米中貿易戦争と、いかにも米国と中国が対等に敵対しているかのような表現だが、

<中国の2024年の経済成長率が発表された。経済成長率は予想以上の高水準となったが、成長を支えたのは貿易黒字の増加だ。
 「チャイナショック2.0」とも呼ばれる中国の輸出急増は世界各国の警戒感を高めている。関税引き上げを公約に掲げる米国のトランプ大統領の誕生もあり、2025年は中国の輸出が国際問題の焦点となるだろう。

予想以上の高成長の裏側
 中国国家統計局は1月17日に24年の主要統計を発表した。もっとも注目を集める名目経済成長率は5.0%成長。中国政府の目標は「5.0%前後」だったので、まさにぴったりの着地だ。
 アナリストの予測では4.7%や4.8%など目標レンジには収まるものの、やや低めに着地するのではないかとみられていた。四半期ベースでみると、第1四半期の5.3%から4.7%、4.6%と低下していたことも大きい。しかし、第4四半期は5.4%と大きく盛り返したことで、予想以上の結果となった。
「目標値ぴったりの経済成長を遂げるなどなにか怪しい」と疑う方も多いだろう。
 先日、中国経済統計に疑念を呈し、「過去2~3年の成長率は、公式統計では5%近くとなっているが、実際には平均で2%程度ではないか」と発言した中国SDIC証券の高善文(ガオ・シャンウェン)チーフエコノミストが公の場での発言を禁止されたことが明らかとなった。また、中国当局はソーシャルメディアなどで中国経済の先行きを不安視する投稿を規制している。こうした姿勢をみていると、中国政府にはなにか後ろめたい隠し事があるのではと疑われるのも無理からぬところだ。
 こうした中国経済の統計の正確性や捏造に関する疑問は何も昨日今日始まった話ではない。中国経済を長年研究している経済学者やエコノミストの見立ては、統計の精度には向上の余地があるだろうし、頻繁な統計基準の変更によって長期的な観測を難しくしている側面はあるものの、中国の統計は現状を知る上で頼りにできる精度を持つといったあたりが一般的な見解だろう。
 実際、今回発表された統計も、中国の明るい状況ばかりを示すものではない。25年に直面する深刻な課題がはっきりとあらわれている。

5.0%成長は弱い消費と投資、輸出依存
 下図は04年以降の中国国内総生産(GDP)成長を、消費(最終消費)、投資(固定資産形成)、輸出の各要素ごとに分解したもの。この3項目を足し合わせると、その年の経済成長率となる。


 24年の5.0%成長の中身だが、消費2.2ポイント、投資1.3ポイント、輸出1.5ポイントという内訳だった。前年の4.8%成長は消費4.6ポイント、投資1.4ポイント、そして輸出がマイナス0.6ポイント。つまり、輸出の大幅な伸びが5.0%成長を支えたことになる。
 図でみればわかるとおり、04年以降で成長がこれほど輸出に依存したことはない。
 全体でみれば好調だが、消費と投資はかなり弱かったのが実情だ。消費の主要指標である社会消費品小売総額(小売外食売上高)は3.7%増にとどまった。統計史上ワースト3位という低い伸び率だ。
 ちなみにワースト1位はコロナ禍初年の20年、2位はオミクロン株流行で上海をはじめ各都市がロックダウンした22年。つまり、コロナ禍をのぞけば最低の伸び率になったことを示している。
 街中でも節約志向の高まりが感じられる。たとえば、「9.9元」(約200円)ブームだ。9.9元均一のお店やレストランなどが登場したほか、ネットモールでも9.9元均一コーナーが開設された。
 投資は、製造業だけをみれば9.2%増と絶好調。電気自動車(EV)ブームが続く自動車製造業は7.5%増、輸出も好調な情報通信機器製造業は12%増などが牽引している。しかし全体では3.2%増と勢いを書く。
 不動産市場がいまだに縮小を続けているほか、民間企業の投資は0.1%減、外資企業は10%減とマイナス成長に落ち込むなど、好調な一部産業で大きな投資がある一方で、その他大勢の消極的な姿勢が目立っているのだ。

拡大する貿易黒字
 消費と投資がイマイチという状況下において、残る輸出が急成長し、5.0%成長を達成したというわけだ。
 純輸出は貿易とサービスに分けられる。中国のサービス収支は赤字なので、貿易収支によって純輸出の成長はなりたっている。統計をみると、近年、貿易黒字が急激に積み上がっていることが見て取れる。


 上図のうち、上のラインが輸出、下のラインが輸入を示している。二つのラインの開きが貿易黒字だ。
 輸出の増加ペースに比べ、輸入の増加ペースはゆるやかなため、19年以降は一貫して貿易黒字が拡大している。21年、22年はコロナ特需があった。サプライチェーンのどこかで感染爆発があれば調達がとどこおってしまうため在庫を増やそうという動きが強かったほか、コンピューターやタブレットなどリモートワークに必要な機器などの需要が高まったためだ。この特需が一巡し、在庫が削減に向かった23年の輸出は微増にとどまったが、24年は再び大きく伸ばしている。
 輸出好調とは良い話のようにも思えるが、これが今後の国際情勢における中国の苦境につながることは間違いない。すでに中国の輸出ラッシュは「中国発のデフレ」「チャイナショック2.0」として世界各国での警戒感が高まっている。

トランプを生み出したチャイナショック
 このチャイナショックについては次のように解説している。
「チャイナショック」とはもともと、中国のWTO(世界貿易機関)加盟前後である1990年代末から21世紀初頭にかけて、中国からの労働集約的な工業製品の輸入が急増し、米国内における雇用を減少させたことを指す言葉だった。これは、マサチューセッツ工科大学教授のデヴィッド・オーターらの研究によって広く知られるようになる。鉄鋼やガラスなどの原材料、衣料品、電化製品(の組み立て)など付加価値が低い製品が輸出の中心だったが、特にその衝撃を受けたミシガン州やペンシルベニア州はラストベルト(さびついた工業地帯)と呼ばれ、格差の拡大と政治的分断につながった。米国では200万人の失業をもたらしたとの推計もある。
 広く報じられているとおり、チャイナショックによるラストベルトの経済的凋落と格差拡大が現在のトランプ大統領誕生へとつながった。中国に仕事を奪われたことへの怒りを持つ人々が支持者にいる以上、トランプ大統領は新たなチャイナショック2.0にも強い対抗姿勢を示すことになるだろう。
 しかも、もともとのチャイナショックでは先進国も付加価値の高い商品や部品、製造設備を中国に販売することで利益をあげていた。米国にもラストベルトの労働者に代表される負け組がいた一方で、利益をあげていた人々もいたわけだ。
 ところがチャイナショック2.0では様相が異なっている。高付加価値のEV、車載バッテリーに用いるリチウムイオン電池、太陽光パネルなど高付加価値の製品の輸出が劇的な成長を続けている。また、以前の輸出は外資系企業の中国工場による輸出も多く含まれていたが、今や中国企業が成長し独自に海外輸出を行うようになった。低付加価値から高付加価値まで中国に総取りされると懸念されるわけだ。

それでも貿易摩擦を激化させる習近平
 中国政府は貿易黒字に対する批判にどう立ち向かおうとしているのだろうか。
 第一次トランプ政権との関税戦争では、中国は輸入拡大によって批判を軽減しようとした。中国は17年に輸入拡大を表明、翌18年に第1回国際輸入博覧会を開催した。この表明は達成されるかに見えた。前図に示したとおり17年、18年は輸入拡大により、貿易黒字が縮小している。
 だが、輸入拡大の号令の御利益はこの2年しか持たなかった。その後、輸入の伸びはストップしている。中国経済が低迷している今となってはもう一度、輸入拡大をぶちあげることも難しい。
 さらに問題なのは、中国が「新しい質の生産力」をスローガンとしてさらなる製造業強化を進めている点だ。生産能力が強化されても中国国内で消化する能力が減退している以上、輸出するしかない。むしろ貿易摩擦が激化する方向に改革を進めているわけだ。
 なぜ、このタイミングで中国をさらに苦境に追い込むような製造業の強化を推進しているのか。この点については前述『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』で詳述している。詳しくは同書をご覧いただきたいが、大きな背景としてあげられるのは中国共産党と習近平総書記の「成功体験」だ。
 中国ではリーマンショック後の経済改革において、新自由主義的な供給面重視の政策を打ち出し、大きな成果をあげてきた。日本人からみて興味深いのは、その際に一種のお手本として持ち上げられたのが小泉純一郎政権のブレーン、経済学者の竹中平蔵であった。構造改革の徹底によって経済を回復させられる。この竹中平蔵テーゼを、中国は着々と実行し、一定の成果をあげてきた。
 この手法が長期的に見て本当に正しいものであったのか、ここでは評価しない。ただ、少なくとも景気低迷と貿易摩擦に直面する現在は、リーマンショック後の中国とは異なる対策が求められることは間違いない。
 それにもかかわらず、中国共産党は「新しい質の生産力」という改革に邁進している。その先には貿易摩擦の激しい対決が待ち受けているのは誰の目にも明らかなのに、だ。
 習近平総書記、そしてトランプ大統領。米中双方のトップはいずれも自身の手法と成功体験に強い自信を持つストロングマンだ。25年は両者の自信が衝突し、世界に波紋を広げる波乱の年となるのではないか>(以上「Wedge」より引用)




「ストロングマン」のトランプvs習近平、中国の輸出が2025年の国際問題の焦点に」と題して高口康太( ジャーナリスト、千葉大学客員教授)氏が今年の米中関係を占っている。高口氏の論文を一読して、高口氏が中共政府統計局の発表する経済統計をそのまま使っていることに驚きを禁じ得ない。
 なぜなら中共政府の統計数字は「大嘘」だと既に国際共通の認識になっているからだ。考えて見ると良い、5%成長は15年維持すれば経済規模が二倍になる。7%成長なら10年で二倍になる成長率だ。つまり2024年の中国経済が当局発表で5%成長、高口氏の予測でも4%台の成長とは、日本が経験した昭和40年から50年前後の高度経済成長期の成長率で、世間は人手不足で中卒・高卒は「金の卵」と呼ばれていた。しかし現在の中国はどうだろうか。

 中国では大学新卒ですら中国当局発表で失業率17%、実勢は50%を超えているのではないかと云われている。それほど失業者が巷に溢れて「高度経済成長」とは天地がひっくり返ってもあり得ない。
 実際に中央政府も地方政府も財政が逼迫し、公務員の遅配は当たり前になり、ゴミ収集業者に委託費の支払いが滞っているため、市街地の至る所にゴミの山が出来、街中に悪臭が漂っているという。そんな国が経済成長していることなどあり得ない。どう見ても経済はマイナスで崩壊の坂道を転がり落ちていると見るのが正しいだろう。

 高口氏は中国当局が発表したGDPの構成比率(消費40%、投資30%、貿易30%)をそのまま信じているようだが、ネットで見られる上海や北京など大都市ですらショッピングモールは閑散としている。かつて飲食客で賑わった大都市の歓楽街も閑古鳥が鳴く有様だ。そして間もなく出るだろう春節の人民大移動も、政府当局は90億人の大移動と銘打っているが、主要ターミナル駅ですら、とても90億人の大移動と呼べるほどの人出はないようだ。
 それでは消費者がショッピングモールのショッピングから、ネット販売へと移動したのかというとそうでもないようだ。かつては有名販売人がネットに登場して大量販売していたようだが、現在ではそうしたスーパー販売員は当局に目を付けられて姿を消している。

 トランプ氏の登場に合わせるかのように、日本企業が中国高速鉄道に納入していた車輪や特殊な緩まないネジの輸出を停止した。鉄道だけではないシャープが太陽光パネル生産に必要な電子部品の提供を止めたという。それにより中国高速鉄道だけでなく、世界に中国が輸出した高速鉄道が至る所で不具合を起こしているという。
 太陽光パネル生産もシャープが発電した電流を制御する電子部品の輸出を止めたため、中国の太陽光パネル大手数社で生産ラインが止まったという。もちろん中国製の車輪や3Dコピーによる「緩まないネジ」も生産しているが、それらは日本製の性能より遥かに劣り、ネジが緩むために安全性の確保に苦慮しているという。

 経済崩壊により中国内は社会治安が悪化し、遅配に怒った労働者が各地で工場を焼き討ちしているという。さらに年金基金も数年のうちに枯渇して、雀の涙ほどの年金すら支払い不能になると予測されている。
 経済で米中対立、などと評論家は重大事のように書いているが、重大なのは「戦狼外交」で散々先進自由主義諸国を恫喝し脅した中国であって、米国は必要な消費財を自国で生産すれば何ら問題はない。それは日本も同様だ。中国を経済的にデカップリングして米国も日本も困らない。

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