高額医療制度の改悪に強く反対する。

国の非情さが浮き彫りになった。
 がん患者らでつくる団体などの代表者が12日、福岡厚労相と面会。医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の利用者負担を引き上げる政府の方針に対し、「治療の継続を断念しなければならなくなる」などとして13万5000人余りの反対署名を手渡した。福岡は方針を一部修正する意向を示したが、引き上げの凍結を求める団体との隔たりは埋まらなかった。
 制度の見直しにさまざまな批判が噴出する中、新たな火種になってきたのが、先月23日の社会保障審議会・医療保険部会に厚労省が提出した財政検証資料だ。財政への影響を推計したページの注釈に、このように記されている。
<実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果(いわゆる長瀬効果:約▲2270億円(給付費))を見込んでいる>

■「諦めて死ねということか」
「長瀬効果」とは、厚労省に戦前から伝わる経験則のこと。患者負担が増える制度変更が実施されると、患者の受診日数が減ったり、受診率が低下し、結果として医療費が削減されるというもの。つまり、厚労省は制度見直しを試算するにあたって、自己負担増により患者が治療を諦めることを前提にしていたのだ。
 このトンデモ試算に、SNSも大炎上。この問題を報じた記事を全国保険医団体連合会(保団連)が引用したXの投稿は、きのうまでに1万「いいね」を超えた。
「諦めて死ねということか」「国民を数字としてしか見ていない」などの意見が寄せられている。
 保団連事務局次長の本並省吾氏はこう話す。
「金額ありきの議論だったのではないかと推察しますが、病を抱える人々への想像力が欠如しています。治療が長期化すると家計の負担などが重なり、経済的な悩みが増えていく。治療と家計をてんびんにかけざるを得ない状況にまで追いつめられてしまいます。また、何回も制度を利用するうちに『国に申し訳ない』と負い目を感じてしまう人もいる。こうした患者の葛藤を理解せず、『治療を諦めて下さい』と受け取られかねない発信を国が行ったのは、大いに反省して欲しいです」
 国民皆保険制度が本末転倒だ>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)




 高額医療費自己負担の見直しで「「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上」との記事が目に付いたが、大炎上するのは当たり前だろう。
 社会保険料で「年金」で元が取れるのは何歳まで生きれば良いか、という試算が良く目につくが、医療保険でどれほど医療に掛かれば元が取れるか、という記事にお目に掛ったことがない。それは医療保険が個々人で管理されていない、ということと医療を必要とする者が個々人で異なるからではないか。

 しかし当然ながら個々人で管理して、医療保険の「掛け金」を全部使い切ったから、あなたは今後すべて有料です、ということにならないからだろう。医療サービスと年金とでは比較することが困難だからだろうが、医療保険制度のあり方こそが社会保障のあり方として真っ当なのではないだろうか。
 なぜなら「負担は応能」で「支給は一律」というのが社会保障の大原則だからだ。医療保険制度の中でも、今回は高額医療制度の改悪を行って、患者の個人負担を増やそうと云うのだから黙っておられない。なぜなら誰でも人生の最後には病を得て床に臥すからだ。その終末医療で多くの国民が高額医療制度のお世話になっている。それを改悪しようと云うのは貧富の差で生命の長短が決まることになりかねない。現行制度ですら自分の足で立っている貧困層にとって自己負担はかなり重く生活を圧迫している。

 それならいっそのこと、自分の足で立つことを放擲して、生活保護に縋った方が良い、という判断をする国民が増えはしないだろうか。そうすると却って医療負担が社会保障制度の中で重くなりはしないだろうか。2270億円ほど個人負担を重くすることによって、それ以上の生活保護費が増加したなら、官僚たちが弾いた算盤勘定は元も子もなくすことになりはしないだろうか。
 そもそも医療制度はすべての国民に医療を受けさせる、という目的があるのではないか。それを生活苦のために医療を打ち切ることになっては目的に反するだろう。本並省吾氏は引用記事で「(高額医療制度を)何回も利用するうちに『国に申し訳ない』と負い目を感じてしまう人もいる。こうした患者の葛藤を理解せず、『治療を諦めて下さい』と受け取られかねない発信を国が行ったのは、大いに反省して欲しいです」と述べている。国民は何のために税金や各種負担金を支払っているのか。国家とは国民を守る家でなければならない。そうした原則を忘れて制度のための官僚や政治家に成り下がってはならない。

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