コメ高騰の元凶はスクラップ業者が21万トンも買占めたからなのか? 真犯人は「コメ不足」ではないか?
<投機筋がコメを買い占めた?
米穀の流通・販売に携わる方は、取扱数量にかかわらず関連する以下の法令をご承知おきの上、適切に対応して下さい。
食品表示法
米穀を消費者に販売する場合は、「食品表示基準」に基づき、「名称」、「原料玄米(産地・品種・産年)」、「内容量」、「精米時期」、「販売者」の表示が必要です。
農水省見解が胡散臭い
レアな人気商品を大量に買い占めて抱え込み、価値が高騰したところで一気に売りさばく――。そんな「転売ヤー」が、ついに「コメ」にまで手を出し始めたのかと衝撃が広がっている。
きっかけは、昨年の「令和の米騒動」からコメの価格が一向におさまらず高騰を続けている問題を、国会で繰り返し追及された、江藤拓農林水産大臣が述べたこの言葉だ。
「米はあると。(中略)どこかにスタックしていると考えざるを得ない」(1月31日)
「今回は、今まで米を扱ったことがないような人が参入している気配がある。どこにどれだけあるか、いま、調査を一生懸命かけています」(2月3日)
要するに、コメの生産は十分に足りているにもかかわらず、一部のけしからん投機筋の人々が買い占めて抱え込んでいるために、価格が下がらないというのだ。
この根拠としているのは、「消えた21万トン」だ。農水省は、農協を含む大手の卸の集荷量が低下していることをもって、他の業者がコメをためこみ、本来はあるはずの21万トンが従来の流通から消えたと主張をしている。官僚からの情報に「依存」するマスコミもそんな「買い占め説」を盛んに広めている。
《コメの高騰が続く背景には、一部の生産者や業者が、コメをより高く売れるタイミングまで市場に出さずいるとみられています。そこで、農水省は、備蓄米をJAなどの集荷業者に販売。コメを抱える業者に「価格が下がるかもしれない」とけん制して、市場に出回るよう、促そうという狙いがあります》(テレ朝news 2月12日)
このような話を聞くと、「買い占めているのはどの業者だよ、みんなが困っているときにとんでもないヤツらだ」と怒りが込み上げてくる人も多いだろう。実際、ネットやSNSでは「米を買い占めているのは誰だ」と「犯人探し」まで始まっている。
ただ、個人的にはこの「投機筋の買い占め説」はかなり胡散臭い話だと感じている。
多くの専門家が指摘しているが、この説の大前提である「米自体は足りている」という農水省の主張自体がどうにも疑わしいからだ。
今回の米高騰のきっかけは昨年8月に、スーパーの棚から一斉に米が消えた「令和の米騒動」だ。これは前の年の猛暑の影響もあってコメの供給量がシンプルに減少したことで発生した。
農水省によれば、23年秋の主食用米の収穫量は661万トン。しかし、これに対して需要は705万トンもあったので「40万トンの米不足」が起きていた。それが24年春から徐々に露呈して、夏にはついに店頭からコメがなくなったというわけだ。
それをうかがえるのがコメの在庫量だ。農水省の「民間在庫の推移」を見ると、昨年7月は82万トン。その前年7月の在庫は123万トンなので、41万トン少ない。確かにこちらから見ても「40万トンの米不足」なのだ。
ただ、問題はここからだ。この時期、農水省は「9月になって新米が出回れば米不足は解消します」と盛んにアナウンスをしていたことを覚えているだろう。吉村弘文大阪府知事が備蓄米放出を要請しても、「全国的に見れば需給ひっ迫にない」としてあっさり却下した。
しかし、冷静に考えればそんなうまい話などあるわけがない。9月に出回る新米というのは基本的に10月から食べ始めるものだ。では、例年9月に我々が食べている米はどういうものかというと8月に出回っているものだ。しかし、今回は8〜9月の時点ですでに「40万トンの米不足」に陥っているのでそれがない。つまり本来は10月に食べ始めるはずの新米を、農水省は9月に「先食いしろ」と言っていたのだ。
これが問題の「先送り」でしかないことは、先ほどの「民間在庫の推移」がすべてを物語っている。24年7月の在庫が前年に比べて41万トン少ないことは述べたが、9月になるとどうなるかというと、前年比で50万トンも少ない。10月は44万トン、11月は43万トン、12月が44万トンとほぼ同じ状況が続く。
つまり、農水省は新米が出回ればすべて解決みたいなことを言っていたが、なんのことはない民間在庫的には「40万トンの米不足」が昨年7月からずっと継続していたというワケだ。
これが「米価高騰」に大きな影響を与えていることは容易に想像できよう。
確かに、新米が出回った昨年9月、スーパーの棚にはコメは戻ってきた。しかし、それはあくまで「先食い」の結果であり、表面的な問題の解決にすぎない。民間在庫の「40万トン米不足」は絶賛継続中なので、米の取引に関わる人たちの多くは「去年の今頃に比べてだいぶ少ないな」という品薄感がある。
そうなれば当然、取引価格も上がることは言うまでもない。そこに加えて、商売人としてはまた昨年夏の米騒動のようなことが起きてもいいように、リスクヘッジとして「いつもより多く在庫を抱えておくか」となるのでさらに価格は釣り上がる。結果、我々の手元に届くときは、「5キロ4500円」なんて目を疑うような高値になってしまうのである。
国民の目を背けたい農水省
絶対に「コメ不足」と言わないワケ
こういう構造的な問題がある中で、「投機筋がお茶碗32億杯分のコメを買い占めているぞ!」と言われても正直ピンとこない。というか、「農水省にとって都合の悪い話から目を背けさせるために、卸業者に罪をなすりつけているんじゃないの?」と穿った見方さえしてしまうのだ。
なぜかというと、今回の米価高騰は「農水省にとって都合の悪い話」が大いに関係しているからだ。それは今回、「40万トンの米不足」を引き起こしてきた減反政策についてだ。
「おいおい、そんなもんは2018年にとっくに廃止になったよ」と失笑する人もいるかもしれない。しかし、農水省は減反政策廃止後も、主食用米の全国の生産量の「目安」を示しており、米から転作する農家に補助金まで出して、主食用米の生産量を絞っているのだ。
そして、この動きは近年加速していた。例えば、21年秋の主食米の収穫量は702万トンだった。需要はだいたい年間700万トンと言われているのでトントンだ。しかし、それが翌22年秋になると30万トンも落ち込んで、670万トンになる。「主食用米の作付面積が125万1000ヘクタールと21年産より5万2000ヘクタール減ったことが背景にある」(日本経済新聞 2022年12月16日)からだ。
では、なぜ農水省は廃止になった今も「減反」に執着し続けるのかというと、「生産調整をすることで米価を安定させて米農家を守るため」だという。しかし、一部の専門家やジャーナリストたちはこれはあくまで建前に過ぎず、実際は「JAの利益を守るため」だと指摘している。
減反が進んで「米不足のムード」が定着すれば当然、売り手市場になる。では、売り手は誰かというと、米農家ではない。
日本の農家は海外のように大規模化も進んでいないので、個人の零細農家ばかりだ。そこでJAが「概算金」を払って農家から米を引き取り、卸売業者と取引をする。しかも、減反が進めば兼業農家や「土地売却農家」が増えるので、それらの預金がすべてJAバンクに入る。
つまり、減反政策で一番潤うのは、実は農家でも国民でもなく、JAだというのである。
実際、令和6年産米の相対取引価格(JA全農などと卸売業者との間の取引価格)は2万4665円(12月速報値)。一方、令和4年産の相対取引価格は1万3920円なので1万円以上も上がっている。
もちろん、農家に払われる「概算金」も上がっているが、ほとんどは大規模農業ビジネスをしているわけではなく、個人農家でもともと赤字。物価高騰で肥料や燃料も上がっているので、大した恩恵はない。しかし、JAは「中間マージン」で扱う量も膨大なので、相対取引価格が高騰すればするほどうまみも大きい。
もちろん、これにはいろんな意見があるだろう。ただ、どういう理屈をつけようとも、食料自給率38%という異常事態にもかかわらず、我々の血税をつっこんで米の生産を絞ろうという「減反政策」は異常だと言わざるを得ない。
世界では、食糧をたくさん生産して国内の需要が十分に賄えるようになってから、「あまったら海外に売る」が常識だからだ。
わかりやすいのは、インドだ。
ご存じのようにかの国は14億もの人々がいる。それだけいれば、食糧確保が大変だと思うだろうが、食糧自給率は100%。それを支えているのが「米」だ。農水省の資料によれば、インドの米生産量は中国に迫る勢いで、23〜24年で1億3400万トンである。ただ、消費に関しては1億1500万トンという感じで、供給量がかなり上回っている。
その「余ったコメ」を海外に売っており、インドは毎年、1000万~2000万トンを輸出するとのことだ。結果、世界に流通する米の約4割をインド産が占めている。
では、なぜインドは日本のように減反政策で価格安定化などをしないのかというと、食糧安全保障のためだ。農業というものは当然、冷害や不作もあるので、生産が落ち込むことも想定される。そうなれば急に国内が米不足になるということもある。そのときに減反などしていたら、日本のように米の価格が高騰して最悪、国民が飢えてしまう。
そこで「余ったコメ」を海外に流していれば、米不足が起きたらこれを引き上げればいい。実際、2023年7月にはインド国内の供給確保などを優先するために米の輸出禁止を決め、世界の食料価格にも大きな影響を与えた。
こういう形で着々と、世界中の国々が自国の食糧安全保障に力を入れている中で、食料自給率38%の日本では、「スーパーから米が消える」という恐ろしい事態が起きた。
農水省は「米はたくさんある。新米が市場に出回ったら解決です」と盛んに触れ回った。確かに、農水省の言うとおり、新米が店頭には並んだが、価格は2倍近く高騰をした。どう考えても「減反」という異常なことを続けてきた“副作用”である。だが、農水省はかたくなに「米不足」は認めず、挙げ句の果てにこんな「説」を唱え始めた。
「お茶碗32億杯分の米を買い占めている投機筋の業者がいる」――。
農水省がこれまでやってきたこと不条理な米政策を考えれば、国民の目を「何か」から背けるスケープゴートではないかと勘繰らざるを得ない。
謎の投機筋を追うのも結構だが、すぐ近くに世界的にも珍しい「生産調整」とそれに伴う特殊な「利権団体」があるのに、なぜ目を瞑るのか。
いろいろな意味で、この国の未来に希望がもてなくなってきているのは、筆者だけではないはずだ>(以上「DIAMOND」より引用)
「農水省「コメの投機的な買い占め説」は胡散臭い…米価高騰の悲願を達成した「真犯人」の正体」とはオールドメディアが決して推論しない、窪田順生(ノンフィクションライター)氏の渾身の力作だ。
レアな人気商品を大量に買い占めて抱え込み、価値が高騰したところで一気に売りさばく――。そんな「転売ヤー」が、ついに「コメ」にまで手を出し始めたのかと衝撃が広がっている。
きっかけは、昨年の「令和の米騒動」からコメの価格が一向におさまらず高騰を続けている問題を、国会で繰り返し追及された、江藤拓農林水産大臣が述べたこの言葉だ。
「米はあると。(中略)どこかにスタックしていると考えざるを得ない」(1月31日)
「今回は、今まで米を扱ったことがないような人が参入している気配がある。どこにどれだけあるか、いま、調査を一生懸命かけています」(2月3日)
要するに、コメの生産は十分に足りているにもかかわらず、一部のけしからん投機筋の人々が買い占めて抱え込んでいるために、価格が下がらないというのだ。
この根拠としているのは、「消えた21万トン」だ。農水省は、農協を含む大手の卸の集荷量が低下していることをもって、他の業者がコメをためこみ、本来はあるはずの21万トンが従来の流通から消えたと主張をしている。官僚からの情報に「依存」するマスコミもそんな「買い占め説」を盛んに広めている。
《コメの高騰が続く背景には、一部の生産者や業者が、コメをより高く売れるタイミングまで市場に出さずいるとみられています。そこで、農水省は、備蓄米をJAなどの集荷業者に販売。コメを抱える業者に「価格が下がるかもしれない」とけん制して、市場に出回るよう、促そうという狙いがあります》(テレ朝news 2月12日)
このような話を聞くと、「買い占めているのはどの業者だよ、みんなが困っているときにとんでもないヤツらだ」と怒りが込み上げてくる人も多いだろう。実際、ネットやSNSでは「米を買い占めているのは誰だ」と「犯人探し」まで始まっている。
ただ、個人的にはこの「投機筋の買い占め説」はかなり胡散臭い話だと感じている。
多くの専門家が指摘しているが、この説の大前提である「米自体は足りている」という農水省の主張自体がどうにも疑わしいからだ。
今回の米高騰のきっかけは昨年8月に、スーパーの棚から一斉に米が消えた「令和の米騒動」だ。これは前の年の猛暑の影響もあってコメの供給量がシンプルに減少したことで発生した。
農水省によれば、23年秋の主食用米の収穫量は661万トン。しかし、これに対して需要は705万トンもあったので「40万トンの米不足」が起きていた。それが24年春から徐々に露呈して、夏にはついに店頭からコメがなくなったというわけだ。
それをうかがえるのがコメの在庫量だ。農水省の「民間在庫の推移」を見ると、昨年7月は82万トン。その前年7月の在庫は123万トンなので、41万トン少ない。確かにこちらから見ても「40万トンの米不足」なのだ。
ただ、問題はここからだ。この時期、農水省は「9月になって新米が出回れば米不足は解消します」と盛んにアナウンスをしていたことを覚えているだろう。吉村弘文大阪府知事が備蓄米放出を要請しても、「全国的に見れば需給ひっ迫にない」としてあっさり却下した。
しかし、冷静に考えればそんなうまい話などあるわけがない。9月に出回る新米というのは基本的に10月から食べ始めるものだ。では、例年9月に我々が食べている米はどういうものかというと8月に出回っているものだ。しかし、今回は8〜9月の時点ですでに「40万トンの米不足」に陥っているのでそれがない。つまり本来は10月に食べ始めるはずの新米を、農水省は9月に「先食いしろ」と言っていたのだ。
これが問題の「先送り」でしかないことは、先ほどの「民間在庫の推移」がすべてを物語っている。24年7月の在庫が前年に比べて41万トン少ないことは述べたが、9月になるとどうなるかというと、前年比で50万トンも少ない。10月は44万トン、11月は43万トン、12月が44万トンとほぼ同じ状況が続く。
つまり、農水省は新米が出回ればすべて解決みたいなことを言っていたが、なんのことはない民間在庫的には「40万トンの米不足」が昨年7月からずっと継続していたというワケだ。
これが「米価高騰」に大きな影響を与えていることは容易に想像できよう。
確かに、新米が出回った昨年9月、スーパーの棚にはコメは戻ってきた。しかし、それはあくまで「先食い」の結果であり、表面的な問題の解決にすぎない。民間在庫の「40万トン米不足」は絶賛継続中なので、米の取引に関わる人たちの多くは「去年の今頃に比べてだいぶ少ないな」という品薄感がある。
そうなれば当然、取引価格も上がることは言うまでもない。そこに加えて、商売人としてはまた昨年夏の米騒動のようなことが起きてもいいように、リスクヘッジとして「いつもより多く在庫を抱えておくか」となるのでさらに価格は釣り上がる。結果、我々の手元に届くときは、「5キロ4500円」なんて目を疑うような高値になってしまうのである。
国民の目を背けたい農水省
絶対に「コメ不足」と言わないワケ
こういう構造的な問題がある中で、「投機筋がお茶碗32億杯分のコメを買い占めているぞ!」と言われても正直ピンとこない。というか、「農水省にとって都合の悪い話から目を背けさせるために、卸業者に罪をなすりつけているんじゃないの?」と穿った見方さえしてしまうのだ。
なぜかというと、今回の米価高騰は「農水省にとって都合の悪い話」が大いに関係しているからだ。それは今回、「40万トンの米不足」を引き起こしてきた減反政策についてだ。
「おいおい、そんなもんは2018年にとっくに廃止になったよ」と失笑する人もいるかもしれない。しかし、農水省は減反政策廃止後も、主食用米の全国の生産量の「目安」を示しており、米から転作する農家に補助金まで出して、主食用米の生産量を絞っているのだ。
そして、この動きは近年加速していた。例えば、21年秋の主食米の収穫量は702万トンだった。需要はだいたい年間700万トンと言われているのでトントンだ。しかし、それが翌22年秋になると30万トンも落ち込んで、670万トンになる。「主食用米の作付面積が125万1000ヘクタールと21年産より5万2000ヘクタール減ったことが背景にある」(日本経済新聞 2022年12月16日)からだ。
では、なぜ農水省は廃止になった今も「減反」に執着し続けるのかというと、「生産調整をすることで米価を安定させて米農家を守るため」だという。しかし、一部の専門家やジャーナリストたちはこれはあくまで建前に過ぎず、実際は「JAの利益を守るため」だと指摘している。
減反が進んで「米不足のムード」が定着すれば当然、売り手市場になる。では、売り手は誰かというと、米農家ではない。
日本の農家は海外のように大規模化も進んでいないので、個人の零細農家ばかりだ。そこでJAが「概算金」を払って農家から米を引き取り、卸売業者と取引をする。しかも、減反が進めば兼業農家や「土地売却農家」が増えるので、それらの預金がすべてJAバンクに入る。
つまり、減反政策で一番潤うのは、実は農家でも国民でもなく、JAだというのである。
実際、令和6年産米の相対取引価格(JA全農などと卸売業者との間の取引価格)は2万4665円(12月速報値)。一方、令和4年産の相対取引価格は1万3920円なので1万円以上も上がっている。
もちろん、農家に払われる「概算金」も上がっているが、ほとんどは大規模農業ビジネスをしているわけではなく、個人農家でもともと赤字。物価高騰で肥料や燃料も上がっているので、大した恩恵はない。しかし、JAは「中間マージン」で扱う量も膨大なので、相対取引価格が高騰すればするほどうまみも大きい。
もちろん、これにはいろんな意見があるだろう。ただ、どういう理屈をつけようとも、食料自給率38%という異常事態にもかかわらず、我々の血税をつっこんで米の生産を絞ろうという「減反政策」は異常だと言わざるを得ない。
世界では、食糧をたくさん生産して国内の需要が十分に賄えるようになってから、「あまったら海外に売る」が常識だからだ。
わかりやすいのは、インドだ。
ご存じのようにかの国は14億もの人々がいる。それだけいれば、食糧確保が大変だと思うだろうが、食糧自給率は100%。それを支えているのが「米」だ。農水省の資料によれば、インドの米生産量は中国に迫る勢いで、23〜24年で1億3400万トンである。ただ、消費に関しては1億1500万トンという感じで、供給量がかなり上回っている。
その「余ったコメ」を海外に売っており、インドは毎年、1000万~2000万トンを輸出するとのことだ。結果、世界に流通する米の約4割をインド産が占めている。
では、なぜインドは日本のように減反政策で価格安定化などをしないのかというと、食糧安全保障のためだ。農業というものは当然、冷害や不作もあるので、生産が落ち込むことも想定される。そうなれば急に国内が米不足になるということもある。そのときに減反などしていたら、日本のように米の価格が高騰して最悪、国民が飢えてしまう。
そこで「余ったコメ」を海外に流していれば、米不足が起きたらこれを引き上げればいい。実際、2023年7月にはインド国内の供給確保などを優先するために米の輸出禁止を決め、世界の食料価格にも大きな影響を与えた。
こういう形で着々と、世界中の国々が自国の食糧安全保障に力を入れている中で、食料自給率38%の日本では、「スーパーから米が消える」という恐ろしい事態が起きた。
農水省は「米はたくさんある。新米が市場に出回ったら解決です」と盛んに触れ回った。確かに、農水省の言うとおり、新米が店頭には並んだが、価格は2倍近く高騰をした。どう考えても「減反」という異常なことを続けてきた“副作用”である。だが、農水省はかたくなに「米不足」は認めず、挙げ句の果てにこんな「説」を唱え始めた。
「お茶碗32億杯分の米を買い占めている投機筋の業者がいる」――。
農水省がこれまでやってきたこと不条理な米政策を考えれば、国民の目を「何か」から背けるスケープゴートではないかと勘繰らざるを得ない。
謎の投機筋を追うのも結構だが、すぐ近くに世界的にも珍しい「生産調整」とそれに伴う特殊な「利権団体」があるのに、なぜ目を瞑るのか。
いろいろな意味で、この国の未来に希望がもてなくなってきているのは、筆者だけではないはずだ>(以上「DIAMOND」より引用)
「農水省「コメの投機的な買い占め説」は胡散臭い…米価高騰の悲願を達成した「真犯人」の正体」とはオールドメディアが決して推論しない、窪田順生(ノンフィクションライター)氏の渾身の力作だ。
窪田氏の要旨は「農水省の主張に反して、コメ不足は起きていた」というものだ。2023年のコメ需要が705万トンに対して、作柄などからコメ供給量は621万トンだったという。だから一昨年の段階でコメが大幅に不足していたことになる。それを隠して、昨夏からコメ高騰に対して農水相は「コメは足りている」と繰り返し主張していた。
では、どうして農水省はコメ不足ではない、と主張しているのか。2018年まで減反政策を続けていたが、減反政策が廃されてからも「転作奨励金」(水田での転作を促し、コメの過剰生産を抑えるために始まった制度です。 転作作物ごとに交付単価が設定され、作付面積に応じて支払われる制度)が支払われてきた。つまり農家をコメ作りから他の作物を作るように奨励し、形を変えた減反政策を続けてきた。
その結果としてコメ不足が表面化し、昨夏以来の米価高騰を招いている。しかし「コメ不足」を認めると米価高騰が農水省の責任になるため、農水省は頑なに「コメ不足」はないと主張している。
なぜ農水省は米作にブレーキをかけ続けているのか。それは米国を中心とするコメ輸入自由化圧力があるからだ。コメ不足になれば自然と外国からコメを輸入せざるを得なくなり、外国からコメ輸入することに国民が「不足しているのなら仕方ない」と容認すると読んでいるからだ。
しかしコメ不足を招くために税金を使うのは如何なものだろうか。むしろコメは生産過剰にして、国内に日本米を余剰させておくべきではないだろうか。余ったコメは「米粉」などにして小麦粉の代替に使うなり、食糧支援に用いるなどすべきではないか。そして絶えずコメの自給率を100%以上にしておく方が食糧安全保障の観点から望ましいのではないだろうか。
コメ転売ヤーが現れている、というネット情報があるが、コメを取り扱うには法令を遵守しなければならない。その概要は以下の通りだ。
「米穀の流通・販売に係る関係法令米穀の流通・販売に携わる方は、取扱数量にかかわらず関連する以下の法令をご承知おきの上、適切に対応して下さい。
食品表示法
米穀を消費者に販売する場合は、「食品表示基準」に基づき、「名称」、「原料玄米(産地・品種・産年)」、「内容量」、「精米時期」、「販売者」の表示が必要です。
米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(米トレーサビリティ法)
「米トレーサビリティ法」に基づき、取引等の記録を作成・保存し、産地情報を伝達することが必要です。
「米トレーサビリティ法」に基づき、取引等の記録を作成・保存し、産地情報を伝達することが必要です。
食品衛生法
米穀卸売業・米穀小売業を営む事業者は、保健所に営業の届出等を行う必要があります。
詳細は管轄の保健所へお問い合わせください」等々の関係法規を守らなければならない。
米穀卸売業・米穀小売業を営む事業者は、保健所に営業の届出等を行う必要があります。
詳細は管轄の保健所へお問い合わせください」等々の関係法規を守らなければならない。
ちなみにコメ取扱業者は許可制になっていて、
「米穀取扱業者の届出
米穀取扱業者は「登録制」から「届出制」へ
米の流通規制緩和を主な目的として、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(食糧法)が一部改正され、平成16年4月1日から施行されました。
これにより、米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者(年間事業規模が20精米トン未満(玄米換算91%)の者を除く)は、あらかじめ農林水産大臣(または各都道府県農政事務所長)に届け出るとともに、帳簿の備え付けが義務づけられました。
届出制度の概要米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者は、事業開始前に農林水産大臣(各都道府県農政事務所長)に開始届を提出(事業規模20精米トン未満の者を除く)
届出事業者は、届出事項の変更又は事業を廃止したときは、遅滞なく、農林水産大臣(または各都道府県農政事務所長)に変更又は廃止届を提出。
届出事業者は、帳簿を備え、必要事項を記載するとともに、3年間の保存義務を負う
1.の届出をせず、又は虚偽の届出をして米穀の出荷又は販売の事業を行った者は、50万円以下の罰金
2.の変更届出若しくは廃止届出をせず、又は虚偽の届出をした届出事業者は20万円以下の過料
3.の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者は20万円以下の過料」となっている。
米穀取扱業者は「登録制」から「届出制」へ
米の流通規制緩和を主な目的として、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(食糧法)が一部改正され、平成16年4月1日から施行されました。
これにより、米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者(年間事業規模が20精米トン未満(玄米換算91%)の者を除く)は、あらかじめ農林水産大臣(または各都道府県農政事務所長)に届け出るとともに、帳簿の備え付けが義務づけられました。
届出制度の概要米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者は、事業開始前に農林水産大臣(各都道府県農政事務所長)に開始届を提出(事業規模20精米トン未満の者を除く)
届出事業者は、届出事項の変更又は事業を廃止したときは、遅滞なく、農林水産大臣(または各都道府県農政事務所長)に変更又は廃止届を提出。
届出事業者は、帳簿を備え、必要事項を記載するとともに、3年間の保存義務を負う
1.の届出をせず、又は虚偽の届出をして米穀の出荷又は販売の事業を行った者は、50万円以下の罰金
2.の変更届出若しくは廃止届出をせず、又は虚偽の届出をした届出事業者は20万円以下の過料
3.の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者は20万円以下の過料」となっている。
コメに関しては法令からして転売ヤーが簡単にコメを買い占めて暴利を貪る、ということは出来ない仕組みになっている。だから転売ヤーがスーパーやコメ卸業者に買い占めたコメを売り捌こうとしても、スーパーや卸業者が「許可証」を確認しなければならないし、また売り捌こうとする業者の「食品衛生法」に抵触していないか、転売ヤーのコメ保管場所や保管状況の確認など行わなければならない。
以上の各法令条件を満たしていない買い占め業者がいれば、法令に従って罰すべきで、買い占め業者が外国人なら在日許可を取り消して本国へ強制送還すべきだ。日本国民の食糧安全保障を脅かす外国人に在日許可を与える便宜は即時取り消すべきではないだろうか。
国内で窃盗等の犯罪を犯した外国人が「不起訴処分」になっている例が多いと聞くが、そんなことで日本国民の安全は守れない。日本国民に対する以上に厳しく対処すべきではないだろうか。今回の令和のコメ騒動に外国人の転売ヤーが一枚噛んでいるとすれば、司法当局は厳しく外国人の責任を追及すべきだ。
安易に見逃せば、日本国民の安全が守れないどころか、社会秩序を乱して国家転覆を図らないとも限らない。そうした芽は小さい内に完全に摘み取っておく必要がある。いずれにせよ、転売ヤーが米に群がったのなら「コメ取引」に関する全ての法令を厳格に適用して、二度と「コメ取引」で濡れ手に粟の利を貪ろうとしないように罰すべきだ。
しかし窪田氏が指摘するように農水省が推進した「減反政策」により「コメ不足」が生じているとすれば問題は深刻だ。なぜなら農水官僚と政治家がグルになって、日本の農業を壊滅させようと企んでいたかも知れないからだ。
主として米国からのコメ完全自由化圧力は依然として強いものがある。ことにF1を仕掛ける種子ルジャーからの圧力だ。それにより「主要穀物種子法」を安倍政権で廃止してしまった。日本の穀物生産が米国種子メジャーの手に落ちるのは時間の問題になっている。既に花卉類の種子は米国に完全支配されている。
種子だけでなく、日本の商社が売り渡したコシヒカリなどの種子から生産した日本米が大量輸入される日を米国は虎視眈々と狙っている。コメを支配すれば、日本を完全支配できる。もちろん中国も転売ヤーなどを使って虎視眈々と日本国民の食糧安全を支配しようと狙っている。
そうした日米が日本の食糧安全を支配しようと狙っていることを、日本国民も政治家も知らない。そして官僚たちは減反政策を続けて日本農業を完全に弱体化させた。現在も「添削奨励金」を出すことで、農家の水稲離れを促進している。日本政府が日本国民の食糧安全を自ら棄損し放棄しているとは思いもよらないだろうが、現実はそうなっている。そして米国主要マスメディアに支配されている日本のマスメディアは食糧安全の問題を転売ヤーが仕掛けた一時的な問題にすり替えようとしている。まさに、食糧危機が日本国民に襲い掛かろうとしている。この現実を私たちは知るべきだ。