トランプ-マスクの蜜月はいつまで続くのか。

大暴れのイーロン・マスク
 イーロン・マスク氏が、連邦政府のムダに大ナタを振るいまくっている。 前編『イーロン・マスクがアメリカ連邦政府で「大暴れ」…!政府効率化省で「電撃戦」で行われた「大粛清」のヤバすぎる中身』でも解説してきたが、マスク氏は、新設の政府効率化省(別名ドージ省)のトップとして第2次トランプ政権に入閣した。 
  全権に近い絶大な権力を負託され、各省庁の機密情報に対するアクセス権を得た彼は、使途が疑わしい支出や、公金を受け取った非営利団体が受領した血税の一部を政治家へのキックバックに使うなどの腐敗を次々と告発している。 各省庁において調査を妨害する官僚上層部を躊躇なく一掃するなど、昼夜を問わない「電撃戦」で、左派的な考えを持つとみなす民主党バイデン前政権の「残党」を粛清している。 
 トランプ大統領とマスク氏による「衝撃と畏怖 (Shock and Awe)」作戦は、出だしにおいて極めて鮮やかな成果を挙げているように見える。 ただし、この先トランプ大統領やドージ省が訴訟の嵐にさらされ、連邦裁判所によって一部の「成果」が無効化されることは十分予見できる。しかし、マスク氏が摘発した一部の不正は、明らかに国民が納めた税金の乱用や不正使用のように見えるため、トランプ政権はたとえ裁判に負けても、有権者の支持を得られるかもしれない。

はびこっていた「公金チューチュー」
 マスク氏やトランプ大統領の支持者が「米国の利益に沿わない不正や詐欺」とみなす公金支出には、以下のようなものが挙げられている。いずれも、米情報自由法(FOIA)による開示や、マスク氏率いるドージ省の調査で明るみに出たものだ。 主なものは以下の通りだ。
 ①  元大統領首席医療顧問であったアンソニー・ファウチ博士の下で、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と米国務省傘下の米国際開発庁(USAID)が、2020年の新型コロナウイルス流行の直前、中国湖北省にある武漢ウイルス研究所の研究者に対し、合計4000万ドル(約62億円)以上の研究補助金を支出 
②  USAIDが東欧セルビアの職場における多様性・公平性・包括性(DEI)推進プログラムに150万ドル(約2億3200万円)を支出 
③  USAIDが西欧アイルランドのDEIミュージカル公演に7万ドル(約1100万円)を支出 
④  USAIDが南米コロンビアのトランスジェンダーオペラ公演に4万7000ドル(約730万円)を支出 
⑤  USAIDが南米ペルーのトランスジェンダーコミック出版のため3万2000ドル(約500万円)を支出 また、共和党内でトランプ派と対立し、民主党と協力することが多くなったネオコン(新保守主義)派の重鎮ビル・クリストル氏が設立した「民主主義の擁護」を謳う団体にUSAIDが「民主主義を守るNPO支援」名目で公金支出を行い、その団体が民主党の選挙対策組織に献金をして「キックバック」を行った不正政治資金疑惑も指摘されている。 
 また、トランプ大統領は2月6日にソーシャルメディア(SNS)に投稿し、「民主党バイデン政権下のUSAIDが、政治ニュースサイトのポリティコから800万ドル(約12億円)を受け取り、ポリティコは民主党に有利な記事を量産していた。史上最悪のスキャンダルだ!」と主張した。 これに対しポリティコは、「政府機関が公務遂行のため新聞・雑誌やウェブニュースを購読するのは通常の公金支出の範囲内であり、ポリティコが民主党に特に有利な報道をしたことはない」と反論している。 確かに、政府機関が新聞・雑誌やウェブニュースを大口サブスクするのは普通のことだ。だが、ポリティコ1社への購読費支払がバイデン時代の4年間で総額12億円まで跳ね上がったことは、通常ではないだろう。 そのサブスクはどのような内容で、本当に仕事のために必要であったのか、支払額に見合う価値を納税者や援助対象にもたらすものだったのか、現時点では不透明だ。 しかも、ポリティコが両論併記型のバランスがとれた報道を行っていたのならまだしも、実際には民主党に批判的な論調はほとんど扱わず、主にトランプ攻撃に徹していたことを考えれば、偶然にしては出来過ぎている感じがしなくもない。 
 1961年に当時のケネディ大統領が下した大統領令で設立されたUSAIDの目的は、米国の利益に沿った民間の対外人道援助および開発支援である。特定政党のイデオロギーの対外拡散や、米国内の政党に対する政治献金の支援ではない。 ところが、USAIDは上部組織の国務省の命令にも縛られず、独立した運営を続けてきた。そうした文脈において「公金チューチュー」疑惑が表面化しているわけだ。 トランプ大統領は「USAIDは過激で気の触れた連中によって運営されている。彼らを排除し、その後どうするか判断する」と語っており、実際にマスク氏を通してUSAIDの閉鎖を、2月3日に命じた。

権威を高めるマスクの死角
 今回問題化した一連の支出が、米国の国益に沿った対外援助および開発支援であるか、これから米国内で議論されてゆくことになろう。その中で、マスク氏の権勢はますます強まろう。 何しろ、毎年6兆ドル(約929兆円)という天文学的な支出を管理する米財務省の最高機密である決済システムへのアクセス権を得たのだから、あらゆる連邦政府支出を精査して不正や詐欺を追及することはもちろん、不適切とみなした支出は即座に政権中枢に頼んでストップをかけられる、まさに神のような立場である。 
 だが、そのマスク氏でさえ、孫悟空のように「お釈迦様」であるトランプ氏の手のひらの上で暴れているに過ぎないと思わせる出来事が起こった。 トランプ大統領が1月21日、マスク氏の人工知能(AI)開発の「宿敵」であるスタートアップOpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)をホワイトハウスに招き、最大5000億ドル(約78兆円)の国家的な民間AI開発プロジェクトである「スターゲート計画」を、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長とオラクルのラリー・エリソン会長とともに発表したのだ。 
 なお、マスク氏率いるAI開発企業のxAIも、2024年5月に60億ドル(約9250億円)の資金を調達している。だが、OpenAIに次々と流れ込む巨額投資と比較すると、スケールで見劣りがするのは事実だ。 加えて、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が1月30日に報じたところによれば、OpenAIの企業価値は3400億ドル(約52兆円)に達する可能性がある。実現すれば、マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースX(3500億ドル)に次ぐ世界2位の評価額となる。

「蜜月」に水を差したOpenAI
 さらにOpenAIは1月30日、最新推論モデル分野において、米ロスアラモス国立研究所、ローレンス・リバモア国立研究所、サンディア国立研究所との新たな提携を発表した。 トランプ政権は、マスク氏のxAIではなく、アルトマン氏のOpenAIをパートナーに選んだのである。 
 せっかくトランプ政権に入閣して、閣内の誰よりも大きな権勢をふるい始めたマスク氏にとって、そのような展開が面白いはずがない。案の定、マスク氏はスターゲート計画におけるソフトバンクの資金調達能力を貶す投稿をXで行った。 直接の「上司」であるトランプ氏ご自慢のAIインフラ計画について、「ソフトバンクの資金不足」を理由に成功の可能性に対して疑義を呈したのだから、穏やかではない。 なお、トランプ大統領は、「彼らは資金を拠出する。政府は何も出さない。彼らが資金を出す」と述べ、ソフトバンクや孫氏への信頼を表明したことは興味深い。

「孫悟空」にされたイーロン・マスク
 よく考えれば、トランプ氏がマスク氏の永遠のライバルであるアルトマン氏をホワイトハウスに招待し、国立研究所の開発パートナーにOpenAIを選んだのは、マスク氏をつけ上がらせないようにするための「トゲ」としての意味があったのではないか。 閣僚を上手くコントロールできず、運営がガタガタになった第1次政権の時と比較すると、トランプ氏の人事管理は大きく進化し、より老獪になったと言えるかもしれない。 
 トランプ大統領は2月2日に、「マスク氏は不適格と思われる公務員を解雇する権限を与えられているが、それはわれわれ(政権中枢)が同意しなければ有効ではない。彼は、われわれの承認なしに何もできないし、何もしない」と明言している。 さらに、「適切なマスク氏の提案には承認を与えるが、不適切なものは承認しない。もし特定の案件でわれわれとマスク氏との対立が生じれば、その案件に彼が近付くことを許さない」と表明。最後に、「彼が私の承認なしに独断で暴走すれば、あなた方メディアに真っ先に知らせる」とも述べた。 
 マスク氏は、短期間の連邦特別公務員として、第2次トランプ政権に参加した。その権威は絶対的なものに見えるが、実は孫悟空の「緊箍児呪(きんこじじゅ)」のような輪っかを頭にはめられており、暴れすぎるとトランプ氏によって締め付けられる。 現在のところトランプ大統領は、マスク氏が自身の思い通りに動いてくれていると満足を表明している。だが、連邦政府のあり方を根本的に変えるという「破壊者」の役目をマスク氏が演じ終わったとトランプ氏が見定めた際に、二人の関係は変化するかも知れない。 さらに連載記事『トランプが政権人事で「共和党エリート」たちを次々と粛清…!「ほめ殺し」の末に追放されたポンペオ元国務長官の「悲惨な末路」』でも、トランプ政権の実情を考察しているので、ぜひ参考にしてほしい>(以上「現代ビジネス」より引用)




イーロン・マスクが青ざめた…!トランプとの蜜月は早くも終わるのか…?突如、現れたライバルとの「トランプ争奪戦」、その仁義なき中身」と題して岩田 太郎(在米ジャーナリスト)氏が米国政府機関に斬りこんでいるマスク氏の快刀乱麻ぶりとその限界を伝えている。
 昨日もブログで取り上げたが、USAIDに関して日本では殆どオールドメディアは取り上げない。なぜならNHKをはじめ、総務省までUSAIDの補助金を受け取っていたからだ。報道機関が外国から補助金なり寄付を受け取るのは法律違反だ。しかもUSAIDの意向に沿った報道をしていたのではないかと疑る始末だ。何のための受信料なのか、政治権力から独立するための「国民の皆様から受信料を頂く」という建前ではなかったか。

 マスク氏がUSAIDを許せなかったのは、外国への補助金が後進国でも偏った「グローバルサウス」への支出が目立つからだ。もちろんアフリカ諸国へもUSAIDは補助金を出しているが、それらの多くは国連で中国の子分になっている。なんのための外国への支援だったのか、米国は反米国を増やすために支援してきたのか。
 国内でUSAIDが支援する団体は概ね米民主党政権を支持する団体だ。トランプ氏にとってUSAIDを存続させて良いことなど何もない。だが、外国への支援を通して影響力を保持しようとした米国の戦略は悉く破綻することになる。その後、米国に代わって進出するのは中国だろうが、中国が東南アジアやアフリカ諸国で発言力を増すのを米国は容認するのだろうか。

 引用記事で岩田氏は「マスク氏の権勢はますます強まろう。 何しろ、毎年6兆ドル(約929兆円)という天文学的な支出を管理する米財務省の最高機密である決済システムへのアクセス権を得」たから、ますますトランプ政権内で権勢を奮うだろう、と危惧している。その反面、トランプ氏が次世代の稼ぎ頭としてトランプ政権にアピールしていたxAIに対抗して、アルトマン氏のOpenAIがトランプ氏の足元を揺るがしている。
 「OpenAIは1月30日、最新推論モデル分野において、米ロスアラモス国立研究所、ローレンス・リバモア国立研究所、サンディア国立研究所との新たな提携を発表した」というから、マスク氏のxAIよりもアルトマン氏のOpenAIの方が開発陣営は強力だ。何のためにマスク氏がトランプ氏に近づいたのか、それはまさにAI戦争で米国政府の後ろ盾を得たかったからだ。しかし、その地位はアルトマン氏のOpenAIに奪われてしまった。

 岩田氏がマスク氏は孫悟空役を担わされたと分析したように、マスク氏は米国政府で大ナタを振るっているが、それは同時に多くの敵を作ることでしかない。実業家は必然的に同業他社を敵にすることになるが、それ以外にも多くの敵を作ることは彼の実業家としての未来を危うくすることでしかない。
 USAIDの閉鎖をきめたことはUSAID支援にぶら下がっていた各種団体や活動家たちを敵に回したことになる。それは海外だけではない、米国内の活動家たちもマスク氏を「敵」認定したのではないか。もちろんUSAIDを背後から操っていたのはトランプ氏と敵対するDSでもある。軍産共同体にとって世界から戦争の火種を消してはならない。活動家が世界各地で様々な活動を行い、様々な地域で騒動を起こすことがDSたちの「お望み」だ。

 マスク氏の大暴れをトランプ氏は何処まで容認するのか。トランプ氏は「共和党エリート」たちを次々と粛清し元国務長官のポンペイオ氏までも追放したが、その反作用としてトランプ氏に厄災となって降りかからないとも限らない。その時にはマスク氏は弊衣のように捨てられることになるだろう。トランプ-マスクの蜜月が長く続くとは思えない。その見極めが出来なければマスク氏の転落が待っているだけだ。

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