今月末までか、来月上旬までの動きがプーチンの去就を決めるだろう。

ウクライナと欧州に冷淡なトランプ大統領。日本も近い将来の日米安保消滅を絵空事と笑えなくなってきた。これに関して、「日本の最善手は現状維持である」としながらも、在日米軍撤退シナリオにも真剣に備えるべきだと指摘するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏。わが国に中国とロシアを“同時に”敵に回す余力はない。アマチュア商業右翼のようなファンタジーではなく、より現実的な外交・軍事戦略が必要になると警鐘を鳴らす。
ウクライナを見捨てるアメリカ。日本への影響は?


 アメリカ国内において、イーロン・マスク氏の主導するDOGE(政府効率化省)のリストラ策が、ほぼ日替わりで提案されており、社会を激しく揺さぶっています。ちなみに、日本をはじめ、多くの国が財政の悪化に伴って行政改革をしなくてはと思うのは、実に良くある話です。
 その場合にターゲットとなるのは、例えば国立公園保護だとか、国立博物館、国立楽団といった文化的な支出、この辺りが最初に来ることが多いわけです。また、各種の産業に向けた補助金、あるいは外国へ向けた援助なども削減対象になるのが普通です。今回のDOGEにおいても、こうした「削減しやすい」省庁については真っ先に手をつけています。
 ところで、過去のアメリカもそうですが、多くの場合は「行政改革」だとか「小さな政府」を目指す運動というのは、保守的な立場が推進するケースが多いようです。そうなると、治安とか安全保障というのは、どちらかと言えば強化するという立場を伴っています。そこで出てくるのが「夜警国家」という考え方です。
 これは、政府の多くの官庁は削減するし、公務員も減らす。けれども安全保障を担う軍と、治安を担う警察はしっかり予算を確保するという考え方です。もっといえば、経済成長とか福祉というのは民間に任せて、国家というのは軍隊と警察を中心とするのがいいというわけです。
 今回のトランプ運動が画期的なのは、この夜警国家という考え方も捨てようとしている、ということです。そこは保守ですから「強いアメリカ」というようなスローガンはあります。ですが、特に連邦政府(中央政府)のリストラにあたっては、軍も容赦はしないという考え方があり、これはあまり前例はないと思います。
 具体的には、マスク氏の率いるDOGE、あるいはトランプ政権の全体としては、軍事というのも削減対象になっています。今回のウクライナ和平の進め方も、この考えがベースになっています。

ウクライナと欧州に冷淡なトランプ大統領
 本稿の時点では、ヴァンス副大統領がミュンヘン安保会議で「欧州は自分で安全を確保せよ」とヨーロッパを突き放し、大問題になりました。
 これに対して、例えばウクライナのゼレンスキー大統領は「こうなったら欧州軍を創設してはどうか」という提案を行っています。それはともかく、最新の状況としては、サウジのムハンマド皇太子を「仲介役」として、トランプ=プーチン会談の実現が進められています。
 現時点で話題になっているのは、以下のような提案です。
「アメリカがこれまでウクライナに投入した(数千億ドル=数10兆円)の支援については、和平後のウクライナはアメリカにレアアースを提供することで、弁済する」
「ウクライナはNATOに加入しない」
「クリミア半島はロシアが領有する」
 この3点については、現時点でほぼ「前提条件」になっています。これに加えて、
「ロシアは、現在占領しているウクライナの東部諸州の編入を主張。ウクライナはもちろんこれに反対」
「ウクライナはNATOに入れず、またアメリカが今後も冷淡であれば、自国の安全が保障されないので、全欧州がウクライナの安全を保障するなどの仕組みを模索」
 という交渉が動いています。
 ヨーロッパ各国は、とにかくアメリカが極端に冷淡になっているために、現時点では態度を決定するためにパリで協議中です。協議がまとまった場合は、マクロン大統領が代表してトランプと会って調整が行われる可能性がある、そんな報道もあります。

日本が「NATO崩壊、日米安保消滅」に備えるべき理由
 では、この一連の動きの背景にあるのは何かというと、具体的には「アメリカの支援疲れ」が顕著に見えますが、同時に見えないところでロシアの戦争遂行能力が急速に「出口」へ向かっているという事情もあるようです。ですから、交渉に当たっては冷徹かつ全ての選択肢をテーブルに並べるというプロフェッショナルの仕事が必要です。とは言うものの、そんなプロというのは、判断力の歪みが見えるプーチンも含めて今回の状況には存在しません。
 ですから、恐らくは各プレーヤーが最善手からは「ズレて」くる可能性があります。その結果として、相当に「悪いアウトプット」となる可能性もありますが、どこか落とし所へと落ち着く可能性もないわけではありません。その最終的な着地点としては、
「東部諸州の全部ではなく、半分よりやや広い地域の独立、親ロシア国家化」
「ウクライナは年限を切り、不侵攻の条件をつけた上で、NATO非加入。安全のための保障駐留は有志連合方式で」
「ブチャ虐殺、小児誘拐、原発攻撃の3つの国際法違反/戦争犯罪については中間的な合意、例えばブチャは戦犯逮捕、誘拐と原発は原状復帰だけ・・・など」
「プーチン、ゼレンスキーの双方が円満引退」
 というような叩き台から微修正を繰り返す中で、見えてくるのだと思います。
 反面、最悪の事態というのも想定しておかねばなりません。それは、
「アメリカが一切関与せず、武器弾薬も資金も供与を停止」
「戦況はロシアに有利な中で、ゼレンスキーが現状の占領地域の割譲を認めて降伏」
 というストーリーだけではありません。問題は、そこで終わらないという場合です。そのようなウクライナ降伏劇の直後に、
「アメリカの欧州関与がほとんどゼロという状況を踏まえて、ロシアがベラルーシと共に、テロに加担したという口実からバルト三国のリトアニアに侵攻。アメリカは無視」
 というような展開があった場合です。ただし、これだけでも最悪にはなりません。アメリカ以外のNATOが頑張って、ロシア正規軍との直接の交戦は避けながら、ラトビアとエストニアを強力に守りつつ、リトアニア解放の強い圧力を維持するのであれば、まだまだ最悪ではありません。ウクライナと違って、中国が、「プーチン後」を意識しながら、完全に中立もしくは西欧寄りの立場から圧力をかける可能性もゼロではないと思います。
 最悪なのは、西欧諸国が、例えばリトアニアの国境が侵犯されても、全く動かなかった場合です。それでもアメリカが傍観したとしたら、その瞬間にNATOの安全保障システムは崩壊します。
 仮にそうなったら、日本は今度は日米安保、米韓安保の消滅という状況に対する覚悟を決めなくてはならなくなります。これは最悪のシナリオです。

在日米軍撤退!そのとき日本はどう振る舞うべきか?
 もちろん、先々週の石破=トランプ会談では、日米安保の現状維持が確認されました。国境線も正義のありかも完全に書き換えられるかもしれないウクライナ情勢と比較すれば、東アジアについて、トランプ自身の口から「現状維持」という約束を引き出した石破氏の仕事は大きく評価していいと思います。
 ですが、仮にNATO崩壊となった場合は、時間差で日米安保、米韓安保の崩壊も覚悟しなくてはならなくなります。では、そのような最悪シナリオを想定して、日本はどう振る舞ったら良いのでしょうか? 以下は全くの思考実験です。読者の皆さまの自由なご議論の材料にしていただければと思います。

論点1:日本はどの国と同盟関係を結ぶのか?
 論点は2点あります。
 1つは同盟関係です。トランプの、あるいはその後継者によって日米安保が否定され、在日米軍が引き上げるとなった場合、日本は一体誰と組んで安全を確保したら良いのでしょうか? これは非常に難しい問題です。
 まず大事なのは、中国とロシアに挟撃(はさみ撃ち)されないことです。仮に挟撃された場合は、作戦的に防衛が難しいだけでなく、戦闘が「占領して活用する」という目的から、「破壊して折半」という性格に変わります。これは日本にとって最悪です。
 では、中国かロシアのどちらと同盟関係を構築するかですが、経済的な関係、過去の歴史的経緯を考えると一長一短があります。ロシアと組む場合は、現在の軍事同盟関係が継続する場合は北朝鮮が同盟に入ってきます。仮に、これを嫌って韓国が中国と組んで対抗するようですと、地政学的に対馬海峡の安全確保が面倒になります。
 また、ロシアの経済はどう考えても化石燃料依存で、そうなると資源の枯渇という事態は否定できません。人口減で先行きの暗い日本が、同じく先行きの暗いロシアと組んで、しかも中国は敵に回すというのは構図として無理があります。
 そうなると、中国と緩い同盟関係を結ぶというのが一つの選択肢になります。条件としては、中ロが冷戦末期のように仲違いをしていることが日本には有利になります。ですから、中ロを引き裂く工作というのが一種の前提になります。また、韓国が日中陣営に入って、北朝鮮がロシアとの同盟を維持していれば、一番ホットな対立は38度線になるので、日本のリスクは低減されます。
 もう一度申し上げますが、アメリカが日米安保を破棄して、在日米軍が消えた場合に、ロシアと中国の双方と同時に関係悪化を進めるのは悪手です。その場合は、例えばですが、アメリカに頭を下げてでも空母打撃群のプレゼンスを維持してもらうなどの対策が必要です。自衛隊だけで二正面作戦を抑止するというのはリスクが大き過ぎます。
 例えばですが、アメリカが安保を解消する過程で、まったくフレンドリーではない態度を取り、日本は国家の威信にかけて、どうしても頭を下げるわけにはいかないという展開もあり得ると思います。その場合ですが、日本が空母を造り、新世代戦闘機を製造して運用するというのは、恐らく非現実的だと思います。
 ですから、アメリカが頼りにならない、中ロが日本を挟撃する可能性があるという場合には、最後の手段として英仏との何らかの同盟を構築して国家の延命を図るべきだと思います。日英の絆は明治以来の国家的な交流として確かなものがあります。フランスの場合も同様です。仮に、NATOが壊れても、英仏が最低限の良好な関係を維持しているのなら、その枠組みに何とか日本が繋がり、そこで国家維持のための最低限の抑止システムを構築するということは考慮すべきです。
 日本は人しか資源がない一方で、その人的資源はどんどん減って行く中では、侵略しても意味がないので、誰も襲っては来ないだろうという意見もあるかもしれません。ですが、残念なことに、明治以来の不幸な歴史の延長で、日本という国は仮想敵に設定することで、各国の右派ポピュリズムに訴える存在になっています。
 これはロシアにとっても、南北朝鮮にとっても、そして中華圏にとっても同じです。ですから、丸腰で全方位外交をしていれば安全というのは甘いと思います。何らかの安全保障政策による十分な抑止力バランスの構築というのは避けて通れません。
 アメリカが逃げたら中国(韓国も引き込む)、中国と上手くいかず孤立の危険があれば英仏という格好で、何らかのアライアンス、つまり同盟関係を構築して安全を確保するというのが非常に大切になってきます。東アジアにおいて激動の兆候が出てきて、アメリカが逃げ、日本が英仏と組んだ場合には、韓国は自ら接近してくると思います。

論点2:日本が譲れない「国のかたち」をどう設定するか?
 2番目の論点は、日本の国のかたちです。アメリカが頼りにならない、場合によっては安保が破棄されて米軍が撤退するという場合に、日本はどのような国の姿、国のコンセプトを構築したら良いのでしょうか。これはかなり重要な問題です。
 まず中国と組む場合ですが、中国は当面の間は不動産バブルの超長期償却を続けます。その期間は、統制を強めて腐敗と戦う現状の権力集中を続けるしかありません。では、その中国と組む場合は日本も権威主義に従う必要があるかというと、これは突っぱねてもいいと思います。軍事外交では裏切らないが、別の国で制度が違うので日本は民主国で、天皇制度も維持しているということで、お互いにウィンウィンの関係にすべきです。
 仮に英仏と組む場合も同様です。日本は日本式の民主主義を守り、天皇制度を守り、独特の伝統文化を守るということで、これは英仏の場合はリスペクトをしてくれると思います。
 さらに、米軍が出ていく場合は、仮に中国と組むにしても、英仏と組むにしても自衛隊とか狭義の専守防衛などということでは責任は果たせません。ですから、正規軍を持ち、敵基地攻撃能力という名の抑止力の自己負担もすべきだと思います。核武装は、ここで名前の挙がった中英仏の3カ国の場合は核保有国ですので、その傘に入る格好でいいと思います。唯一の被爆国として、核武装は国のかたちを歪めることになるからです。
 これは国家観の問題になりますが、軍事面での非核国家というアイデンティティを、通常兵器によって練度を高めた正規軍で守るという形になるのではと思います。また、日本が非核を貫く中で、朝鮮半島の非核化も一貫して強く主張すべきです。

国内ビジネス右翼の「甘え」はもう許されない
 ただし、1点だけ注意しなくてはいけないのは、第二次大戦の評価です。米軍が出て行って場合によっては正規軍による部分的な自主武装ということになれば、例えば靖国参拝とか東京裁判の否定などをして国の名誉を高めたいなどと思うグループがあると思います。
 ですが、これは逆だと思います。少なくとも国際連合が存続する間は、第二次大戦を最終的な世界大戦として、以降は安保理メンバーに拒否権を与えて世界大戦を抑止することになっています。同時に枢軸日本は旧敵国というのは理念的に有効になります。ちなみに、国連憲章の旧敵国条項は様々な決議により事実上無効化されていますし、何よりも国連(イコール連合国)に加盟している戦後日本は枢軸国ではありません。
 そうなのですが、仮に枢軸日本の名誉を回復したいということになれば、これは国連憲章には違反します。また仮想敵側から、日本を攻撃することが合法であるかのような口実を与えるし、日本の他国との同盟関係を引き裂く工作の口実にもなります。
 靖国参拝や東京裁判の否定論議については、アメリカは漠然と「許している」ような立場を取ってきました。これは議論が「国内向けの人畜無害」であり、仮に日本が国際社会に立ち向かうようなことがあれば「日米安保、在日米軍が瓶のフタ」になって防止することになっていたからです。
 つまりアマチュアの商業右翼などが、アメリカにフタをされた瓶の中で、国内向けに躍っていた人畜無害なダンスというわけです。ですが、アメリカが頼りにならず、日本が自主武装して中国なり、英仏と組む場合には、このようないい加減な甘えた姿勢は許されません。

日本の最善手は「現状維持」だが、備えは必要
 国連憲章とは国際法ですが、同時にサンフランシスコ和平を構成して、第二次大戦の終結と以降の世界大戦の防止を目的とするものです。戦犯合祀のされた靖国を参拝することは、この全世界体制への反抗になり、日本の安全を揺るがす口実になってしまいます。そうなることは、東條大将、松井大将などの望むことではないと思います。この点は国論の統一が必要な問題です。
 非常に単純化するのであれば、アメリカのプレゼンスが消滅した東アジアでは、中ロを同時に敵に回すことは不可能です。中国と韓国と同盟を組むか、あるいは英仏と同盟を組んで抑止バランスを維持するという選択肢は、真剣に考慮されなくてはなりません。
 その一方で、仮に石破氏とその後継者が今後もトランプ外交を、のらりくらりと巧妙に引っ張って、4年間を無事に乗り切る、これが何といっても最善であるのは間違いありません。前回の石破=トランプ会談は、ガザ問題でトランプ流のウルトラCが出ていましたが、その影響はまったくないまま済みました。また今回のウクライナ和平をめぐる動きも日米会談にはリンクしませんでした。
 結果的には、日程的にも石破=トランプ会談は大成功だったことになります。そう言えば、トランプ氏の当選直後、つまり就任前の昨年11月15日に岩屋外相がウクライナを訪問して、外相会談に臨み、ブチャ虐殺の追悼も行いました。これは一種の「駆け込み外交」ですが、日欧の関係性というのが今後大切になる局面も想定される中では、こうしたことも全くムダではないのだと思います。
 あらためて申し上げますが、日本の最善手は現状維持です。トランプと中国の対立はありますが、現在の流れですとテクノロジーの競争と、通商問題が主要な対立点になっています。これが軍事的な対立にエスカレートする兆候は今はありません。習近平も、巨大な不動産バブルの欠損を単に償却するだけではなく、経済成長で埋めようとして、アリババの馬元会長との和解も模索しているようです。
 ですが、少なくともアメリカが極端に冷淡になる場合への備えは必要だと思います。その場合は、正規軍による自主防衛、その責任を果たして初めて新しい同盟関係による抑止力維持が見えてくるのだと思われます。同時に、枢軸日本の名誉回復などという商業右翼の煽るファンタジーとの決別も必要になってくると思うのです>(以上「MAG2」より引用)




日本をトランプ主義から救うのは「日中同盟」か「日露同盟」か?在日米軍撤退に現実味、ビジウヨファンタジーで国は守れず」と冷泉彰彦(在アメリカ合衆国の教員、作家、 翻訳家、鉄道評論家)氏がトランプ時代の日米関係をいかに構築すべきか、と問題提起している。
 しかし、なぜ今になってトランプ時代の日米関係を取り立てて考える必要があるのだろうか。そして現在報道されているウクライナ抜きのウクライナ戦争の平和解決が実現可能なスキームだとトランプ氏本人も思っていないだろうし、もちろんNATO諸国も考えてはいないだろう。

 その経歴からいってトランプ氏は実務家だ。それも米国の実業界でノシた実業家だ。ブラフやネゴなどの手法を縦横無尽に駆使する実業界で成功した人物だということを忘れてはならない。
 会談相手のプーチンは謀略と殺人を仕事としてきたKGBの出身だ。これまで政敵を少なくとも百人以上も闇に葬っている。トランプ氏にとってプーチンは実に分かりやすい人物ではないか。味方以外は粛清する、という簡単な人生観の持ち主だからだ。

 トランプ氏がサウジアラビアを選んでウクライナ和平の対ロ会談を始めたのは、それなりにワケがあるのではないか。中東ではアラブの盟主の座を巡ってサウジアラビアはイランと対立してきた。イランは反米姿勢を強くして対イテロを仕掛けるハマスやヒズボラを支援して来た。サウジアラビアは以前サウジアラビアのジャーナリストをトルコ国内のサウジアラビア大使館に呼び出して殺害したことから、バイデン政権が強く反発しサウジアラビア政権と対立していた。
 ここに来て米国大統領がトランプ氏に代わり、サウジアラビアとの関係が改善する兆しがあった。同時にサウジアラビアは対ロ制裁に参加せず、原油増産策を呑まないでロシア産原油の売り捌きに間接的に寄与してきた。そうしたことから、サウジアラビアはロシアとの関係も維持して来たと云える。だから米ロが会談する場としてサウジアラビアを選んだのではないか。

 冷泉氏は日本がトランプ氏によって攻撃される、と勘違いしているのではないだろうか。それが論評の題「日本をトランプ主義から救うのは「日中同盟」か「日露同盟」か?在日米軍撤退に現実味、ビジウヨファンタジーで国は守れず」となっているのだろうが、トランプ主義とは「MAGA」であり「米国ファースト」だ。それは日本を攻撃して自陣営から日本を追放若しくは傘下から弾き出すことではない。
 アジアの足場と云うべき日本を失うことは米国のアジア戦略の拠点を喪失することになる。だから決して米国から日本国内の米軍基地を手放すことなどない。日本が米国に「米軍基地返還」を申し入れたとしても、米国が「それでは、左様なら」と撤退することも決してない。日本の高い工業力と安定した社会に米軍基地を置いておくことは米国にとって最高の立地と云うべきではないか。

 冷泉氏は靖国参拝がサンフランシスコ体制に悖る、と論じているが、サンフランシスコ体制はそこまで規定していない。日本国内に戦没者を祀る宗教施設が存在することは平和国家の存立を脅かすものではない。むしろ国家として、国家に殉じた先人を祀ることは正しいことで、今後とも国家存亡の危機にあっては国民は国家に殉ずる気概がなければならない。さもなくば、他国への侵略を未だに国是としている中国やロシアの餌食になるだろう。
 冷泉氏の「在日米軍撤退に現実味、ビジウヨファンタジーで国は守れず」という歴史観は間違っている。また、たとえ在日米軍が撤退したとしても、日本は日本国民が守るものだ。もちろんビジウヨ(ビジネス右翼とは、政治的な右翼的主張を商売の手段として利用する人々)が語り掛けるファンタジー(夢物語)では国家は守れない。具体的な軍備と人員を全国の基地に配置し、隣国から飛翔する核ミサイルに備えなければならない。そうした防衛兵器開発に関して、日本は安穏として惰眠を貪っているわけではない。たとえばレールガンやレーザー砲といった専守防衛に必要不可欠な新兵器開発で確実に前進している。

 さらに言及するなら、中国は中国共産党が独裁支配している限り、軍事同盟を組むことはあり得ない。なぜなら中国は絶対的に信用ならないからだ。そしてロシアに関しては「言わずもがな」だ。なぜならソ連当時から未だに平和条約すら締結していない「侵略国家」といかなる軍事同盟を組むと云うのだろうか。北方領土は現在もロシアが公然と侵略して実効支配している。その限りにおいて、平和条約すら締結できないから、正式にはロシアと日本は現在も「戦争状態」にある。
 もちろん冷泉氏も「あらためて申し上げますが、日本の最善手は現状維持です。トランプと中国の対立はありますが、現在の流れですとテクノロジーの競争と、通商問題が主要な対立点になっています。これが軍事的な対立にエスカレートする兆候は今はありません」と常識的な見解を述べて引用論評を締め括っている。トランプ氏の登場を危機だと煽るのはオールドメディア全般の論調で、いわば左派ファンタジーだが、トランプ氏は実業界に身を置いて来た極めて実務的な政治家だ。実社会での経験に乏しい政治ファンタジー(「政治家バカ」と呼び替えても良い)揃いの日本政界とは比較にならないくらいディベートに長けている。

 サウジアラビアでの平和会談で当事国のウクライナやNATO諸国抜きで会談を進めているのもトランプ一流のディベートではないか。プーチンに最良の環境で最上の平和条件を提示して承諾を得るつもりだろう。当然、今回のサウジ合意などウクライナやNATO諸国が受け入れることはないだろう。そうすると、どうなるか。
 プーチンは意気揚々とトランプ氏との合意を手にして帰国し、戦争に倦みプーチンから離反しつつある国民世論を一身に集めようとするだろう。もちろん軍部は平和の兆しに厭戦気分が一気に高まる。そこでNATOやウクライナによる平和案拒否が起きて、プーチンが持ち帰った平和案が反故になると、それ以前よりも増してロシア国内で反プーチン、もしくは除プーチンの国民世論が高まり収拾がつかなくなるだろう。トランプ氏は恐らくそこまで読んで手を打っているのではないか。いずれにせよ、今月末までか、来月上旬までの動きがプーチンの去就を決めるだろう。

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