プーチンがウクライナに侵略侵攻して3年が経過した欧州の現在。

脅威はヨーロッパ内部にあり
 スイスのジャーナリスト、ロジャー・キョッペル氏は、2月14日のミュンヘン安全保障会議でJ・D・ヴァンス米副大統領の演説を聞いて動揺するヨーロッパのエリートたちの様子を、「狐が入り込んだ鶏小屋」と形容した。ただ、この演説を胸の透くような思いで聞いていた政治家もたくさんいたことは間違いない。 
 同会議は国際安保を扱うものでは世界最大、1963年からほぼ毎年開催されているが、ヴァンス氏はまず、そこで、ヨーロッパ、およびミュンヘンを褒め称え、居並ぶヨーロッパのエリートたちを喜ばせた。すると氏は、「この拍手が、今日、私の得る最後のものでないことを祈る」と意味深なことを言い、会場の人々がその意味を飲み込めないうちに、唐突に攻撃を開始した。
 聴衆は、米国とヨーロッパの結束、ウクライナ戦争、あるいはイスラエルとガザの和平といったテーマを想定していたに違いない。ところが、ヴァンス氏は突然、EUの言論の自由が抑圧されている問題に切り込んだ。
「脅威はロシアでも中国でもなく、ヨーロッパ内部だ。言論の自由という最も大切な価値観が後退している」
 言論の自由は民主主義の基である。つまり、ヴァンス氏は、EUには民主主義が足りないと言っているらしい。見る見るうちに聴衆の顔にクエスチョンマークが浮かび上がった。

東ドイツ化が進むドイツ
 ヴァンス氏がまず、例に挙げたのは、昨年11月に行われたルーマニアの総選挙。極右と言われていた親ロシアの候補が最多得票で決選投票に進むことになったが、12月、不正があったとして、その1回目の選挙自体が無効とされた。「気に入らない候補が勝ちそうになると、それをひっくり返すのが民主主義か?」とヴァンス氏。ロシアの不正介入が主な理由と言われたが、何となく聞き覚えのある“理由”だ。
 ヴァンス氏はさらに、ドイツの憲法で認められ、議会で多数の議席を持っている党(AfD・ドイツのための選択肢を指す)が、政治から完全に締め出されていることも強く批判した。ドイツは早急に民主主義に立ち戻らねばならないと、ヴァンス氏。「よくぞ言ってくれた!」と憂さを晴らしたドイツ人と、「大きなお世話」と気分を害したドイツ人がいたことは、想像に難くない。
 ちなみに、昨年末にはイーロン・マスク氏も同じことを言っていたし、憚りながら私も数年前から、ドイツ、およびEUの言論弾圧と全体主義化を指摘していた。特に、AfDの弾圧は、それを選んだ有権者に対する弾圧でもある。最近のアンケートでは、「自由に発言できないと感じている」と答える人が急激に増えている。ドイツは東ドイツ化しているのである。

相次ぎ国民を告発
 EUの内閣である欧州委員会は、ヴァンス氏が指摘するまでもなく、今や完全に左派イデオロギーに乗っ取られている。そして、自分たちの意に沿わない勢力を、極右だ、反民主主義だと、徹底的に弾圧する。
 左翼政権が権力を手にすると、自由が無くなり、経済が停滞し、独裁となり、最後に戦争となるのは数々の歴史が証明しているが、ドイツで現在、まさにそれを地で行っているのが、緑の党だ。かつては自由と平和を愛したはずの緑の党の様変わりは凄まじく、今では、ウクライナに殺傷能力の高い最新兵器を供与するよう、一番声高に叫んでいる。
 当然、国民の監視でも先頭を切っており、昨年は、Xにハーベック経済相(緑の党)のことを「頭が弱い」と書きこんだ人の家に、早朝、警官が家宅捜索に入った。しかし、これとて特別なケースというわけではなく、ハーベック氏は政権に就いた2021年9月より24年8月までの3年間に、805回も国民を告発している。それを知ったイーロン・マスク氏はXに、「ワオッ! この男はなんてバカなんだ!」と投稿。ただし、ハーベック氏がマスク氏を告訴したという話はまだ聞かない。
 ちなみにベアボック外相(緑の党)は、自分に批判的な投稿をした国民を513回告訴しているそうで、二人とも国民からかなりの額の慰謝料をぶんどっているはずだ。いずれにせよ、自分たちが公僕であるなどとは、露ほども思っていないだろう。

戦後最悪の首相という評判が定着
 さて、ミュンヘン安保会議に話を戻すと、この日の見ものは、その後の、ドイツのショルツ首相のスピーチだった。ショルツ氏はドイツの戦後最悪の首相という評判が定着しており、昨年、社民党内では、これでは選挙に勝てないとして、ピストリウス国防相を首相候補に擁立する案が浮上。
 しかし、ショルツ氏は、総選挙までに社民党を不死鳥のように蘇らせると大口を叩いて、首相候補の座を譲らなかった。ただ、不死鳥は未だ寝たきり状態で、支持率はさらに落っこち、7日の時点で15.4%。
 そのショルツ氏がミュンヘンで、ヴァンス副大統領に真っ向から立ち向かった。スピーチの冒頭は、お決まりのヒトラー批判。続いて、恐ろしい犯罪がドイツ人の名の下に行われたことへの反省。しかしその後は、AfD(ドイツのための選択肢)をナチの擁護者と決めつけ、激しい誹謗が続いた。
 どう贔屓目に見ても、「民主主義」に託けて、国際舞台を政敵攻撃の場に使っているとしか思えない。10日後に迫った総選挙のための選挙運動である。悲痛というか、厚かましいというか…。
 そして最後には、「何が民主主義であるかは我々ヨーロッパ人が自分で決める!」と、ヴァンス氏に決然と反撃。居並ぶヨーロッパのエリートたちは盛大な拍手をしながらも、その顔にはクエスチョンマークが張り付いたままだった。
 EUがヴァンス氏に揺すぶられていることは確かだが、しかし、だからと言って、ショルツ氏の下に結集するなどあり得ない。じゃあ、どうする?

焦るショルツとパニクるゼレンスキー
 一方、次期首相と言われているCDUのメルツ党首も、ここのところ、混乱しきり。つい先週まで、自分が首相になったら最新巡航ミサイルのタウルスをウクライナに供与すると宣言していたが、米国が本当に手を引くとすれば、一体どうすればいいのか?
 2月12日に、米露の大統領が電話会談、15日には米国のルビオ国務長官がラブロフ露外相と電話会談。そればかりか18日、二人はサウジアラビアで会談した。

何かが急テンポで進んでいる。しかも、ヨーロッパ抜きで。
 これまで、ロシアを勝たせてはいけないと言っていたEUだが、では、引き続きウクライナを支援するのか、それとも和平交渉に加えてもらうのか? ドイツはEUの中で一番の多額をウクライナに支援している。
 そんな中、英国は突然、ウクライナに派兵してもいいと言い出し、一方、ポーランドは、うちは派兵はしないと断言。ショルツ首相はただ焦り、パニックに陥ったウクライナのゼレンスキー大統領は、「ウクライナ抜きの和平交渉で決定したことは絶対に受け入れない!」と叫んでいる。しかし、これまでだってゼレンスキー氏はただのお飾りで、この戦争はウクライナ抜きで進んでいたのではないか。

薄っぺらくなってしまったドイツの財布
 17日、ルビオ国務長官がラブロフ外相との会談のため、サウジに飛んだことに対抗して、マクロン仏大統領がヨーロッパの何人かの首脳をエリゼー宮殿に招いた。かつてはEUの両輪であったはずのドイツとフランスだが、ただ、現在、すでにレームダック状態のショルツ首相とマクロン大統領がハグしている映像など見せられても、国民は、強いヨーロッパを感じることなど到底できない。
 しかも、ヨーロッパの結束を示すと言いながら、来られなかった首脳だけでなく、招待されていない首脳もいたというから、ヨーロッパの中にも親米、反米の亀裂が走っている。これでは、トランプ大統領やプーチン大統領に無視されても当然だ。
 おそらくEUの今後のテーマは、この状況を非常事態と位置付けて、EUが共同の借金に踏み切るかどうかだろう。ショルツ首相はドイツの財政などどうなっても良いと思っているようなので、OKを出す可能性は高いと思われるが、以前は分厚かったドイツの財布も、今では薄っぺらい。それにしても、3年半でここまでドイツを落ちぶれさせたとは、ショルツ政権の破壊力は凄い。
 しかし、現在、支持率トップのCDUがAfDとは絶対に連立しないと言っている限り、連立は社民党とするしかなく、ショルツ氏は再び確実に次期政権に入る。そして、ドイツの下降は間違いなくこれからも続いていくだろう。
 ドイツの総選挙は2月23日。優秀で勤勉な人たちがたくさんいる国なのに、未来に光が見えないことが残念でならない>(以上「現代ビジネス」より引用)




 EV戦略の失敗と云い欧州は何か歯車が狂っているようだ。その欧州の最大のリーダー国ドイツがおかしくなっているようだ。川口 マーン 惠美(作家)氏が「総選挙を目前に控えたドイツの“絶望”…「戦後最悪の首相」がここまで落ちぶれさせた!」とダイス論評で「イマ」の欧州事情を解説してくれている。
 そこで浮かび上がるのが、やはりドイツ経済の衰退だ。ことにドイツ経済を牽引してきた自動車産業が極端なEVシフトをしたものの、空振りに終わりそうで破産の危機に瀕している。ことに中国へ全振りしたベンツやVWなどは深刻な事態に陥っているようだ。

 ドイツはなぜこれほど急激に経済力を失い社会は破壊されたのか。それは急進的な左派が政権入りし、保守派を徹底的に排除したからだ。ことに「緑の党」は常軌を逸している。環境さえ旗印に掲げれば何でも突破できると信じているし、自分たちを批判する者を警察を活用してでも排除する。引用論評にある通り「Xにハーベック経済相(緑の党)のことを「頭が弱い」と書きこんだ人の家に、早朝、警官が家宅捜索に入った。しかし、これとて特別なケースというわけではなく、ハーベック氏は政権に就いた2021年9月より24年8月までの3年間に、805回も国民を告発している」というから驚きだ。
 しかし日本の政治家にもSNSに批判を書き込んだ国民を告発した「大臣」がいるから、ドイツの「緑の党」を批判する資格はないかも知れない。

 ドイツ政界ではレームダック状態のショルツ氏だが「ミュンヘンで、ヴァンス副大統領に真っ向から立ち向かった。スピーチの冒頭は、お決まりのヒトラー批判。続いて、恐ろしい犯罪がドイツ人の名の下に行われたことへの反省。しかしその後は、AfD(ドイツのための選択肢)をナチの擁護者と決めつけ、激しい誹謗が続いた。どう贔屓目に見ても、「民主主義」に託けて、国際舞台を政敵攻撃の場に使っているとしか思えない。10日後に迫った総選挙のための選挙運動である。悲痛というか、厚かましいというか…」と川口氏も呆れ返っている。
 冒頭に書いた通り、ドイツ経済は最大の牽引車だった自動車産業の凋落で危機に瀕している。それも「緑の党」が推し進めた環境最優先の政治により、国内から追い出されて中国へ生産拠点を移したことから始まった。つまりドイツ経済凋落の発端はメリケル氏の「中国依存政策」だった。奇しくもメリケル氏は東ドイツ出身で、ドイツを東ドイツのような逼塞した経済をドイツ全体に及ぼしてしまったようだ。

 ドイツは総選挙後もショルツ氏が連立政権の首相に就任するという。ドイツ国民は衰退するドイツを蘇らせるために急進左派や「緑の党」と手を切る選択をしないのだろうか。それとも欧州までも破壊して、プーチンのロシアの支配下に欧州を差し出そうとするのだろうか。
 EUの揺り籠は揺れ続けて壊れようとしている。トランプ氏はプーチンを持ち上げて欧州を牽制し、民主主義そのものまでも破壊しようとしているようだ。欧州を駆け巡ったバンスが欧州諸国を恫喝して廻ったが、それに確実に反応したのは英国だけだった。英国は「ウクライナに英国軍を派遣する」と表明した。これまでウクライナに支援するだけで決して前線に立とうとしなかったが、英国はプーチンと直接対決も辞さじと態度を決めた。

 米国民は英国民と近しい関係にある。英国軍がウクライナで戦闘に参加しても、プーチンを持ち上げるだけのトランプ氏を支持するたろうか。自由と民主主義のために、米国を建国した先人たちは命を捧げた。その精神が米国民に残っているなら、米国は決してウクライナを見捨てないだろう。たとえトランプ氏が世迷い事を云ってプーチン氏握手しようとも。チェンバレンは英国首相一人で沢山だ。米国の大統領まで現代のチェンバレンにしてはならない。

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