。
飯田:もちろんそうなんですが、貧しい若者が3割負担で、貯蓄がある高齢者が1〜2割負担である根拠を、誰も論理的には説明できませんよね。
高橋:日本維新の会や国民民主党のように「高齢者の医療費負担を増やす」という政党もようやく出てきましたけどね。私は今年ちょうど70歳になるんですが、同年代の知り合いと話すと、病院の話題ばっかり。ひどい話で、やっぱり2割負担になると、とたんにみんな病院に通うようになるんだ(笑)。医療費の見直しには私自身は賛成だけど、政治家にとっては、ぜんぜん票にならないから。
飯田:社会保険料の改革が政治的に難しいのであれば、それなら次善の策は、所得税減税ではないでしょうか。制度上は、消費税を下げるよりも所得税の控除額を上げることのほうが簡単なはずです。
高橋:所得税の基礎控除額は去年、国民民主党があんなにやっても、ほんの少ししか上がらなかったから、手詰まりでしょう。それに、あれだけ玉木(雄一郎)さんが目立っちゃうと、ほかの政党は「手垢がついた」と思ってやりたがらなくなる。それでいま、政界が消費減税一色になっているという事情もあります。
まあ確かに、基礎控除や給与所得控除が30年間も据え置きだったというのは、はっきり言って「ステルス増税」だとは思います。基礎控除というのは「最低生活費」みたいなものだから、年収に関係なく一律であるべきですが、私も数年前に確定申告したとき、基礎控除がゼロになっていてビックリしたんですよ。「年収が一定額を超えると基礎控除はなくなる」という制度改正を、財務省はシレッとやっていたわけです。
飯田:いま消費減税を実行すると、その後の政策オプションが大きく狭まります。消費減税で即、インフレが加速する可能性は低いですが、その次に行う財政出動や減税は、かなりインフレに直結しやすい状況になるでしょう。いまの日本が抱える問題は、不況ではありません。社会保障改革や安全保障、教育などの課題も目白押しです。そのなかで、貴重な成長余力の割り当て先として、消費減税が第一に来るのはおかしい。
高橋:でもね、かりに与党が野党案をのんで時限的な消費減税をしても、どうせ1年後には絶対にもとに戻すんだから、そういう心配はあまりしなくてもいいんじゃないかなと思いますよ。残念ながら。
石破総理で「自民党がぶっ壊れる」
飯田:もし参院選で自民党が大きく議席を減らしたら、石破さんは消費減税をやりますかね?
高橋:どうかな。石破さんは去年の総選挙でも「政権選択選挙だ」と言っておいて大負けしたのに、何もしなかった人だから。ふつうは、あんなに負けたら辞めるのに。すごい鈍感力ですよ。
飯田:維新を「高校無償化」をエサにして釣ったので、野党が団結して不信任案を可決される心配がなくなりましたからね。高校無償化も財務省が手当てしたようですが、そもそもすでに各都道府県がやっている政策ですし、大きな財源が必要なものでもない。そんな軽い政策で釣られてしまって、維新も何を考えているんだと思います。
高橋:参院選で大負けしても、石破さんは責任をとらず、かといって消費減税もせず、このままグダグダいくと私は予想しています。石破さんというのは、総裁選で岸田(文雄)さんが「高市(早苗)だけは勝たせるな」と言って総理になっちゃっただけの人だから、政権基盤がないし、何かを変えるパワーもない。
飯田:このまま自民党がジリ貧だと、次の衆院選後には下野もありえるでしょうね。ひょっとすると、本当に「自民党をぶっ壊す」政治家は石破さんなのかもしれません。
高橋:小泉(純一郎)さんは本気でぶっ壊すつもりなんてなかったけれど、石破さんは何も考えてない。こうなったら、麻生(太郎)さんあたりに「仁義なき党内抗争」を仕掛けてもらうしか、状況を打開する方法はないかもね>(以上「週刊現代」より引用)
元財務官僚で唯一財務省批判している高橋洋一(経済評論家)氏の対談記事があった。題して「「消費税減税」は本当に「日本を救う一手」なのか…? 票にならない「社会保障改革」は絶対にやらない、この国の政治家たちの限界」というものだが、消費税廃止の立場から引用記事を一読してみた。
消費減税以外の「打ち手」はあるのか
高橋:社会保障って、国民に説明するのが難しいんですよ。保険料がどうやって決まっているのか、みんな全然わかっていないでしょ。とくに年金はややこしい。医療費のほうがまだ簡単なくらいです。
飯田:医療費についても、おかしいと思います。そもそもなぜ現役世代と高齢者で負担割合が違うのか、正直、理由がわかりません。
高橋:そんなの、政治決定に決まってますよ。
飯田:もちろんそうなんですが、貧しい若者が3割負担で、貯蓄がある高齢者が1〜2割負担である根拠を、誰も論理的には説明できませんよね。
高橋:日本維新の会や国民民主党のように「高齢者の医療費負担を増やす」という政党もようやく出てきましたけどね。私は今年ちょうど70歳になるんですが、同年代の知り合いと話すと、病院の話題ばっかり。ひどい話で、やっぱり2割負担になると、とたんにみんな病院に通うようになるんだ(笑)。医療費の見直しには私自身は賛成だけど、政治家にとっては、ぜんぜん票にならないから。
飯田:社会保険料の改革が政治的に難しいのであれば、それなら次善の策は、所得税減税ではないでしょうか。制度上は、消費税を下げるよりも所得税の控除額を上げることのほうが簡単なはずです。
高橋:所得税の基礎控除額は去年、国民民主党があんなにやっても、ほんの少ししか上がらなかったから、手詰まりでしょう。それに、あれだけ玉木(雄一郎)さんが目立っちゃうと、ほかの政党は「手垢がついた」と思ってやりたがらなくなる。それでいま、政界が消費減税一色になっているという事情もあります。
まあ確かに、基礎控除や給与所得控除が30年間も据え置きだったというのは、はっきり言って「ステルス増税」だとは思います。基礎控除というのは「最低生活費」みたいなものだから、年収に関係なく一律であるべきですが、私も数年前に確定申告したとき、基礎控除がゼロになっていてビックリしたんですよ。「年収が一定額を超えると基礎控除はなくなる」という制度改正を、財務省はシレッとやっていたわけです。
飯田:いま消費減税を実行すると、その後の政策オプションが大きく狭まります。消費減税で即、インフレが加速する可能性は低いですが、その次に行う財政出動や減税は、かなりインフレに直結しやすい状況になるでしょう。いまの日本が抱える問題は、不況ではありません。社会保障改革や安全保障、教育などの課題も目白押しです。そのなかで、貴重な成長余力の割り当て先として、消費減税が第一に来るのはおかしい。
高橋:でもね、かりに与党が野党案をのんで時限的な消費減税をしても、どうせ1年後には絶対にもとに戻すんだから、そういう心配はあまりしなくてもいいんじゃないかなと思いますよ。残念ながら。
石破総理で「自民党がぶっ壊れる」
飯田:もし参院選で自民党が大きく議席を減らしたら、石破さんは消費減税をやりますかね?
高橋:どうかな。石破さんは去年の総選挙でも「政権選択選挙だ」と言っておいて大負けしたのに、何もしなかった人だから。ふつうは、あんなに負けたら辞めるのに。すごい鈍感力ですよ。
飯田:維新を「高校無償化」をエサにして釣ったので、野党が団結して不信任案を可決される心配がなくなりましたからね。高校無償化も財務省が手当てしたようですが、そもそもすでに各都道府県がやっている政策ですし、大きな財源が必要なものでもない。そんな軽い政策で釣られてしまって、維新も何を考えているんだと思います。
高橋:参院選で大負けしても、石破さんは責任をとらず、かといって消費減税もせず、このままグダグダいくと私は予想しています。石破さんというのは、総裁選で岸田(文雄)さんが「高市(早苗)だけは勝たせるな」と言って総理になっちゃっただけの人だから、政権基盤がないし、何かを変えるパワーもない。
飯田:このまま自民党がジリ貧だと、次の衆院選後には下野もありえるでしょうね。ひょっとすると、本当に「自民党をぶっ壊す」政治家は石破さんなのかもしれません。
高橋:小泉(純一郎)さんは本気でぶっ壊すつもりなんてなかったけれど、石破さんは何も考えてない。こうなったら、麻生(太郎)さんあたりに「仁義なき党内抗争」を仕掛けてもらうしか、状況を打開する方法はないかもね>(以上「週刊現代」より引用)
元財務官僚で唯一財務省批判している高橋洋一(経済評論家)氏の対談記事があった。題して「「消費税減税」は本当に「日本を救う一手」なのか…? 票にならない「社会保障改革」は絶対にやらない、この国の政治家たちの限界」というものだが、消費税廃止の立場から引用記事を一読してみた。
両者はいつの時代に生まれた人なのかと首を傾げざるを得ない。高橋氏が今年で70歳になるのなら彼は昭和の時代、つまり消費税のなかった時代で30代半ばまで過ごしている。そうすると、消費税がなくても税収だけで日本は充分にやって来れた、という人を知っているはずだ。その代わり、法人税は現在の20%の入以上の43%(実質的には軽減措置があって37.5%だった)で、所得税は累進最高税率が現在は45%だが、当時は75%だった。そのように法人税は高率だったが、その代わり政策軽減税率がたくさんあって、たとえば投資減税や研究費減税など政策を適用すれば現行制度と大して変わらない制度だった。
現行の所得税は配当所得などから生じる所得には源泉分離課税20%だけ課税して、総合所得に算入しない「分離課税」方式にしている。それは個人が株主になって資本主義を強化する、との名目で富裕層減税を行った昭和時代税制の名残だ。富裕層に取って好都合な税制だから現在も残しているが、それにより高収入層に対する実質所得税率は45%ではなく、30%前後になっている。これほど富裕層を優遇している国は世界中でも日本くらいだ。
法人税が高いと日本企業が国外へ移転し、外国企業が日本国内に進出しない、との理屈で法人税率を半減したが、しかし法人税を半減しても海外へ工場を移転させるきぎぅは幾らでもいるし、外国企業が日本に進出ラッシュになることもなかった。その代わり、安い法人税を支払って利益を内部留保した方が株主配当や役員報酬を増やせるから経営者にとってオイシイので、日本の各企業は労働分配率を下げて内部留保を競うように増やした。よって、企業の内部留保総額が1,000兆円近くにまでなっている。
平成から令和にかけての税制が正しければ「失われた30年」などなかった。なぜなら税制は経済政策の中でも重要な部分を占めているからだ。確かに税は国家収入だが、それは国民の経済活動から搾り取る「公的な強奪」だ。経済活動の利益には税負担力があるが、消費に課税する消費税には税負担力はない。それは個人消費に対する「罰金」でしかないからだ。つまり消費税は国民消費を抑制する税でしかない。
GDPの約六割が個人消費だ。だから消費に課税すれば巨額税収が国庫に入ることになる。しかも食料品などの消費は景気に関係ないため、安定財源となる。だから財務省は景気を気にすることなく、財政運営が出来るから消費税を決して手放さない。そのため欧州諸国を引き合いに出して「日本の消費税はまだまだ低い税率だ」と引き上げを画策している。しかし米国に消費税はない。あるのは地方税として幾つかの州が消費税を制定しているだけだ。
なぜ欧州諸国に消費税があって、米国に国として消費税が無いのか。理由は簡単だ。欧州諸国は大陸国家で住民は自由に国境を越えて移動できる。そのため所得税を重くすると他国へ移動してしまう。そのため、消費に課税した方が合理的だ。米国に国税として消費税がないのは欧州諸国ほど米国民が他国へ移動しないから所得税で税収を確保しているからだ。
日本の場合は四方を海に囲まれて所得税回避のために国境を超える、などということは殆ど出来ない。しかも源泉課税主義を採用しているため、外国人でも日本国内で得た所得に対して所得税が課税される。だから明治から昭和時代まで、日本に消費税などなかった。平成になって「安定税収」を財務省が欲しがり、バカな自民党政治家が前後の見境もなく導入決議しただけだ。
消費税は廃止すべきだ。引用した対談の中で飯田氏が「消費減税するとインフレになる」と主張しているが、そんなことはない。インフレ抑制の最大アイテムは公定歩合だ。消費税でインフレ抑制する、というのは間違いだ。消費税は需要不足を招き、慢性的なデフレをもたらすだけだ。その実証が「失われた30年」ではないか。すでに3%から5%、5%から8%、8%か10%へと消費税率を上げる都度、デフレが進行するのを私たちは経験した。「失われた30年」はもちろん財務省の「緊縮、増税」政策が招いたものだが、その増税の真犯人が消費税だ。
だから日本経済を再び「成長する経済」に大転換するために消費税を廃止すべきだ。そしてGDPを現在の2倍から3倍へと増大させなければならない。世界経済は日本が「失われた30年」で足踏みしている間に2~3倍になっている。だから逆に日本経済が世界各国の1/2~1/3に落ちぶれたのだ。四の五の言う事はない。消費税を廃止すれば日本経済は成長するし、消費税廃止の財源は法人税と所得税を旧に復せば良いだけだ。ただ基礎控除は国民一人当たり200万円に引き上げれば、子供を持つ家庭は夫婦と子供一人で600万円まで非課税になる。子供が二人になれば基礎控除は800万円になる。子供を持つことが課税上有利になる、と解れば国民は婚姻し子供を育てるようになる。「税」とはそうした政策全般を実行する力を持っている。闇雲に課税すれば良いというものではない。