米中関係はヤバくはならない、ただ対中デカップリングが進むだけだ。

米中分断から「断絶」へ…
 トランプ大統領の対中関税の発動は、いよいよ米中の本格的な断絶をもたらすことになりかねない。それは、表むきの政治的対立だけでなく、人的交流の欠乏によってもたらされる。
 いま、まさにその事態が加速度的に進行していることを、私たちはもっと警戒するべきかもしれない。
 トランプ氏は2月10日、すべての鉄鋼・アルミニウム製品の輸入に25%の追加関税を適用するための大統領令に署名した。

追加関税は3月12日から発動される。
 すべての国を対象とするとしているが、「その狙いは中国だ」との見方が一般的だ。
 米国政府が高関税を課したことにより、昨年の中国の鉄鋼製品の輸入量は約51万トン、全輸入量の1.8%に過ぎない。だが、「カナダやメキシコなどの第三国を経由して中国の安価な製品が米国に輸出され、米国の鉄鋼・アルミ産業に打撃を与えている」と判断して、米国政府は例外のない関税措置に踏み切ったと言われている。
 中国の昨年の鋼材の純輸出量(輸出量マイナス輸入量)は初めて1億トンの大台を超えた。不動産バブルの崩壊による内需の低迷を受けて中国の鉄鋼業界は輸出に活路を見いだそうとしていたが、これに「待った」がかかった形だ。

トランプと習近平の「個人的関係」の深層
 米連邦議会でも中国バッシングが激化している。
 下院の中国特別委員会のムーレナー委員長(共和党、ミシガン州選出)は、中国との恒久的正常貿易関係(いわゆる最恵国待遇)を撤回する法案を1月23日に提出した。
 中国に対する最恵国待遇は2000年から適用されているが、これが撤廃されると中国の輸入品に対する関税は平均で約60%上昇する可能性がある。
 第1次トランプ政権以降、中国に対する最恵国待遇を撤廃する法案が提出されたが、いずれも廃案となっていた。だが、通商専門家は「今回は成立する可能性が高い」と考えている(2月7日付ロイター)。
 トランプ氏は2月10日に放送されたFOXニュースのインタビューで「1月20日の就任以降に中国の習近平国家主席と電話で協議した。我々は非常に良好な個人的な関係を築いている」と述べたが、中国との首脳会議の開催には言及しなかった。
 中国側も米国の話し合いの必要性について再三言及しているが、一向に米国との協議が始まらないのはなぜだろうか。

ヤバすぎる…!民間部門の「対話が消滅」
 それは、習近平指導部に米国留学経験者などの「知米派」が少ないことが関係しているだろう。
 次第に対話が失われている状況は、民間部門でも同じだ。
 やがて、米中は人材交流の欠乏によって緊張が高まる事態が来るかもしれない。対話の消滅が、局面をますます難しくするのは間違いないだろう。
 米中の本当の分断は、人材交流が止まることで始まるのだ>(以上「現代ビジネス」より引)




米中は本当に終わりかもしれない…「関税」がトリガーとなった「民間交流消滅」で起こる、米中断絶のヤバすぎる実体」と題して藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏がトランプ時代の米中関係を危惧している。
 藤氏の危惧は引用論評を一読されれば明快に解る。トランプ氏が関税のみならず中国人留学生や研究員の追放などが対中の民間チャンネルまでも閉鎖することになる、という危惧だ。しかし果たして米中に民間レベルの交流チャンネルは存在していたのだろうか。

 従来より中国は「超限戦」を世界の先進諸国に仕掛けてきた。留学生や研修生だけでなく、民間企業経営者といえども中共政府の命令に従わせてきた。いわゆる国防動員法の存在だ。国防動員法の骨子は以下の通りだ。
「平成二十二年七月、中国政府は「国防動員法」を施行した。本法の目的は、平時の動員準備と戦時の動員実施に法的根拠を与え、即応能力を高めるため。
 本法により、中国国内はもちろん海外在住の中国人も動員の対象となるだけではなく、中国国内で活動する外国企業や居留権を有する外国人も、動員・徴用の対象となる」
 という極めて危険な法律だ。そのため中国人留学生等は民間人でありながら、中共政府の「動員令」に従わなければならず、そうした意味では純然たる民間人とは云えない。

 藤氏が民間交流が途絶する、と考えるのは危惧というよりも、そもそも民間交流という藤氏が観念する民間人による交流自体が存在しない。すべては中共政府によってコントロールされた似非「民間人」による交流でしかない。
 また関税引き上げ合戦は両国間の貿易実績から断然米国有利だが、米国が全面的にトランプ案通りに引き上げるとは思えない。なぜなら関税引き上げは短期的に輸入物資の価格高騰を招くからだ。既にインフレで疲弊している米国の個人消費が日用雑貨が主ではあるが、価格引き上げを歓迎するとは思えない。国民の反発を招いてまで、トランプ氏が関税引き上げ策を維持するとは思えない。適当な時点で妥協して「集中豪雨的な輸出は控えろ」と𠮟り置くことで振り上げた拳を下すのではないだろうか。

 習近平政権に知米派の実務家がいない、と藤氏は指摘しているが、習近平政権に不足しているのは知米派の実務家だけではない。経済政策の専門家も不足している。「改革開放」から「戦狼外交」に舵を切ったのも、国際政治に明るい専門家が習近平氏の周りに誰もいなかったからだろう。
 そうした人材不足と習近平氏の中華思想に取り憑かれた独断専行が中国経済を崩壊へと導いている。既に外国投資家は中国から撤退して経済崩壊のトバッチリを受けないように防衛している。それが対中デカップリングというなら、米国をはじめ中国に投資してきた先進諸国はドイツを除いて対中デカップリングを概ね終わらせている。つまり中国の経済崩壊では中国の「独りコケ」という結果で終わるだろう。ただ日本には中国難民が大量に押し寄せる可能性がある。対中ビザ緩和するような反日政権が続いたなら、日本は中国人によって乗っ取られてしまいかねない。それこそがヤバい事態ではないだろうか。

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