トランプ氏が分断された米国を正常化する。
<ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任してから1ヶ月が経つ。内政も外交も、次々と新しい政策を繰り出し、世界を混乱に陥れている。
その政策の原則はアメリカ第一主義であるが、バイデン政権の政策を転換し、反古にすることに狙いがあるようだ。しかし、トランプの方針は、アメリカ建国の精神や理念から大きく乖離している。
LGBTなど少数派を無視するトランプ
イギリス国内での宗教弾圧から逃れたピューリタンは、メイフラワー号でアメリカ大陸に到着した。1620年のことである。その後、多くのイギリス人が移住して植民地を建設し、1776年、東部13州がイギリスから独立してアメリカ合衆国を誕生させた。
建国の発端は宗教弾圧であり、少数派の人々は本国から逃れ、新天地で自らの信仰を守ろうとした。アメリカの建国の理念は、「自由、平等、フロンティア精神」である。
このアメリカの建国の歴史を振り返ると、LGBTなど少数派を無視するトランプの方針は承服しがたい。
トランプは、バイデン政権下の多様性・公平性・包括性(DEI)政策を終わらせるとして、連邦政府内のDEIを促進する部署を閉鎖した。バイデン政権の政策の全否定である。トランプは、とくに連邦政府の職員には民主党支持者が多いと反感を募らせている。すでに多くの職員が解雇されている。
反DEIの理由は、性別や人種などの少数派であることが、能力よりも優先されているのは公平でないと考えるからである。2023年には、保守色の強い連邦最高裁が、大学入試で志願者の人種を考慮するアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)を違憲と判断している。
トランプは、連邦政府が認める性別は男性と女性のみだと宣言し、性的マイノリティ、LGBTを敵視している。
国際政治評論家を自称する舛添 要一氏は北京政府から招かれて訪中し、無事に帰国している。それだけでも舛添氏が如何なる政治的立場にいるか明白だろう。その舛添氏が「トランプによる「USAID解体」が《悪手》と言わざるを得ないワケ…寛大さを失ったアメリカの求心力はどん底に」と題する論評を発表したので興味深く一読させて頂いた。
その政策の原則はアメリカ第一主義であるが、バイデン政権の政策を転換し、反古にすることに狙いがあるようだ。しかし、トランプの方針は、アメリカ建国の精神や理念から大きく乖離している。
LGBTなど少数派を無視するトランプ
イギリス国内での宗教弾圧から逃れたピューリタンは、メイフラワー号でアメリカ大陸に到着した。1620年のことである。その後、多くのイギリス人が移住して植民地を建設し、1776年、東部13州がイギリスから独立してアメリカ合衆国を誕生させた。
建国の発端は宗教弾圧であり、少数派の人々は本国から逃れ、新天地で自らの信仰を守ろうとした。アメリカの建国の理念は、「自由、平等、フロンティア精神」である。
このアメリカの建国の歴史を振り返ると、LGBTなど少数派を無視するトランプの方針は承服しがたい。
トランプは、バイデン政権下の多様性・公平性・包括性(DEI)政策を終わらせるとして、連邦政府内のDEIを促進する部署を閉鎖した。バイデン政権の政策の全否定である。トランプは、とくに連邦政府の職員には民主党支持者が多いと反感を募らせている。すでに多くの職員が解雇されている。
反DEIの理由は、性別や人種などの少数派であることが、能力よりも優先されているのは公平でないと考えるからである。2023年には、保守色の強い連邦最高裁が、大学入試で志願者の人種を考慮するアファーマティブアクション(積極的差別是正措置)を違憲と判断している。
トランプは、連邦政府が認める性別は男性と女性のみだと宣言し、性的マイノリティ、LGBTを敵視している。
移民の制限は大きなマイナスに
アメリカは移民によって作られた国であり、トランプの祖父、フルードリッヒ・トランプもドイツのババリア地方から1885年にアメリカに移民している。
トランプは不法移民の取り締まりのみならず、合法的な移民に対しても規制を強化する。治安も悪化し、アメリカ人の職が奪われるといった様々な問題から、不法移民問題が、米大統領の最大のテーマの一つとなった。トランプは、選挙に勝つために、この問題を最大限に活用した。
トランプは、国籍について出生地主義を見直し、不法移民の子どもなどには国籍を与えないことを決めた大統領令も出した。出生地主義はアメリカ憲法修正第14条第1節で定められており、ニュージャージー州、マサチューセッツ州など22の州とサンフランシスコ市、ワシントンDCは、この決定は無効だとして訴訟を起こしている。連邦地裁は、この大統領令の一時差し止めを命じている。
アメリカは移民のおかげで、働き手を確保し、人口を若く保つことができている。合計特殊出生率(2022年)は、日本が1.26なのに対して、アメリカは1.66である。ところが、中国は1.18と低い。これが、中国の最大の弱点である。
これからの世界の覇権をめぐって、アメリカと中国は熾烈な競争を展開している。AIでも中国のDeepSeekが、安価な開発費でアメリカのオープンAIなどを追い抜こうとしている。DeepSeekは、中国の大学を卒業した中国人のみで開発に成功している。アメリカが中国に対抗するためには、世界から優秀な若い研究者を引き抜かねばならない。
そう考えると、中国と競争する上で、移民の制限は大きなマイナスとなるのである。
アメリカは移民によって作られた国であり、トランプの祖父、フルードリッヒ・トランプもドイツのババリア地方から1885年にアメリカに移民している。
トランプは不法移民の取り締まりのみならず、合法的な移民に対しても規制を強化する。治安も悪化し、アメリカ人の職が奪われるといった様々な問題から、不法移民問題が、米大統領の最大のテーマの一つとなった。トランプは、選挙に勝つために、この問題を最大限に活用した。
トランプは、国籍について出生地主義を見直し、不法移民の子どもなどには国籍を与えないことを決めた大統領令も出した。出生地主義はアメリカ憲法修正第14条第1節で定められており、ニュージャージー州、マサチューセッツ州など22の州とサンフランシスコ市、ワシントンDCは、この決定は無効だとして訴訟を起こしている。連邦地裁は、この大統領令の一時差し止めを命じている。
アメリカは移民のおかげで、働き手を確保し、人口を若く保つことができている。合計特殊出生率(2022年)は、日本が1.26なのに対して、アメリカは1.66である。ところが、中国は1.18と低い。これが、中国の最大の弱点である。
これからの世界の覇権をめぐって、アメリカと中国は熾烈な競争を展開している。AIでも中国のDeepSeekが、安価な開発費でアメリカのオープンAIなどを追い抜こうとしている。DeepSeekは、中国の大学を卒業した中国人のみで開発に成功している。アメリカが中国に対抗するためには、世界から優秀な若い研究者を引き抜かねばならない。
そう考えると、中国と競争する上で、移民の制限は大きなマイナスとなるのである。
「アメリカは興奮して狂ってしまった」
トランプは、選挙で選ばれたのではない官僚機構が政策を動かす「Deep State(闇の政府)」が存在すると主張している。1月28日には、ホワイトハウスの人事管理局が、約200万人の連邦政府職員に退職を勧告した。DOGE(政府効率化省)を指揮するイーロン・マスクも、大幅な人員削減に意欲を見せている。
このような政策の背景にある陰謀論の起源は、アメリカの建国と関連がある。
アメリカは、特殊な国であり、例外的な国である。日本やヨーロッパのような伝統社会と違って、アメリカは人工的に創られた国である。キリスト教の力はヨーロッパでは弱まっているが、アメリカでは今なおキリスト教が人々の考え方や生活を律している。「キリスト教のアメリカ」である。
2017年1月に第一次トランプ政権が発足した後、Kurt Andersenは、"Fantasyland : How America went haywire : A 500-year history"(Random House, 2017)という本を書いた。この本の問題意識は、そのタイトルにあるように、「アメリカは興奮して狂ってしまった(America went haywire)」からトランプ大統領を誕生させたのかというものである。
アンダーセンは、このポピュリズムは「この国の当然の宿命(nation’s natural destiny)」であるという。fake news、post-truth、alternative factsなどは、いわばアメリカのDNAであり、それがアメリカを例外的な国にしているのであり、トランプを当選させたという。
トランプは、選挙で選ばれたのではない官僚機構が政策を動かす「Deep State(闇の政府)」が存在すると主張している。1月28日には、ホワイトハウスの人事管理局が、約200万人の連邦政府職員に退職を勧告した。DOGE(政府効率化省)を指揮するイーロン・マスクも、大幅な人員削減に意欲を見せている。
このような政策の背景にある陰謀論の起源は、アメリカの建国と関連がある。
アメリカは、特殊な国であり、例外的な国である。日本やヨーロッパのような伝統社会と違って、アメリカは人工的に創られた国である。キリスト教の力はヨーロッパでは弱まっているが、アメリカでは今なおキリスト教が人々の考え方や生活を律している。「キリスト教のアメリカ」である。
2017年1月に第一次トランプ政権が発足した後、Kurt Andersenは、"Fantasyland : How America went haywire : A 500-year history"(Random House, 2017)という本を書いた。この本の問題意識は、そのタイトルにあるように、「アメリカは興奮して狂ってしまった(America went haywire)」からトランプ大統領を誕生させたのかというものである。
アンダーセンは、このポピュリズムは「この国の当然の宿命(nation’s natural destiny)」であるという。fake news、post-truth、alternative factsなどは、いわばアメリカのDNAであり、それがアメリカを例外的な国にしているのであり、トランプを当選させたという。
キリスト教が「集団的妄想」に導く
そのDNAの元祖はピューリタンであり、その宗教的熱狂が幻想、神秘主義を生む。ニュートンやロックが影響力を持つ「理性」のヨーロッパとは対称的である。
アン・ハッチンソンは17世紀前半にアメリカ植民地で活躍した反体制的宗教活動家であるが、「真実と自分が感じたものが真実」という考え方は、今のalternative factsの考えかたにつながる。幻想(fantasy)と現実(reality)が混同してしまっているのである。
建国の父、ジョージ・ワシントンについて、父親が大切にしていた桜の木を切ったが、そのことを正直に父親に話したという伝説が残っている。これもpost-truthの先駆けだという。
また西部開拓時代の伝説のガンマン、バッファロー・ビルこそが元祖ハリウッドである。ケネディ大統領暗殺事件(1963年11月22日)は、全米に陰謀説を拡大させることになった。大統領に再選されたトランプは、この事件の全資料を公開する大統領令に署名した。
キリスト教こそがfake newsを生み、アメリカ人を集団的妄想に導いていく。そして、それは極端な相対主義にも導く。アメリカという「幻想の国(Fantasyland)」をどうすれば理性の方向に変えていけるのか。
トランプが再選された今、この問題意識はさらに先鋭化している。
そのDNAの元祖はピューリタンであり、その宗教的熱狂が幻想、神秘主義を生む。ニュートンやロックが影響力を持つ「理性」のヨーロッパとは対称的である。
アン・ハッチンソンは17世紀前半にアメリカ植民地で活躍した反体制的宗教活動家であるが、「真実と自分が感じたものが真実」という考え方は、今のalternative factsの考えかたにつながる。幻想(fantasy)と現実(reality)が混同してしまっているのである。
建国の父、ジョージ・ワシントンについて、父親が大切にしていた桜の木を切ったが、そのことを正直に父親に話したという伝説が残っている。これもpost-truthの先駆けだという。
また西部開拓時代の伝説のガンマン、バッファロー・ビルこそが元祖ハリウッドである。ケネディ大統領暗殺事件(1963年11月22日)は、全米に陰謀説を拡大させることになった。大統領に再選されたトランプは、この事件の全資料を公開する大統領令に署名した。
キリスト教こそがfake newsを生み、アメリカ人を集団的妄想に導いていく。そして、それは極端な相対主義にも導く。アメリカという「幻想の国(Fantasyland)」をどうすれば理性の方向に変えていけるのか。
トランプが再選された今、この問題意識はさらに先鋭化している。
「USAIDは国益に反する」と言うが…
マスクは、アメリカ国際開発庁(USAID)を閉鎖した。この組織は1961年にケネディ政権が創設したもので、開発援助や人道支援を行ってきた。2023年度の予算は約400億ドル(約6兆2000億円)である。職員は約1万人である。
トランプは、「過激な精神錯乱者が運営しており、彼らを追い出す」と述べ、急進左派の過激派が対外援助を仕切ってきたと反発を露わにしている。アフガニスタンやイエメンなどの反米諸国にも人道支援を行うことは、アメリカ第一主義に反するというわけである。ルビオ国務長官が、USAIDの局長を暫定的に兼務する。
トランプ流の保守派に言わせると、USAIDは国益に反するということになる。しかし、世界中に人道支援を展開するアメリカの寛大さこそが、実はアメリカの強さ、偉大さの源泉であることを忘れてはならない。
第一次世界大戦後の講和条約(ヴェルサイユ条約)によって、ドイツは領土を削減され、再軍備を禁止され、苛酷な賠償を強いられた。
ヒトラーは、1920年に旗揚げしたナチス党の綱領で、屈辱的なヴェルサイユ条約を破棄すること、削られた領土を回復し、大ドイツ国を実現することを宣言した。そして、この講和条約によって禁じられた徴兵制を復活し、再軍備を実行することなどをうたったのである。
賠償金の支払いは経済を圧迫し、ハイパーインフレは人々に塗炭の苦しみを味合わせた。人々が生活に困窮すればするほど、ナチスの主張が支持されるようになっていき、民主的な選挙によってナチスは第一党となり、ヒトラー政権が誕生した。
その反省から、第二次世界大戦の戦後処理は、敗戦国に対して寛大なものとなった。
マスクは、アメリカ国際開発庁(USAID)を閉鎖した。この組織は1961年にケネディ政権が創設したもので、開発援助や人道支援を行ってきた。2023年度の予算は約400億ドル(約6兆2000億円)である。職員は約1万人である。
トランプは、「過激な精神錯乱者が運営しており、彼らを追い出す」と述べ、急進左派の過激派が対外援助を仕切ってきたと反発を露わにしている。アフガニスタンやイエメンなどの反米諸国にも人道支援を行うことは、アメリカ第一主義に反するというわけである。ルビオ国務長官が、USAIDの局長を暫定的に兼務する。
トランプ流の保守派に言わせると、USAIDは国益に反するということになる。しかし、世界中に人道支援を展開するアメリカの寛大さこそが、実はアメリカの強さ、偉大さの源泉であることを忘れてはならない。
第一次世界大戦後の講和条約(ヴェルサイユ条約)によって、ドイツは領土を削減され、再軍備を禁止され、苛酷な賠償を強いられた。
ヒトラーは、1920年に旗揚げしたナチス党の綱領で、屈辱的なヴェルサイユ条約を破棄すること、削られた領土を回復し、大ドイツ国を実現することを宣言した。そして、この講和条約によって禁じられた徴兵制を復活し、再軍備を実行することなどをうたったのである。
賠償金の支払いは経済を圧迫し、ハイパーインフレは人々に塗炭の苦しみを味合わせた。人々が生活に困窮すればするほど、ナチスの主張が支持されるようになっていき、民主的な選挙によってナチスは第一党となり、ヒトラー政権が誕生した。
その反省から、第二次世界大戦の戦後処理は、敗戦国に対して寛大なものとなった。
寛大さの終焉
アメリカのトルーマン大統領は、全世界的規模で共産主義陣営を「封じ込める政策(コンテインメント)」が必要だとする「トルーマン・ドクトリン」を発表した。これを受けて、1947年6月5日、アメリカのマーシャル国務長官は、ヨーロッパ経済復興計画を発表した。
アメリカが、欧州諸国に大規模な経済援助を行い、戦後復興を助けるという内容で、「欧州復興計画(ERP)」と称されたが、俗に「マーシャル・プラン」と呼ばれた。
この計画の目的は、欧州復興を促進し、経済の安定によって西欧への共産主義の浸透を防ぐことであった。第一次世界大戦後にドイツに過酷な賠償を科し、ドイツ経済を疲弊させたのとは対極的に、敗戦国のドイツやイタリアや日本に経済援助を供与し、復興を助けたのである。
敗戦国の日本は、戦後1952年までは米軍の占領下に置かれたが、私は1948年生まれなので、町で駐留軍兵士の姿をよく見かけたことを幼少時の記憶にとどめている。食料にも不足する時代に、アメリカの援助物資で生きながらえたのである。
私自身が体験したアメリカによる戦後処理の寛大な側面である。占領軍に対する反感や復讐心を持つどころか、感謝の念と親近感を覚えた。
この寛大さが失われるとき、世界には対立と紛争が増え、アメリカへの評価も下がるであろう。つまり、アメリカが再び偉大になることはないのである>(以上「現代ビジネス」より引用)
アメリカのトルーマン大統領は、全世界的規模で共産主義陣営を「封じ込める政策(コンテインメント)」が必要だとする「トルーマン・ドクトリン」を発表した。これを受けて、1947年6月5日、アメリカのマーシャル国務長官は、ヨーロッパ経済復興計画を発表した。
アメリカが、欧州諸国に大規模な経済援助を行い、戦後復興を助けるという内容で、「欧州復興計画(ERP)」と称されたが、俗に「マーシャル・プラン」と呼ばれた。
この計画の目的は、欧州復興を促進し、経済の安定によって西欧への共産主義の浸透を防ぐことであった。第一次世界大戦後にドイツに過酷な賠償を科し、ドイツ経済を疲弊させたのとは対極的に、敗戦国のドイツやイタリアや日本に経済援助を供与し、復興を助けたのである。
敗戦国の日本は、戦後1952年までは米軍の占領下に置かれたが、私は1948年生まれなので、町で駐留軍兵士の姿をよく見かけたことを幼少時の記憶にとどめている。食料にも不足する時代に、アメリカの援助物資で生きながらえたのである。
私自身が体験したアメリカによる戦後処理の寛大な側面である。占領軍に対する反感や復讐心を持つどころか、感謝の念と親近感を覚えた。
この寛大さが失われるとき、世界には対立と紛争が増え、アメリカへの評価も下がるであろう。つまり、アメリカが再び偉大になることはないのである>(以上「現代ビジネス」より引用)
国際政治評論家を自称する舛添 要一氏は北京政府から招かれて訪中し、無事に帰国している。それだけでも舛添氏が如何なる政治的立場にいるか明白だろう。その舛添氏が「トランプによる「USAID解体」が《悪手》と言わざるを得ないワケ…寛大さを失ったアメリカの求心力はどん底に」と題する論評を発表したので興味深く一読させて頂いた。
果たして、私が予想した通りトランプ氏に激しい憎悪を向けた、偏向した論評だった。最終章の寛大さの終焉で「私は1948年生まれなので、町で駐留軍兵士の姿をよく見かけたことを幼少時の記憶にとどめている。食料にも不足する時代に、アメリカの援助物資で生きながらえたのである」と記述している。舛添氏にとって終戦直後の米国は「寛大な国」だったということになる。
しかし、果たしてそうだろうか。まず舛添氏の認識の相違を指摘しなければならない。終戦直後に米国の飼料にする予定だった古古小麦粉や脱脂粉乳を大量に日本に支援した、というのは間違いだ。戦争法では占領国は被占領国民を飢えさせてはならない、という条項がある。米国は日本国民の食糧支援すべき立場にあったが、日本国民はタダで米国の飼料を食糧として受け取ったのではない。
終戦直後の国家予算の実に40%以上に及ぶ金額を日本政府は食糧購入費として米国に支払っている。米国から食糧支援としてタダで家畜の飼料を貰ったわけではない。しかも日本国内の産業基盤から社会インフラまで徹底的に破壊したのは米軍だ。戦後補償として、戦争に関係ない社会インフラなどの賠償責任を日本政府は米国に求める権利があった。なぜなら、それらは戦争と直接関係のない「民生用」の施設だからだ。
しかも米軍は非戦闘員を殺害する目的で開発した焼夷弾や原子爆弾を日本に投下した。重大な戦争犯罪を犯したのは米国であって、決して米国は寛大な国ではない。戦後復興期ですら、米国は自国産業の競争相手になった日本の繊維産業や造船業に対して制裁を加えた。
経済成長期にはニクソンショックやプラザ合意と称して円切り上げを度々行って日本の貿易競争力削減を行った。トドメとして半導体戦争で日本の半導体産業を解体し、基本OSとしてウィンドウズの採用を強制した。決して米国は寛大な国などではなかった。
しかし、それでも国民を奴隷化する中国共産党支配下に入るよりは、米国と厚誼を結ぶ方が日本の国家と国民の未来にとって良いと判断して、現行の国際関係を維持している。それは中国共産党が中国民を奴隷化し搾取する対象にしているからだ。現在の日本もザイム真理教が蔓延って、暗愚な政治家までもザイム真理教の信徒になってしまって財務省によって酷い搾取にあっている。そうした意味では中国と同じ状態と云えなくもないが、選挙によって政治家を入れ替え、政権交替を果たせばザイム真理教に洗脳された政界を国民の手に取り戻せる。
民主主義の良い処は、そのように平和裏に選挙によって明日の政治を変えられることだ。中国で共産党一党支配を倒そうとすると、必ずや流血事件や暴動の事態が起きるだろう。そうした政治体制を日本国民の多くは望まない。暗愚な世襲政治家が跋扈していても、民主主義の方が権力に暴走を防ぐ安全装置が働く政治体制の方が良い。
米国の大統領は一期四年で最大二期まで、と憲法で規定されている。トランプ氏は二期目だから四年後に彼は政権の座から降りる。決してトランプ王朝が出来たわけではない。それは以前のバイデン民主党政権でも同じだ。
舛添氏はキリスト教が「集団的妄想」に導くと書いているが、そもそも米国は宗教改革で敗れたカソリック系の原理主義と云うべきピューリタン派が英国から逃げ出してやって来た人たちによって建国された。舛添氏は米国は移民の国だから移民を受け入れるべきだと主張しているようだが、移民によって建国された国は米国だけではない。しかも現在も野放図に移民を受け入れている国は一国たりとも存在しない。最初は移民によって建国されても、建国以後は建国した国民の国だ。しかも、トランプ氏が問題にしているのは不法移民だ。不法移民だから、彼ら全ては法を犯している。だから本国へ強制送還する、というのは何も間違っていない。日本政府もトランプ氏のように日本国内で不法行為を犯した外国人は直ちに強制送還するようにすべきだ。
引用論評の肝とも云うべき章だが、「アメリカは興奮して狂ってしまった」に到っては価値観の違いを強く認識させられた。舛添氏はBLMやLGBTq運動が吹き荒れる社会が「正常」だと思っているようだ。しかし米国民の多くは「異常」な事態だと思っている。だからこそトランプ氏が勝利したし、現在のトランプ氏の支持率が過半数を超えている。
米国は民主主義の国だ。だから選挙結果により、米国民の多数派の意見によって政治が変わる。米国民の過半数が「米国社会は分断され混乱させられた」と認識している。だからトランプ氏がUSAIDを閉鎖して、全米的な反対運動は起きていない。
トランプ氏は高らかに宣言した。「この世には男性と女性の二つの性しか存在しない」「生来の性とは違う種目の競技に出場することは禁止する」と。極めて当たり前のことを当たり前に発言しただけではないだろうか。
男が男らしく、女が女らしく振舞い、人生を生きて何が悪いのだろうか。両性が助け合い尊重し合って社会は成り立つ。全ての国民がLGBTQなら、その国は間もなく亡びる。確かに性同一障害という精神の病に苦しむ者には救いの手を差し伸べるべきだが、そのために正常な99%の国民がモノセックスになる必要はない。狂っていたのは民主党政権下の米国の方だった。トランプ氏は米国を本来の正常な国に戻そうとしているだけだ。
もちろん移民の制限はマイナスにならないし、社会の安定と再建に向かって米国は力強く前進するだろう。「米国ファースト」を高らかに謳う米国を、私たち日本国民も見習うべきだ。