トランプ氏の下手な関税政策と停戦協議が欧州諸国を団結させた。
<<中国など新興国と異なり、トランプ「相互関税」が日本や欧州に及ぼす影響は限定的だ。金融市場は関税政策を好感し、米国株は一段高も期待できる。だが実は、それ以上に好調なのは、ドイツなど欧州株。予想外の成長シナリオが想定できる理由とは?>
1月20日にトランプ大統領が就任し、関税政策や外交政策が動きつつある。関税政策については、カナダ、メキシコへの関税賦課発動は土壇場で1カ月先送りされた。これらの国に対しては、移民対策などへの圧力を高める手段として関税引き上げが使われている、と位置付けられる。
さらに2 月13 日には「相互貿易と関税」を実現するための大統領覚書(大統領令)が署名され、いわゆる相互関税の導入が明確になった。これは関税政策の強化だが、もともと高い輸入関税を課している新興国に対して、トランプ政権が関税引き上げを求めることを意味する。
標的である中国だけではなく、国内産業保護を続ける新興国であるインドやブラジルなどからの輸入品に対しても、政治ディールの材料として関税を賦課することをトランプ政権は目指すだろう。
一方で、もともと関税率が低い日本、欧州からの輸入品に対しては、相互関税が及ぼす影響は限定的である。
日本について関税賦課の対象になるのは、高い関税で保護されている食料品である。また、自動車については日本国内の税制などの制度が複雑であることや安全基準が高いことが非関税障壁と認定されており、トランプ政権による関税引き上げの対象になると筆者は予想している。
貿易赤字を是正する目的に対しては実際のところ関税賦課の効果は限定的で、自由貿易を阻害する関税引き上げは、米国にとってもマイナスの影響が大きい。ただ、米国の輸入金額が大きいうえに、関税引き上げの悪影響とセットで減税政策を繰り出すという対応で、相対的に米国経済へのダメージは抑制される。
他国への理不尽な要求ではあるが、「米国第一」を掲げるトランプ政権は着々と政策を推進していると言える。
関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを好感
最近の米国の経済指標は強弱入り混じっているが、総じて見れば、経済成長率、インフレ率ともに安定した動きが続いている。1月の消費者物価の上振れでインフレ懸念が一時高まったが、これは単月のノイズで上振れている側面も大きく、インフレの基調が変わっているわけではない。
今後トランプ政権が関税賦課を実現していくことが輸入価格上昇をもたらすが、それがインフレの再加速を招くほどのインパクトには至らない、と筆者は引き続き想定している。FRB(連邦制度準備理事会)は、3月会合で1月に続き政策金利を据え置く見通しだが、経済活動とインフレの落ち着きを見定めて、6月会合までには利下げを再開するだろう。
トランプ政権の関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを金融市場が好感する中で、米国株(S&P500)はほぼ最高値圏で推移、年初まで上昇していた米国債10年金利は4.5%付近まで落ち着いている(2月14日時点)。
米国株については、大手ハイテク企業などのバリュエーションが相当高いので、現在の水準から上値を超えるには時間がかかるだろう。ただ、トランプ2.0のもとで、米国経済の安定が続くとみられ、年央までには米国株は一段高が期待できる。
防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用する
底堅い米国株よりも2025年になって好調なのが、実は、ドイツなどの欧州株である。欧州経済は依然として停滞しているが、ECB(欧州中央銀行)による利下げが続く確度が高いことが株高を支えている。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争終結を目指してトランプ政権が動いていることも大きい。対ロシア外交がうまくいくかは不透明だが、平和が訪れるとすれば恩恵を最も受けるのはドイツなどの欧州である。
トランプ政権の誕生はウクライナ戦争終結への期待に加えて、欧州諸国の防衛力拡大への圧力の高まりを意味する。防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用することも、同国の株高要因である。
2月17日にパリで開かれた欧州首脳会議で、域内の防衛能力強化策についての協議が行われた。欧州の政治リーダーは防衛力強化が必要と危機感を強めている模様で、これはトランプ政権の圧力によって起きている大きな変化だ。
2022年以降ドイツ経済の停滞が続いていた一因は、憲法の制約などから拡張的な財政政策が発動されないことであると筆者は考えている。防衛力強化に対する政治判断の変化は、ドイツやフランスが拡張的な財政政策に転換するきっかけになる。トランプ政権の外圧によって、欧州経済が予想外に成長するシナリオが想定できることになる。
2月23日に行われるドイツの総選挙を経て、どのような政権枠組みになるかは不透明だ。新政権が政策転換を明確にすれば、ドイツ経済が2025年は1%を超える成長が実現しても不思議ではない。2025年の欧州株のアウトパフォームは続くのではないか。
1月20日にトランプ大統領が就任し、関税政策や外交政策が動きつつある。関税政策については、カナダ、メキシコへの関税賦課発動は土壇場で1カ月先送りされた。これらの国に対しては、移民対策などへの圧力を高める手段として関税引き上げが使われている、と位置付けられる。
さらに2 月13 日には「相互貿易と関税」を実現するための大統領覚書(大統領令)が署名され、いわゆる相互関税の導入が明確になった。これは関税政策の強化だが、もともと高い輸入関税を課している新興国に対して、トランプ政権が関税引き上げを求めることを意味する。
標的である中国だけではなく、国内産業保護を続ける新興国であるインドやブラジルなどからの輸入品に対しても、政治ディールの材料として関税を賦課することをトランプ政権は目指すだろう。
一方で、もともと関税率が低い日本、欧州からの輸入品に対しては、相互関税が及ぼす影響は限定的である。
日本について関税賦課の対象になるのは、高い関税で保護されている食料品である。また、自動車については日本国内の税制などの制度が複雑であることや安全基準が高いことが非関税障壁と認定されており、トランプ政権による関税引き上げの対象になると筆者は予想している。
貿易赤字を是正する目的に対しては実際のところ関税賦課の効果は限定的で、自由貿易を阻害する関税引き上げは、米国にとってもマイナスの影響が大きい。ただ、米国の輸入金額が大きいうえに、関税引き上げの悪影響とセットで減税政策を繰り出すという対応で、相対的に米国経済へのダメージは抑制される。
他国への理不尽な要求ではあるが、「米国第一」を掲げるトランプ政権は着々と政策を推進していると言える。
関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを好感
最近の米国の経済指標は強弱入り混じっているが、総じて見れば、経済成長率、インフレ率ともに安定した動きが続いている。1月の消費者物価の上振れでインフレ懸念が一時高まったが、これは単月のノイズで上振れている側面も大きく、インフレの基調が変わっているわけではない。
今後トランプ政権が関税賦課を実現していくことが輸入価格上昇をもたらすが、それがインフレの再加速を招くほどのインパクトには至らない、と筆者は引き続き想定している。FRB(連邦制度準備理事会)は、3月会合で1月に続き政策金利を据え置く見通しだが、経済活動とインフレの落ち着きを見定めて、6月会合までには利下げを再開するだろう。
トランプ政権の関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを金融市場が好感する中で、米国株(S&P500)はほぼ最高値圏で推移、年初まで上昇していた米国債10年金利は4.5%付近まで落ち着いている(2月14日時点)。
米国株については、大手ハイテク企業などのバリュエーションが相当高いので、現在の水準から上値を超えるには時間がかかるだろう。ただ、トランプ2.0のもとで、米国経済の安定が続くとみられ、年央までには米国株は一段高が期待できる。
防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用する
底堅い米国株よりも2025年になって好調なのが、実は、ドイツなどの欧州株である。欧州経済は依然として停滞しているが、ECB(欧州中央銀行)による利下げが続く確度が高いことが株高を支えている。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争終結を目指してトランプ政権が動いていることも大きい。対ロシア外交がうまくいくかは不透明だが、平和が訪れるとすれば恩恵を最も受けるのはドイツなどの欧州である。
トランプ政権の誕生はウクライナ戦争終結への期待に加えて、欧州諸国の防衛力拡大への圧力の高まりを意味する。防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用することも、同国の株高要因である。
2月17日にパリで開かれた欧州首脳会議で、域内の防衛能力強化策についての協議が行われた。欧州の政治リーダーは防衛力強化が必要と危機感を強めている模様で、これはトランプ政権の圧力によって起きている大きな変化だ。
2022年以降ドイツ経済の停滞が続いていた一因は、憲法の制約などから拡張的な財政政策が発動されないことであると筆者は考えている。防衛力強化に対する政治判断の変化は、ドイツやフランスが拡張的な財政政策に転換するきっかけになる。トランプ政権の外圧によって、欧州経済が予想外に成長するシナリオが想定できることになる。
2月23日に行われるドイツの総選挙を経て、どのような政権枠組みになるかは不透明だ。新政権が政策転換を明確にすれば、ドイツ経済が2025年は1%を超える成長が実現しても不思議ではない。2025年の欧州株のアウトパフォームは続くのではないか。
石破政権は財政政策の転換に依然として後ろ向き
日本については、トランプ政権から受ける外圧は、現時点では、他国と比べて大きくない。欧州で期待できる財政政策の転換は日本で起きるだろうか。
既に中期的な拡大方針が固まっている防衛費の緩やかな拡大は自民党政権であれば続くだろうが、問題は国民民主党が掲げる減税政策が実現するか否かである。ただ、筆者が想定していたとおり、石破政権は財政政策転換に依然後ろ向きなままである。
こうした状況が続く限り、日本経済そして日本株市場の停滞は続くだろう>(以上「JB press」より引用)
「トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く」と題して村上尚己(プロ投資家)氏が書いている。その主旨は欧州経済は米国がウクライナ支援から手を退く、とトランプ氏が発表していることから、EU各国が軍需産業に投資して兵器等の増産を図る、ということからコケタ自動車産業がEV化の穴を埋める結果になったが、日本の自動車産業はEV化の穴を上手に避けたが、石破政権がポンコツだから経済成長政策への転換が出来ない、というものだ。
日本については、トランプ政権から受ける外圧は、現時点では、他国と比べて大きくない。欧州で期待できる財政政策の転換は日本で起きるだろうか。
既に中期的な拡大方針が固まっている防衛費の緩やかな拡大は自民党政権であれば続くだろうが、問題は国民民主党が掲げる減税政策が実現するか否かである。ただ、筆者が想定していたとおり、石破政権は財政政策転換に依然後ろ向きなままである。
こうした状況が続く限り、日本経済そして日本株市場の停滞は続くだろう>(以上「JB press」より引用)
「トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く」と題して村上尚己(プロ投資家)氏が書いている。その主旨は欧州経済は米国がウクライナ支援から手を退く、とトランプ氏が発表していることから、EU各国が軍需産業に投資して兵器等の増産を図る、ということからコケタ自動車産業がEV化の穴を埋める結果になったが、日本の自動車産業はEV化の穴を上手に避けたが、石破政権がポンコツだから経済成長政策への転換が出来ない、というものだ。
まったく日本の自公政権とその補完勢力はどうしようもない。ザイム真理教に操られて日本経済を30年も停滞させたにも拘らず、それでも飽き足らないのか、さらに日本経済を停滞させるようだ。それに対して、反撃すべき野党第一党の立憲までも党代表が「緊縮、増税」ザイム真理教に帰依しているから、まったくどうしようもない。
ドイツでは軍需産業が政府肝煎で強化されようとしている。それによりEVでコケタ自動車産業界に元気を注入しようとしている。日本政府はトランプ関税不況をどのようにして乗り切るつもりなのか。従前通りの無知蒙昧政権と同じく、唯々諾々としてトランプ氏の決定を受け容れるだけなのか。
なぜ買入予約したトマホークやF35といった兵器購入をキャンセルする、と対抗措置を出さないのだろうか。トランプ氏の関税引き上げは日本国内産業に甚大な影響があるから、日本の軍需産業に防衛費を回す、と米国に通達しないのだろうか。米国が「米国ファースト」だと云うのなら、日本も「日本ファースト」にならざるを得ない、と宣言すれば良い。それこそがトランプ氏が主張する互恵主義ではないかと。
トランプ政権はカナダの反撃にあって、実は深刻な影響を受けそうだ。バーボンに報復関税をかける、とカナダ政府が反撃し、さらに米国から買い入れている農産品にも関税をかける、と予告している。
欧州諸国もトランプ氏の関税引き上げに対して対抗措置を発表して、一歩も退かない態度を示している。従前のように米国がウクライナ支援をするのなら、トランプ氏の関税引き上げに対しても一定の理解を示しただろうが、トランプ氏がウクライナ支援から手を退く、と表明しているのでトランプ関税への対抗措置に遠慮がない。
トランプ氏は米国に突如として現れた習近平だろうか。習近平氏が「戦狼外交」で先進自由主義諸国全てを敵に回したように、トランプ氏は関税引き上げで世界の米国と取引のある貿易国すべての国に喧嘩を売った。それは決して喧嘩上手とは云えない。相手にパンチを繰り出したものの、相手からカウンター攻撃を受ける、という喧嘩だ。
相手が一国だけなら(一期目のような「対中デカップリング」を目的とした関税引き上げなら)米国経済に深刻な影響はない。しかし貿易相手国全てに喧嘩を売るのなら、米国の輸入品全てが対抗関税で高騰することになり、その影響は食料品だけでなく産業全般に渡る。それでなくてもインフレに悩まされて来た米国民は再びトランプ・インフレに生活を直撃される。そうすると、どうなるのか。トランプ支持を失うのみならず、意気消沈している民主党を元気づけることになる。まったく愚かな政治選択をしたものだ。
欧州諸国は気軍需産業投資を活性化させ、雇用拡大を図りながらロシアとの対抗姿勢を強めるだろう。なぜならプーチンはウクライナ全土を寄こせ、とトランプ氏に主張した。それは断じて許せない。欧州諸国はプーチンの要求を耳にして、瞬時にロシアと徹底的に戦う決意を固めた。もはやトランプ停戦協議は無意味だ。今後プーチンがいかなる譲歩をしようと、プーチンの真意を知ったからには欧州諸国にとって下手な停戦などあり得ない。
EVでコケタ欧州諸国の産業を恢復させる妙手が軍需産業へのテコ入れだ。そうした政策と政府投資に欧州諸国民は反対しない。ロシアの脅威がウクライナ国境線まで肉薄する事態は何があっても避けなければならない。そのための努力なら、欧州諸国民は惜しまないだろう。トランプ氏の下手な関税政策と停戦協議が欧州諸国を団結させた。