中国政府の金融崩壊への対策は「あまりに遅く」「あまりに少ない」
<習近平の「異変」
中国の習近平国家主席は2月17日、大手テクノロジー企業幹部と座談会を開いた。
トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争に対抗するため、習氏がこれまで峻烈な汚職追放と、がんじがらめの規制を強いてきた民間セクターに、より「自由な行動」を認める方向に舵を切るのではないかとの期待が高まっている。
「デイープシーク」が示した生成人工知能(AI)分野における画期的な進歩が起爆剤となって、中国の株式市場の時価総額は1兆3000億ドル(約198兆円)も増加した。中国政府はハイテク主導で経済回復を図ろうとしているようだ。
しかし、それは期待外れに終わる可能性が高いと言わざるを得ない。
「中国で「底なしの腐敗」が浮かび上がった…!「ケタ違い」の不良債権で追い込まれた役人たちが手を染める「最悪の手口」」と題して藤和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が中国政界の裏側を書いている。
中国の習近平国家主席は2月17日、大手テクノロジー企業幹部と座談会を開いた。
トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争に対抗するため、習氏がこれまで峻烈な汚職追放と、がんじがらめの規制を強いてきた民間セクターに、より「自由な行動」を認める方向に舵を切るのではないかとの期待が高まっている。
「デイープシーク」が示した生成人工知能(AI)分野における画期的な進歩が起爆剤となって、中国の株式市場の時価総額は1兆3000億ドル(約198兆円)も増加した。中国政府はハイテク主導で経済回復を図ろうとしているようだ。
しかし、それは期待外れに終わる可能性が高いと言わざるを得ない。
「生成AI」で広がるリストラ
このところ投資マネーがハイテク分野を中心とする製造業セクターに大量に流れ込んでいるため、生産過剰がさらに深刻化する懸念が生じているからだ。
中国の半導体受託製造最大手のSMICは「昨年第4四半期の純利益が前年同期に比べて38.4%減少した」と発表した。業界全体の生産能力が拡大しており、企業間の価格競争が激化しているのが主な理由だ。
中国の大手企業はこぞって生成AIの導入を進めているが、「職場で大規模なリストラが実施されるのではないか」との不安が広がっている。カスタマーサービス担当者の95%を削減する企業も出てきており、専門家は「中国の雇用状況はさらに悪化する」と指摘する(2月17日付RecordChina)。
中国経済が電気自動車(EV)やAIなどミクロ面の強みを有しているのは確かだが、筆者は「史上最大規模の不動産バブル崩壊がもたらすマクロ面の負のインパクトをオフセットすることはできない」と考えている。
このところ投資マネーがハイテク分野を中心とする製造業セクターに大量に流れ込んでいるため、生産過剰がさらに深刻化する懸念が生じているからだ。
中国の半導体受託製造最大手のSMICは「昨年第4四半期の純利益が前年同期に比べて38.4%減少した」と発表した。業界全体の生産能力が拡大しており、企業間の価格競争が激化しているのが主な理由だ。
中国の大手企業はこぞって生成AIの導入を進めているが、「職場で大規模なリストラが実施されるのではないか」との不安が広がっている。カスタマーサービス担当者の95%を削減する企業も出てきており、専門家は「中国の雇用状況はさらに悪化する」と指摘する(2月17日付RecordChina)。
中国経済が電気自動車(EV)やAIなどミクロ面の強みを有しているのは確かだが、筆者は「史上最大規模の不動産バブル崩壊がもたらすマクロ面の負のインパクトをオフセットすることはできない」と考えている。
「ケタ違い」の不良債権
中国政府が19日に発表したデータによれば、1月の新築住宅価格は前月比横ばいだった。政府の支援策にもかかわらず、不動産セクターは依然として苦戦している。
中国政府は民間大手不動産開発企業がデフォルトに陥るのを4年間傍観していたが、ようやく重い腰を上げた。政府は1月末、資金繰り難に陥っている万科に対し、約500億元(約1兆円)規模の支援を行うための検討を開始した。
中国の不動産セクターには現時点で1600億ドル(約243兆円)の不良債権が発生していると言われており、中国の金融システムにストレスを与えつつある。
中国政府は小規模銀行部門の破綻を回避するため、昨年から農村部の銀行や協同組合に似た金融機関の合併を進めているが、「問題を大きくしただけ」との声が聞こえてくる(2月12日付ロイター)。
バブル崩壊後の日本では中小金融機関の破綻が相次ぎ、数年後に大規模な金融危機が起きた。中国も同じ道を歩むのではないかとの不安が頭をよぎる。
こうした状況は、地方政府の腐敗を招き、それはいま、日本では考えられない汚職へと発展している。それはまさに「デジタル監視政府」の盲点を突く、底なしの腐敗だ>(以上「現代ビジネス」より引用)
中国政府が19日に発表したデータによれば、1月の新築住宅価格は前月比横ばいだった。政府の支援策にもかかわらず、不動産セクターは依然として苦戦している。
中国政府は民間大手不動産開発企業がデフォルトに陥るのを4年間傍観していたが、ようやく重い腰を上げた。政府は1月末、資金繰り難に陥っている万科に対し、約500億元(約1兆円)規模の支援を行うための検討を開始した。
中国の不動産セクターには現時点で1600億ドル(約243兆円)の不良債権が発生していると言われており、中国の金融システムにストレスを与えつつある。
中国政府は小規模銀行部門の破綻を回避するため、昨年から農村部の銀行や協同組合に似た金融機関の合併を進めているが、「問題を大きくしただけ」との声が聞こえてくる(2月12日付ロイター)。
バブル崩壊後の日本では中小金融機関の破綻が相次ぎ、数年後に大規模な金融危機が起きた。中国も同じ道を歩むのではないかとの不安が頭をよぎる。
こうした状況は、地方政府の腐敗を招き、それはいま、日本では考えられない汚職へと発展している。それはまさに「デジタル監視政府」の盲点を突く、底なしの腐敗だ>(以上「現代ビジネス」より引用)
「中国で「底なしの腐敗」が浮かび上がった…!「ケタ違い」の不良債権で追い込まれた役人たちが手を染める「最悪の手口」」と題して藤和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)氏が中国政界の裏側を書いている。
腐敗撲滅を梃に政敵を次々と粛清している習近平氏が外国銀行に金融資産で1兆円以上も隠匿しているとの噂が絶えない。他の中国共産党の幹部たちも、外国の金融機関に巨額の金融資産を隠匿している、という噂も外国から時々伝わってくる。それほど中国共産党の腐敗は凄まじいものがあって、隠匿された資産も数十兆円では効かないほどだという。
中国は次々と経済政策を変転させているが、どれ一つとして成功していない。現在、習近平氏はITやAIに御執心のようだが、数ヶ月前までは太陽光パネルとEVに御執心だった。その前はIT企業潰しに執着していた。その前は「一帯一路」と中国高速鉄道に御執心だった。その前は不動産企業に御執心だった。等々と、習近平氏の関心事は素早く次々へと移り変わっていく。
現在は記事の冒頭にある通りIT企業とAI開発に御執心のようだ。しかし政府が莫大な予算を投じて大々的に全国で一斉に事業化する、というものではない。ITやAIの事業化を中南海に招いて「激励」する、という国民向けアピールを行った、というだけのモノのようだ。これではいかなる効果をもたらすのか怪しいものだ。
中国経済はそれどころではない。不動産バブル崩壊から始まった不良債権処理が一向に進まず、金融機関に溜まりに溜まった不良資産が金融のパイプを詰まらせて、金融崩壊へとまっしぐらに向かっている。全国規模で銀行の倒産や取り付け騒ぎが起きている。
経済崩壊は既に社会騒乱の一歩前の段階まで進み、国民の約半分が失業し、全人口12億人の内9億人ほどが飢えているという。もはや中国民の憤懣は圧力鍋の中で沸騰する蒸気のように爆発寸前まで高まっている。しかし習近平氏の耳にそうした情報は殆ど何も伝わってないようだ。ゼレンスキー氏が中国をロシアから引き剥がすために「ウクライナ復興事業には中国の力を借りたい」とリップサービスをしたら、習近平氏は執務室で欣喜雀躍したという。そんなことで喜んでいる場合ではないはずだが、絶望的なほど習近平氏に危機感は薄い。中国政府の金融崩壊への対策は「あまりに遅く」「あまりに少ない」。これでは焼け石に水ほどの効果すらもたらさない。中国は経済崩壊の坂道を転がり落ちていて、もはや誰にも止められない。